この素晴らしいカズマに祝福を!   作:名もなき駅員

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ギリ火曜日なんで約束は守ってるはずです。
異論は認める。


この悪戯な悪霊に祝福を!

夜半過ぎ、俺は自室で静かに悪霊退治の準備をしている。今は短剣に聖水を塗り込んでいる最中だ。コレは浄化魔法が追いつかなかった際の対処法である。備えあれば憂いなし、だ。

俺達にはアクアがいるし、問題はない。

 

「あああああっ!? わああああーっ!!」

 

「アクアっ!?」

 

その、頼りにしていたアクアの叫び声がした。

俺は急いで部屋を飛び出る。アクアの部屋を数回ノックし、返事がないことを確認すると勢いよくドアを開ける。

そこには…

 

「うっ…うわああんっ…かずまぁぁぁ!」

 

「何だ、どうしたんだ!?」

 

空の酒瓶を持ちながらこっちに力なく走ってくるアクアの姿があった。

 

「酔ったのか? 水飲むか? 瓶のフチで指を切ったんならこの前作ったガーゼと消毒薬がここに…あ、でもアクアなら自分で回復できるか…って、うおっ」

 

アクアが泣いたままの状態で抱きついてきた。本当に一体何があったんだ?

 

「違うの! この酒瓶は私が飲んだんじゃないの! これは、大事に飲もうと思ってたすっごく高いお酒なのよ。お風呂から出たらゆっくり飲もうと楽しみにしてたのに…部屋に帰ってきたら…か、空だったのよぉぉ…!」

 

「そ、それって、悪霊の仕業……なのか?」

 

悪霊がお酒なんか飲むだろうか。

でもアクアに聞いた話によればこの屋敷には明確な自意識を持つ悪霊がいるって話だったな…お酒好きで、アクアの証言とも一致している。名前は確か…

 

「アンナ=フィランテ=エステロイド…」

 

「や、やっぱりその子の仕業なの!?」

 

「いや、可能性の話だよ」

 

「…くぅ…私ちょっと目につく霊をしばき倒してくるわ!」

 

アクアはぎゅっと拳を握りしめて、決意を漲らせたような目つきですっくと立ち上がった。

 

「待って待って! 作戦通りにって手筈だったじゃん! そのお酒に関しては俺が買い直してあげるから、今は耐えてくれ!」

 

しかしそのアンナという霊が、とっておきの酒を飲んでしまう程度の悪行しか行わない霊なら、除霊をしなくとも問題はないかもしれない。

 

ーー

 

深夜、それも草木も眠る丑三つ時。

俺は音を立てないよう気をつけながら廊下を巡回して回っていた。これは俺達が有利な状況に立つための作戦だ。というのも、悪霊というのは基本的にたちが悪い。それこそ人間が気を抜いている、または気を張っている時に奇襲をかけてくるようなタイプなのである。つまり、俺は囮だ。

俺が襲われている隙にアクアとダクネスのタッグに潰してもらう、簡単に言えばこれだけだ。

 

「…っが…!?」

 

早速かかった。

これはもしや…金縛りか? 後ろからはひたひたと嫌な足音が聞こえる。間違いなく悪霊の仕業だろう。普通の冒険者なら大ピンチな状況だろう。とは言え、俺には最強のプリーストがついている。

 

「『ターンアンデッド』! カズマ、平気!?」

 

「ああ、アクアのおかげだ! …そろそろ来るな…」

 

「あとは暴れていいんだな?」

 

ダクネスの問いに俺はうなずく。カタカタと動き出す、いつの間に、どこから来たのかも分からない西洋人形。カタカタ不気味な動きをして一気に迫ってくるその人形に薄く畏怖を感じながら、浄化魔法を唱える。

 

「おりゃっ! 『ターンアンデッド』!」

 

「『ターンアンデッド』!」

 

「はっ! やあっ!」

 

詠唱しながら短剣を振るう俺、満面の笑みで浄化魔法をぶっ放すアクア、剣自体は当たらないものの飛び散る聖水によって浄化を成功させるダクネス。三者三様の戦い方で大量に雪崩込んでくる悪霊を退治し続ける俺達は、時が経つのも忘れていた。

 

数分後、瞳を紅く輝かせて一直線にこちらに突っ込んでくる少女がいる事も、その時の俺は知らなかった。

 

