この素晴らしいカズマに祝福を!   作:名もなき駅員

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まあ、湖の浄化クエストって言ったらやっぱコイツの出番だよなぁ?


この素晴らしい魔剣の勇者に祝福を!

「め、女神様っ!? 女神様じゃないですかっ! 何をしているのですか、そんな所で!」

 

俺達が町中を檻と共に移動している最中。どこからかそんな声が聞こえたと思えば、その男の人はブルータルアリゲーターの攻撃ですら防いで見せた檻を簡単にねじ曲げ、中に入ってきた。

唖然としている俺とアクアを尻目に、その見知らぬ男性は俺の腕を掴み…

 

「えっ?」

 

「さてはこいつがアクア様をさらったんですね!? この無礼者が!」

 

「うわっ!?」

 

俺を檻と反対方向に投げ飛ばした。俺は民家の壁に突っ込んでその壁を瓦解させてしまう。

 

「なっ…! 貴様、私の仲間をよくも…! 何者だ、知り合いにしても不躾がすぎるぞ!」

 

ダクネスは俺への暴力に対して怒っていた。アリゲーターに群がられるアクアを羨ましそうに見ていたあの時とは全く違う目つきで、その男性の事を睨んでいた。

男はダクネスを一瞥し、溜息を吐いた。だが、そこにアクアからの追撃が入る。

 

「そうよ! 誰か知らないけど、いきなり出てきてカズマを投げるとはどういう了見よ!」

 

その言葉に明らかにショックを受ける男性。確かにアクアの事を知っているような口振りだったし、関係者か転生者の可能性がありそう。

 

「何言ってるんですかアクア様! 僕です、御剣響夜ですよ! あなたに魔剣グラムを頂いた!!」

 

御剣…グラム…?

どこかで聞いたような気が…あっ!

 

「御剣響夜って確か、魔剣の勇者って異名で有名な冒険者の名前だ!」

 

「…よく覚えてるわね。実際に送ってた私ですら覚えてなかったのに…」

 

アクアの言葉に若干顔をひきつらせながらも、ミツルギさんはアクアに笑いかけた。

 

「お久しぶりですアクア様。あなたに選ばれた者として、日々頑張っています。…ところで、アクア様は何故ここに?」

 

ミツルギさんは俺の事を睨みつけながら言ってくる。俺何か気に障るような事しちゃったのかな…俺はミツルギさんになるべく分かりやすいようにアクアと同行している経緯や今までの出来事を説明し…

 

「…バカな。有り得ない! 君は何を考えているんだ!? アクア様を救おうとする心意気は買うが、今回のクエストで檻に入れて湖に漬けるなど!」

 

俺はいきり立ったミツルギさんに胸倉を掴まれていた。それをアクアが慌てて止める。

 

「ちょちょ、ちょっと!? 別に私としては楽しい毎日送ってるし、カズマには感謝しきってもしきれないのよ! 魔王討伐で叶えられる願いを私のために使ってくれるんだし! それに今回のクエストだって私が選んだんだし、誰も怪我せず無事成功したんだし。クエスト報酬も三十万よ! それを全部くれるって言ってたの! 優しいでしょ!?」

 

その言葉に、ミツルギさんは憐憫の眼差しでアクアを見る。

 

「アクア様、こんな男にどう丸め込まれたのかは知りませんが、今のあなたの扱いは不当です。そんな目に遭ってたった三十万ですって? あなたのような女神がこんな…せめて宿はしっかりしているんでしょうね?」

 

ミツルギさんの青筋が増えていく。

 

「えっと、皆と一緒に馬小屋で寝泊まりを…」

 

「は?」

 

俺の胸ぐらを掴む手に力が入る。俺の喉が絞まり、肺への酸素の供給が止まる。要するに窒息である。

 

「おい、いい加減その手を離せっ! カズマが今にも息絶えそうなのに気づいていないのか!?」

 

ダクネスが必死にミツルギさんから俺を離そうとする。見れば、めぐみんも爆裂魔法の詠唱を始め…って、それはダメ!?

