この素晴らしいカズマに祝福を!   作:名もなき駅員

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ここからホントに原作改変エグいので引き返すなら今です。
アンチコメとか訂正コメ送られても基本的に「オリ設定です」で片付けるので引き返すなら今です。


この素晴らしいお友達に祝福を!

確かに、アクアは言っていた。

洪水クラスの水だって出すことができると。これは俺がアクアの説明を十分に聞かず、比喩表現だと捉えてしまった俺のせいだ。

 

目標としたベルディアさんを出発点として建造物を崩壊させる勢いで猛進する水に、俺はとにかく流された。扉など力業で開けられ、通路でも流され、俺は一階付近でようやく解放された。

 

「た、助かった…のか?」

 

俺が周りを見ると、扉は水によって崩落した壁で埋まっている。外に出るのは少し厳しそうだ。別のルートがあればいいが、俺はこの城についてそこまで詳しくないし…

 

「何を考えているのだあいつは…馬鹿なのか? 大馬鹿なのかあいつは…!?」

 

後ろから聞こえた声にハッとなる。そこにいたのは紛れもない魔王軍幹部、ベルディアさんだった。

 

「げっ…最悪のタイミングで最悪の奴と…」

 

鎧越しでも分かるくらいに嫌そうな顔をするベルディアさんに、俺は少し心が痛くなる。

 

「いやいや、『げっ…』って…まあ人間とモンスターが対立してるのは知ってますけど…今俺は体力を消耗してるので、戦う気はないですよ」

 

「…そうか。実は俺も体力にあまり余裕がない。先のアークプリーストにも屠られるレベルまで弱体化しているし、敵対しないのならそれに越したことはないな」

 

そして俺とベルディアさんは出口を探すために協力することにして、無駄な戦いを避けた。

それから、20分程経って。

 

「…そういえばだが、お前は何故あんなパーティーでリーダーをやっていられるのだ?」

 

「えっ? どういう事ですか?」

 

ベルディアさんの質問の意図が分からず、俺は思わず問い返してしまう。

 

「毎日迷惑をかけてくる頭のおかしい爆裂娘に、加減を知らないポンコツプリースト、まともそうな仲間はあの女騎士だけではないか! お前はあんな仲間と共にいて平気なのか!?」

 

その言葉に、俺は少し不満を持った。確かに、俺の仲間は一癖も二癖もあり個性的だ。でも、俺からすれば三人とも大事な仲間だから、悪く言われると気分を損ねる。

 

「…アクアは確かに金遣いが荒い所があったり、加減を知らなかったりするけど、トラブルを起こすたびに反省して、いい行動を起こそうと心がける真面目さを持ち合わせてます」

 

そう、彼女は行動すべて空回りするけど、根は素直で良い子なのだ。

 

「めぐみんも爆裂魔法になると人が変わったり、喧嘩っ早いときがあるけれど、夢を叶えるために絶対に信念を曲げない情熱を秘めています」

 

俺も彼女の道に共感し、仲間として迎え入れた身だ。あの熱は良く分かっている。

 

「ダクネスだって、勝手に一人で突っ走ったり、理解できない行動を取ったりもするけど、仲間を守るため一歩も引かない志を抱いてます」

 

彼女が前に出るのは何も自身の欲望を満たすためだけではなく、皆を守るためでもあるんだ。

気づけば俺は、ベルディアさんに向かって説教じみたことをしていた。しかし、ベルディアさんも興味深く話を聞いていたのでそのまま続行する。

 

「欠点なんて誰にでもあるでしょう。俺も、あなただってそうです。彼女達は、それを強みに変えようと頑張ってるだけ。だから…俺の大事な仲間のこと、あまり悪く言わないでください」

 

俺が言いたい事を言い切ると、ベルディアさんは憑き物が落ちたかのようにスッキリした表情をしていた。

 

「…欠点を強みに、か……考えた事もなかった。…お前は強い人間だな、カズマよ」

 

