この素晴らしいカズマに祝福を!   作:名もなき駅員

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ベルディア戦。
さて、ここからオリジナル展開に繋げたい…


この素晴らしい廃城に祝福を!

「何でよおおおおおっ!」

 

それは、一難去った俺達に起こった悲劇。ミツルギがねじ曲げた檻はどうやら特別なものらしく、壊した弁償代として20万エリス報酬から天引きされていた。さらには俺が叩きつけられた事で壊れた家の壁によってさらに30万エリス天引き。こうして浄化クエストの報酬は30万エリスからマイナス20万エリスになってしまった。

 

「申し訳ありませんアクア様! べ、弁償しますから!」

 

「いいよいいよ、俺が払うから」

 

そう言って俺は何食わぬ顔でギルド職員に20万エリスを手渡す。しかしミツルギは納得いかない様子だった。

 

「全く君って奴は…初対面で投げて、勝手な推測で罵倒して、理不尽な決闘を申し込んで、その上報酬をマイナスに持ってこさせた僕の罪悪感をこれ以上増大させないでくれ…」

 

「俺は気にしてないから大丈夫だって」

 

「名前を聞いてもしやとは思ったけど、今分かったよ。君があの、やれ聖人だのやれ慈愛の塊だのと言われていたサトウカズマだったんだね」

 

「何そのあだ名!? 俺は別にそんないい人みたいに見られる事はしてないんだけどなぁ…」

 

そんな風に考え込む俺と、信じられないといった表情で俺に視線を向ける皆。

そこへ。

 

「それよりも、アクアが女神だの何だのと言われていたくだりは何だったんだ」

 

「確かに…キョウヤ、あれって何だったの?」

 

ダクネスとクレメアが俺達に向かってそう問う。俺とミツルギが返答に困っていると、アクアが神妙な顔つきになる。

 

「そうね、今なら言うべきかもしれないわ。…私はアクア。アクシズ教が崇拝する、水の女神。そう、私こそが女神アクアなのよ」

 

「「「「っていう、夢を見たのか」」」」

 

「違うわよ! 何でハモってんのよ!」

 

…まあ、そりゃこうなるよ…急すぎるって…

って、もうこんな時間か。

 

「俺そろそろ時間だから出かけてくるよ」

 

俺はそう言って足早に外に出た。

 

ーー

 

「急に出て行ったな…アクア様達は、何か知っていますか?」

 

ミツルギはもう夜なのにカズマが外に行った理由が分からず、残ったカズマのパーティーに何故カズマが出て行ったのかを聞いてみる事にした。

 

「カズマ、最近夜に出かける事が多いのよね」

 

「ええ。行動から見て恐らく同じ場所に通っている形式なのだと思いますが…」

 

「肝心の場所がどこなのかは見当もつかんのだ」

 

しかし、三人は首を横に振るばかりであった。そんな時、意外な事にフィオが口を開く。

 

「私、昨日サトウっぽい人が正門方向にある丘に向かっていったの見たけど、多分そこじゃない?」

 

その言葉に、三人の頭の上の疑問符はより一層数を増す。

 

「丘…? あそこの丘は私がよく爆裂魔法を撃ちに行っていた場所ですが…」

 

「とにかく向かってみないと分からないな。めぐみん、案内を頼めるだろうか?」

 

「任せてください!」

 

「ミツルギ、フィオ、クレメア、今日はまあ色々あったけど、これからよろしく。それとありがとね」

 

そしてカズマの元へ行こうとするアクアにミツルギが手を伸ばし、制止するような合図をする。

 

「アクア様、待ってください。これを」

 

ミツルギが渡したのは、今回の浄化クエストの報酬とマイナス分の合計である50万エリスだった。

 

「弁償代はアクア様に渡しておきます。サトウはどうやっても受け取ってくれなさそうなので…」

 

「ふふっ、了解よ!」

 

アクアは改めて、カズマの元へ走り出した。

 

ーー

 

俺はデュラハンさんの城でアンデッド達を倒して回っていた。隠密スキルが通用しないアンデッド系統のモンスターは対アンデッド用隠密スキル『仮死状態』で誤魔化しつつ、背後から浄化する。

 

「この城ももう最上階か…」

 

俺はデュラハンさんに死の宣告を受けたあの日から一週間欠かさずここに通ってはアンデッド達を倒しながら上に上がっていた。

あんなにカッコつけて去っていったデュラハンさんに真実を伝えたくないのと、攻略をしないと義理堅い彼は怒りそうだからだ。

 

「さて、この扉の奥かな?」

 

そこには、荘厳な見た目のいかにもな扉があった。その扉を開けようとしたところ、聞いた事のある声があたりに木霊した。

 

「『ターンアンデッド』!」

 

そこには、騎馬戦の組み方を完璧に再現したアクア、めぐみん、ダクネスの三人が襲い来るアンデッドナイト達を一方的に浄化しまくりながらこちらに向かっている姿があった。

 

