お待たせしました。
・書き溜めが苦手すぎる
・プロット書くとダメになる
・アドリブで書いた方が多分うまくいく
などの理由により、なんとイチから書き直しているため、毎日投稿できる確約はありませんが、やれるだけやってみようと思います。
何はともあれ、『不知火不知』編、スタートです。
第86箱「終えたと言うなら」
悪名高き漆黒宴は、無事にめだかくんの優勝で幕を閉じた。これによってめだかくんは晴れて自由の身になり、そしてまたぼく達の「いつも通り」が始まる──。
「というわけで、おはよう善吉くん! 怪我もすっかり治ったみたいでよかった! 体の調子はどう?」
「ちなみに私達は絶好調だよー。ほら、宗像くんと一緒に稽古とかもしたりしてるしね」
「おう、おはよう
一月もとっくに終わり、現在は二月半ば。めちゃくちゃに肌寒いので、ぼくと
隣には稽古仲間の宗像くんもいる。漆黒宴での経験を活かして、さらなる強敵の登場に備えてるってわけで、稽古を手伝ってもらったりしてるんだよね。
そのおかげでぼく達は無事にパワーアップを遂げた。命の危険があるのとないのとじゃあ、流石に得るものの量も変わってくるよねえ。
ちなみに生煮くんも一緒に稽古する時もあるんだけど、今日はお休みだ。鶴喰くんとご朱印集めしてるんだって。理由は色が赤いかららしい。
「赤い色は生肉の色。つまりは生煮。めでたいね、縁起がいいね」
……ということらしいよ。
いやそれ。
普通に意味分かんないから。
「ところで人吉くん。球磨川姉妹から聞いた話によれば、きみはあろうことか黒神さんにプロポーズしたそうじゃないか。そんなことして、大丈夫なのかい?」
「あー、結局その後──告白した後、俺が死んだり入院したりでちゃんと話せてないんですよねー」
「切腹なんてするから入院するはめになるんだよー。別に私は告白断られたくらいで凹むタマじゃないってのにさー」
「……
「あはっ! あはあはあはっ! 何のことやら! 殺すよ!?」
「殺さないでくれ。最近やっと生きるのが楽しくなってきたんだ」
やっっべ。しくった。しかも二重で。
やばい。顔あつい。てか、背筋が寒い。
「
「えっ? いや、ちょっもがっ」
「それじゃあぼくの防寒着はまた後で返してねええええぇぇぇぇっ!!」
置いていくけど許せよ
……マフラーで簀巻きにされちまった。デカすぎるんだよこのマフラー。
熱がこもってきてやや汗ばんできた球磨川
「……
「いやいや、別に気にしなくていいと思うよ。あの子って昔っから恥ずかしがりだからさー、すぐ逃げちゃうの」
宗像くん、なんか落ち込んじゃった? そんなに気にすることないと思うよ。割とあの子って突飛なことするから。
つーかクソ暑いな。私はそこまで寒いと思ってないから、防寒具はマフラーだけでちょうどいいのに。しょうがないから渡されたお汁粉飲むか。
「──うぅ、甘っ。アツアツな上に甘ったるいよ、砂糖をそのまま飲んでるみたい。善吉くん、これいらない?」
「いや、遠慮しとく……っと、噂をすればめだかちゃんじゃねーか、あれ?」
視界の先にはめだかちゃん。あんなに特徴的な人を、まさか私たちが見間違うはずもなかった。
「おや、どうやらそうらしいね。この際だし善吉くん、告白の件についてはっきりさせておいたらどうだい」
「ははっ、そうですね! おーい、めだかちゃーん!」
善吉くんは宗像くんに
「……気安く話しかけないで頂けますか、人吉くん。あと今日からは、私の半径10m以内に近寄らないでください。」
──冷たっ。しかも、苦っ。
「いやー、朝はごめんね
「いや、まあそれはいいんだけど……ちなみに
「滝行だよ。近くにいい滝があるんだあ」
寒がりのくせに変なことしてんじゃねえよ。風邪引いたらお兄ちゃんが心配するだろ。私もするけど。
そんなこんなでなんやかんやあって、今はもう放課後。特段変わったことがあるわけでもなく、今日もいつも通りに劇的に生きてる。
「それにしても……めだかくん、善吉くんに酷いこと言うねえ。流石に可哀想と言うか、もはやあんなの即死トラップじゃん」
「そうは言っても、めだかちゃんって昔からあんな感じでしょう。距離感が近付けば近付くほど遠ざかるって風に」
それはまた逆も然りで、遠ざかろうとすると引き止められる、ということでもある。というか私はもろにその例だ。
「うーん……ロマンチックではあるけど、なんというかクラシック──レトロチック──ともかく、古風だよねえ。風情はあるけど、いささか情に欠けていると、僕はそんな風に苦言を呈させてもらうよ」
