この素晴らしいカズマに祝福を!   作:名もなき駅員

8 / 20
原作ルートから着々と離れていく聖人カズマさん。


この素晴らしい腐竜王に祝福を!

「何アレ、何なのアレ、何なのよアレ!?」

 

アクアは怯え、たじろいでいる。

 

「落ち着け、めぐみんの所に逃げよう!」

 

ダクネスはその場で的確な判断を仰ぐ。

 

「ご、ごめんなさい皆さん…私が、私がぁぁ…」

 

ウィズさんは責任にのし掛かられ、涙目になっている。

 

「皆はとりあえず遠くに逃げてくれ! 俺はコイツをアクセルから遠ざけてみるから!」

 

俺が叫ぶと同時に、三人の顔が青くなる。

 

「なっ!? ば、馬鹿言ってんじゃないわよ!? そんな事したらカズマがし、死んじゃうかもしれないじゃない!」

 

「そうだ! いくらカズマと言えど最上級のドラゴンロード、それもデスドラゴンロードを相手にすれば敵わないぞ!?」

 

「カズマさん、デスドラゴンロードは幹部に並ぶ強さを持つ種族です! 戦えば生きて帰れる保証はないんですよ!?」

 

三人は俺を必死で止めようとしてくれている。

けど、俺は別に自爆しようとしている訳ではないのだ。

 

「心配しなくても大丈夫だって。この子を引きつけて町から離すだけだから」

 

「で、でも…」

 

「アクアとダクネスはめぐみんを避難させてくれ。ウィズさんも店に逃げてください」

 

「……、ああ、分かった。アクア、行くぞ」

 

「ダクネス!? ちょっと!? か、カズマっ!」

 

ダクネスはめぐみんの元へと戻っていった。アクアもダクネスに手を掴まれ、声が段々と遠ざかっていくのが聞こえた。

 

「ドラゴンさん、こっちこっち!」

 

俺は大声を上げながら魔法を放ち、デスドラゴンロードの意識を誘導する。町からだいぶ遠ざかったところで、俺はショートソードを抜き…

 

「おりゃあっ!」

 

全力で叩きつける。これでまたデスドラゴンロードの意識をこちらに向けることができた。

しばらくこれを繰り返せばいけるかも!

 

「ふんっ!」

 

俺は三十分近く死闘を続け、町から大分離れた所までドラゴンを誘導する事ができた。

 

「このままいけば…」

 

その時、俺の正面で何かが光った。何かと思って顔を上げた俺が見たのは、デスドラゴンロードの口の中。舌による火打ちの光だった。

 

「え…ブレス…」

 

俺が言い終える前に、デスドラゴンロードはブレスを放った。全てが消し飛んだ。…ただし、俺とウィズさんを除いて。

 

「ウィズさん!?」

 

「…元はと言えば私が招いた事故です。デスドラゴンロードには浄化魔法はあまり意味をなしませんが、私なら…『ターンアンデッド』!」

 

デスドラゴンロードが悲鳴を上げ、苦痛に悶え始める。俺はその隙を逃がさず、全速力でデスドラゴンロードに突っ込んでいく。

 

「うおおおぉぉぉっ! 『ティンダー』!」

 

腐肉に深い斬り込みを入れ、中を着火する。

ブレスという事はきっと中に燃えるものがあるはずだ。外部から着火すれば、或いは…

俺の読み通り、デスドラゴンロードは激しく燃えだした。ブレスを吐いて抵抗するがやがて倒れ、一つの石を吐き出す。

 

「これは…?」

 

俺はその石を掴むも痛みから立ち上がれず、燃えるドラゴンの上で俺はショートソードを立て、もたれ掛かるように眠った。

 

ーー

 

「…ん?」

 

俺は気付けば宿で眠っていた。

隣に絶句したアクアもいた。

 

「かず、ま……? か、ず、ま……」

 

「どうし…っぐほっっ!?」

 

「うあああああああ!! がずま、ガズマぁ!! よがっだ、いぎでだぁ…!」

 

涙や鼻水を流しながら俺をぐりぐり押すアクア。そうだ、俺はあの時…俺はポケットからあの石を取り出す。よかった、夢じゃないみたい…

 

「カズマ、起きたのか!?」

 

「カズマ!!」

 

「おお、ダクネス、めぐみん」

 

ダクネスもめぐみんも驚いた表情からやがて泣きそうな表情へと変わり、俺に駆け寄ってきた。

 

「カズマがデスドラゴンロードと相討ちになったと聞いた時は本当に心が真っ暗になったぞ。心配させるんじゃない全く…」

 

「カズマが寝ている間ずっと、気が気でなかったんですからね! 反省してください!」

 

「ご、ごめん…」

 

それから俺は事の顛末を聞いた。アクアがダクネスの制止を振り切って気絶した俺に駆け寄り、回復してくれた事。ウィズが俺を助けてくれたと知り、アクアが和解した事。そして、デスドラゴンロードの討伐報酬が出ている事。

 

「カズマ、あの時は、その…ごめんなさい」

 

「いいよいいよ。ウィズさんも許してくれたんだし」

 

「しかし何というか…」

 

ダクネスはそう溜息をつきながら、一枚の紙を覗く。そこに書かれていたのは、ある店の住所とそこまでの道のりの地図。

 

「何故リッチーが普通に店を開いてるんだ…この町はザル警備過ぎなのではないか…?」

 

ウィズさんは元冒険者らしいから、冒険者カードを提示したんだろう。リッチーなら魔力の隠蔽も多分できるだろうし…

 

「しかし、ウィズという方のおかげで本当に助かりましたね。デスドラゴンロードのブレスをまともに食らっていれば炭化は必至ですから」

 