「み、みんな何やってんの…?」

 

「それはこっちの台詞よ! この馬鹿!」

 

俺が恐る恐る聞くと、アクアから盛大な罵倒が入った。俺は今回は何もやってない…はず。

 

「何一人でこんな危ないところ来てんの!? せめて誰かを連れて行きなさいよ!」

 

「わ、分かったよ…」

 

「私達は、カズマが心配なんですよ!」

 

「魔王軍幹部の根城なんだぞ!? うっかり死んでしまったらどうする気なんだ!」

 

めぐみんとダクネスも俺に罵倒のような、そうではないような叱責をする。それを聞けば、俺の事をどれだけ心配していたかが分かる。

 

「魔王軍幹部の根城だからこそ、皆には来て欲しくなかったんだよ…もし俺がアクアを、めぐみんを、ダクネスを守れなかったらって、そう思うと不安でどうしようもなくなって…」

 

俺が顔を恐怖に歪めながらそう言うと、三人は軽く溜息を吐き、話し始めた。

 

「そんなもの、私達だって同じだ」

 

「カズマが一人で出掛けに行く時、もし帰って来なかったらって、私は毎晩不安だったんです」

 

「カズマの命はカズマだけのものじゃないの。自分なら死んでもいいとかそんな事考えないで、他でもない私達のために自分の命を大切にしてよ…」

 

「…分かったよ。もう一人で判断して行動はしないって約束するから、許してくれるか…?」

 

俺の謝罪に、三人はにこっと笑みを浮かべた。

 

「宜しい! じゃ、行きましょ!」

 

「フッ、デュラハン如きが! 我が爆裂魔法の前では全て無意味! ふはははは!」

 

俺が二人に続こうとしたその時、後ろからダクネスに掴まれた。

 

「ん? どうした、ダクネ…」

 

「私は許さんぞ。許して欲しくば、いつか私の願いを一つ聞くと約束してくれ」

 

「…? それくらいは別にいいけど…」

 

「…危機感がないな…まあ、それがお前のいい所か…今の言葉、忘れるなよ」

 

ダクネスはそれだけ言うと、アクアとめぐみんの待つ大きな扉の元へ重い鎧をガチャガチャ言わせて歩いていった。

俺もダクネスの後についていき、扉の前に立つ。皆に確認をとってから、扉を押す。

…引き戸だった。

 

「…来たか」

 

扉を開けると、そこには玉座に鎮座した恐ろしくもどこか格好良さを醸し出すデュラハンがいた。

 

「ギリギリだったな。後一歩の所でようやくついたという感じか? どうやらお前達は俺が期待していたより弱いようだが、まあいい。約束通り呪いは解いてやろう」

 

そしてデュラハンさんが指をパチンと鳴らすと、俺の体が…特に何も起こるわけでもなくそのままだった。それはそうだろう。

アクアに既に解呪されているのだから。

 

「? …解けた…か? 解けたよな?」

 

「ああ、解けたよ」

 

「何言ってんのカズマさん? このデュラハンの呪いなら一週間前に私が…わぷっ!」

 

アクアがとてもまずい事を言いかけたので、心の中でアクアに謝りながら口を塞ぐ。せっかくここまで来たのに、デュラハンさんにその真実を伝えたら台無しだからだ。

 

「どうかしたか?」

 

「いえ、何でもないです!」

 

「? …では改めて名乗ろうか。俺はベルディア。魔王軍幹部が一人、デュラハンのベルディアだ! 魔王様からの特別な加護を受けたこの鎧と、そして俺の力により、そこら辺のプリーストの浄化魔法など全く効かぬ。残念だったな、そこのアークプリーストよ!」

 

デュラハンさん、もといベルディアさんはアクアに向かって盛大なるフラグ発言をした。

 

「うっさいわよ! 私の事をその辺のプリーストと一緒くたにしないでくれる!? 消えて無くなんなさいっ、『ターンアンデッド』!」

 

「ハッ! 馬鹿め、効かぬと言ったはずだろう! お前こそこの俺をその辺のアンデッドと一緒くたにすぎゃあああああああああああああー!!」

 

フラグの力は強大だった。

魔法を受けたデュラハンは光を浴びた部分から黒い煙を吹き上げさせている。しかし、体のあちこちから黒煙を出しながらも何とか持ちこたえた。

 

「ね、ねえカズマ! 変よ、効いてないわ!」

 

いや、結構効いてたように見えたんだが…

ぎゃーって叫んでたし。

 

「…プリーストの浄化魔法など効かぬ。はずなのだが…おい、お前レベルはいくつだ? 本当に駆け出しなのだろうな?」

 

そう言いながら、ベルディアさんは手首を回して首を傾けた。デュラハン流の、首を傾げるという動作なのだろう。

 

「まあ、いいだろう。俺の部下よ、アンデッドナイト達よ! その者共を皆殺しにせよ!」

 

ベルディアさんがそう言うと同時に、城の奥から大量のアンデッドナイトが現れた。

 

