TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 暗号解読回。




第79箱「私にはどうにもできん」

 

 

 潜木との和解が終わった後、生徒会の面々はすぐさま(そそぎ)と禊が修復した戦闘機に乗り、善吉主導のもと漆黒宴三次会会場へと向かっていた。

 

 現在は禊によって、オールジョーカーズに一体何があったのかを説明しているところである。

 

『──というわけで、めだかちゃんはものすごく凶悪な見た目をしたロリから、もしこの第二回漆黒宴で優勝した場合、鶴喰梟とかいう人を殺した犯人を()()()って言われてね。それに乗った瞬間、僕達五人は()()()()()()封印されてしまったんだよ』

 

「なるほど……つまり人吉会長が言っていたオールジョーカーズの弱点とは封印──加えて、()()()()のものということですか」

 

「あーうん、前半は少し違うが後半は正解だよ、虎居。黒神めだか、鶴喰鴎、安心院(あじむ)なじみ、不知火半纏、不知火半袖、球磨川禊──六人とも敵の初撃を、基本避けない

 

 善吉は今の今まで語っていなかった、オールジョーカーズの弱点を語った。理由としては主義・油断・興味・エトセトラ──挙げれば(いとま)がない。

 

 が、しかし。一人だけ騙られていない者がいることに、(そそぎ)は気が付いていた。

 

「ねえねえお兄ちゃん、(ゆき)()()()()()()()()()? 話を聞く限りだと、名札にはされてないってことっぽいけど……」

 

『おや、そこに気がつくとは、流石の(そそぎ)ちゃんじゃないか。賢い妹を持って僕は幸せだよ!』

 

「こんなシスコンに私やられたのかー……」

 

『もう君わざとやってない?』

 

 シスコンなどと、社会的に見れば不名誉な呼称を潜木がしてきたので、禊は「却本作り(ブックメーカー)」を一本追加した。現在の封印年数は600年の予定である。

 

 潜木はさめざめと泣いた。

 

ギタラクル(イルミの変装)くらい刺さってる……じゃなくて! 名札にされてないなら、(ゆき)ちゃんは一体……」

 

『いやね、そんなに難しく考える必要なんか無いんだよ。名札になってないってことはつまり、()()()()()()()(ゆき)()()()()()()()()()()()()のさ。何でかは知らないけどね』

 

「……それなら、どうして抵抗しなかったんだろう。今のあの子、拘束とか束縛とかすごい嫌ってるから、絶対滅茶苦茶暴れると思うんだけど」

 

『そこで凶悪ロリの()()()()言葉(スタイル)()「警告使い」──一度(おこな)った動作に()()を告げて、二度目に()()()()()()()言葉(スタイル)らしいよ』

 

 禊はへらへらと笑いながら、軽い感じでそう言ったが──しかし、潜木がそこに口を挟んだ。

 

「こいつはこんな軽い感じで言ってるけどなー、あんまりアレを舐めてかかると痛い目見るのだ。比喩とかじゃなくて、滅茶苦茶痛い目に逢うからなー……ぶっちゃけ私が敗退したのだって、ほとんどあいつのせいなんだよなー」

 

『──ということらしいぜ。ちなみに潜木さん、きみが僕達にとって有用なことをしても、封印は解いてあげないからね』

 

「……ちぇー。なんだよ、伝え損じゃんか」

 

 どうやら「却本作り(ブックメーカー)」を解いて欲しいから協力的な姿勢を取っていたようだ。何にせよ歯向かえるわけではないので、多少態度が反抗的になるだけに落ち着いた。

 

「ということは……めだかちゃんも(ゆき)のやつも、その言葉(スタイル)で連行されたのか?」

 

『めだかちゃんに関しては違うけど、(ゆき)ちゃんに関してはその認識で間違いないよ。「スキルを使うこと」に警告を喰らったから、どうにもならなかったみたい』

 

「なるほど……確かに(ゆき)せんぱい、スキルが無いと格が三段くらい落ちますからね。なんというか、あの人も運のない……」

 

『鰐塚ちゃん、今この戦闘機に(ゆき)ちゃんの家族が二人も乗ってんの忘れないでよ? 流石にこれは封印されても文句は言えないぜ』

 

 禊はそう言いながら、潜木に13本目の「却本作り(ブックメーカー)」を螺子込んだ。

 

