この素晴らしいカズマに祝福を! 作:名もなき駅員
まあまず一巻の内容終わらせないとなんですが。
前世ではそれなりに自炊していた俺がキャベツを使った料理を作って冒険者の皆に振る舞うと、結構好評だった。
「はは、味付けも無いのにこんなに美味しいなんてなぁ。おかわりいる?」
「「「いる!」」」
「しかし、やるわねダクネス! 流石はクルセイダーというか、あの鉄壁の守りには天下のキャベツ達も攻め倦ねていたわ」
今回のキャベツはそこら辺のゴブリンやジャイアントトードなど話にならないほど強かった。それを一身に受けたダクネスは本当に強いと思う。
「いや、私などただ硬いだけの女だ。攻撃などまるで当たらない。だから誰かの壁となって守ることしか取り柄がない。その点、めぐみんは凄まじかった。キャベツを追って街に来たモンスターの群れを、キャベツ諸共爆裂魔法の一撃で吹き飛ばしていたではないか」
めぐみんは空中で20m越えの大爆裂を起こし、モンスターやキャベツを一掃していた。あの時の冒険者達の顔は、彼らには悪いが凄く面白かった。
「ふふ、我が必殺の爆裂魔法の前に置いて、何者も抗う事など叶いません。…それよりもカズマの活躍こそ目覚ましかったです。魔力を使い果たした私を素速く回収して背負ってくれました」
え、俺?
「いやいや、俺なんてキャベツの一撃で気を失いかけた雑魚だぞ。咄嗟に『ヒール』をかけてくれたアクアがいてこそだろ」
アクアがいなければ俺は戦力外通告を受けていたはずだ。キャベツの一撃があそこまで重いだなんて、誰が想像できただろうか。
「私はカズマの言う通りに魔法を使ってただけよ。やっぱりこのパーティーで一番活躍してたのはカズマじゃないかしら?」
「うむ、私がキャベツやモンスターに袋叩きにされている時も、カズマは颯爽と現れてキャベツを次々と収穫していた。助かった、礼を言う」
「潜伏スキルで気配を完全に遮断し、キャベツを刈り取っていました。あれだけ強力無比な一撃を食らえばいくらキャベツだろうと勝てません」
ダクネスとめぐみんが口々に俺の事を褒め讃える。俺はあまりそういうの慣れてないんだが…
「カズマ、本当にありがとね」
アクアの一言で、俺は強い責任感を覚えた。これから俺はもっと強くならなきゃいけない。今アクア達に言われたように、皆に頼られる存在でなければいけないんだ。
あらゆる回復魔法を操るアークプリーストに、
最強の魔法を使うアークウィザード。
そして、鉄壁の守りを誇るクルセイダー。
その三人を守る最強の最弱職に俺はなりたい。
ーー
という訳で、《初級魔法》スキルというのを覚えてみた。せっかく魔法が使える世界にきたので、覚えれるものは覚えておきたい。
殺傷性は皆無だが何かと便利な魔法っぽいのでいざという時のために使うつもりなのだ。
一応《中級魔法》も覚えているが、あまり使わないつもりだ。本職でも詠唱には数秒を要するのに、冒険者職の俺が使ってすぐに魔法を放てる訳がない、という理屈である。
それと、《片手剣》スキルというのも覚えてみた。剣の扱いを上達させるスキルらしく、これで俺も人並みに戦えるようになった。
スキルも覚えて冒険者らしくはなってきた。となると、後は装備が欲しい所だ。実はクエストは早朝から一人でコツコツ進めているので、クリスの勝負で渡した分を速攻で稼げた。
ジャージとショートソードじゃ皆を助けられる気がしないので、鎧の一つは欲しい所だ。
「そろそろ装備を買おうかな…」
と思わず呟いたら。
「装備? 買い物にいくの? 私も行く!」
とアクアが言うので一緒に買い物に行く事になった。
「そういえばアクアもその羽衣しか持ってないよな。大丈夫か? 一応お金はあるけど…」
「私の羽衣はこれでも耐久性抜群、状態異常無効化、魔力消費削減の魔法もかかってるのよ。そこら辺の服と一緒にしないで欲しいわ」
まあ確かに。アクアは女神様だから、それくらいのチート装備は着てて当たり前か…
「まあでも、たまには別の服を着ていてもお洒落じゃないか? それに年中薄い羽衣だけだと風邪引かないか心配だしな」
「私は女神だから風邪なんて引かないけど…そこまで言うなら仕方ないわね」
あ、まずい、つい勢いで言っちゃった。俺は女の子のファッションなんてまるで分からないのに…
「ついでに何か欲しいものあったら俺が買うよ。アクアはキャベツの報酬が出るまでお金少ないしさ」
「いいわよそんなの…カズマのお金はカズマのなんだから、大切に使いなさい」
そんなこんなで、その後もアクアと何気ない雑談を挟みながら歩いていき、服屋に着いた。
「カズマさんはこのマントなんかいいんじゃないかしら。かっこいいわよ!」
