叶野戦、まだ続きます。
俺は再び
「ほほ、またその雅な鎧どすか。ほんま心が痛みますわ! そんな格好ええもんを何度も砕くなんて!」
案の定、というよりも思い通りに、叶野は俺に向かって
が、しかし。俺は先ほどいつの間にか握っていた石を
「安心しな、肉体はどーか知らねーけど、お前の心はもう痛まねえ……?」
──なんだ? 予想通り、石礫がぶつかっても鎧は砕けなかったが……
まさか三つ目? いや、流石にそりゃあ無えだろ。
「ほほ、随分とお疲れみたいやわ。さっきまであんなにいい威勢やったのになあ、もう動けんのやない?」
叶野は意地の悪い笑みを浮かべながら、そんなことを口にしやがった。しかも同時に体は余計に怠くなるし、このままじゃ俺は動けねえ。
ま、そんなことは俺にとって、大した問題じゃねーんだけど。
「……うるせーな、そんなことよりもあんた、大事なことを一つ忘れてんじゃねーのかよ」
「はて、なんのことやろ? 悪足掻き時間稼ぎは大いに結構やけども、そんなことしなはるなら」
「あー、違う違う。いやまあ、時間稼ぎっつーのは大正解なんだけどよ……俺は別に動かないでもスキルが使えるんだぜ。距離取ったからって、動けないからって、俺のことを
俺はそう言い、
そして、数瞬の後──叶野は「火めくり」を
まず一つ目はクリアだ。そして今から、
「……叶野、お前は『漢字を使っている』な?」
「……面白い読みやねえ、確かに説得力はあるわあ。小説家にでもなりはったら──」
「OK、それが
俺は最大火力の「業火絢爛」……火のドームを作る技を使って、叶野の周辺の水を
「火っていうのはよー、周囲の温度を
俺の予想では、二つ目の
戦闘中に皮肉を使って相手を煽るのは、よっぽどの理由がないとする必要がねーからな。理由なくやってんなら、そいつはただの救いようがないバカだ。
「……ま、お前はそうなったらそうなったで、一つ目の
「あの……名瀬先輩。俺たち、何が何だか分からないんですけど、説明してもらってもいいですか……?」
「んー? なんだよ善ちゃん、お前分からなかったわけ? かーっ、しょうがない会長サンだぜ全くよー。まあしょうがねーから詳しいところまで説明してやるけど」
(本当に根はいい人だなこの先輩……)
なーんか変なこと考えてやがるな。まあいいや、どうやら
「叶野遂はな、
「……『
「まあそーいうことだよ。俺の皮膚を切り刻んだのは『石』で『皮』を『
「つまり『漢字を使う』っていうのは、文字通りに意味を表現するための漢字を使って、自由自在に組み合わせて……意味の方を変えちゃうってこと!?」
江迎も中々読解力が上がってきたじゃねーの。次からは自分で気付けるようになれよな、お前も生徒会のメンバーなんだから。まあそれは全員に言えることだけどよ。
「いや、しかし名瀬先輩。氷が一瞬で解けたのは? あれは一体、何の漢字を組み合わせて……」
「あー、あれな。『氷点下』だよ。『氷』から『点』が『下』りれば、ただの『水』だ」
「……そ、そういうのもありなの?」
「へー、
「奥が深い? おいおい後輩ちゃん、こんなもんで
……なんで贄波の奴が先輩風吹かせてんだ。そんでもって
「っと、そんなこと考えてる場合じゃねーな……あーしんど、立つのがやっとだぜまったくよー」
「名瀬せんぱい、先程から随分とお疲れのようですが……どうしたんですか? まさか『
「あーいや、そういうわけじゃねーのよ。これはただ、叶野の
俺はなんとか立ち上がりながら、鰐塚の質問にそう答える。あー、だる。
いや、それも含めての
「二つ目って、贄波くんの『順接』と『逆説』みたいに使い分けてる、ってことだよね。『漢字』と、あとは……わざとらしかったし、大人か子供に関連すると思うんだけど」
「いーや、そいつが違うんだよ
思い返せば、俺がやけに子供っぽくなった──変な失敗をするようになったのだって、俺が叶野に
「うちが大人の魅力に溢れとるゆうことやろ?」と、あいつがそう返してきたからだ。直後に、俺からは大人っぽさの一切が消滅した。
「考えて察するに、叶野遂が使用する二つ目の
「じゃ、じゃあ……突然名瀬先輩の体が切り刻まれたのは、『漢字使い』と『皮肉使い』の合わせ技だったと……そういうことですか?」
「まーそうだろうな。『石にも気付かんくらい頑丈』ってのがそうだったんだろ……実際に俺の肌はその直後、突如として出現した石に、頑丈とはまったく
「見事どす。これは皮肉やなくて本音やから、安心しいな」
「ッ!? あいつ、どうしてまだ……!?」
突如として俺達の会話に割り込んできたのは……まあ当然ながら、叶野遂その人だった。
……ま、一応復活してくる予想はしといたけどよー。まさか
「『業火絢爛』、やったっけ? そんなに漢字を使ったらあきまへんえ──『火』と『業』で『
常用漢字外でも行けるのかよこいつ、とんでもねー応用範囲じゃねーか。
「『漢字使い』の方は的中みてーだな。ま、これに関してはさっき説明した通りだがよ」
「せやね。うちは『漢字使い』の叶野遂。
「はいはいそうですね。で、俺は二つ目の
「『皮肉使い』? ほほ、そんな品のないことせえへんわ。うちは『皮肉使い』やのうて『建前使い』どす。火傷した部分は『うちの肌荒れててなあ』言うて、
あくまで
「つまりお前は、二つの
「ほほ、まあうちの事をどう認識しはっても構わんけどな──あんたはん、
叶野はそう言うと、俺に向かって、まるであっかんべをするように舌を出した。舌の上に書かれている漢字は、漢字の「漢」でもなく、皮肉の「皮」ですらなく、ましてや建前の「建」でさえなく──。
「……お前、本当にいい性格してんな……」
「そらどうも、ありがとさん。よう言われるわあ」
──どうやら俺は、致命的に選択を失敗したらしかった。
叶野戦、まだまだ続きます。
一体いつまで続くのか。
感想・評価・ここすき等よろしくね。