TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 久々に日間ランキング22位とか乗りました。
 評価をくれた人に感謝です。




第81箱「取り除くしかあるまいよ」

 

 

「わっ……わたっ、私っ、私のロケットが……?」

 

「あー……まあそんなに落ち込まないでよ。壊れただけなら、まあスキルでどうにかなるし」

 

 ごめんねえ、私には予想できてたし、なんなら戦闘機が突っ込んでくること知ってたけど……だけどやっぱりド派手な方が面白いじゃん?

 

 というわけで球磨川(ゆき)だ。敵に捕まって暴れまくってたら何にも出来なくされちゃった。「警告使い」のペナルティが分からないから、無駄に動くこともできないんだよね。

 

「私のロケット……初任給で買ったロケットが……」

 

 おいおい武器子さん、まるで月氷会の初任給が1兆7000億円以上あるみたいな言い方はやめなさい。流石にそれはヤバすぎる。

 

「ロケット……じゃないっ! 今は仕事に集中しろ、私……!

 

 おお、すごい精神力だ。私だったら三ヶ月は寝込むなあ、約2兆円がおじゃんになったら。つーか、3000億円が端数になるのってヤバいね。

 

 なんて、私が武器子さんの一挙手一投足に一喜一憂している間に、善吉くんとめだかちゃんはがっしりと腕を組んでいた。ま、久々の再会だしね。二人とも嬉しいだろ。

 

 当然、私の隣にも(そそぎ)ちゃんが来ていた。実はさっきから武器子さんを慰めてたんだよね。今はもう立ち直ったので、私の方に話しかけてきている。

 

「それにしても、善吉くんも派手好きだよねえ。いやまあ、ロケットを潰しちゃえば月に行けないってのはそうなんだけど」

 

「本当にねえ。なまじ効率的で効果的な分、こっちとしても咎めづらいってのがなー。実際に私、あのままだと月に行くことになってたし」

 

 武器子さんは「あなた方なら訓練なしでも月くらい余裕」って言ってたけどさあ、こちとらはスキルがなければ大凡(おおよそ)普通の人間だぞ? 死ぬぞ。

 

「あっ、見て見て(ゆき)ちゃん! なんかロケット爆発しそう! んふふ、木っ端微塵だあ」

 

「あー、本当だ。吹き飛ぶまで秒読みってとこかな──」

 

 なんて、(そそぎ)ちゃんとそんなことを話した次の瞬間。ロケットは()()()()()()()()()()()()()()()()し、武器子さんの約2兆円は消し飛んだ。

 

 

喜んで!

 

 

 ……?

 ああ、そっか。そういえば善吉くんがめだかちゃんに「結婚してくれ」って言うシーンか、ここ。

 

 ──見逃した……!

 

「しかしいい気になるなよ、善吉よ。これが勝負なら私の勝ちだぞ。プロポーズしたのは私の方が先──2()()()()()()()()()()()し、そして何より、私の方が愛している。

 

 うーん、いいなあこういうの。青春……と言うには少々大人び過ぎているけど、そこがめだかちゃんの良いところだし。

 

 さて、それじゃあ()()()()()()()()()()しよう。善吉くんが死んでから名札にされなければ、私たちはわざわざ婚約者達が提案するゲームに乗らなくてよくなるし。

 

「さて、そういうわけで(そそぎ)ちゃん、ちょっとどいてね。私は今からちょっと展開壊さないと──」

 

「さっきから誰と話してるの? 知り合い?」

 

 ──そう言って(そそぎ)ちゃんは、()()()()から声をかけてきた。ついさっきまで、というか今の今まで、()()()()()にいたはずなのに。

 

 それじゃあ、さっきまで前にいた奴は誰?

 

 私が恐る恐る振り返ると、さっきまでそこにいた(そそぎ)ちゃんは、(ゆずりは)かけがえになっていた。舌を出してという文字を見せびらかしながら、両手でピースしている。

 

 ──杠ちゃんの言葉(スタイル)の一つ、「換喩使い」。本当ならこんな所では出てこない言葉(スタイル)だ。()()()()()気が付かなかった……!