「めだかちゃんは感性がかなり古風な子ってのを忘れてた善吉くんの落ち度ではあるけど、もう少し温情があってもいいのにね」
「ねー。というわけで──
「いいや無理だね絶対に何があっても断固拒否する何が何でも。」
……うん。そりゃそうだ。擁護のしようがない。
詳しく説明すると長くなる──恐らく二万文字は必要になるだろう──ので色々と省略すると、なぜか誰一人として不知火半袖のことを覚えていなかったのだ。
彼女の記憶が──箱庭学園で過ごした11ヶ月の思い出が、
一応私も色々な人に聞いて回ってみたけど、文字通りに、誰一人として、覚えていなかった。ただの一人も。
言い方から分かるとは思うが、犯人はうちのお兄ちゃんこと球磨川禊である。
ついでに言うと、
「……事情が事情とはいえ、ここまでひどいことしなくてもいいじゃん……」
「……あ〜〜〜〜、うん、まあ、少しやりすぎた、かな? そうだね、やりすぎたな。いやマジで、手加減し忘れた。いやほら、僕の辞書には『手加減』の文字列が存在していないから」
あーもうほら、仲が良いはずの二人が喧嘩(というにはあまりにも一方的だが)してると思ったせいで
流石に
……ほんと、この人(外)もつくづく変わったよなあ。これを平等主義者として捉えるのは、私には難しいぞ。
と、そんな風に考えていたところ、がららと音を立てて和室の入り口を開けながら、めだかちゃんが入室してきた。その表情はほんの少しだけ曇っているように見える。
「
私がこの質問に答えてもいいんだけど……やはりここは
「もちろん知ってるぜ。不知火半袖ちゃん! 僕もあの子には随分振り回されたものだよ」
「そうか、よかった……! さすがにそろそろ己が正気を疑い始めていたよ──それで、
「当然ぼく達も覚えてるよ。だからめだかちゃん、安心して大丈夫」
「まあ不安になるのも仕方ないとは思うよ。半袖ちゃんみたいな濃いキャラの子、忘れられるわけないもんねえ」
私達がそう言うと、めだかちゃんは大きく安堵の息を吐きながら和室に入室し、そして私の横に座った。
「いやしかし、一体どういうことなのだ? さながらかつての日之影先輩のように、だれも不知火のことを覚えていない……いや、覚えていないのではなく、まるで
「いいや。『知らなかった』でもないんだよ、めだかちゃん。『
「なっ……ということは、球磨川の仕業か!! 一体どういうつもりでこんなことをしでかしたのか分からんが、ことと次第によっては殴ってでも──」
めだかちゃんが歯軋りしながらバッと勢いよく立ち上がったので、私と
「はいじゃあ、こちらがその」
「殴ってでも理由を聞き出された」
「ぼく達のお兄ちゃんでーっす!!」
脇とかを持ちながらお兄ちゃんをめだかちゃんに見せつける。まあ私達は一発も攻撃してないんだけどさ。
めだかちゃんは……うん、見たことない驚き方してるね。随分と人間らしく、女の子らしくなってきた。
「実を言うと僕は不知火ちゃんには一本取られたままでね、その借りをまだ返してなかったんだ。だから困るんだよ、不知火ちゃんとの思い出を『なかったこと』にされたら」
まあお兄ちゃんには「
「そんなわけで球磨川くん、さっき僕に教えてくれた理由って奴をもう一度話してやれよ」
『……理由って言われたら、僕も困るんだけどね。大体めだかちゃん、きみは不知火ちゃんのことが嫌いだったはずだろう? だったらいなくなろうが別に良くない?』
結構意地悪な質問だけど、この程度で怯むめだかちゃんでもない。今までのお兄ちゃんよりも、随分甘い質問だからね。
「……確かに私は、不知火の不真面目でふざけた態度が大嫌いだったよ。だけどいなくなってほしいだなんて思ってなかったし、それに最近
『……そうかい。僕は頼まれただけだよ、自分が箱庭学園に残した記録と記憶を消してくれって、不知火ちゃん本人からね』
……お兄ちゃん達の説明を掻い摘んで説明すると、大体以下の通りだ。
半袖ちゃんは箱庭学園での
その
不知火一族──半纏くんから派生して誕生したその一族は、いわゆる影の黒神家だったということらしい。
黒き夜に浮かぶ
黒神と白縫。光ある所には影があるように、黒神と不知火の関係は概ねそんな感じだったらしい。
だからこそ、半袖ちゃんはめだかちゃんに出来ないことをしていた。影武者として、めだかちゃんを
──半袖ちゃんは、自分の仕事はもうおしまいだと言って学園を去っていったらしい。その際お兄ちゃんに、箱庭学園から不知火半袖の記録・記憶を「なかったこと」にしてもらったのだ。