「俺じゃなくて、三人が凄いんですよ」

 

そして俺とベルディアさんは笑いあった。まるで人と人との他愛ない掛け合いのように。

 

「俺が人間として生きていれば…お前と友になれていれば、どれ程嬉しかっただろうな」

 

ベルディアさんは唐突にそんな事をボソリと呟いた。なんだ、そんな事なら…

 

「今からでもなればいいじゃないですか」

 

「なっ…俺はモンスターだぞ!?」

 

「友情に種族は関係ないですよ」

 

「魔王軍幹部なんだぞ?」

 

ベルディアさんは俺が種族間の問題に関しての回答をあっさり言った事に驚いたようで、困惑している。

 

「立場も種族と同じようなものじゃないですか」

 

「…俺は沢山の人間を殺したんだぞ」

 

「…確かにそれは許せない事ですが、殺した人に対して敬う気持ちがあれば、俺は怒りません。それに、相手から仕掛けてきた場合のみなんでしょう?」

 

ベルディアさんも本当は、人間の騎士だった頃の気持ちも残っているのではないのだろうか?

実際ギルドの調べによれば、魔王軍幹部のデュラハンが一般人を襲ったという事例は一度も聞いた事がないそうだ。

 

「フン…無礼に扱う訳がないだろう。俺は相当な理由がない限り冒険者共には礼儀を通している。一応でも騎士の端くれとしてな」

 

「ふふっ、人間としての誇りを忘れていないなら、それでいいんだよ。これからは友達だな、ベルディア」

 

ベルディアさん、もといベルディアに俺は手を差し出す。こうやって魔王軍とも和解できればよいのだが、そう簡単には行かないだろうなぁ…

 

「クハハ、こちらこそ宜しくな、カズマ」

 

俺とベルディアは、固い握手を交わした。

 

「…さて、それでは休憩も済んだな。出口はすぐそこだ、行くぞ」

 

そして十分後、俺達は城の前の扉、所謂正門と呼ばれる場所に当たる扉に到着した。

…した、のだが…

 

「…何か塞がってるんだが」

 

ベルディアの言う通り、崩壊した壁が正門の前に偶然倒れかかっており、壁を壊さなければ扉が開かない状況となっている。

 

「弱った俺達の攻撃ではビクとも…ん? カズマ、何をしているのだ?」

 

俺は壁の下に小瓶をいくつか転がす。そして縄を丁度いいサイズに切り、それを小瓶の真下に敷く。そして縄を遠くまで伸ばし…

 

「『ティンダー』」

 

着火した。炎は縄の軌道に沿って次々燃え移り、小瓶の真下まで到達する。

すると、とんでもない轟音とともに、壁と正門が破壊される。それは、その城自身が連日食らった爆裂魔法のようでもあった。

 

「…」

 

ベルディアは住処を失った絶望か、はたまた爆発ポーションの威力に度肝を抜かれたのか、口をポカーンと開け、顔を青くしていた。

 

「あっ、カズマ!」

 

アクアが俺を発見したと同時に飛びついてきた。涙を流しながらアクアが放ったその突撃は痛いながらも、何だか心地よかった。

 

「ごめんなさい! ごめんなさいカズマ! ちょっと考えれば巻き込まれるって分かったのに、私がまたいらない事したせいで…!」

 

いや、アクアが洪水を起こしたのは他でもない俺の命令なんだけど…アクアに非はない筈なんだが、何で俺は謝られてるんだろ。

 

「でも生きててよかった…待ってて! 今ダクネスを呼んで……?」

 

アクアが嬉しそうにスキップしようとして、それをやめた。アクアの視線の先にはベルディアの姿が。

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」

 

「ぴぎゃあああああああああ!」

 

「べ、ベルディアーっ!」

 

ベルディアは俺が魔法の効果範囲から剃らしたことで何とか助かったが、しばらくの間何というか、薄くなっていた。

 

ーー

 

