今回手抜きみたいに見えるかもしれませんが、意外と細かいところまでちゃんとしてます。
8,000文字です。
間違えた。
何を間違えたか思考する。が、しかし、考えれば考えるほど……全てが間違っていたような気がしてならない。
端から端まで。
何から何まで。
思えばぼくは、どこか浮かれてたんだ。
……ダメだな、口を開けば言い訳ばっかりだ。
本当のところは、もっと単純なんだ。相手がどうとか、相性がどうとか、そんなのは関係ない。こうなった理由はぼくにしかない。
認めたくない。
だけど、認めなければぼくは一生このままだと思う。
──ぼくが、
──彼女が、ぼくよりも強いだけなんだ。
ただ、それだけ。
黒神めだかの婚約者その1。活発な印象を受ける服装。チャームポイントは鼻のテープ。どことなくお兄ちゃんに似ている。しかし
……
「とりあえず一刻も早く南極を
「三次会の会場は、到着する前に追いつきたいような場所なのですか?」
「ああ、そうだ。まあ詳しい暗号の絵解きは飛行機の中でな」
確か、善吉くんと鰐塚くんが、こんなことを言っていたタイミングだったはずだ、ぼく達が彼女──潜木もぐらくんを発見したのは。
「……飛行機の中などと勿体ぶらずに、今この場で教えてもらうことは出来ますか人吉殿?」
「は? 何でだよ鰐塚?」
「いえ……その飛行機とやらがどうも、生憎どこにも見当たらないみたいなので……」
鰐塚くんの視線の先には、
ドライバーでカチャカチャと音を立てながら、パーツを一つずつ丁寧に丁寧に外していたんだ。
「え……!? な、なにあの子……ドライバーだけで戦闘機をあんな風にバラバラにしたの……!?」
虎居くんがそう言って驚いている時……確か生煮くんも驚愕していたはずなんだ。うん、確かにしていた。
「あいつもまさか婚約者のひとり……ん?」
「てめー兄貴からの借り物の飛行機(2台目)に何してんだー! 今度は俺にどんなご奉仕をさせる気だこの野郎ー!」
「なっ……名瀬先輩がついに! とうとう普通に怒ったーっ!!」
「おっと失礼こんにちは初めまして。私は黒神めだかの婚約者その1、潜木家代表・潜木もぐらなのだー!」
潜木くんはそう言って、やたら楽しげに振り返った。多分だけど、戦闘機の解体なんて滅多に出来ないから嬉しかったんだろう。
そんな彼女に、生煮くんがたまらずといった感じで声をかけた。
「潜木……なんであんたがここにいる……!? まさかあんた、漆黒宴二次会で敗退したの!?」
「負け? ふっふっふ、まあ今という短いスパンで見れば私は確かに負けたのかもしれないのだ。だけど私はごねて暴れたりせずその負けを潔く認めたもんねー!」
……お兄ちゃんに似ている、と思ったのは撤回しよう。
「どころかお前らの足止めまで買って出るこの懐の深さ! 人生という長丁場の勝負においては、私が断トツで優勝なんじゃないのかなー!!」
「……気ィ付けやあんたら。あの子はあの通り馬鹿を絵に描いたような馬鹿やけど、
唖然としているぼく達に、叶野くんはそう説明してくれた。あー、そういえば言ってなかったけど、叶野くんも生煮くん同様に着いてきてくれてる。ありがたいね。
…………?
