この素晴らしいカズマに祝福を!   作:名もなき駅員

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更新が夜になってしまった…
待って下さった方(多分いないと思うけど)すみません…


この素晴らしい湖に祝福を!

「な、何でカズマが謝ってんだ?」

 

「そりゃあれだろ。爆裂魔法っていやぁ…」

 

「ああ、成る程…」

 

冒険者達の目が、困惑から同情に切り替わった。その視線の先にいるのは腰を90度曲げて謝る俺の前で未だ呆然としている、めぐみんだ。

 

「な、何がどうなってるんですか…? ねえ、説明してくださいよカズマ」

 

「えっと…あの廃城、アンデッドがいたって前に言ったじゃん? 多分アレがあのデュラハンさんの根城だったんじゃないかなって…」

 

「あっ…」

 

めぐみんが全てを悟ったような目になった。

俺はめぐみんと一緒にそのデュラハンさんの近くに向かって歩き出し、十メートルくらい離れた所で立ち止まる。アクアとダクネスも後ろについてきている。

 

「お前が…! お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法をぶち込んでくる大馬鹿者か! 俺が魔王軍幹部と知っていて喧嘩を売っているのなら、堂々と城に攻めてこい! その気がないなら街で震えていろ! だってのに何でこんな陰湿な嫌がらせするんだ!? この街って駆け出しでしょ? 一日一回必ずボンボン撃ち込めるような魔力とか無いだろ? 俺なんか間違ってる? ねぇ!?」

 

連日の爆裂魔法が余程苦痛だったのか、まるで口から勝手に言葉が出ていっているようにスラスラと罵倒を重ねていっている。

 

「すみません…あの城は扉を開けた時にアンデッドしかいなかったもので、てっきり悪霊が住み着いている古城なのかと…」

 

「いや、だからって爆裂魔法で一掃するか普通? 浄化魔法とかあるだろうが」

 

「ごもっとも…」

 

「ま、まあそんなには気に病まなくていいんだが、限度ってもんを覚えてくれよ…」

 

俺が打ちのめされていると、デュラハンの人は可哀想だと思ったのかフォローを入れてくれた。

 

「悪気はなかったようだし、こちらからこれ以上とやかく言うつもりはない。ただし、これから爆裂魔法は使うな。いいな?」

 

「それは私に死ねと言っているも同然なのですが。私は日に一度、爆裂魔法を撃たないと死んでしまうんです」

 

「お、おい! 何を訳の分からない事を言ってるんだ、適当な嘘を付くな!  というか、いきなり出てきて何だお前は!?」

 

めぐみんは若干怯えつつも肩のマントをバサッとひるがえした。

 

「我が名はめぐみん! この街随一のアークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!」

 

「…めぐみんって何だ。バカにしてんのか?」

 

「ちっ、違わい!」

 

「彼女、めぐみんは紅魔族のエリートで、爆裂魔法の使い手です」

 

「そう、今回の実行犯は我…爆裂魔法を放ち続けていたのは、魔王軍幹部のあなたを誘き出す作戦…こうしてノコノコ出向いてきたのが運の尽きです!」

 

めぐみんが勝ち誇ったような顔でそう宣言する。ただ欲求を満たすために通っていた散歩でここまで発破をかけるとは誰が想像しただろうか。

 

「ほう…紅魔の者だったか、なるほど。つまりそのイカレた名前も、別に俺をバカにしている訳ではなかったのだな」

 

「おい、両親から貰った私の名前に言いたい事があるなら聞こうじゃないか」

 

デュラハンさんはめぐみんの反論を無視して話を続ける。めぐみんは怒っているが、どこ吹く風と言わんばかりに聞き流している。

 

「フン、俺は魔に身を落とした者ではあるが、これでも元は騎士の端くれだ。誠心誠意謝ったそこのパーティーリーダーに免じて、先程の会話は聞かなかった事にしてやろう。だが、それでも俺の城の近辺で迷惑行為をやめないというのなら、こちらにも考えがあるぞ?」

 

「ふんっ、何を言うかと思えば。むしろ迷惑してるのは私達の方ですよ! あなたがあの城に居座っているせいで、仕事もロクにできないんです! 余裕ぶってられるのも今の内ですよ。こっちには対アンデッドのスペシャリストがいるんですから! アクア、お願いしますよ!」

 

成る程? ウィズさんですら怯えるような神聖な魔力の持ち主であるアクアならば、デュラハンさんにも対抗できるかもしれないのかな?