「…つまり、二人は和解したのか?」

 

ダクネスの言葉に、俺とベルディアはコクコクとうなずく。めぐみんはベルディアに怨念の籠もった視線を持っているし、アクアなんて言わずもがなだ。

 

「あ、安心しろ。もう危害を加えるつもりはないし、魔王には討たれたと伝えておく。お前達もギルドにそう報告しておくがいい」

 

「え? でも冒険者カードの記録機能を誤魔化すなんて…」

 

「問題ない。アンデッドの死亡なんて矛盾をどう定義しているのか…それは既に解析済みだ。カードを貸してもらえばいつでも改ざんできる。幹部の討伐など疑う者もいるだろうが、俺が魔力を抑えておけば疑惑の目もそのうち落ち着くだろう」

 

魔力を抑えるとかもできるのか。

意外と小器用なんだな、ベルディアって…

 

「しかし、俺の城は見事なまでに木っ端微塵になったな。住処はどうするべきか…」

 

「大丈夫、それに関してはアテがあるから。でもその前に、町に入れるようになるためにはその鎧を脱がなくちゃね」

 

ベルディアは大勢、というかほぼ全ての冒険者の前で姿を見せている。この鎧を纏っていれば即座にバレてしまうだろう。

逆に言えば、全身鎧なのが功を奏した。素顔が分からないのなら、溶け込むことも可能だろう。もし逆に素顔がバレていて仮面で隠さなければならない、とかなら大変だったが。

 

「ロックを外せば脱げるようにはなっているが、魔王様に貰って以来脱ぐことはしていなかったな…」

 

ゴトンッと勢いよく落下した鎧。ベルディアはその鎧からは想像できないほど、ミイラのようにやせ細った体躯をしていた。

 

「そういえば俺は今まで一度も食事をしていなかった。栄養がないから体がミイラ化していたのかもしれん…アンデッドとは不可思議なものだ」

 

この状態になってしまえば取り返しがつかないというので、その体は俺の予備の服で隠すことにした。

 

「甲冑は…お、取れたな。ほら、カズマ」

 

俺は半ミイラ化した頭をベルディアから受け取って首に付け直し、『パラライズ』で麻酔もどきをしてから裁縫スキルを使い縫いつける。

 

「後はそうだなぁ…変装用のマスクでも作るか?」

 

「アルセーヌ・ルパンとかが使ってたあの変装マスクの事? アレそんな簡単に作れるようなもんじゃないと思うんですけど…」

 

驚くアクアを尻目に同じく裁縫スキルでつついと紐を通し、器用に仕上げていく。なるべく違和感がないように裁縫する。

 

「できた。これを被せて…っと」

 

「ふむ…?」

 

そこにいたのは、黒に近い蒼色の少し長めの髪を風にたなびかせ紅い目を光らせる、中性的な男性の姿だった。

 

「うん、いい感じ!」

 

俺は親指を突き立てた。

 

「これは…何というか…」

 

「カズマは本当に何でもアリですね…」

 

ベルディアの姿に驚く二人の隣で、何か葛藤するように思案していたアクアが、口を開いた。

 

「…ねえ、やっぱり浄化させてくれない? ウィズの例があったとしても、やっぱりアンデッドは危険だと思うの!」

 

「ちょ、今せっかく仲良くなれそうなのに水を差すな! 襲う気はないと言っただろ!」

 

アクアとベルディアがぎゃあぎゃあと言い合いをしている間、俺はめぐみんとダクネスに向き直り。

 

「じゃあ、えっと、二人はアクアを連れて先にギルドに向かって貰えるか? 俺はベルディアをあそこに連れて行くからさ」

 

「「あそこ…?」」

 

二人は首を傾げたが、その後またも薄くなったベルディアからアクアを引き剥がし、ギルドに向かっていった。




ウィズの苦労が二分の一に、ベルディアの苦労が三倍になります。(アクア+めぐみん)
おめでとうウィズ!
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