砂と偽りのアルフライラ   作:しちご

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06-08 先見の心眼

 

神国を縦断した列車は神都に至った。

 

訪れた者が息を呑む、高層の壁に囲まれた石造りの都市。

その城壁を貫通する様に造られた兵舎に、隣接する終着駅。

 

排煙の音も冷め遣らぬ内に、内外の商人たちは忙しなく動き。

駅舎は荷降ろしの活気に溢れ、そのままに卸売へと運ばれていく。

 

そんな荷物と一緒に運び出される物体が3つ。

 

担架に脱力し横たわる呑酒妖怪たちと、板の神である。

道中の駅での騒動で、手間賃に譲り受けた代物が凶悪であった。

 

竹酒。

 

熱と湿気を必要とする竹は、神都周辺に自生する物では無い。

しかし南端、イルカルフ周辺には多少の繁殖が認められており。

 

小規模な村などで、生育が遅く樹液の多い品種の筍の先端を切り落とし、

滴り溜まった樹液が自然酵母と乳酸菌の醗酵の果てに濁り酒と化す。

 

竹酒(ウランジ)と呼ばれる、醸造酒が造られていた。

 

舌に踊る弱い炭酸に、竹の爽やかな青さと乳酸菌独特の酸味を持つ地酒。

これを蒸留機にかけると、やや甘くまろやかな口当たりの蒸留酒と成る。

 

とは言えこれは春から夏にかけての酒であり、別物の話だ。

 

品種も土地も限られ、保存も効かずとても流通に乗る代物では無い。

ところがこの竹と言う植物、何かの拍子に節に樹液が溜まる事が在る。

 

傷でも在り雨水が溜まったのか、或いは成育に不具合でもあったのか。

百も切り倒せば、幾つかは水の溜まった節が見付かると言う。

 

大抵は腐り水であるのだが、奇跡的に内皮の糖分を元に自然発酵し、

竹の香り漂う香しい醸造酒が自然に生成される、そんな夢が在った。

 

まずは起こり得ない、奇跡的な代物である。

 

ならば人為的に似た様な工程を重ねてしまえば良いのではないかと、

そんな儚くも酒臭い人の夢を、無為に抱えてしまうのは人の性か。

 

かくして若竹に穴が穿たれ、蒸留酒が注ぎ込まれた。

 

冬から春にかけ、月が巡り元に戻る頃合に収穫をする。

 

仕込みの時機が遅く成れば、春に入り樹液が増え水の如く薄まり、

放置する期間が長ければ、水の如く竹に呑み尽くされ空と成る。

 

そんな丁度良い塩梅に手間を掛けられた、分かり易い高級嗜好品。

 

手に入れた後の道中、自動製氷神の加護も在り貴賓客室にて酒宴が盛り、

呑み易い竹の香りと、良い冷え、良い肴と万全に揃っていたのだが。

 

どれだけ呑み易かろうと、それの元は蒸留酒なのである。

 

空になった幾つもの竹筒は転がり、前後不覚の2名は運び出された。

なお、同じく運ばれる板の少女神は酒では無く、単にいつもの瀕死である。

 

呆れつつも同行する剣士が、酒臭い空間から解放された喜びに息を吸う。

 

そして眉を顰め、溜息の様に吐いた。

 

都市部だけあり、かなり空気は悪かった。

おそらくは水も良くないのだろうと言いそうな顔を、アキークが先導する。

 

清潔で華やかな表通りを辿り、軽く異臭の混ざる路地裏は通り過ぎる。

石畳を踏みしめて、やがて辿り着いたのは石造りの神殿であった。

 

近接の大河から引き込んだ水を、堀に湛える大神殿群。

 

中央に在る赤の大神殿を囲む様に、従神、不死の兵舎、各省庁。

赤の神国の中心であり、都を神都たらしめる心臓部にあたる。

 

その中に在る、死せる勇士の神殿。

 

不死の軍団と呼ばれる神造神族の拠点であり、武神の祀られる神殿である。

堀を渡り、アキークの誘導で神殿へと運び込まれていく担架と板。

 

最奥目指し、簡素な装飾の列柱の狭間を抜けていく。

 

石畳を駆け抜けて行く一同に、神殿内の戦乙女たちは驚き固まっている。

勢いのまま祀壇まで辿り着くかと思えば、流石に立ち塞がる者が在った。

 

「おっと、アキーク卿とは言え無体に通すわけにはいかないね」

 

すらりと抜いた片刃の長剣を突き付けるは、礼服を纏う猫頭の小柄な神族。

黄金の如く輝く毛並みを持つ砂猫族の神造神であり、名はセルサール。

 

