TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

76 / 95


 ゴールデンウィークのくせしてやることが多すぎる!!




第74箱「友達のため」

 

 

「いやー、それにしても感慨深いぜ。実際ほんの半年前まで考えもしなかったよな、あろうことかこの俺が箱庭学園の生徒会長になって──こうしてみんなで、南極を歩くことになるだなんて……

 

 というわけでどうも、球磨川(そそぎ)です。海の上、雲の上と続いて今度は、氷の上からこんにちは。

 

 叶野くんと名瀬くんの戦闘の影響で、戦闘機は危うくお釈迦になりかけたけど……そこは僕の腕の見せ所だった。

 

 何を隠そう、ぼくが「却説遣い(ブックマーカー)」を使って戦闘機を修理したのです。いやー、いい仕事したよ本当に。

 

 燃料もほどよく補充した戦闘機は、名瀬くんの操縦によって、無事に漆黒宴二次会の会場である南極へと辿り着いていた。

 

 それにしても、いや……あり得ない寒さだね。死んじゃう、死んじゃう……。

 

「……(そそぎ)さー、俺をカイロ代わりにするのは止めてくんねーかな。いやまあ確かに、俺はついさっきの戦闘で温度を4000℃まで制御できるようになったけどよ」

 

「やだ、絶対やだ!! 離れないし離さない!! 一歩でもぼくから離れてみろ、たちまち凍死してやるからな!!」

 

「おーそいつはおっかねーな。後輩に凍死されちまったら寝覚めが悪いし、流石にここは俺が妥協するしかねーかー」

 

「やった! 本当にありがとうございます名瀬くん……つーかさ、僕の名前(そそぎ)なわけじゃん。この名前で寒さに弱いの面白くない?」

 

次つまらねーこと言ったら凍死させてやっから覚えとけよ

 

 ……うん、これ以上はやめておこう。名瀬くんは多分マジでやる。やると言ったら必ずやる子だから。

 

 なんて、そんな風にぼくがバカなことを考えていると、後ろで善吉くんが江迎くんを支えて歩いているのが見えた。

 

 うーん、まああの子、肉体的にはこの中で一番弱いからなあ。尤もそれは、江迎くんが弱いということを意味するわけではないけど。

 

 ぼくはなんだかバツが悪そうな江迎くんに声をかけようとして──その行動を、名瀬くんに阻害された。

 

「……(そそぎ)、今は放っておけ。野暮なことはすんな」

 

「野暮って……ぼくってそんなに野暮ったい女に見えるかなあ。流石に女心の一つや二つくらいあるって」

 

「あっそ。じゃあお前、恋したことあるのかよ。どんだけ小さなもんでもいーぜ。一度でもあるんだったら女心を有していると認めてやる」

 

「えっ、いきなりガールズトーク? それじゃあ……剣に恋してる! ぼくの恋人は竹刀と真剣だよお──」

 

「凍え死にたいか」

 

「ああ待ってスキル解除しないで!! ごめんなさいぼくが悪かったですもうふざけません!!」

 

 危ない、危なすぎる。ただでさえ名瀬くんはイラついてるっていうのに、これ以上はマジでヤバい。

 

「……とは言ってもさ、ぼくってば好意と恋の境目が分からないんだよね。厨二病とかじゃなく、ぼくは感情に折り合いを付けるのが下手っぴだから」

 

「ふーん……善ちゃんのことはどう思ってるんだ?」

 

「善ちゃんって……善吉くんのこと? なんで急に?」

 

 名瀬くんは僕の方に近づき、よく分からないことを耳打ちしてきた。別にこそこそしなくてもよくないかな。

 

「ほら、だってお前……戦挙戦の時、善ちゃんに()()()()()んだろ? つまり、あれだ。逆ベン・フランクリン効果」

 

「えー? いやそりゃあさ、確かに感謝はしてるよ。助けてもらえなかったらぼくは今生きてないわけだし……だから、まあ──()()()()()()()()()()()()()()()()()しかできないかなあ

 

「重っ……」

 

「でも別に善吉くんに限った話じゃないよ。みんながいなかったら、ぼくは死んでた。それにさ、友達のために死ねないようなら、そんなの友達じゃなくない? 友愛ってのは、詰まるところ献身でしょ」

 