「うわ、マジかぁ」

 

一歩間違えてたら死んでたかもしれないのか? いやまあでも、過ぎた事は考えても変わらないので、今はいいか。

 

ーー

 

「知ってるか? なんでも魔王の幹部の一人が、この街からちょっと登った丘にある、古い城を乗っ取ったらしいぜ」

 

ギルドに併設された酒場の一角で、俺は相席している冒険者の話を聞いていた。

 

「魔王の幹部、か…随分と物騒な話だけど、俺には縁の無い話だね。なるべく危険な目には遭いたくないし、遭わせたくない」

 

「ま、何にせよ。あの廃城には近付かない方がいいってこったな。幹部ってからには、オーガロードやヴァンパイア、はたまたアークデーモンか堕天使か…お前でも苦戦する奴かもしれねぇぞ? なるべく廃城近くでのクエストは避けた方が無難かもな」

 

男に礼を言って立ち、三人の元へ戻る。

 

「…あの、カズマさん…」

 

ふいに、アクアが話しかけてくる。

 

「どしたアクア?」

 

「つかぬ事を聞くけど、その…他のパーティーに移籍とか…ないわよね…?」

 

ふと見るとアクアが涙目になっていた。

 

「? いや、ただの情報収集だけど…」

 

「…の割には随分と親しげでしたね?」

 

「ハッ…これが寝取られと言うヤツか…!? し、しかし私の予想と相反して心が苦しい…」

 

今更このパーティーを捨てるなんて有り得ないことだと思うんだけどなぁ…皆俺のわがままに付き合ってくれてるし、とても素直でいい子達だ。

 

「俺が移籍なんてする訳ないよ。確かにこのパーティーは完成されてるし、俺なんていらないと思うけど、俺はまだここにいたい…かな」

 

もちろん皆が出て行けって言うなら出て行くけどね、と付け足してアクアの席の隣に座ると。

 

「「「捨てる訳ない(でしょ・ですよ・だろう)!!」」」

 

「お、おぉ…?」

 

俺は皆の勢いに気圧され、思わず頼りなさそうなふにゃけた言葉を絞り出した。

 

ーー

 

俺がドラゴンの事件から起きた後日、例のキャベツ狩りのクエストで収穫したキャベツの精算が終わったため冒険者に報酬が渡されている。

 

「カズマ、見てくれ。報酬が良かったから鎧を強化してみた。…どう思う?」

 

ダクネスが嬉々として鎧を見せつけてきた。それは一言で言うと成金趣味の貴族のボンボンがつけてるみたいな感じの鎧だったが、ダクネスにそれを言うのは酷だしなぁ…

それに、俺は褒めてほしいとばかりにソワソワしているダクネスを素直に褒めたいのだ。

 

「うん、似合ってるぞダクネス」

 

「! ふふ、ふふふ…」

 

ウキウキして照れ笑いしてるダクネスはまだいいんだけど、その隣のめぐみんはちょっとテンションが上がりすぎな気がする。

 

「ハァ…ハァ…た、たまらない、たまらないです! 魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色艶…ハァ…ハァ…ッ!」

 

めぐみんは新調した杖を抱き抱えて頬ずりしていた。どうやらあの杖に使われているマナタイトという希少金属は、魔力の威力や質を向上させる性質を持っているらしい。

ダクネス同様、報酬で購入したっぽい。

俺も既に換金が終わってホクホクだ。デスドラゴンロードの時も合わせるととんでもない大金になる。今度こそ盗られないように小分けにしよう。

今回のキャベツ狩りの報酬は均等に分けるのではなく、それぞれ自分で捕まえた分をそのまま報酬にしようという事になった。

それはアクアの案で、そのアクアは今換金作業をしに受付にいるのだが…

 

「なんですってえええ!? どういう事よっ!」

 

!?

俺が慌ててカウンターを見ると、受付のお姉さんの胸ぐらを掴み、何やら揉めていた。

 

「何で五万ぽっちなのよ! どれだけキャベツを捕まえたと思ってんの!? 十や二十じゃないはずよ!」

 

「そ、それが、申し上げにくいのですが…アクアさんが捕まえてきたのは、殆どがレタスで…」

 

「な、何でレタスが混じってんのよ!?」

 

「私に言われましてもっ!」

 

会話のやりとり的に、報酬額が少なかったらしい。アクアがわたわたしながら俺に近付いてきた。

 

「か、カズマさん! 参考までに、今回の報酬はおいくらかしら…?」

 

「ええと…100万とちょっとだけど…」

 

「「「ひゃっ!?」」」

 

俺が懐から札束を取り出すと、そこにいる全員が絶句した。俺が回収したキャベツはどれも質が良く、経験値豊富なキャベツだったようだ。

幸運ステータスのおかげかも。

 

「カズマさーん! 助けてぇ! 私、もっとガッポリ入ってくると思って借金とかツケとか、色々しちゃってるのよぉー!」

 

「いいよいいよ。はい、お金」

 

俺は札束の中から50万エリスを渡した。

 

「ほ、ほんとに!?」

 

「アクアのためなら別に構わないよ」

 

「…そっか」

 

アクアは申し訳無さそうに俯く。

 

「それに、忘れてるんじゃないか?」

 

「え?」

 

呆然とするアクアをよそに、俺は懐から先程よりも分厚い金の束…が入った袋を取り出す。

 

「デスドラゴンロードの報酬だよ」

 

「「「あっ!!」」」

 

デスドラゴンロードの報酬は五億エリス。それは、たかだか一介の冒険者が得るには少しばかり行きすぎた値段だった。




デスドラゴンロード戦は賞金とカズマの強化のための必須イベントなので入れました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。