砂と偽りのアルフライラ   作:しちご

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04 Prologue

 

貫かれた衝撃に、違和感が在った。

 

赤銅に輝く、飾りひとつ無い無骨な槍。

それを操るは末の娘、赤銅のナハース。

 

王と、黄金、そして赤銅の乱戦の中の隙を突かれた。

 

「完全な複製は無理でしたが、幾度か使ったデバイスですからね」

 

貫かれ、倒れ、周囲に名を呼ぶ声が響き、玉座が寄る。

だがしかしおかしい、肉体は再生されていくのだが意識が霞み。

 

崩壊していく。

 

「それでも、壊すだけなら何とかなりましたわ」

 

ころころと楽し気に哂う声。

 

夫の叫び声、弟、息子の、あれ、何で私にそんなものが。

肉体からちからが消える、たましいがくずれていく。

 

何故、玉座は作動しているはずとみみから音がする。

 

意味を考える余力も無く、ただ薄影に溶ける様に、けどなを呼ばれる。

 

なまえ、そうだ名前だ、私の名だ。

 

瞼を開く、いや既に開いていたのか、僅かに焦点が戻る。

 

倒れた私を支えるのはザハブ、おい旦那、お前は何してる、視界の端。

それだから肝心なところでヘタレとか言われるんだ、ああ畜生。

 

旦那の権能を息子の権能が防ぐ、音と声。

 

ナハースを相手しているのか、そうじゃないだろ、残りは僅か。

 

ああ畜生、本当に畜生。

 

やるべき事はわかる、他の手段を模索する時間も余力も無い。

 

かつて姉に言った、愛はいつも私の前に在って手が届かない。

 

当然だ、きっと記憶に無い生前の私も同じ様に生きたのだろう。

それよりも優先する事柄が在れば、私はそれを優先してしまう。

 

他の物を抱え込むから、届かせるための手が無くなるんだ。

 

「ザハブ、キミにはいろいろと背負わせることになる」

 

すまないと内心の言葉は漏れる事も無く、ただ死力を尽くし彼の頭を抱え。

 

唇を重ねる。

 

妃の権能の継承、妃の玉座の譲渡、確認。

 

ついでに舌も入れた。

 

童貞が固まっている、まあコイツもヘタレだからな。

とはいえまあ旦那同様のヘタレ極か、そのうち誰かに奪われるだろうさ。

 

さて、旦那は怒り狂うか。

 

まあ権能の代金だ、甘んじて恨まれろ。

 

騒々しい音が、していたような気がするがもう理解できない。

 

情熱的に食い散らかしていれば、心は伝わったのだろうか。

 

乱暴だが、姉の言は正しかったのだな。

 

闇の中に消える私の意識は最後にそんな事を思った。

 

―― 思い返した

 

自分の脳髄に残っていた、妃の大神マリカの最後の記憶。

 

我が主、マリクに伝える事も無い。

私を造ったのも彼なのだから、この内容も知っているだろう。

 

理解は出来るのだろう、だが、理解したくは無かったのだろう。

 

誰が彼女を殺したのか。

 

誰が彼女が無念の底に堕ちるまでの道筋を作ってしまったのか。

 

誰を仇と恨めば良いのか。

 

自責と他責の交錯は王の大神の血涙へと姿を変え。

 

幼稚な嫉妬から来た黄金への敵対は、現在ではもはや仇への憎悪と化し、

混乱の果てに真の仇である赤銅との協調すら果たし、義娘は逃げた。

 

いや、私が義母と名乗っても良いのだろうか。

 

何と無しに虚空を見上げ、思考が止まる。

 

「終わりが、近いのかもしれない」

 

突然に、無意識からそんな言葉が零れた。

 

何故ならば、千の夜が私を捉えた。

全てが破綻し、裁かれるべき時は近いと。

 

そして大神の父と娘は、どのような結論を世界に齎すのだろう。

 

私は ――

 

黒の神国、高位従属神ハラムは神殿の奥でただ瞳を伏せた。

 

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