ミツルギさんは俺の服から手を離すと、興味深そうに二人を見る。

 

「…クルセイダーにアークウィザード? それに、随分と綺麗な人達だな。君は、運だけはいいみたいだね。それなら尚更だ。君はアクア様やこんな優秀そうな人達を馬小屋で寝泊まりさせて、恥ずかしいとは思わないのかい?」

 

「もう宿屋に泊まれるお金はあるんだけど…」

 

アクアとめぐみんの二人がどうしても俺と寝たいって言ってるから、三人以上で寝れる所はもう馬小屋しかなくて…と俺が言う前にミツルギさんは、

 

「はぁ!? 君はお金に余裕があるのにこの子達に分け与えることもしないのかい!?」

 

事実だから何一つ言い返す事ができない。皆が俺の事を心配そうな顔で見ている。

 

「君達、今まで苦労したみたいだね。これからは、僕と一緒に来るといいよ。もちろん馬小屋なんかでは寝かせないし、高級な装備品も買い揃えてあげよう。と言うか、僕のパーティー的にもバランスがとれていていいじゃないか。ソードマスターの僕に、僕の仲間の戦士と…」

 

俺はミツルギさんの話を最後まで聞かずにアクア達に背を向け、帰ろうとした。きっと皆も乗り気なはずだ。俺なんてさっさと捨てて、ミツルギさんのパーティーに入りたいに決まってる。

すると突然、めぐみんが思い切り俺の腕をひっ掴んで引き留めた。

 

「どこに行くんですかカズマ」

 

「…」

 

俺はこのパーティーには不適格だ。俺は優秀な職業である皆の強みを引き出す事もできないのに、一丁前にリーダーとしてふんぞり返っている。

 

「カズマ、頼れる仲間を持てと言ったのはカズマですよ? 私だって、頼れる仲間かどうかくらい分かります」

 

「…どういう、ことだ?」

 

「私に言わせれば、あのミツルギとかいうソードマスターはカズマ以下という事ですよ」

 

驚く俺に、めぐみんは立て続けに。

 

「見てください。アクア達だってそうです」

 

俺がアクアとダクネスの方を見ると、何やらひそひそと話をしている。聞き耳を立ててみると…

 

「ちょっとヤバ過ぎなんですけど。ロクにうちのパーティーの事も知らないのに勝手に話進めるしナルシスト気味だしで怖いんですけど」

 

「どうしよう、あの男だけは生理的に受け付けない。攻めるより受けるのが好きな私だが、あいつだけは無性に殴りたいのだが」

 

…ものの見事に大不評だった。ミツルギさんの何が気に入らなかったんだろうか。

 

「さ、ギルドに帰りましょう。あの人には金輪際関わらない方が身のためです」

 

正直皆の不満の意味が分からないが、ここはめぐみんの言う通りに帰った方がいいのかな…

 

「えっと…申し訳ないですけど、俺の仲間はそちらのパーティーには行きたくないみたいです。俺達はクエストの完了報告があるので、そろそろ…」

 

俺はそう言うとダクネスに代わって馬に乗り、手綱を取ってギルドに向かおうとした。

 

………。

 

「あの…そこにいると危ないので…」

 

俺の前にミツルギさんが立ち塞がっている。

 

「悪いが、僕は魔剣という力を授けてくれたアクア様をこんな境遇に放っておく事はできない。君のような利益を優先する人にはこの世界は救えない。アクア様は僕と来た方がいい。…君、僕と賭けをしないか?」

 

「賭け…ですか?」

 

「ああ。僕が勝ったらアクア様は貰うよ。君が勝ったら、何でも一つだけ言う事を聞こう」

 

その言葉に、俺一同は沈黙する。

 

「魔剣を持ってて高レベルのソードマスターが駆け出しの冒険者に勝負を挑むのか?」

 

「いくら何でも横暴なのでは?」

 

と反論する二人を俺は手で制した。

 

「…分かりました、受けますよ」

 

「「「カズマ!」」」

 

ここ数ヶ月で過ごしたアクアとの時間は大切だったし、かけがえのないものだった。そんな俺にとって命よりも大事なアクアを取られるなんて絶対に嫌だ。でも、このままこの人に敵視され続けるのも嫌なんだ。

だったらもう、真剣勝負しかないじゃないか。

それに、俺は昔から人に頼み事をされると断れない性格なのだ。例えそれが、決闘の申し込みだとしても…

 

俺達はギルドの裏の広場に集まっていた。ただし、クリスに教えて貰っていたときのような人気の無さは全くなく、寧ろ冒険者によるギャラリーが大勢いた。

 

「それでは…はじめっ!」

 

ギルドのお姉さんの合図によって、俺とミツルギさんは動き出す。

 

「はぁぁっ!」

 

「ぐぅっ!?」

 

俺がミツルギさんの攻撃を短剣で受け止めたところ、俺の短剣は真ん中からポッキリと両断された。魔剣グラムの威力高過ぎ!?