「おい!!」

 

『おーっと手が滑ったー。でも原因は鰐塚ちゃんにあるから、僕は悪くない』

 

「鰐塚とかいうの! どうしてくれるのさー! これで私の封印年数は650年なのだ!!」

 

「なっ、くっ……! 私としたことが、また何かやってしまったのでしょうか……!」

 

「お前なー!!」

 

「……こんなに狭いんだから、あんまり暴れないで欲しいんだけどな……痛っ」

 

 贄波の呟きは喧騒でかき消されてしまい、誰の耳にも届くことはなかった。

 

 


 

 

「……あの、そろそろいいか? めだかちゃんが俺達に残した暗号の答え合わせをしても」

 

「うん、もうこのままだと潜木くんが一生『却本作り(ブックメーカー)』螺子込まれ続けるから、早めにはじめよっか……」

 

「1000年……1000年? あはっ、あはは……死こそが救済なのだ……」

 

「殺された私が言うのもなんだけど、ここまでされると流石に哀れだね……」

 

 とばっちりにとばっちりを重ね、潜木に刺さっている「却本作り(ブックメーカー)」の本数は20本になっていた。

 

 流石にここまでされていると、怨みなんかはすっかり無くなってしまうようで、むしろ殺された二人は潜木を哀れに感じ始めていた。

 

 それが禊の狙いであるかと言われると、全くそんなことはないのだが。

 

「ところで名瀬くん、既に戦闘機は目的地に向かっているみたいだけど、名瀬くんはどこに行けばいいのか知ってるの?」

 

「知ってるに決まってんだろ。ただ、そこに着くまでしばらく時間がかかる──だからまあ、謎解きゲームでもやりながら、快適な空の旅を楽しんどけ」

 

 (そそぎ)は後部座席からコックピットに通信を入れ、戦闘機を操縦している名瀬に問いかけたが、流石に名瀬は行き先を知っているようだった。

 

 名瀬なりの気遣いで、ネタバレは一切なしである。

 

「よし、そろそろいいかな──それじゃあこの暗号文を解読していくとしよう」

 

 善吉はポケットからめだかが残した暗号文を取り出し、戦闘機の後部座席に共に乗っている8人に向かって見せつけた。

 

 

 

 

 

善意で死ねぬ性分らしく、

 

遊ぶ過去なき神童は、  

 

 見舞うべき身繕いし、希う。

 

 

 

 

 

「さて、ここで重要になるのは()()()()()なんだが──江迎。これ、なんて読むか知ってるか?」

 

「うん。希望の希に、平仮名の『う』って書いて──『こいねがう』。でしょ? 善吉くん」

 

「……江迎くん、よく知ってたねこんなの。ぼくはこんな読み方があるなんて、今の今まで知らなかったよ」

 

「ま、普通に生きてたら知ってるわけないからな……というわけで、読み方も分かったところだし、ここからは分かりやすく()()()()()()()()()()()()()

 

 善吉は先ほど黒神基地から拝借しておいたメモ帳とペンを取り出し、すらすらと流暢な字でひらがなを綴った。

 

「……よしっ、こんなもんだろ」

 

 

 

 

ぜんいでしねぬ    

しょうぶんらしく   

あそぶかこなき    

しんどうは      

みまうべきみづくろいし

こいねがう      

 

 

 

 

「句読点を取って改行したのは、説明しやすくするためで意味はない。さて、鰐塚。これを見て何か気付かないか?」

 

「えっ!? いきなりそう言われましても……って、ああああっ!! 暗号文の中に自分が尊敬してやまない箱庭学園きっての美男子である阿久根殿のご尊名である『あくねこうき』の6文字があるではありませんかあああああっ!!

 

「お前っ!! 静かにするのだ早急に!! このままだと私の封印年数が1050年に……!!」

 

「……まあそれは置いておいて、だ。しかし『あくねこうき』の6文字があったとは言っても、このくらいの長さの文章なら十分あり得る確率──」

 

 善吉はそこで一度言葉を区切り、ペンで阿久根の名前を塗り潰し始めた。突然妙なことを始めたので、その場にいる全員が困惑したが、しかしこの直後に、善吉の意図を理解することとなる。

 

「──だったら、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

ぜんいでしぬ    

しょうぶんらし   

そぶかこな    

しんどは      

みまうべきみづくろいし

いねがう      

 

 

 

 

「俺はお前達を信頼しているからもう言っちまうけど()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「当然──しらぬい(不知火)はんそで(半袖)』!

