この素晴らしいカズマに祝福を! 作:名もなき駅員
AHHHHHHHHHH!!
「佐藤和真さん…ようこそ死後の世界へ。私は、あなたに新たな道を案内する女神、エリス。この世界でのあなたの人生は終わったのです」
目を開けると、俺はローマ時代の神殿の中のような所にいた。そして、俺の目の前にいる、ゆったりとした羽衣に身を包む長い銀髪の少女にそんな事を告げられた。
…ちょっと予想外だ。
「魔法が失敗したかな…? 確かに実験はしてないけど…あ、でもこれって…」
俺が少し考えるように顎に手を当てていると、目の前にいる女神様らしき少女…この国の国教である、エリス様を待たせている事に気づく。
慌てて顔を上げた。
「…どうかしましたか?」
「あ、いえ…大丈夫です、すみません」
「そうですか」
ほっと息をつくエリス様に、俺は続けて言う。
「それに、もう少しで発動すると思いますし」
「え?」
俺が笑顔で言い放つと同時に、俺の姿が薄くなっていく。俺の意識も体へと戻っていくのが分かる。
「ちょちょちょ、何が起きてるんですか!? あなたは一度生き返っていますから、本来天界規定では蘇生は無理なのですが!」
「それは簡単な話ですね。俺がまだ仮死状態で、死に際に放ったあの魔法で生き返ることができたからです」
「あの『クロックド・クリエイト・エレキ』っていう魔法ですか… しかし、では何故ここに…」
次から次へと疑問符を浮かべ、頭を混乱させるエリス様に、俺は説明する。
「何を以て『死』と定義するのかなんて曖昧ですし、俺の魔法がなければ普通そのまま死ぬはずだったので呼ばれたのではないでしょうか」
「信じられない話ですが、信じるしかなさそうですね…」
「まあ、またいつか会えるでしょう。それでは!」
ーー
カズマがエリスとそんな話をしていた最中、地上では仲間達が絶望の表情を作っていた。
「カズマぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
めぐみんは、どこに行くのかも分からないぐちゃぐちゃに入り交じった感情を、ベルディアに向けた。そして、今まで観戦状態だったにも関わらず、その手に杖を握りしめ立ち上がった。
全ては、愛する者の仇討ちのため。めぐみんは暗い感情を胸の奥に押し込み、詠唱を開始する。
そして荒れ狂う、魔力の奔流。
「『プロテクション』! アクア、そこから動くなッ!」
ダクネスがアクアを庇うように立ち塞がった直後、部屋を消し飛ばすレベルの爆炎が広がり、無数のアンデッドナイト達に直撃した。
だが、アンデッドナイトが壁になったのかベルディアの付近に攻撃は届いていない。
「けほっ…アクア、無事か?」
「え、ええ…」
アクアはめぐみんはどこかキョロキョロと見回す。そしてめぐみんの人影を確認した瞬間驚愕した。何故なら、めぐみんは立っていたからだ。
「スペアの杖を持っておいて助かりましたよ。あなたの顔面に一発、ぶち込んでやります…」
本来、めぐみんが爆裂魔法を使うと魔力が切れ、為す術もなく倒れるというのがデフォルトだ。にも関わらず、めぐみんは立っている。マナタイトの杖が塵となっているところを見るに恐らくはマナタイトを犠牲にして発動したのだろう。
「面白い。やってみろ!」
「地獄の業火に焼かれるがいい! 『エクスプロージョン』ッッ!!!」
だが、めぐみんの体はまだ幼い。エクスプロージョンというただでさえ魔力消費の激しい大魔法の後にマナタイトを使用しての全回復は、体に多大な負担をかけていた。
「…フン、こんなものか? さっきよりも威力が落ちているのではないか?」
「っ…!」
「カズマの死体があるとこに爆裂魔法なんて撃ってんじゃないわよこの馬鹿! ってあれ……?」