 

「『クリエイト・アース』!」

 

「なっ!?」

 

俺が呼び出した土の塊によってミツルギさんが続けざまに放った連撃は俺に届かず、そのまま岩を両断するのみにとどまる。

 

「『サイクロンブレス』!」

 

俺が魔法を発動させると俺に手のひらから爆風が飛び出し、突進攻撃を仕掛けたミツルギさんの足を阻みはじめる。

 

「くっ…! こんな程度では…っ」

 

「ごめんなさいっ! 『スティール』ッ!」

 

俺は『サイクロンブレス』を発動したまま左手で折れた短剣をしまい、そのまま手ぶらになった左手をつきだしてそう唱えた。

俺の左手に確かな重みが伝わる。よかった、どうやら上手くいったみたいだ。

 

「僕の魔剣が…!」

 

「ふんっ!」

 

驚くミツルギさんの隙をついて魔剣を振り下ろすが、ミツルギさんは必死ながらも避ける。

 

「そこだぁーッ! 『ティンダー』ッッ!!」

 

ミツルギさんの周囲で大爆発が起こる。俺の周りも誘発し、俺自身も大ダメージを負った。

が、俺は何とか立つもミツルギさんはそのまま気絶してしまったため勝者は俺となった。

 

「大丈夫ですか!? 『ヒール』!」

 

気絶したミツルギさんの所に駆け寄り、自分の体を回復する事も忘れて回復魔法をかけ続ける。

 

「この卑怯者! あんた最後何やったのよ!」

 

「あんな魔法見た事ないわ! ズルよ、ズル!」

 

「はー? しっかりカズマが魔法放ってたんですけど。女神の目から見ても間違いないんですけどー!」

 

「おやおや、可哀想な人ですね。まさか、現実を受け入れることもできないとは!」

 

「よ、四人とも、カズマを挟んでの口論は止めた方が…いや、私に向けてならばいくらでも言ってくれて構わないぞ! さあ来い!」

 

なお、俺は回復中ずっとミツルギさんの仲間の二人の少女からの罵倒と、それに対する仲間達の反論を聞き続けていた。

 

「いてて…君は、最後に何をしたんだ?」

 

「実はミツルギさんにバレないよう独自開発した魔法で熱で爆発するポーションの粉を撒いておいたんです。それに発火魔法で着火して爆発を起こした…分かりやすく言えば、合体魔法です」

 

「ど、独自魔法に合体魔法! 何ですかそのカッチョいいのは! 紅魔族の琴線に触れますよ!」

 

めぐみんが乱入してきたがその話は後でするとして、とりあえずミツルギさんに勝利宣言をしておこう。

 

「俺が勝ったら何でもするって言いましたよね」

 

「…ああ、僕の負けだ。何でも命令していい」

 

「「キョウヤ!」」

 

「フィオもクレメアも分かったろう、彼は強い。僕は正々堂々戦って、負けた。それだけだ」

 

俺は少し意地悪な笑い方をしながら、仲間に話をするミツルギさんに向かって命令する。

 

「じゃあ、俺と友達になってください。ミツルギさん…いや、ミツルギ」

 

ミツルギはきょとんとした顔をしている。

 

「そんな事でいいのか?」

 

「? 他に命令思いつかないしなぁ」

 

俺がそう返すとミツルギは何故か爆笑し、それから満面の笑みで俺の手を握り、こう告げた。

 

「こちらこそよろしく頼むよ」




魔剣の勇者はカズマの男友達ポジっすね。
ダスト的な、軽口交わせる仲みたいな。
カズマは優しいから名前を間違われることもない。良かったね、マツラギ!
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