 ぼくはぼくなりの考えを口に出す──元の話題からは完全にズレている気がするが──すると、名瀬くんはぼくの頭を一発ぶっ叩いてきた。

 

「ぁだっ……ちょっと、何すんのさ!」

 

()()はレクチャー代だ、大人しく受け取っとけ。いいか(そそぎ)──『友達のため』とか言って何でも出来ちまう奴は()()()()()()少なくとも、俺はそんなことを言うやつとは友達になりたくねーな」

 

「……あー、いや、なるほど……つまり名瀬くんはぼくに『そんな簡単に死ぬとか言うな』って言いたいってこと?」

 

「さあな、好き勝手に解釈してもらって構わねーよ──ほら、黒神基地に着いたところだし、可愛げのかけらも無えガールズトークはおしまいだ! さっさと中入んぞ」

 

 ……まったくもう! 名瀬くんは優しいなあ。身体だけじゃなく、心まであったかくなっちゃったじゃんか。

 

 そんな事を考えながら、僕たちは雁首揃えて黒神基地の中へと入って行った。

 

 


 

 

 黒神基地の中は、文字通りに()()()()()だった。まあこれは事前に予想していたことだし、驚くべきことではない。

 

 どうせ今回は()()()()()()だろうということで、ぼく達は基地の中をそれぞれバラバラになって探索した。ぼくは調理室とか寝室とかを探索したけど、特にこれといってめぼしい痕跡は見つからなかった。

 

 そんな風にぼく達がまごついている間に、どうやら善吉くんと江迎くんがめだかちゃんの痕跡を見つけたらしく、全員が()()に集合した。

 

「こんな所に閉じ込められていたなんて……黒神さんは大丈夫なんでしょうか? 今更ながら心配になってきましたよ……」

 

「なるほどな、虎居はそう思うのか。しかし俺はむしろ安心したぜ。だって、ほら。()()()()()()()()()()で縛れると思うか?」

 

「……つまり善吉くんは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って、そう言いたいってこと?」

 

「その通りだよ江迎。他の6人の安否は不明だが、何はともあれ、めだかちゃんが自分の意思で同行している以上、きっとこの牢屋の中に()()()()を残してくれてるはずなんだが──おっ、やっぱりあったな」

 

 ……えっと、善吉くんはそう言って、床の隙間に挟み込まれていた紙を探し出したんだけど……なんか善吉くん察しが良くなりすぎじゃない?

 

 いやまあ、ぼくと安心院(あんしんいん)さんと半袖くんの三人がかりで色々と鍛えてあげたりはしたよ。でも()()()()じゃなかったよね!?

 

 そんな風にぼくが独り言を頭の中でぶつぶつと呟いていたら、善吉くんは手に持った紙を開いた。そこには予想通りに、()()が書かれていた。

 

 

 

 

 

善意で死ねぬ性分らしく、

 

遊ぶ過去なき神童は、  

 

 見舞うべき身繕いし、希う。

 

 

 

 

 

「……これってもしかして、()()()……?」

 

「だろうな。そしてこの血は恐らく、めだかちゃんのものだ──うん、よし。()()()からさっさと行こうぜ

 

「そうだね、そうしよう──え? えっと、善吉くん、今なんて言ったの?」

 

「いや……だから、()()()()()()()()()って言ったんだよ」

 

「えっ……えええええええええっ!?」

 

 いや……()()善吉くんだよ!? 一度は暗号が解けなかったせいでめだかくんと敵対したあの善吉くんだよ!!?? 嘘だ!!

 

「うぅっ……ぐすっ……成長したねぇ、善吉くん……」

 

「お母さんみたいなこと言うのやめてくれねえかな……」

 

 ──こんな風に、善吉くんの成長に舞い上がっていたせいで。ぼくは、牢屋の中に()()()()2()()()()()()()ことにも、江迎くんの異変にも気が付くことが出来なかった。

 

 異変といっても、些細なもの。だけどそれは、江迎くんにとっては()()()()もの。

 

 だから、まあ。

 

 一言で纏めるのならば。

 

 

ぼくは友達のためなら死ねるとかいう戯言を吐けるほど、強くはなかったらしい

 

 

 






 (そそぎ)ちゃん、話し始めると止まらないんだよな。今回は早めに止まってくれましたけどね。

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。