「おお、確かにいいな。えーと緑と水色…ここは緑にしとこうかな?」
「じゃあ私は水色~♪」
さりげなく俺とお揃いのマントを購入するアクア。マジか、超恥ずかしい…
「お、この胸当てとかいいなぁ…すねあてとかも付けてみようかな?」
「いいわね!」
結局その後は焼き鳥を買ったり道具屋に寄ったりなど、普通にお出かけを楽しんで帰宅した。
ーー
「はい、お肉が焼けたぞ~」
「おひふはへんふわはひのもほよ!」
「アクアは野菜も食べような」
俺達はゾンビメーカーというモンスターを討伐するために町から外れた共同墓地で悠々自適なキャンプを開始していた。ゾンビメーカーは悪霊の一種で、質のいい死体に乗り移って複数のゾンビを手下に襲いかかってくるらしい。
駆け出しの冒険者でも倒せるモンスターなので、この前のキャベツよりかは楽に倒せそうだ。
…キャベツに劣る悪霊って…
「ほら、暖かいコーヒーが入ったぞ」
俺は『クリエイト・ウォーター』で水を注いだマグカップにコーヒーの粉を入れ、『ティンダー』という火の魔法で底を炙ってあっためたコーヒーを三人に差し出す。
「ありがとう」
「苦いのは少し苦手だけど、これはすごく好きな味よ! うん、ぽかぽかするわ」
「あ、私はお水が欲しいです。というかカズマは何気に私より魔法を使いこなしてますね。初級魔法なんて普通誰も取らないのですが、カズマを見てると何だか便利そうに見えてきます」
「いや、元々そういった使い方するものじゃないのか? あ、でも一つだけ分からないのがある。『クリエイト・アース』! これは何に使うんだ?」
初級魔法の中でもとりわけ使い道がわかりにくい、それが『クリエイト・アース』という魔法である。
「…えっと、その魔法で作った土は、畑などに使用すると良い作物が取れるそうです。…それだけです」
その説明を聞き、辺りが静寂に包まれた。
「農業用の魔法って、冒険者カードにいる魔法なのかしら…?」
アクアの呟きが一帯に大きく木霊するほど、それはそれは静かだった。だが、しばらくして俺が『クリエイト・アース』で大きな壁を作り、『クリエイト・ウォーター』と『フリーズ』で固めて堅牢な壁を作り出した。
「…多分こうやって使う魔法かな…」
「違いますよ! 普通はそんな使い方しませんよ! 何で初級魔法を魔法使い以上に使いこなしてるんですか! おかしいですよ!?」
「いや、初級魔法って優秀な魔法使いほど縁のない魔法になっていくんだろ? なら本職じゃない俺が魔法使い以上に使いこなしてた所で何もおかしくないと思うんだけど…」
「…あっ」
取り敢えず、ゾンビメーカーが出るまでは皆でぬくぬくする事にした。
ーー
「…何か嫌な予感がするわ。ねえカズマ、引き受けたクエストってゾンビメーカー討伐よね?この気配、そんなチャチな存在が出てきた感じじゃないと思うんですけど」
「アクア、申し訳ないけどその発言は控えて欲しい。フラグ建築という言葉があるから…」
なんてアクアに言いつつ、俺達は移動を開始した。時刻もそろそろ頃合いなので、クリスから教わった敵感知スキルを発動させる。
「待て、敵感知に引っかかった。反応は…全部で八体…あれ、何か多い…?」
俺がそれを言った直後、妖しくも幻想的な、青白い光が墓場の中央で出現した。恐らくあれは魔法陣…それも超強力な…
「…あれ…ゾンビメーカーではない…気が…」
めぐみんが自信なさげに呟いた。
「突っ込むか? こんな時間に墓場にいる以上アンデッドに違いないだろう。なら、アークプリーストのアクアがいれば問題ない」
ダクネスが大剣を胸に抱えてソワソワしだす。
「二人とも落ち着いて。まずは状況確認が先決だ」
と、俺が言った矢先。
目の前のアクアが突然叫びだした。
「あーーっ!」
そしてアクアは驚き固まる俺の横を通り過ぎ、そのままローブを纏った人物に向かってとんでもない速度で走り出した。
「……あっ! ちょ、アクア!?」
「リッチーがノコノコとこんな所に現れるとは不届きな! 成敗してやるっ!」
リッチーとは、アンデッドの中ではヴァンパイアやフランケンシュタインなどと肩を並べるほど有名なモンスターだ。
元は人間の魔法使いが、人の身には許されない魔道の力を手にするために人間の体を捨て去る事でアンデッドと化した、という設定。
アンデッドにしては高いその知能により、ゲームなどではボスを任される事も多い。
だが、そんなラスボスみたいなリッチーが。
「や、やめやめ、やめてええええ! 誰なの!? いきなり現れて、何で私の魔法陣を壊そうとするの!? やめて! やめてください!」
「うっさい、黙りなさいアンデッド! どうせこの妖しげな魔法陣でロクでもない事企んでるんでしょ、なによこんな物!」
