砂と偽りのアルフライラ   作:しちご

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05 Prologue

 

神は、高慢の元に嘲笑を以って追い払われた。

 

緑の髪を流す、長い耳の女性は静かに歩んでいく。

 

何事にも役に立たず、さらに王の意に添わぬ駒など要らぬと。

石と罵声を浴びながら、神殿造りの城郭を抜ける。

 

「やれやれ、少しは手心が欲しいものだよ」

 

緑の髪に絡みつく、小石を払いながらの嘆息。

 

背後に遠ざかる森人の王国は、悪神追放の歓喜に沸いていた。

 

とぼとぼと供も無く単身、アフダルは街道を歩み続ける。

青空の下に見えるのは、整備された道と左右に並ぶ森林。

 

「わずか数代、理想は腐りて遺志は恣意的に歪められ」

 

何という徒労感と、溜息が風に散った。

 

左右の林からは様々な音。

 

動植物は蠢き、砕き潰れる音と、血の臭い。

 

「まあ、これもまた民の選択か」

 

もはや、我がとは付かぬ。

 

刺客であった肉塊が土に埋まる頃になれば、都は既に視界に遠く。

緑の大神は視線を切り、果てしなく続く未開の大地へと目を向けた。

 

「答えには到達、神としての義務は終わった」

 

人は人として生まれ、人としての責任のままに生きて死ぬ。

生老病死、喜怒哀楽の全ては人のままに、人が得る。

 

望むと望まざるに関わらず。

 

「かつて我が民が望んだ、夢の形とは違い過ぎても」

 

そこにはもう、神は居ない。

 

一歩、踏みしめた。

 

「例え、模範解答には遠くとも」

 

歩を進める。

 

もはや緑の答えは出た、出てしまった。

 

整備された街道が砂利に変わり、土が露出する物に変わっていく。

月と太陽が幾度も巡り、何もかもを終えた大神の抜け殻は歩み続ける。

 

川で服と身体を洗い、獣道は草木を移動させ歩み易く変える。

 

どこまで進んだのか、陽が沈む頃には海原が見えた。

 

自分が今、どこに居るのかも正確にはわからない。

ただ、代り映えの無い景色の、突然の変化。

 

終には辿り着いたと、そんな諦観が神の思考に浮かんだ。

 

そして宵に浮かぶ星月の下で、久々に息をした気分に成る。

月明かりの下で水平線が、世界の果てを誘っていた。

 

「先史では、海の向こうに楽園が在るとか言われていたんでしたっけ」

 

水平線の果てにそれは在るのか、それとも此処が楽園であったのか。

 

馬鹿馬鹿しい思考が、神の表情に苦笑を生む。

 

「今度こそ自分だけの、新しい夢でも探しに行きましょうか」

 

浮かぶ月に、懐かしい人の名前を思い出した。

 

大神を失った森人の国は衰退を続け、やがては消滅の憂き目に逢う。

残された民は森に還り、精霊の加護の元に静かに暮らし始めた。

 

神よりの自立を謳った賢王の志は歪められたままに消え果てて。

ただ亡国の愚王が、晩年に大神の行方を捜していたと伝わる。

 

後にジャマール・シャムスと名乗る。

 

神国の狭間を歩む吟遊詩神の旅は、この様に始まった。

 

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