対なる黒髪の猫耳戦乙女がその後ろに控え、回廊の空気が固まった。

 

何かをするのなら事前に連絡をとか、有体な言葉が紡がれ様とするその時、

板の上で冥府との境を反復横跳びしていた創世神が身を起こした。

 

枯渇しがちの猫分を求め、無意識に肉体が反応したのであろう。

手を伸ばし、板から降り、そして勢い良く吐血した。

 

「って、うわあああああぁぁッ」

 

倒れ伏す少女を反射的に受け止めた猫神は、容赦無くモフられる。

低酸素血症で蒼白に成っている身の上で、見事な執念である。

 

「もう思い残す事は ―― 無いかな」

「いや待て、何がどうしてこうなってんだよッ」

 

慌てて血を吐かせ気道を確保しようと試みる猫と、水を用意する猫耳。

矢庭に血臭漂いだした回廊で、少女の身体から力が抜けていく。

 

今まさに儚く成ろうとする少女の元に、騒ぎを聞きつけた神が訪れた。

祀壇の間から出てきたのは、大剣を背負った見事な体躯の大武神。

 

鍛え抜かれた肉体は鎧に包まれ、大理石の如き堅固な神威を示している。

 

「軍神、ロカーム卿と、お見受け、します」

 

こぽと泡立つ血の音を響かせながら、途切れ途切れの言葉。

 

「よくはわからぬがすぐに治癒を心得る神が来る、喋るな」

「どうか、どうかこの哀れな小娘の、最後の願いを聞き届けて」

 

そして血を吐く。

 

しかしその瞳の光は消えず、一途に縋る様な色合いを宿している。

涙を湛え非力な身上ながら、死力を尽くす懸命さに神々の心が打たれる。

 

「わかった、何であろうと聞き届ける故にもう動くな」

「今、何でもと言ったね」

 

途端、創世神の声色が普段に戻った。

 

すいと無造作に近寄ったサフラが、その首根っこを掴み板に放り込み、

その後ろの担架で、ハジャルが起動させていた録音の法術道具を止める。

 

煙を吹きながら修復されたアルフライラは、改めて板に座り口を開いた。

 

「ならばアハマルを裏切って、私の指示に従って貰おうか」

 

即座に砂猫神の刃が疾り、板に届く前に小刀に弾かれた。

刃を構えいつの間にかセルサールの前に居たのは、マルジャーン。

 

「帝国貴族かッ」

 

舌打ちをする猫の声の、気配を絶ち神族の斬撃を逸らす異常を、

帝国貴族と言うだけで納得されてしまう事実がハジャルをジト目にする。

 

「物凄く何か言いたそうな眼付きが気に成るんだけど」

「うむ、言わぬが華と言うやつじゃから気にするでない」

 

言いながら遅れ、担架から降りる細身の博士。

 

そして一連の流れを、くすくすと笑って眺めている少女に武神が問うた。

忠誠を弄ぶような愚行を好む、邪神か悪神の類かと。

 

「まあ軽いお遊びではあったのだけど」

 

心当たりが在るなあと笑いながら、板の神は言葉を紡いだ。

 

「言質はとっているのだから、考えて物を言った方が良い」

 

そしてハジャルに向かい親指を立てれば、同じ動作で返す共犯関係。

 

命や脅しに従うと思ってはいない、ただ記録として残された言葉は、

如何様にでも悪意の使い道が在る物だと嘯く外道たちである。

 

「何が望みだ」

 

武神が問うと同時に、神殿の窓から悲鳴が上がり人影が落ちた。

 

戦乙女と造神が幾柱か。

 

「残念だけど、神殿は封鎖しているから出れないよ」

 

気軽な気風の少女の言葉に、場の神族たちの顔が引き攣った。

そして場に在る唯一の知った顔、アキークへと視線を投げる。

 

視線だけで人を殺せそうなそれを受け、赤の将は溜息を吐き。

 

「えーとアルフライラ様、出来るだけ穏便にお願いします」

 

道すがらに段取りを聞いた時点で、既に彼は諦観に至っていた。

そんな切なる人の願いを受け、創世神はこきこきと首を鳴らす。

 

「忠誠と言ったか」

 

退屈そうに呟き、繰り返しだがアハマルを裏切れと告げる神。

そして論外であると、忠義を唱え断る一同。

 

「思考を止め、主に負担を丸投げするのが貴様らの忠義か」

 

告げられた言葉に因り、神殿の空気が殺意に染まった。

 

