TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 まだまだ()()やってます。




第84箱「ほっとしたよ」

 

 

 黒神めだかは、仲間に恥じる戦いはしない──つまりは「心配するな」という意味であるのだが、しかしそれはそれとして、相手方もそろそろめだかの離席にはうんざりしていたようだ。

 

「……しかし黒神めだか。立ったり座ったり、出たり入ったりが見ていて不愉快なのは確かである。座れ」

 

「……これは驚いたな。このゲームは敵に直接命令してもよかったのか?」

 

「命令? おいおい早とちりするな、吾輩は……()()()()()()()()と言いたかったのだ。(なれ)の第二の父親、鶴喰博士を殺した者が何者かを。

 

 桃園は凶悪な笑みを浮かべながら、めだかに着席をを促す。そんなことを言われてしまえば、流石のめだかといえど、着席せざるを得なかった。

 

 その様子を見た桃園は満足げに、威圧感のある笑みを浮かべ、漆黒宴の真実を語り始めた。

 

「えらく物分かりがよいではないか──まあいい、それでは語ってやる。まずは……鶴喰博士がなぜ(なれ)()()()()()()()()()()()()()()を足がかりとするか」

 

「そもそもことの始まりは、(なれ)の父である黒神(くろかみ)舵樹(かじき)の代からである」

 

(なれ)なら知っているであろ? かの男がどれほど無茶なことをしたのか……もっとも、知らなかったとしても『知らぬ』とは言わせぬが」

 

「贄波家・叶野家・潜木家・桃園家・寿家・杠家・鶴喰家──その全てと()()()()のだ、黒神舵樹は。

 

「まあ黒神の家系は愛が深いとも聞くからの。あの男の愛は一人の相手に注ぐには大きすぎるし、多すぎるだけだとも取れるがな」

 

「それはともかくとして、つまるところは()()が最も大切な所である。(なれ)の父親の博愛のせいで、二度と同じことが出来なくするため、まとまっていた七家はきっぱり七つに分かたれてしまったのだ」

 

「ちなみに(なれ)の兄である黒神真黒は潜木家の血を、姉である黒神くじらは吾輩と同じく桃園家の血を継いでおる」

 

「そして、黒神めだか。(なれ)の実母の名は……鶴喰(つるばみ)(はと)。鶴喰博士の()()()である

 

「──これで、分かったであろ? 博士が(なれ)のことを、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「当たり前だわな、叔父と姪では、夫婦(めおと)になることはできないのだから」

 

「鶴喰博士が(なれ)の叔父であるのだから、つまり鶴喰鴎は黒神めだかの従兄弟(いとこ)にあたるわけだ。ま、これもまた当たり前である」

 

「結局博士は(なれ)の中に、(なれ)を遺して逝ってしまった、実姉の面影を求めていたに過ぎないのよ」

 

「だから博士はその身を貫かれたのだ。他ならぬ、月下の手によってな」

 

「黒神家の栄華永続を目的とする月下の年寄り共にとって、まあ有り体に言ってしまえば、博士は邪魔で邪魔で仕方がなかったのだわ」

 

「なにせ、博士の(おこな)いは、それこそ月下の思惑とはまったく逆なわけであるからな、致し方ないとは思わぬか?」

 

「つまりな、博士を殺したのは、彼に敗北した他なる六家とかではなく、そのときの──初代の媒酌を務めた者なのだよ」

 

「……まあ、とは言ってもだな。愛する娘を、愛する姉を、()()()()()()で諦める鶴喰博士でもなかった」

 

「鶴喰博士は()()()()()、他の六家の許婚を始末することで、第二回の黒きパーティを()()()()のだ。」

 

「同じ轍を踏まないために、自らは立ち上がらず、()()()()許婚を仕立てての。これが意味するところ、(なれ)なら分かるであろ?」

 

「つまり、誰が勝ち、誰と結ばれたところで、黒神めだかを手に入れられる形を作ったのだ。それが吾輩達『言葉使い(スタイリスト)』だ

 

「──吾輩達は、博士から言葉(スタイル)を教わる代わりに、それぞれ矢面に立ち、名乗りを上げたのだ」

 

「吾輩達が()()()()()()()()()()ことが不思議ではなかったか? まあここまで語って、(なれ)が気付かぬはずもないがな」

 

「いわばそれは、実姉の血を継ぐ者に、他の男を近づけたくない、博士の『親心』だよ。もっとも、少し過激すぎるがの」

 

「……何やら物言いたげだな、負完全(マイナス)悪平等(ノットイコール)。まあ待て、今から(なれ)らが気にしていることにも答えてやる」

 

「博士は既に死しているのにも関わらず、吾輩が()()()()()()()()()()()()()()な口ぶりなのが気になるのであろ?」

 

「吾輩からすれば、どの口が述べるの極みだな──大体復活や不死身は(なれ)らだけの特技ではない」

 

