蟲人の冒険 作:蟻人B
筆者は文字書きではないので文章は拙いかと思いますが、オーバーロードの世界観や設定が好きな方に楽しんでいただければと思います。
トウロウ・アーマードは、蟲国──旧ガテンバーグ──首都にある城に呼び出されていた。
蟲国の首都といっても、ここらの建造物は元々人間が利用していたものだったらしいし、国としての機能もあってないようなものだ。300年ほど前に、内乱に続きモンスターと亜人たちの侵攻があり、ガテンバーグが滅亡した。その後、滅びた都市を
蟻人の門番に通されて、そのまま城の敷地内を進んでいく。蟻人など大した強さではないのだが、形式上警備として配置している。兵隊蟻人とかいう、蟻人の中でも戦闘に向いた種類の個体がこれに就いている。
蟲国においてはおおよそ強さで身分が決まってくる。例えば、蟻人は力がそこそこあって働き者であるため、労働者階級といった扱いを受けている。また、
そんなことを考えていると、もう父のいる部屋の前であった。トウロウはノックしてからそのまま部屋に入る。
「父上、トウロウです。ただいま参りました」
「トウロウよ、よくぞ来た。……私は面倒な挨拶は好きでないからな、早速本題に入るが、お前をここに呼んだ理由はほかでもない。アインズ・ウール・ゴウン……そう、アインズ・ウール・ゴウン魔導国だ」
「魔導国……がどうかしましたか?」
「ああ……お前には、魔導国へ諜報に行くことを命ずる」
魔導国。ここから北の方の辺境に最近できた国だ。なんでも、魔導国の自国への侵攻を受け、ここから南東にある国へ逃げてきた人間がいるらしく、そこらではそこそこ名の知れた冒険者だったらしい。トウロウも最近それを聞いて魔導国の存在を知ったばかりだ。
そんな国の情報を、外交にも興味のなかった父がなぜ欲するのか。北方の辺境までは大森林が間にあるため、わざわざこちらに侵攻してくるとは考えにくい。また排他種族的な思想を持つと聞くスレイン法国の方が厄介だろうし、諜報するにしてもどちらかというと法国を優先すべきではないのか。
だが、父の命令は絶対だ。強さが権力へと直結する蟲国において、最強の王である父へ口答えすることは許されるはずがないだろう。
「……畏まりました。それでいつ頃までに出立すればよろしいでしょうか?」
「そうだな……できれば早めがいいな。戦闘行為が発生するかもしれん、メンバーを選抜してパーティーで行くのが良いんじゃないか? お前は役割としては物理
そこでトウロウは頭を悩ませる。なぜなら、適役が思い浮かばないのだ。
自分より強い兄弟は、その強さ故に傲慢で、自分の話や指示を聞くとは思えない。逆に自分より弱い兄弟は、長距離移動における体力的な面や外敵に見つかるリスクなどを考えると、足手まといだ。父の実子でない者たちに至っては、戦力的に論外だ。それにただの諜報なら、隠密能力の高い自分だけで行動した方が良いだろう。
そこまで考えてから、トウロウはその口器を開いた。
「父上、私一人で向かおうと思います」
「うむ、そうか……。まあ、お前に匹敵する強者などほとんどいないだろうから、問題ないとは思うが……」
トウロウは、透明化能力や盗賊としての隠密能力により、偵察や諜報などに使われることが多々ある。したがって、未踏の環境に赴き、未知の敵に遭遇する機会も必然的に多くなる。また、ガテンバーグに残された人間の書物を読むのが趣味であることもあり、モンスターについての情報を首都に残された書物などから読んでいた。それらからトウロウは蟲国では比類のないほどモンスターや戦闘面での知識を有し、そちらの面での役割も担当するほどであった。それも、トウロウがこの仕事を任された要因なのだろう。
「……とりあえず私から言っておくことは、できるだけ目立たぬよう行動すること。何か問題が発生した場合は生き伸びることを優先せよ」
蟲系の種族は肉親に対する情が薄く、子供ですら下手をすれば食糧とされる場合もある。先ほどの父の言葉は自分の身を案じてのものではない、持ち帰られる情報が欲しいだけなのだろうな……と思いつつ、トウロウは肯定の返事をした。