「お前たちは、アハマルの笑顔を見た事が在るのか」

 

そして次いでの言葉に、凍り付く。

 

誰しもが身動ぎも出来ない鉛の空気の中で、ただ前に出た神が在る。

 

無言で背の大剣を抜き構える、武神ロカーム。

 

「僅かも曇り無き忠義、実に見事な物だな」

「言葉は不得手故、我が全てを剣で語りましょう」

 

嘲りの賞賛に、揺れず我を通そうと試みる大剣の武神。

 

僅かの加減も無く、高貴なる拳打を喚び寄せる気配を察した剣士が、

嫌そうな顔をして少女の前に立ち、その神鉄の大剣を抜いた。

 

「受けよう」

 

言葉は短く、切っ先が互いを指し示す。

 

そのままに互い、同じ様に握った柄を肩口の高さに移動させた。

顔の横に刃を通す、牡牛の角の如きと謳われる構え。

 

間、ひとつ。

 

サフラから刃を翻し放たれた袈裟の斬撃を、

斬り下ろし染みた刺突で受けるロカーム。

 

剣閃に差し込まれる様な刺突に、互いの刃が鳴った。

 

それぞれ斬撃とは逆に歩を進めており、剣士たちの移動が円を描く。

 

弾かれたまま脇に流し、振り回すような横薙ぎを振るう武神。

剣閃の終点を自らの前に置き、横薙ぎを上に打ち掃う人の剣士。

 

間が開く。

 

上がった刃を片手の斬り下ろしに変え、斜め前に踏み込むサフラ。

そのまま剣身を逆手に握り、持ち上げ相手の顔面に向けて突き入れる。

 

奇しくもまったく同じ動きをしたロカームと、刃の先端が交差した。

 

ぎりと、大剣の動きが止まる。

 

互いの刃が嚙み合い、強制的に制動された大剣使いたち。

しかし止まったのは刃だけで、身体は僅かも止まる事は無く。

 

負担に悲鳴を上げる両腕を捻じり、嚙み合いを外す。

回り外れた互いの刃は、そのままに互いの頭部へと向かう刺突。

 

頬の横を、刃が突き抜けた。

 

僅かに髪が散る。

 

互いにすれ違い、鏡写しの様に身を翻す人と神。

互いに刃を残し、脇の構えから同じように横に薙ぐ。

 

剣閃の重なりに音が響き、間合いが開いた。

 

即座、踏み込む。

 

牡牛、愚者、一角獣、牡牛、様々に構えが移り行く。

脇構え、王冠、火掻き棒、貴婦人、その度に刃が閃き続ける。

 

幾度の音を越え、再度に間合いが開いた。

 

切っ先を突き付け、呆れた色を覗かせながら武神が口を開いた。

 

「その若さで、千里眼(ヘルゼーエン)に至っておるのか」

 

千里眼、天性の空間把握を戦闘経験で磨き抜いた果てに在る剣術奥義。

敵対者の斬撃を、未来予測の元に完全に把握する理外の見切り。

 

サフラが大剣使いとして、五体満足で生き抜けた最大の要因である。

 

「よくは知らん」

 

言われる意味を識らぬまま、幾度目かの牡牛の構えに戻す剣士。

対し軍神は、落ち着いて言葉を繋げた。

 

「わかるだろう、貴様より私の方が千里眼の精度が高い」

 

互いの身体を見れば、僅かの傷も無いロカームに対し、

サフラの衣服、各所を守る甲などに幾つかの傷が付いている。

 

「もはや勝敗は決した」

 

武神としての意地は既に示した、話し合いに移るも吝かでは無いと。

軽くアルフライラに視線を投げて言葉を締める。

 

既に、武神ロカームは目の前の剣士を気に入っていた。

 

頭が熱くなっていたのだと自覚する。

 

刃を抜いたのは明らかに愚行であった。

何某かの手段で無力化されてしまえば、何の言い訳も出来ない。

 

その窮地を汲み、刃を受けた剣士に恩義も感じている。

 

「殺したくはない」

「寝言かな」

 

しかしアルフライラは、提案を斬って捨てた。

 

「確かに勝敗は決している」

 

膝を立て、肘を乗せ、太々しく言葉を紡ぐ傲慢な神がそこに居た。

そして裾を直しながら、足を取って行儀良く座り直させるマルジャーン。

 

途端に可憐な美少女に化けるのは、おかしくは無いかと。

 

周囲の者たちが不可解な現象に疑問を持つ中、

少女は確信を持って口を開いた。

 

「サフラが勝つよ」

 