 

「…しょうがないわね~! 魔王の幹部でも何でも浄化してあげるわよ! この私がいる時に、しかも力が弱まる真っ昼間に来るなんてタイミングが悪かったわね。覚悟しなさい!」

 

そう言い放ったアクアに、デュラハンさんは首を近づけてマジマジと見る。

 

「ほう、アークプリーストとは。これでも俺は魔王軍幹部だ。もちろんアークプリースト対策なんかも万全な訳だが…ここは一つ、紅魔の娘を苦しませてやるとするか!」

 

デュラハンさんは、アクアの詠唱よりも速く左手を突きだし、人差し指でめぐみんを捕らえた。

 

「汝に死の宣告を! お前は一週間後に死ぬだろう!」

 

俺はデュラハンさんの呪いにかかりそうになっためぐみんの前に立ち塞がり、横から介入しかけたダクネスを突き飛ばした。

 

「「「カズマ!!」」」

 

三人が叫ぶ中、俺の体が黒く染まる。と思ったらすぐにそれは霧のように体から抜けていった。

俺は視線をすぐにダクネスへと切り替え、側へと駆け寄る。

 

「ダクネス、大丈夫か!? 痛い所とか無いか? ごめんな、突き飛ばしちまって…」

 

「そんな事を言っている場合か! カズマ、何ともないのか!?」

 

ダクネスが俺の肩をしっかりと掴んで、まるで責めるようにまくし立てた。

 

「俺は大丈夫だって」

 

「でも、一週間後に死ぬって!」

 

めぐみんも涙目で俺に向かって叫んだ。

 

「若干予定が狂ったが、まあいい。むしろ、仲間同士の結束が堅い貴様ら冒険者にはこちらの方が堪えそうだな。…良いか、紅魔の娘よ。その呪いは今は何ともない。が、このままでは一週間後にその冒険者は死ぬ。お前の大切な仲間はこれより一週間、死の恐怖に怯え苦しむ事になるのだ! クハハハッ、素直に俺の言う事を聞いていれば良かったものを!」

 

そのデュラハンさんの言葉にめぐみんは青ざめ、ダクネスは絶句している。

 

「これに懲りたら俺の城に爆裂魔法を撃つのは止めろ! そして紅魔の娘よ。その冒険者を助けてやりたくば、俺の城の最上階まで来るがいい。城に無数に存在する俺の配下達を倒し見事俺の元まで来れたなら、その冒険者の呪いは解いてやる。だが、駆け出し冒険者風情のお前達に果たして俺の城が攻略できるかな? ククク、ハハハハハハ…!」

 

ーー

 

あまりと言えばあんまりな展開に、集められた冒険者達は皆呆然としていた。

俺の隣ではめぐみんが顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら杖を握りしめ、ダクネスも大剣を構えて街の外へ出ていこうとする。

 

「ちょ、ちょっと…どこに行くんだ…?」

 

俺がダクネスの鎧を掴んでそう言うと、ダクネスはこちらを振り向かずに言った。

 

「決まってるだろう、デュラハンを討伐する」

 

その言葉に、めぐみんもマントを翻しながら、杖を握りなおして口を開く。

 

「…私も、あのデュラハンに直接爆裂魔法をぶち込んで、カズマの呪いを解かせます…」

 

二人とも…

 