「狙いやすかった贄波と違うて、あいつはそれ故に狙い撃たれた──うちを含めた四人がかりでようやく半ば騙して敗退させた『
「…… 叶野の。それは、
「ご明察どす。そういうわけで、七人がかりってのはどうや? うちらも南極に閉じ込められるんはごめんやねんけど」
叶野くんがそうぼやいていたので、ぼくはすかさず声を上げて自分の存在をアピールした。
「はいっ、はいはい!! ぼくの『
「それが出来るんなら一番ええわ。ただ、そう簡単には行かんやろ。なんせあいつは
何だっけ? 記憶が朧げだ。一度聞いたはずの話が、何故だか完全に抜け落ちている。
……今、何考えてたんだっけ。まあいいや、どうせ大したことじゃない。それよりも今は思い出すことに集中しないと……。
どうして
そこで……ええっと、確か善吉くんが一歩前に出たんだ。
「……ともかく、七人がかりってのは無しだ。箱庭学園の生徒会長は、名乗ったやつとは一対──」
ここで名瀬くんが
善吉くんはその場で倒れ込み、寝息を立て始める──要するに、ここまでの戦いで溜まった疲労を回復してあげようという、名瀬くんなりの気遣いだったわけだ。
「背負い込み過ぎだぜ生徒会長。贄波とのバトルで全身刻まれてんだ、肉体は無事に見えても精神の方は別なんだよ。だからまあ、ドクターストップだ」
「いやドクターストップって言うなら名瀬副会長も十分満身創痍ですよね? じゃあここは、不肖私が生徒会を代表して──」
虎居くんがそう提案するが、名瀬くんの反応は芳しくなかった。そうしてしばらく悩んだ後に、名瀬くんが出した答えは──。
「江む
「うーん……僕よりも当然!!」
「えっ……
「ちょっ……うちの話聞いてなかったんか!? ガチでヤバい馬鹿やねんてあの子は! それをそんな記念受験みたいなノリでまあええんちゃう? 贄波を無傷で倒せたならまあいけるやろ」
「みんなどうしたの!? 言ってることがしっちゃかめっちゃかだよ……!?」
「というわけで! 『
「
ぼくはこうして、潜木くんと
──ぼくは、天才ではない。
運動神経がずば抜けていいとか、そういうことはないし、やたらと物覚えがいいとかそんな都合のいいこともなかった。
取り柄といえば、努力をすることくらい。
他人よりも少し努力ができるたけの、
凡才だけど。
と、思う。
だったら、ぼくが守らなきゃ。
目つきは悪いけど、根は優しそうな女の子。目の前にいる奴に蹴りを何度も喰らってしまい、倒れてしまった。
眼鏡をかけている、いかにも真面目そうな女の子。凄まじいパワーだったけど、逆にそのパワーを利用されてしまった。
眼帯が特徴的な、銃火器を扱う女の子。狙撃で援護してくれていたけど、接近を許してからは早かった。
……そして、普通の男の子。いつかどこかで会ったことがあるような気がする、優しそうな男の子。
ぼくは馬鹿だけど、
目の前の奴に何かされたことは分かってる。楽しそうににやにや笑ってるし、これで何もないって方が変だろう。
それに、何かの力を
どうやら目の前の奴は、この男の子を積極的に狙っているらしい。だからぼくは、この子を必死で守ってる。
──きっと、ぼくの目の前にいる奴は
刀は折れた。多分骨も折れてる。ドライバーで全身ぐさぐさ刺されて、腕なんかは穴だらけだ。南極にいるのに体は燃えてるみたいに熱いのに、もう汗は出ない。多分出し尽くした。
熱い。寒い。血を流しすぎた。刺されすぎた。咳をするたびに口から血が漏れる。内臓がやられたかもしれない。
──ふと、近くから息を呑む音が聞こえた。誰だろう。ごめんね、血が足りなくてもう見えないんだ。流石にやられ過ぎだね。情けないなあ。
だけど、心配しないで。きっともうすぐ助かるよ。ぼくのことを静観していたあの子……赤茶っぽい髪色をしたあの子と、スラッとした体型の眼鏡さんが、きっとどうにかしてくれる。
確証はないけど、だけどなんとなくそう思うんだ。
ぼくは目の前にいるであろう人に向かって微笑みかけた。見えないからどこが顔か分からないけど、上手く笑えてるかな。
……きみのことも、ぼくが守ってあげたいんだけど。どうやらそうは行かないらしい。
だって──喉をドライバーで貫かれちゃったから。
直後にぼくは蹴り飛ばされ、ついさっきまで守ってた男の子のそばまで吹っ飛ばされた。はは、容赦ないなあ。最期くらい格好つけさせてよ。
あーあ、ぼくの人生ここで終わりかあ。血が抜けすぎて、もう痛みを感じないのが唯一の救いだね。
……ふと思い立って、ぼくは正座の姿勢になり、男の子の頭を膝に乗せた。ふふ、ひざまくら、一回やってみたかったんだよね。
どうせ死ぬのだし、頭を撫でてみる。整髪料がついているのか、感触はちくちくとしていた。だけど、何だか懐かしかった。
なーんか2歳くらいの時も、どっかの病院で同じことした気がするなあ。朦朧とする意識じゃ鮮明には思い出せないけど、なんかそんな気がする。
……そろそろだね。
あー、そういえばぼく全身にドライバー刺さってるけど、この子が起きた時にびっくりさせちゃわないかな?