 

 

 

 

ぜんいでねぬ    

ょうぶんら   

あそぶかこな    

しんどうは      

みまうべきみづくろいし

いねがう      

 

 

 

 

「『なべしま(鍋島)ねこみ(猫美)』!」

 

 

 

 

ぜんいでねぬ    

ょうぶんら   

あそぶかこなき    

んどうは      

みまきみづくろいし

がう      

 

 

 

 

「『しぶし(志布志)しぶき(飛沫)』!」

 

 

 

 

ぜんいでしねぬ    

ょうぶんらし   

あそぶこなき    

んどうは      

みまべきみづくろい

がう      

 

 

 

 

「『うんぜん(雲仙)みょうが(冥加)』!」

 

 

 

 

ぜんいでしねぬ    

ょうぶんらし   

あそぶこなき    

しんうは      

みまべきみづくろい

ねがう      

 

 

 

 

「そして最後にいいづか(飯塚)くろうど(食人)……これはもう偶然とは呼べないだろ。なんせ並べ替えたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだからな!!

 

「す、すごい……ですが、人吉会長。これは、どう見てもランダムに選出したとしか思えない人選なのですが……」

 

「まあ普通に見たらそうだろうな。だが、この六人には紛れもない()()()がある──分かりやすくするために、こういう順番に並べてみるかな」

 

 善吉は得意げにそう言うと、今度は文字を並べ替えて、生徒の名前を漢字で書き始めた。

 

 

 

 

不知火 半袖

志布志 飛沫

阿久根 高貴

鍋島 猫美 

飯塚 食人 

雲仙 冥加 

 

 

 

 

「……うーん、漢字にして並べ替えても、文字数が揃っているわけでもありませんし、同じ漢字が使われているというわけでも無いようですが……」

 

「それではいよいよ最後のヒントだ。奇しくもついさっき漢字使いの叶野が使っていたが、『さんずい』ってのはつまり『()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」

 

 善吉によって、最後のヒントが与えられる。そして最後に答えを掴んだのは、意外にも球磨川禊だった。禊はまるで初めから一人で解いたかのように、自慢げに語る。

 

『善吉ちゃん。つまりきみは、この六人の共通点は()()()()()()()()()()()だと……そう言いたいわけだね?』

 

 

 

 

不知() 半袖

志布志 飛(みず)

阿久() 高貴

(かね)島 猫美 

(つち) 食人 

雲仙 ()加 

 

 

 

 

「曜日って……あーっ! 本当だ!! それぞれ『火』『(みず)』『木』『金』『土』『日』って読める部分が名前にあるよ!

 

「でも、(そそぎ)ちゃん……曜日っていうなら一つ足りないよ? 『月曜日』の『月』がない……」

 

「『月』がない? そりゃ大変だ、だったら『()()()()()()()

 

 善吉はまるで煽るかのように、そんなことを口にする。そうしてその直後、その場にいる全員が同じ結論に至ったのだった。

 

「いや、そんなまさか……」

 

「漆黒宴の三次会会場って……」

 

「もしかして……月ぃ!?

 

 善吉はその言葉に、返答しなかった。が、しかし、その沈黙は肯定を意味する物であった。

 

 


 

 

 ──所変わって、ここは赤道直下、黒幕島・黒神宇宙開発センター。

 

 黒神めだかと残り三人の婚約者、そして月曜氷会の兎洞武器子は()()()()()()()()()()へと乗り込もうとしており。

 

 ただ一人、封印されなかった球磨川(ゆき)はと言えば──。

 

 

うがああああっ!!!! 離せええええええっ!!!! このやろおおおおおおおおっっ!!!!!!!!

 

 

「……黒神さん、あの子どうにかしてくれませんか……?」

 

「うん……無理だな。あれは自由を望む咆哮だ──故に、私にはどうにもできん」

 

「あなたで無理なら、どうすればいいんですか……」

 

 

 ──駄々をこねて、絶叫していた。

 

 

 






 潜木が勝手にギャグキャラ化してて困る。もう仲良しじゃん……。

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