「じゃあ、俺も行くよ。俺だって爆裂散歩をしてたから、同罪だし。それに、メンバーの短所を補うのがリーダーの仕事だからな」

 

俺の言葉にめぐみんが悲しげな表情をする。

 

「カズマは被害者なんですから、気にしなくてもいいんです。それにねカズマ、私は今怒っているんですよ…お荷物の私を初めて認めてくれて、爆裂魔法を褒めてくれて、コロナタイトを盗んでも笑顔で許してくれる…そんな優しいカズマが私なんかを庇って死ぬなんて、そんな馬鹿な事あり得ません!」

 

「め、めぐみ…」

 

俺が言い終える前に、めぐみんは俺に向かって抱きついてきた。

 

「ぐすっ…カズマ…死んじゃ嫌です…ひぐっ…」

 

…。

俺は何も言わずにめぐみんの体に手を回し、ギュッと優しく抱きしめた。

と、その時、後ろからアクアの声が聞こえた。

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

アクアが放った言葉によって、俺の中の気持ち悪い何かが外に出たような感覚が迫り来る。

 

「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ! どう、どう? 私だって、たまにはプリーストっぽいでしょ? だから私の事も抱き締めて褒めなさいよ!」

 

「「…えっ」」

 

私達のやる気を返せ。

そんな声が聞こえた気がした。

 

ーー

 

魔王の幹部が襲撃した後、アクアは冒険者ギルドで考え込んでいた。

それはカズマや他のパーティーメンバーからの自分の評価の事についてである。

めぐみんがアタッカー、ダクネスがタンクという役回りがあるように、アクアにもヒーラーと言う役職がある。しかし、毎回我先にと特攻している冒険者が果たして回復役と言えるだろうか。いいや、断じて否である。

そこで、アクアは周りを見直させ、やればできる子だと(主にカズマに)褒めて貰うために、自分でもできそうなクエストを探していた。

 

「うーん…あっ、これとかどうかしら?」

 

そこに書かれていたのは、『湖の浄化』と書かれた一つのチラシだった。

 

ーー

 

「カズマさんカズマさん!」

 

「はいはい、カズマです」

 

とんでもないほど無邪気な笑顔で俺の元へ走ってくるアクア。その手には一枚の紙が握られている。

 

「このクエストやりましょ! というかもう受注したから、付き合ってよ!」

 

「湖の浄化? ふんふん…成る程。いいけど、アクアは湖の浄化もできるのか?」

 

俺の疑問に、アクアは鼻で笑う事を解答とした。

 

「あのね、私は水の女神なのよ? というか、名前とか髪の色とかで分かると思うんですけど」

 

「うっ、それは……ごめん…」

 

アクアのツッコミに俺はしょぼくれる。

 

「いや別に謝らなくてもいいけど。でね、この湖にはブルータルアリゲーターが出現するらしいの。だからそれまで守って欲しいな…って」

 

「なるほど、分かった。じゃあめぐみんとダクネスにしっかり伝えておかないとな」

 

「うん!」

 

 

という訳でめぐみんとダクネスの前にいるのだが、めぐみんはあまり乗り気ではない様子だ。

 

「半日かかるって流石に長すぎですよ!」

 

「じょ、浄化魔法をかければ多少はスピードも速くなるから! ね? お願いよぉ!」

 

必死なアクアにめぐみんは困り果てている。

 

「でも…いや、待ってください。一つだけ思いついた案があります。それでやるなら協力しますよ」

 

「分かったわ!」

 

ーー

 

「ふっふっふ…今すぐこの湖を綺麗にしてあげるわよ! 『ピュリフィケーション』! 『ピュリフィケーション』!」

 

俺の眼中には、檻の中に入り、檻越しに水に浸っているアクアの姿があった。

 

「め、めぐみん…アクアは大丈夫なのか…?」

 

「何回聞くつもりですか…大丈夫ですって」

 

水の女神であるアクアは水に浸かっているどころか一日中海底に沈められても呼吸に困らず、不快感すら感じないそうだ。

そのためこんな作戦になったそう。

 