「きゃあああああああーっ! た、助けてくださあああああいっ!」

 

「めぐみん!? …と、大量の悪霊ッ!!!」

 

俺達が一箇所にまとまっていたせいで、安全地帯に隠れていためぐみんが見つかってしまったらしい。そこは考えてなかったなぁ…とりあえず最前列の悪霊はダクネスと俺で除霊しよう。

 

「た、助かりました…」

 

「ご、ごめんな、めぐみん…俺のミスで…」

 

めぐみんは気にしなくてもいいというが、やはりトラウマなのか後続の悪霊に怯えて俺の後ろに隠れている。ジャイアントトードといいベルディア戦といい、どうして俺はこうすぐ仲間にトラウマを植え付けてしまうのか…

 

「しかし、流石にこの量は厳しいな…アクア、すまないけど頼んでもいいか?」

 

「遠慮は不要よ。女神の力、とくと味わうがいいわ! 『セイクリッド・ターンアンデッド』!!」

 

迫りくる人形に神聖な魔力が当たり、包み込まれるように溶けていく。あれだけいた悪霊達は、アクアの活躍によって一網打尽にされたのだった。

 

「やったわ! 今の見たわよね!?」

 

「ああ、見ていたぞ。とんでもない威力だな」

 

俺がアクアとダクネスのMVPタッグの会話に心を和ませていると、めぐみんが後ろから俺の袖を引っ張ってきた。後ろを見ると、少し気恥ずかしそうなめぐみんが。

 

「あ、あの…叫んだり走ったりしたせいでおなかすいちゃいました…夜食とか作ってください…」

 

その言葉に、俺は安堵したように息を吐いた。

 

「うん、俺も何かお腹すいたよ。何食べたい?」

 

「じゃあ、カズマに任せます」

 

俺はめぐみんのオーダーを聞き、キッチンへと足を運んだ。

 

ーー

 

「む、今美味しいものを食べたな…これか?」

 

「それは塩焼き魚ね。今食べたのはキュウリの漬物」

 

「この甘い奴おかわりほしいです」

 

「だし巻き卵人気だね。分かった、作ってくるよ」

 

「久しぶりの和食ね…何だか泣けてくるわ。あ、ご飯おかわりちょうだい」

 

「了解。ちょっと待ってて」

 

先程まで悪霊たちと戦っていたというのに、この力の抜け具合は何なのだろうか。ある意味俺達らしいというか、何というか…

俺達はその後各自の部屋に戻り、寝始めた。結局あの後しばらく談笑してしまい、もう明け方だ。俺は明日の皆の朝食を今のうちに作っておこうとキッチンに戻る。

 

「…ん?」

 

少しして、そよ風が吹いた。窓は閉まっているはずだが…そう思って確認しに言った俺の目の前で、窓が空いた。ポルターガイストだ。本来ならアクアを呼ぶべきなのだが、俺はそれに悪意を感じなかった。外を見てみると、庭に繋がっている。目の前に見えるのは、アンナと名前が掘られた墓だった。

 

「…掃除しておこう」

 

長年放置されて雑草の生い茂っている墓を掃除し、墓の周りの雑草だけでも全て抜いた。満足し、帰ろうとした俺の腕が引き寄せられる。引き寄せられた方の手には、朝食のおにぎりが握られていた。

 

「もしかして…食べたい?」

 

姿は見えないけど、正面に誰かがいる気がした。肯定するように、頷かれた気がした。

それは、顔も名前も何もかも知らなかった、一人の少女で。

俺はその子の墓の前に、そっとおにぎりを置いた。

 

…口に合うといいんだけど。

 

「ふああ…カズマさん? そんな所で何してるの?」

 

「え? ああ…ちょっとお墓の世話をね」

 

「へ〜…あら、おにぎりじゃない。懐かしいわ…にしても、美味しそうに食べるわね、その子」

 

俺がその言葉にハッとしたように振り返ると、そこにおにぎりはなかった。代わりに置いてあったのは一体のぬいぐるみ。

これからよろしくね…そんな言葉が聞こえた気がした。




この世界のカズマはアンナをギリ知覚できるレベルまでいってます。
初期のステータスがすごく高いので。
コメントで質問されましたが、弱体化してないベルディア相手にスティールが成功したのもカズマのステータスとベルディアのステータスの差が原作ほど開いていないのが影響してます。
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