まあ許してよ。
これでもぼく、結構頑張ったんだよ?
もう誰の名前も覚えてないし、ぼくがなんでこんなに頑張ってたのかもわからないけど。
最後までぼくの心は死ななかった。
遊ばれてたとはいえ。
弄ばれていたとはいえ。
みんなの命は守れたし。
うん。
悪くなかったな。
悪くなかったよね。
「あはははははははっ!!!! なにあの子、今際の際にやることが膝枕!!?? しかももう
江迎怒江は、動けなかった。
潜木もぐらの正体不明の
そして、
恐らくは
江迎だって戦いたかった。だけど、
そして、スキルが使えないということは。
死んだ者は、二度と帰ってこないということだ。
「
先ほど潜木に殺された江迎の親友。
しょっちゅう遊びに出かけたり、恋愛相談に乗ってもらったり、一緒に運動したり──
しかし。
結果として。
執拗に善吉を狙う潜木から、決死の覚悟で、必死の思いで攻撃を捌いていた。
全身傷だらけにされながらも、最後の最後まで
江迎の方に近付いて、優しく微笑んだ。苦しそうなところなんて見せずに、可愛らしく。儚げに。
直後潜木に蹴り飛ばされ、善吉の側まで吹っ飛ばされた
……本人以外は、みんな知っている。否、本人だって、きっと気付いていた。
戦挙戦の時に背中を押してくれた善吉のことを、
時計塔での
今でも生徒会に所属して、かつての善吉と同じ役職に就いていることも。
全部、善吉のことが好きだったから。最期まで言葉にせず死んでしまったけれど、そんなこと、全員薄々勘付いていた。
その想いは墓場まで持っていったというわけだ。
最期の最期に、少しだけ欲張って、膝枕という形に遺して。
基本的に、他人に遠慮しがちな
めだかと江迎に想いを託していったのだ。
何故笑う?
何が楽しい?
江迎の視界が明滅する。
目の前で大爆笑している女に、腹が立つ。
「ひーっ、笑った笑った……ああ、そうだ、完全に忘れてたのだー! えーっと江迎ちゃん、だっけ?」
潜木は硬直している江迎に近づき、涙を拭きながら話しかける。そして正面から肩をポンと叩きながら、決定的な一言を口にした。
──こいつは絶対に必ず殺す。
できるだけ後悔させてから。
できるだけ惨めに。
できるだけ腐らせてやる。
完全に油断している潜木に向けて、江迎は文化包丁を全力で振った。
「うわぁっ!? ちょっともー、何すんの!? つーかそもそも、
「知らないよ、知るわけないじゃん。何だろう、殺意とかじゃない? 絶対に謝らせて、何が何でも殺してあげるよ、この腐れ外道。」
江迎は
それを見て潜木も、多少まともなファイティングポーズを取った。どうやら少しはやる気になったようである。
いきなり恋愛? と思うかもしれませんが、登場初期からこの気持ちを軸で動かしてました。多分分かりやすいとは思います。
潜木の二つ目の
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