「お、多い…」

 

俺がそんな弱音を吐くと、ダクネスが。

 

「おい、カズマ! 浄化は聖騎士である私とプリーストであるアクアに任せて、カズマは首魁を討伐してくるんだ!」

 

そして、続けざまにアクアも。

 

「ええ、これくらいならへっちゃらよ! カズマ、任せたわよ!」

 

…俺はつくづく幸運な奴だ。

そんな事を思いながら、俺はベルディアさんに向かって走り出した。

 

「ほう? お前の実力は中々に高いと見た。何故冒険者に留まるのか不思議な程にな」

 

首を前に突きだし、俺の事をじっくり見るベルディアさん。

 

「まあ、そうみたいですね。でも俺は冒険者が気に入ってるから、これでやらせてもらいます」

 

「いいだろう。さあ、かかってこい!」

 

大剣を構え、重々しくも速い足取りでこちらへ一直線に向かってくるベルディアさん。でも、俺は先程のミツルギとの戦闘で学んだ事を活かし、受け流しを考案していた。普通なら折れる短剣でもこうして受け流せば…こう…して…

 

「剣折れてたぁぁ!」

 

ベルディアさんの方向を流す事には成功したものの、短剣は粉々に砕け散ってしまった。

 

「クハハハハハ! 武器もない状態でお前はどうやって勝つのだ?」

 

「う~…こうなったら…『クリエイト・ソード』!」

 

そう叫んだ俺の右手に、緑色に染まった剣が現れた。魔力を大分持って行かれたが、まあ仕方ないと割り切るしかないだろう。

 

「ほう、武器を作ったか…面白い!」

 

「『クリエイト・アース』!」

 

突撃してくるベルディアさんの前に土塊を設置し、両断させる。そして勢いが落ちたベルディアさんの攻撃を受け流してから攻撃を入れる。

 

「ぐっ…!」

 

予想外の攻撃を受けて焦ったベルディアさんは慌てて攻撃するが、少し単調になっていたからか、問題なく流す事ができた。

もう一度攻撃を加え、距離を取る。

 

「駆け出しのくせに…やるではないか!」

 

ベルディアさんは頭を高く投げ、その場に立ち尽くした。俺が警戒しながらも剣を構えると、初撃と同じようにベルディアさんが突撃してきた。ただ、二撃、三撃と止まらない。

 

「『ティンダー』『ウィンドブレス』『クリエイト・ウォーター』!」

 

「っ!?」

 

ん?

『ティンダー』と『ウィンドブレス』は無視したのに、『クリエイト・ウォーター』だけ避けた…?

 

「ふんっ!」

 

「うわっ!?」

 

今はそんな事気にもしていられない!しかしベルディアさんは強く、その内押されてしまい、短剣ではガードしきれず吹っ飛ばされてしまった。

 

「がはっ…!」

 

「カズマ! アクア、ダクネス! カズマが、カズマが!」

 

ぶっ飛ばされた俺を見て、めぐみんが悲鳴にも似た声をあげる。

 

「わ、分かってるけど、何でかこのアンデッド浄化魔法が通じないのよ!」

 

「くっ! 当たりさえすれば…! ハァハァ!」

 

「ダクネスは時と場合を考えてください!」

 

三人はアンデッドナイトに苦戦して俺の元まで来る事ができない。

 

「ここまで俺を苦戦させた相手は初めてだった。名は何という?」

 

俺の元に近づいたベルディアが、静かに問う。

 

「…カズマ…サトウカズマです」

 

「そうか。その名前、決して忘れぬと約束しよう」

 

そして、ベルディアさんは俺に向けて剣を勢いよく振り下ろし…!

 

「…ごめんなさい。『スティール』ッ!」

 

「なっ!」

 

俺の胴を斬るはずだったベルディアさんの剣は、俺の右手に収まっていた。

 

「貴様…!」

 

「騎士道に反するようで申し訳ないですけど、このまま皆を残しては死ねない」

 

俺は漆黒に輝く大きい剣を手に再びベルディアさんに斬りかかる。

 

「ぐっ、おおおお…!」

 

ベルディアさんは何とか持ちこたえているが、俺も体の痛みに慣れてきたため力をさらに加える。

 

「うおりゃあああ!」

 

「ぐへぁっ!! ぐっ、くそっ…!」

 

このままとどめを…!

そう思いながら剣を振るおうと走ると、ベルディアさんはこちらに指を差してきた。

 

「くっ、仕方ない…お前は今すぐに死ぬ!」

 

えっ…

直後に、俺に走るのは激痛。心臓を握り潰されるような痛みが一瞬体の中を駆け巡り、そして何も感じなくなった。

まずい…このままじゃ…!

 

「『クロックド・クリエイト・エレキ』…」

 

その言葉を最後に、俺は床に倒れ伏した。

泣き叫ぶ、仲間の姿を見ながら。




何か本編より絶望的な状況になってる希ガス
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