後はこのまま遠い所で待つだけ…なのだが、俺はやっぱり心配なのでアクアの近くにいることにした。

 

ーー

 

それから約二時間。

未だにモンスターの音沙汰はない。

水に浸かりっぱなしのアクアに声をかける。

 

「浄化の具合は順調そうだな。水の中だと冷えるだろうから俺のマント貸すよ。それとホットチョコも作っといたから、よかったら飲んでくれ」

 

そう言って俺は檻の隙間からアクアにマントとマグカップを渡す。それを受け取ったアクアはホットチョコを飲み、一息ついて。

 

「ありがとね。にしても、カズマって底抜けに優しいわよね。まあ、私はそういう所が好きなんだけ…」

 

「はい、そこまで! ブルータルアリゲーターが来ていないか様子を見に来ましたが、この分だと何事もなく終わりそうですね」

 

めぐみんがフラグじみた言葉を発した。

その言葉を皮切りに湖に小波が走る。サイズは普通のワニとそう変わらないであろうそれは、牙はより鋭く、性格はより獰猛に進化していた。

 

「か、カズマー! 何か来た! ねぇ、何かいっぱい来たぁー!」

 

この世界で初めて見るワニは、集団だった。

 

「群れで行動するのか!? めぐみん、ダクネスを呼んできてくれ! アクアは浄化に集中してくれ、ワニ達は俺達が狩るから!」

 

「は、はい!」

 

「わ、分かったわ」

 

めぐみんに素早く指示を出し、俺自身は剣を使ってブルータルアリゲーターをしとめていく。

 

「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』ッ! わあぁーッ! ミシって、檻がミシミシって言ってるんですけどーっ!」

 

檻の中でアクアは喚いているが、作業の手はやめていない。まだ終わらせたくない、そういう気持ちなのだろう。

 

「アクア、ギブアップなら早く言ってくれよ!? 檻ごと引っ張り上げて草原まで持って行くから!」

 

「嫌ッ! 絶対嫌よ! ここでちゃんと役に立って、私もパーティーの一員として認めてもらうんだもん! …わぁぁっ! 今、檻がメキって言った! 立てちゃいけない音立てたぁ!」

 

泣き叫んでいるアクアの方に群がっているブルータルアリゲーターはこちらを見向きもしない。俺も頑張ってブルータルアリゲーターの数を減らしてはいるが、如何せん数が多すぎる。

 

「…あの檻の中、ちょっと楽しそうだな…」

 

「…行っちゃダメだぞ?」

 

そして浄化開始から七時間後。

 

湖の際には、少しボロっとした檻がぽつんと取り残されていた。ところどころにワニのような鋭い歯形の跡が残っている。

 

「アクア、大丈夫…じゃないよな。でも、取り敢えず一旦帰ろう?」

 

俺は檻の隅っこで泣きじゃくっているアクアにそう話しかけた。だが反応は。

 

「ぐすっ…ひぐっ…えっく…」

 

「皆で話し合ったんだけど、今回の報酬は全部アクアのでいいからさ」

 

そう言うと、アクアは首をふるふると振り。

 

「今回のクエスト報酬は…カズマにあげるつもりだったの。私、いままでカズマに色々お世話になったし、お金も借りちゃってたし…」

 

「…そうだったのか」

 

俺はアクアのいる檻の中に入っていき、アクアの頭をそっと撫でた。アクアははっと顔を上げて、俺の顔をのぞき込む。

 

「ありがとう、頑張ったな」

 

アクアの透き通った水色の瞳は、俺のその言葉に呼応するように輝き、そして涙を溜めていった。

 

「カズマぁぁ!」

 

俺はしばらくアクアと一緒に檻の中にいる事にし、めぐみんとダクネスに頼んで馬をひいて貰って帰宅を開始した。




カズマさん聖母かな?
って自分で書いてて思いました。
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