アクアの疑問など完全にスルーし、ベルディアは鎧に付いた汚れをぱっぱっと払う。そして、カズマから奪い返した剣を手にめぐみんを見据える。
「今度はこちらの番だな。行くぞ!」
「危ない、めぐみん!」
ダクネスが盾代わりになろうとするが、機動性が低いせいで間に合わない。その時であった。
「『クリエイト・アース』!」
出現した土塊に、ベルディアは既視感があった。そう、先程まで切り結んでいた相手、ベルディアが対等な相手だと認めた、あの最弱職の技にそっくりなのだ。
「俺の大事な仲間には指一本触れさせませんよ」
ーー
「馬鹿な…なぜ生きている?」
やっぱり驚くよね…
ベルディアさんは鎧越しだから見づらいが、どうやら目を見開いているようだ。
「ベルディアさん、あなたの死の宣告では死因が決まってるんですよ。それは心臓麻痺…発動してからすぐに応急処置ができれば生き返れるんですよ」
「何だと…!?」
俺の説明に驚くベルディアさん。
「それに使ったのが『クリエイト・エレキ』です。『ライトニング』でもいいですが、『クロックド』を付け足せるのは初級魔法だけなので」
『クロックド』は特定の魔法を時限発動式にする付与魔法。ベルディアさんの死の宣告に対抗できるように俺が開発したものだ。
「…フン、だからどうした。俺自身の弱点を見抜けていないではないか」
開き直ったのか強気になるベルディアさん。しかし先の戦いにて情報を収集した俺はベルディアさん及びアンデッドの弱点を知っている。
「そうですか…『クリエイト・ウォーター』!」
「なっ!?」
「おっと、どうやら当たりみたいですね。古来よりデュラハンは水が苦手というのは有名ですが、まさか本当に苦手だとは…」
「くっ…」
俺はベルディアさんに少しずつではあるものの確実にダメージを与え続ける。
「うおおお!」
「ぐはぁっ!」
よし、今のうちに一旦アクアの元へ戻ろう。
「アクア!」
「カズマ! 死んだかと思って心配したのよ! 次からはちゃんと言ってよね!?」
「ご、ごめん! 二人もごめんな」
「私はいいんだが、めぐみんにはその、二人きりで話す時間を設けた方がいいと思うぞ」
俺が下に目をやると、目や鼻から血を流しながら気絶するめぐみんの姿が。俺が死んだと思って無茶をしたのか…俺が油断したせいでめぐみんをこんな目に…俺って奴は本当に…
「アクア、ベルディアさんは水が弱点だ。そこを突いて欲しいんだが、頼めるか?」
俺は自己嫌悪を後回しにして、アクアに当初の目的を伝えにきた。あまり悠長にしているとベルディアさんが体勢を立て直してしまう。
「…ふふん、まっかせなさいよ! 私ってば水の女神なのよ? 洪水クラスの水だってちょちょいと出せるんだから!」
流石は水の女神、頼もしい限りだ。
などと俺が思っていると、アクアの周囲に、うっすらと輝く霧のようなものが漂い…
…えっ。
「プリースト風情が、貴様等の出せる程度の水など、俺には………?」
ベルディアさんも何か不穏な気配を感じ取ったようだ。俺も何か嫌な予感がする。
だが、そんな俺達の様子は気にも留めず、アクアは詠唱を続ける。
「この世に在る我が眷属よ…」
アクアの周りを漂っていた霧が凝縮され、水の玉となって浮かび続ける。その水玉一つ一つに魔力が凝縮されているのが分かる。
「水の女神、アクアが命ず…」
辺りの空気がビリビリと震えるこの独特な感触は、めぐみんの爆裂魔法を彷彿とさせる。
俺はダクネスに気絶しためぐみんを担がせ、『サイクロンブレス』で高い所へ避難させる。俺も上にあがろうとした所で…
「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!」
アクアが、水を生み出す魔法を唱えた。
ベルディア結構好きなキャラなので何とか和解ルートに持って行きたいんですけど…ダメ?