…ぐりぐりと魔法陣を踏みにじるアクアの腰に、泣きながらしがみついていた。
取り敢えずゾンビメーカーではなかったが、それよりもリッチーと言われているローブの子の抗議の内容とそのにじみ出る感情ぶりから察するに、多分悪いモンスターではないのだろう。
「やめてー! やめてー!! この魔法陣は、未だ成仏できない迷える魂達を、天に還してあげるための物です! ほら、たくさんの魂達が魔法陣から空に昇っていくでしょう!?」
リッチーの言う通り、魂的な何かがふよふよと浮いていて、魔法陣に入るとスゥッと消えていく。
「口車には乗せられないわよ! というかそんな善行はアークプリーストの私がやるから、あんたは引っ込んでなさい! 見てなさい、そんなちんたらやってないで、共同墓地ごとまとめて浄化してあげるわ!」
「ええっ!? ちょ、やめっ!?」
アクアの宣言に慌てるリッチー。それに構いもせず、アクアは魔法陣を展開する。
「『ターンアンデッド』!」
墓場全体が、アクアを中心に白い光に包まれた。アクアから沸き出すように溢れるその光は、リッチーの取り巻きのゾンビ達に触れるや否や、かき消すように存在を消失させる。
その光はもちろんリッチーにも及…
「ひえぇ…範囲凄いなアクアは。っと、ウィズさん大丈夫ですか?」
「ふえ…?」
ぶ訳でもなく、俺の救出によって魔法の効果範囲から脱出していた。
「カ、カズマ!? ちょっと、何してるのよ!?そのリッチーは早く成仏させないと…」
「一旦落ち着いてくれアクア。こちらはウィズ魔道具店店長のウィズさんだぞ」
「もう少しで浄化されるところでした…ありがとうございますカズマさん。改めまして、私はリッチーのウィズと申します。…今まで隠しててごめんなさい」
そう言ってローブをめくったウィズさんは、リッチーのような腐った顔でも頭蓋骨でもなく、茶色い髪が目立つ二十歳くらいの女性の姿だ。
「いや、それは別にいいんですけどね。それよりウィズさんは何でこんな事してるんですか?」
「カズマ! 何でそいつと喋ってんのよ、そいつは結構なレベルのモンスターよ! 今の内に倒さないと確実にマズい事になるわ!」
アクアがまだ怒っている。
そんなに気にしないでもこの人は普通にいい人なのに、何で攻撃的なのやら…
「私は皆さんの言う通りのリッチーですが、そのおかげで魂の声を聞く事ができるんです。それで毎日お話ししていたら、共同墓地の魂の多くはお金がないので葬式もまともにして貰えず、成仏できなくて困ってる方が多いんです。一応形だけでもアンデッドの王である私が、定期的にここを訪れ、還りたがっている子達を送ってあげているんです」
改めて凄い人格者だ。
というか、正直な人なんだな。良くも悪くも、自分のありのままを俺達に見せてくれる人のようだ。
「それはもう人として素晴らしすぎて俺からは何とも言えないですけど…魂達の成仏は町のプリーストとかがやってくれるんじゃあ…?」
ウィズは俺の疑問に少したじろぎながらも答えてくれた。実に遠慮がちな言い回しで、だが。
「そ、その…この町のプリースト達は拝金主義…いえ、現実的な手段を取っておられる方が多い、というか…えっと…」
アクアも職業はアークプリーストなので、言いづらいのだろう。
「そういう事ならアクアに任せた方がいいと思いますよ。アクアは凄腕のアークプリースト、特にアンデッドの浄化に関しては右に出る者はいなくてですね…な、アクア」
「え? …あぁ! もっちろんよ!」
アクアは右手でブイサインを作り、自信満々に肯定した。
「というか、このクエストを受注したのは私なのよ。もちろん皆に私はダメダメじゃないって認めて貰う意味もあるけど、拝金主義のプリーストなんかに魂の浄化は任せられないわ」
「そ、そうだったんですか!? なら私は邪魔でしょうし、帰りますね! 私がここに来ると、形が残っている死体は私の魔力に反応して勝手に目覚めちゃうんです」
成る程、そういう事…
「あ、あれ? 『敵感知』に新しい反応が…これは…地下…から…?」
「私が呼び起こしちゃったんでしょうか?」
ウィズはばつが悪そうに答えているが、これはそんな軽い問題で片づけていい奴じゃないと思う。
「…逃げろ、皆」
「「「え?」」」
アクア、ウィズ、ダクネスが見事にハモる。
「逃げろ皆! これは、この反応は多分…」
俺が言い切る前に、それは現れた。黒く染まる鱗に鈍く紅い光を放つ眼光、骨や腐肉が絡みギシギシと音を立てるその巨体を見た者は後にこう語る。
あれは、間違いなく龍だった、と。
「ドラゴン…ッ!!?」
ドラゴンが出てきたのはアクアがウィズを浄化しかけなかったせいでウィズが弱体化しなかったから目覚めた感じですね。