めだかちゃんが、人の心を理解したから。ある種の「完全」となっためだかちゃんに影武者は必要ないと、父親である
……めだかちゃんが半袖ちゃんを好きになりかけたせいで、もう半袖ちゃんに会えなくなるなんてあんまりだよね。私だってもっと話したいことあったのに。
以上、要約終わり。
「……ところで球磨川くん。僕の中で不知火ちゃんが『なかったこと』になってないのは一京分の一のスキルで防御したからだが、めだかちゃんはどうして覚えているのかな?」
『あー、めだかちゃんは当事者だからさ。真黒ちゃんが
「それじゃあ、球磨川シスターズが不知火ちゃんを覚えているのはどういう理由で?」
『……僕は確かに「なかったこと」にしたはずだから、大方
「えっ、全然気が付かなかった……
「そうだよ〜。ま、こうなるのは
万が一ここで半袖ちゃんのことを忘れちゃってたら大惨事だ。そうなったら、私は私を一生恨んでたぞ。
「……それじゃあ、善吉はどうなんだ。不知火の大親友だった善吉なら──」
『
「いや、そこまでは手が回らなかった。だから何もできてない」
本当はやろうと思えば出来たし、今だって「
最悪の場合、全員死ぬから。
『ともかく、善吉ちゃんの中にも不知火ちゃんの記憶は残ってないはずだよ。つーかそもそも、箱庭学園にとっては初めからいなかった生徒ってことになってるからね』
「そんな! そんなの善吉になんて言えばいいんだ……! 私は不知火のことを知らない善吉の顔なんて見たくない──」
……めだかちゃんがそう言った瞬間、部屋の扉がガラっと音を立てて開かれた。入ってきたのは──何を隠そう、善吉くんその人であった。
まさに最悪の状況。めだかちゃんからすれば、今は一番避けたい相手。しかも一番避けたい状況。つくづく巡り合わせが悪い──。
と、そう思うかもしれないが、心配することなどない。だって、
半袖ちゃんのことを忘れるわけがねーだろ。
「うーむ、あと探してないのはここくらいなんだが、不知火の奴、一体どこに行ったんだ……?」
「ッ──善、吉……!!」
「ん……? ああ、めだかちゃんか──ってめだかちゃん!? これは違うんだ! 俺は愚痴を聞いてもらうために不知火を探していただけで決してお前の半径10m以内に近づこうとしていたわけじゃ……」
なんて、そんな風に善吉くんがわたわたと言い訳をしようとしたところに、めだかちゃんはがばっと飛び込んだ。
「うおっ……えっと、めだかちゃん……?」
「……善吉、よかった……
「俺の中に、って……どうしたんだよ本当に……」
ついさっきまであんなにツンツンしていたというのに、涙を流しながら飛び込んでくるものだから、さしもの善吉くんもたじたじらしい。私も同じ状況に陥ったらそうなるよ。
私がそうやって勝手に共感していたところで、
「……めだかちゃん、それに善吉くん。僕はこれから不知火ちゃんに会いに行くつもりなんだが、何ならきみ達もいっしょにどうだい?」
「えっ!? 会いに行くって……」
「だからあの子には
えっ? そうなの? 全然そんな話聞いてないんだけど。
「ちょいちょい、
「おいおい何寝言ほざいてるんだよ
「いや、最初っからそう言ってくれれば行ってたよ。でも、どうして私を?」
「いや、道中の会話相手としてだけど。きみと話しているといちいちオーバーで見ていて飽きないからねえ」
なんだよこいつ。私のことを便利で都合がいい道具だと思ってるんじゃないだろうな。しかも「見ていて飽きない」って、そんなこと言われても嬉しくないっつーの。
「んふ、んふふ……なんだよもー、頼られてうれしいとか思ってないぞー。怒りのあまりに顔が熱くなってきちゃった。あー、やばあつすぎ」
「わっはっは、この子のこういう所が面白いんだよな。いちいち大袈裟っつーか、オーバーリアクション気味っつーか。きみ達もそう思わないかい?」
「いや、まあ多少の同意は返すとしても、なんつーか……随分久々に
『というか
「えっ!?
「いやいや、今度遊びに行こうぜっつー話をしてただけだから安心しなさい(
なーんだ、そうなの。それなら安心だね。またカラオケかなあ? んふふ、楽しみ!
「というわけで、まあ幸い不知火ちゃんの行き先にアテは付いてる。さて、どうする?
「もちろん行く。」
……ふぅ。
さて、一通り笑ったし。
「だけど
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