 

 なんなんだよマジで……全員が全員強化されてるし! なんか言葉(スタイル)二つ目持ってるし!! 最悪!!

 

 ……とか言ってる場合じゃないな。このままここでうかうかしていてもいいんだけど、そうすると武器子さんが善吉くんを殺す。

 

 恐らく、()()5()()くらいで。

 

 問題なのは、武器子さんが本気で人を殺そうとすると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということ──()()()()()私でも、阻止できるかどうかは五分だ。

 

 だが迷っている暇はない。私は即座に行動を開始しようとして──そこに横から声がかけられた。

 

「やい、そこの。まさか我輩の『警告』を忘れたわけではあるまいな?」

 

「知ったことかよ!!」

 

 私は()()()()()()、既に善吉くんの後ろに回っている武器子さんの前まで()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()──。

 

 ──体は動かず、その場に倒れ伏した。

 

 そこに追い打ちをかけるように、(そそぎ)ちゃんが──(そそぎ)ちゃんに扮した()()()()()()()がナイフを背中に思いっきり突き刺してきた。

 

 杠ちゃんが(そそぎ)ちゃんの分身を解除した時、背後から話しかけてきた(そそぎ)ちゃん──()()()……ッ!!

 

「ッ──……!? ぅ…………」

 

「ごめんなさい。でも、あなた邪魔なので!」

 

 元々の杠ちゃんの言葉(スタイル)「嘘八百使い」で分身した、8()0()0()()()()()()1()()……! それぞれ独立して別々の人物に「換喩」を使えるのか……!

 

 てゆーか、()()()()()()……!? 刃物とか関係なく、()()()()()()()()()()!!

 

『スキルを使うな』・『暴れるな』・『騒ぐな』……()()()()()()()()()()を無視するのだから、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「警告使い」……破った場合のペナルティは、()()()()()()()()()()()()()()()()()か……!

 

 つまり今の私は、スキルが使えず体が動かず声が出せない……文字通りに、()()()()()()()……!

 

 おまけに私がもたついたせいで、善吉くんが武器子さんに槍で貫かれてしまった……でも彼はこの先名札にされたおかげで復活できる……はずだから、本当に申し訳ないけど耐えてほしい!

 

「……さて、球磨川(ゆき)。まさか(なれ)は『自分だけは何があっても封印されない』などと、そんな思い上がりはしていないだろうな?」

 

 ……は?

 

 いや、いやいや。だってさっき、私のことを封印できなかったじゃん。多分()()()()()を知らないからだと思ってたんだけど……できちゃうの?

 

「できなかったのではなく、()()()()()()()──杵築(ゆき)と球磨川(ゆき)、どちらが適用できるのかも分からなかったからの──今の(なれ)は言葉を吐けぬから、吾輩が一方的に話すことにするが、しかし死体に名前などないであろ?

 

 え? そんなのアリ?

 

「アリだ。というわけで、(なれ)には認識票(ドッグタグ)に封印されてもらおう──」

 

 ははっ、この凶悪ロリ、絶対いつかメタクソに泣かしてやるからな……。

 

 私は最後にそんなことを考えて、封印された。

 

 


 

 

 ちぇ、先手を打たれちゃったか。本当なら死んじまった善吉くんと(ゆき)ちゃんをこの教室空間に呼んで、特訓の一つでもしてやろうかと思ってたのに。

 

 いやはや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だなんて、あの幼女……只者じゃないね。

 

 とはいえ善吉くんはよくやった──めだかちゃんが恋心を思い出したとなると、漆黒宴もここから荒れるぜ。

 

 しかし僕がけしかけたこととはいえ、人吉くんは本当にめだかちゃんが好きだったんだねえ……。

 

 ま、死体を封印されちまったら球磨川くんでも手が出せないだろうし、当然僕だって手を出さない。こりゃ参ったね。

 

