蟲人の冒険   作:蟻人B

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準備

トウロウが修めているものをはじめとした盗賊系職業は、習得していない系統の魔法のスクロールを使うことができる。スクロール──魔法を用いるか否かによって、対応可能な幅は大きく変わるため、宝物庫からいくつかは持っていく許可を得た。ただ、蟲国にあるスクロールは、魔法詠唱者の住民特に兄弟たちが修めている職業の偏りのために、多くが信仰系の魔法詠唱者が習得できるものになっており、特に高位のものはほとんどがそれである。

 

どんな魔法のスクロールを持っていくかを考えながら歩いていくと、やがて宝物庫へと到着する。人間の国が使っていた宝物庫をそのまま使い続けているもので、現在鍵などはかかっていない。無防備かもしれないが、ここにあるのは宝石や金貨などの財と、スクロールや価値の低めな武具くらいだ。城内を歩いていれば何体かの蟻人に遭遇もするだろうし、何より財宝には興味のない者ばかりで、わざわざ警備する意味も薄い。

トウロウは鎌のような前脚で重厚な扉を器用に左右へ押し開ける。そして黄金に輝く山を横目に巻物(スクロール)置き場へと足を進めた。

 

蟲国におけるスクロールは、低位のものは獣の皮などを用いているが、多くは茸蟻人(グリエイク)──雑食性だが、巣に持ち込んだ葉で栽培した茸を主に食べるらしい──の一部が使える特殊技術によって特別な木の皮から生成された紙を使うものだ。このスクロールは第五位階までの魔法を封じ込めることができる。以前は第四位階までしか込められなかったのだが、父と茸蟻人との子──異母弟が作成したスクロールはもう一段階上の魔法を込めることを可能にした。ただこれは生産効率が悪いらしく、それほど多くはない。

 

トウロウはスクロールの選別を開始する。まず選んだのは、各種位階の召喚魔法と治癒魔法だ。使う際の敵の強さや用途、損傷度合いによってどの程度の魔法が必要か変わるため、複数持っていく。次に、帰路を楽に済ませられる〈転移(テレポーテーション)〉、大森林や人間の街でも使えそうな〈全種族魅了(チャームスピーシーズ)〉、情報収集の際に使うだろう〈人間形態変化(トランスフォーム・パーソン)〉、移動に便利な〈飛行(フライ)〉、長距離移動のための〈下級(レッサー・)体力増大(コンスティチューション)〉、蟲系種族の弱点である毒の対策に〈毒治癒(キュアポイズン)〉、姿や気配は消せるが臭味までは消せないため〈無臭(オーダレス)〉、連絡に使う〈伝言(メッセージ)〉。

これらのスクロールを、それぞれ適当数──流石に第五位階のものは1枚しか持っていかないが──持っていくこととする。そこでトウロウは自身が唯一習得している第零位階魔法、<インベントリ/収納庫>を使用する。この魔法は父の実子である兄弟たちしか使えない魔法で、次の世代──孫は習得できた者はいない。収納できる体積や重量に限度があり、さらに容量もそこまでないため手が空く程度のメリットしかないが、スクロール程度を持っていくのには便利だ。

 

こうしてトウロウは蟲国から出立し、大森林の方向へ向かった。

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