「それよりも、もしや(なれ)ら、不思議には思わなかったのか? 何故言葉(スタイル)()()()()()()()()()()()()、とか」

 

「……思わなかったのか。ふむ、なるほど。それならば仕方ない、吾輩が直々に言葉(スタイル)について教えてやるわい」

 

「そもそも博士が()()した言葉(スタイル)とは、(なれ)らの持つスキルとは()()()()()()()な」

 

糠味噌(ぬかみそ)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 いきなり打ち切られた桃園の話に、呆けた声を上げたのは一体誰だったのか。今となっては分かるところではないが、しかし。

 

 どうやら、桃園に嵌められたらしいということだけは確かであった。

 

「……いや、しりとりだよしりとり。前の言葉が『雌犬(めすいぬ)』なのだから、次は『ぬ』から始まる言葉であろ?ゆえに、ぬ・か・み・そ! である!」

 

 意味不明なことを言い始めた桃園であったが、しかし鰐塚が持っているタブレットで現在時刻を確認すると、ようやくその言葉の意味を理解できた。

 

「なっ……ただいまの時刻、午後一時!? 黒神殿が『雌犬』と言ってから、既に()()()()()()()()()()だとおお!?」

 

「『午後一時』に答える──のは吾輩、であろ? タイムぴったりで答えねば失格になる取り決めだったかの確か。杠の、寿の、つまり(なれ)らは失格である

 

「なっ……!?」

 

 あまりにも理外の戦法。つまり桃園は、お喋りのペースを徐々に遅くして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 これならばルールには抵触しないし、当然場にいる全てのプレイヤーへの攻撃が可能である。もっともそれは、理論上の話だが。

 

「いや、しかし……ならば何故黒神殿を狙わなかったのです!? 今の話では、許婚はみな仲間であり! それに彼女達は手を組む約束をしていたのに!」

 

「仲間? 約束? おい、(なれ)ごときがなにゆえ、吾輩のプロジェクト名を知っておる? 言ったつもりは無かったのだが」

 

「っ……!」

 

 鰐塚が思わずといった様子で詰問するも、しかし当の桃園はといえばどこ吹く風、まったく悪びれる様子などもなければ、いっそ清々しいほどの開き直り様である。

 

「誤解するなよ、今話したのはあくまで()()()()()()。ゆえに吾輩には吾輩の思惑があるし、それは他の許婚どもも変わらぬことであるわ」

 

「……あのちびっ子、マジでヤバいね……こそこそしがちな僕といえど、あそこまで姑息な真似ができるかは分からねーな」

 

「いやいや、悪平等(ノットイコール)が何言ってるの。その気になれば、今だってこそこそできるでしょ」

 

「俺としちゃあ、(そそぎ)にこそそれを言ってやりてー所だけどな。斬るって決めれば今でもあの子供斬れるだろお前」

 

『ちょっとちょっと、あまり滅多なことは言わないでもらいたいね。言いがかりを付けたいなら僕を倒してからにしなさい』

 

 ……あまり緊張感は感じられないが、しかしこれでも警戒は怠っていないのだ。今いる場所は敵の本拠地なわけで、流石にここで気を抜くほど丸くなってはいなかった。

 

 無用な警戒であっても、するに越したことはない。

 

「……それに、(なれ)らは誤解しているがな、吾輩は別に黒神めだかを狙わなかったわけでもないのだ」

 

「…………」

 

「吾輩はな、あえて二人を失格に追い込むことによって、黒神めだかの無粋極まる()()もまた、粉々に砕いてやってくれたわ

 

「企み? はて、何を言っておるのか──」

 

「とぼけるなよ。(なれ)の目的が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であるなど、吾輩はとっくに見抜いておるよ

 

 めだかの言葉を遮り、桃園はそう話した。つまり彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()ことによって、めだかの策を粉砕したわけである。

 

「いかに長引いても、後一日足らずでゲームは終わる。捕まってしまった人質共の顔を立てる意味もあったに違いないが──生憎だったの、黒神めだか。これで(なれ)の負けだ!

 

「……ぐっ、ここまで早く、しかも的確に、それを見抜いてくれるとは……」

 

 桃園はそう勝ち誇り、口の端をにいっと上げて、凶悪な笑みを浮かべた。彼女の目には、目の前の黒神めだかが悔しがっているように見える──。

 

 ──桃園の名誉のため、先んじて言っておくが、桃園のこの読みはほとんど正解である。

 

 めだかは実際に半袖辺りが封印を自力で解く可能性も考えていたし、そういう意味では、策を見破ったというのもあながち間違ってはいないのだ。

 

 だからこの場合、桃園が読み違えたのは──。

 

 

 

 

ほっとしたよ。」

 

もしも見抜いてくれなかったら、

 それで私の負けだった!

 

 

 

 ──黒神めだかが、策を一つしか用意しないはずがないということだった。

 

 漆黒宴の終宴は、すぐそこである。

 

 






 特殊タグ、大変。

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