 これはもう、人吉くんと(ゆき)ちゃんのことは忘れちゃおうか!そもそも生も死も僕の前じゃ平等だしな、僕はもうしばらくあの凶悪ロリの封印を楽しませてもらうぜ。

 

 だってあいつらと僕って、少し仲がいい程度だし。

 

 うん。特訓もつけてあげたけど、それだけだしな。

 

 他には……ご飯を作ってあげたり、勉強を見てあげたりもしたっけ。二人とも戦いに明け暮れていたせいで、学力がギリギリだったんだよなあ。

 

 努力が実を結んだのを見て、柄にもなく焼肉も奢ってやったし。

 

 そうだな。

 

 その程度の仲だ。

 

 ……わっはっは。

 

 

 

 

 

 

 しょーがねー急いで復活してやるか

 

 

 よく考えたらこんなの全然物足りねー封印だし、あのガキに宇宙の厳しさを教えてやらねーと気が済まないからさ

 

 

 

 


 

 

「えー、ご覧の通りと言いますか、月面基地に向かうためのロケットはしゅっ、しゅう……修復っ、ふっ不可能っ、な、修復不可能なほどっ、破壊、されてしまってえ……! うぅ……」

 

 ……善吉を槍で突き殺した武器子は、約2兆円のロケットが壊されたこと、そしてその直後に(致し方なく)善吉を殺害して生徒会の怨みを買ったことから、ロケットの修復が絶望的であることを察して静かに泣いた。

 

「……月氷会殿。もう会場を月にこだわることはなかろう。むしろお互いさっさとケリをつけたいはずだし、漆黒宴三次会──決勝戦は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……待て。貴様まさか、()()()()()()()()始めるつもりか? それは──」

 

「人質ならそちらも取っているから公平(フェア)ではないか。しかも潜木に至っては、全身針串刺しの有様であるしの」

 

 凶悪ロリは潜木の方を見ながらそう言う。当の潜木は、先ほどから無言を貫いている禊の方を見ていたが。

 

「……まあいい。それで決勝戦と言ったが、残っている三人のうち、誰が戦うのだ? まさか()()()()などという寝言は──」

 

三人同時に決まっているであろう。当然ながら、三対一のバトルを申し入れているわけではないぞ。麻雀や大富豪のように着順を競う()()()だから、そう怯えずともよい」

 

 かなり強気で場を取り仕切る凶悪ロリは、そこで一度言葉を区切るが、すぐさま再び話し始める。

 

「当然ながらトップを取った者が漆黒宴の優勝者だ。もしも(なれ)が優勝した時は人質を全員解放し、吾輩達は二度と貴様達の前に姿を現さんと誓うよ」

 

「……確認だが、本当に三人同時なのか?」

 

「だからそうだと言っているであろう。それが何か──」

 

いや、それで間違いないのだとすれば、随分と楽な決勝戦だと思ってな。」

 

 ──黒神めだか、まさかの挑発である。交戦的な笑みをもって放たれたその言葉を受け、三人の言葉使い(スタイリスト)達は皆一様に笑った。

 

「……くくっ、楽かどうかはやってみれば分かるだろうよ。ところで、そちらから何か出したい条件はないのか?」

 

「ない。貴様のような奴に出す条件など、私は持ち合わせていない──ただし()()()。私は名前も知らん奴と、ゲームに興じるつもりはない

 

桃園家代表、桃園(ももぞの)喪々(もも)。」

 

杠家代表、(ゆずりは)かけがえ。」

 

寿家代表、寿(ことぶき)常套(じょうとう)。」

 

 三人の婚約者達はめだかの言葉を聞き終えるとほとんど同時に、来ていた宇宙服を脱ぎ捨ててそれぞれの私服姿になった。

 

そしてこれから(おこな)うゲームは、切り刻む言葉遊び──『消失しりとり(デリートテールトゥノーズ)

 

 桃園がそう宣言し、そして。

 

 第二回漆黒宴、決勝戦が始まる。

 

 






 ロケットが……。

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