この素晴らしいカズマに祝福を!   作:名もなき駅員

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カズマ思ったより優しくなくねって思っていたらすみません。なにぶん初心者なもので…


この素晴らしい1巻に祝福を!
この素晴らしい女神に祝福を!


「佐藤和真さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。あなたの生は終わってしまったのです」

 

真っ白な部屋の中、俺は唐突にそんな事を告げられた。ここは、どこだ?

突然すぎて何がなんだか分からない。

だが、部屋の中にある小さな事務机と椅子に座っている相手が俺の人生の終了を告げている、そんな状況だった。

 

いきなり現れたその女性は、美しくありつつも儚げで、人間離れした美貌を持つ女性だった。

髪と目は透き通ったような水色で統一されており、その身に纏う羽衣もどこか神々しげだ。

 

俺は、死んだ、のか?

 

ーー

 

学校に通いながら趣味のボランティア活動に勤しんでいる俺。今日も日課のゴミ拾いをしてから帰ろうとしている時に、それは起きた。

携帯を弄りながら前を歩いていた女の子。

学生服からして、俺と同じ学校だろうか。

信号も確認せずに歩きだしたその子は、左右確認もせずに横断歩道を渡っていく。

俺はふと右を見る。

 

大型トラックが見えた。

俺は、頭で考えるより先に体が動いていた。

 

それで恐らく、そのまま…

 

ーー

 

「…一つだけ聞いても?」

 

俺の質問に、目の前の少女は頷く。

 

「どうぞ?」

 

「あの高校生は…俺が突き飛ばしたあの女の子は、生きてますか?」

 

不安を抱きながら、俺は答えを待つ。

 

「生きてますよ? もっとも、足を骨折する大怪我を負いましたが」

 

良かった…

最後に少しはいい事ができたみたいだ。

 

「まあ、あなたが突き飛ばさなければ、あの子はそんな怪我もしなかったんですけどね」

 

「…………え?」

 

この子、今なんて言った?

 

「あのトラックは、少女に当たる事はなかったんです。あんなスピード出してれば当然横転しますから。要するに、あなたは最後の最後で余計な事をしたって事です。プークスクス!」

 

俺は膝から崩れ落ちた。

俺があの女の子を傷つけたという事実が、俺の上にのし掛かって這い出ることが出来ない。

 

「さて、私のストレス発散はこれくらいにして。初めまして佐藤和真さん。私の名はアクア。日本において、若くして死んだ人間を導く女神です。…面白い理由で死んだあなたには今、二つの選択肢があります」

 

今までボランティア活動をしている俺は散々馬鹿にされてきたけど、これはそのどれよりも辛い罵倒だった。

 

「一つは人間として生まれ変わり、新たな人生を歩むか。そしてもう一つは、天国的な場所でお爺ちゃんみたいな暮らしをするか」

 

なにその身も蓋もない選択肢。

 

「いや、天国的な場所って? てかそもそも、お爺ちゃんみたいな暮らしって何?」

 

「天国ってね、思ったより暇なのよ。死んだら三大欲求が全部いらなくなっちゃうから、何もしたくなくなる。物も何もないし作ろうにも材料すらないし…先人たちと永遠に、意味もなく日向ぼっこしながらお話しするくらいしかやる事がないのよねー」

 

えぇ…無間地獄の間違いなんじゃないか?

 

「かと言って生まれ変わりの方を選んでしまうと、記憶を失ってしまうからあなた自体が消えてしまうようなものなのよ」

 

記憶を失う、か…

そんな残念そうにしている俺を見て、女神様は満面の笑みを浮かべた。

 

「うんうん、天国なんて退屈な所行きたくないわよね? と言っても、今更記憶を失って人生をやり直すのもなんだかやるせないじゃない。そこで、ちょっといい話があるのよ!」

 

女神様が嬉々として語り始める。

 

「あなた…ゲームは好きかしら?」

 

女神様が、得意気に説明を始める。

その説明を要約すると、こうだった。

 

ここではない世界、異世界に魔王がいる。

そして、魔王軍の侵攻のせいでその世界がピンチらしい。その世界には、魔法やモンスターが存在する。言うなれば、有名RPGのようなまさにファンタジー全開な世界なんだそう。

 

「その世界で死んだ人って、まあほら魔王軍に殺された訳じゃない? だから、またあんな死に方するのはヤダって怖がっちゃって。ハッキリ言って世界の大きさに対して魂が足りないのよ。で、それなら他の世界で死んじゃった人達を、そこに送り込んでしまうのはどうか? って事になってね?」

 

何ともえげつない移民政策だなぁ…しかし、世界が違うということは当然文化も違うはずだ。

 

「向こうの世界の言葉って通じるんですか?」

 

「その辺は問題ないわ。私たち神々の親切サポートによって、異世界に行く際にあなたの脳に負荷をかけて一瞬で習得できるようにしてるの。もちろん文字も読めるようになるわよ。ただ、運が悪いと頭がパーになるけど。…だから、後は能力を選ぶだけよ」

 

「今とんでもない単語が見えたんですが、運が悪いとパーになるって言いました?」

 

「言ってない」

 

「そうですか」

 

気のせいかな?

にしては耳にハッキリ届いたな…

 

「能力に関してはカタログを見てね。たった一つだけ。あなたに、何者にも負けない力を授けてあげましょう」

 

「は、はあ…」

 

俺はカタログを1ページ目からじっくり読んでいく。ここはやはり慎重に行かないと後々後悔するに違いないだろう。

しかし、数分経った頃、女神様が口を開いた。

 

「あーもう、じれったいわね。優柔不断な人はモテないわよ? いいからさっさと特典選んで転生しちゃってよー」

 

ふと、女神様のいる方向を見ると、女神様はどこからかポテチを取り出したかと思うと開封し、手でつまんでポリポリと食べていた。

 

「そ、そんな事言われましても…」

 

「私も暇じゃないんだから、つきあってられないわ。ていうか、死者を天国にいつまでも放って置くと色々まずいのよ?」

 

「そうなんですか!? えっと、それならもう何も持ってかなくていいですから早く追い出しちゃって下さい!」

 

「えっ…あ、あんたはそれでいいの?」

 

俺は頷いた。驚く女神様。だが、やがて大きな魔法陣が展開される。

 

「特典なしで転生させるなんて前代未聞だけど…まあ、本人の希望だし、私も仕事がラクになるからwin-winね。…佐藤和真さん。あなたをこれから、異世界へと送ります」

 

女神様は俺に声をかける。先程までの苛立った声ではなく、とても優しい声だ。

 

「魔王討伐のための勇者候補として、魔王を倒した暁には、神々からの贈り物を授けましょう」

 

「お、贈り物…?」

 

「そう。世界を救った偉業に見合った贈り物。…たとえどんな願いでも、たった一つだけ叶えて差し上げます」

 

そんなものは必要ない。

俺はこの素晴らしい世界でもう一度だけ、好きに生きたいだけなのだから。

 

「さあ、勇者よ! 願わくば、数多の勇者候補の中から、あなたが魔王を打ち倒すことを祈っています」

 

俺は、その言葉を聞くなり天界から消えていった。




ちなみにここでアクアがチートを適当にあげたとかもなくただただそのままの状態で転生させてます。
マジでチートなしでの転生です。
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