だから交渉の余地など無いと。

 

すんと、神殿の空気が澄み切った錯覚が在った。

 

顔の横に在った柄を僅かに下げ、しかし切っ先は武神を向いたまま。

僅かに息を吐き、肚の決まった剣士が視線に力を込めた。

 

迷いは刹那。

 

軍神もまた須らくの意識を脳の外に出し、剣を持ち上げる。

両の腕を空に掲げ、切っ先を天に向ける大上段。

 

名は、憤怒の型。

 

間合いは僅かに遠い。

 

突く。

斬る。

 

とても分かり易い、互いの狙い。

 

一瞬だったのか、それとも時間が過ぎていたのか。

 

音も無く身を傾いだサフラが、床を鳴らし踏み込んだ。

ロカームもまた、その刃を斬撃に代え踏み込んでいる。

 

意識の中では、刺突と共に身の横に踏み込んだサフラを両断していた。

 

しかし実際の剣閃は、サフラの頬をかすめ肩口を浅く斬る。

対しロカームは、その脇腹を浅く抉られていた。

 

武神の顔に、驚愕の色が貼り付けられる。

 

「馬鹿話も役に立つ物だ」

 

突き込まれた剣先は異様な速度で戻り、左に構えられる。

 

抉られた武神が刃を上げる。

 

それよりも速く、逆の刺突。

 

再びに抉られる。

 

そこで気が付いた。

 

―― こやつ、握り手を密着させておるッ

 

左右の握りを接触させる持ち手、その様な持ち方では、

梃子の原理を活用出来ず、まともな斬撃を放てるはずが無いと言う。

 

しかしそれはあくまでも大剣の上下移動に関しての話であり、

左右ならば肉体の発条を活用できる分、素早い取り回しが可能と成る。

 

先史に於いて、その様な術理の剣術が存在したと。

 

イルドラードでの馬鹿話の内に、聞いていた内容をサフラは憶えていた。

 

極端な行動、もはや上下に刃を振ればその瞬間に敗北を得るだろう。

しかし、どの様に動いた所でじり貧から敗北するのに違いは無い。

 

ならばこそ、全てを捨てて刺突1点に賭ける。

 

棒を振り回す様に右から左、左から右。

その踏み込みは、大剣術と違い剣の軌道に重ねる様に。

 

前へ。

 

握りと、踏み込み。

 

その2点の相違が、ロカームの経験に齟齬を生じさせた。

 

覚悟が、経験を凌駕する。

 

かろうじて武神は直撃を避け、しかしそのために体勢は崩れる。

意識よりも速く放たれた刺突に、ロカームは死に体にまで追い込まれた。

 

それは、もはやアルフライラの記憶にのみ残る忘却された剣技。

 

特徴的な握りと発条で、身体の左右に剣を振り回す様に放たれる連続刺突。

失われた先史に、天才剣士の名と共に語り継がれていた神速の三段突き。

 

天然理心流奥義、無明剣。

 

踏み込みと共に放たれた3段目の刺突が、過たずロカームの胴を穿った。

 

鎧が砕け、神の身が激音と共に吹き飛ばされる。

大剣が転がり、大の字に床を滑る祀られた軍神。

 

周囲の造神や戦乙女たちは驚愕に固まり、口を開けている。

生じた静寂の中、サフラの荒い息だけが響いていた。

 

僅かの間、誰の言葉も無い。

 

やがて落ち着いた中でロカームがむくりと身を起こした。

 

かんらからと笑い、楽しそうに自らの敗北を認める。

そして身内の驚愕の中で少女に対し、わかっていたのかと問うた。

 

愛かね、信頼かねと聞く武神に、創世神からは色気の無い返答。

 

「貴方は、完成されている」

 

だから相対し仕留められなかった相手には、抜かされる宿命だろうと。

 

「正しく道理だ、我が武神の名に居付いたが故の敗北であったかッ」

 

重ね笑うロカームに、神殿の空気もやけっぱちの色に染まっていく。

 

床に座り込んだままの武神の前に、呑酒妖怪が酒を並べ。

猫神はモフられ、逃げ、掴まり、モフられる。

 

「してサフラとやら、今日より剣神か剣聖と名乗らぬか」

「俺はただの剣士だ」

 

竹酒に舌鼓を打ちながら、機嫌良さげな武神の言に顔を顰める剣士。

その後ろで賓客に乱暴も出来ず、為すがままにモフられる哀れな砂猫神。

 

「名も実も要らぬと、まさに剣鬼と呼ぶべきか」

「ただの剣士だ」

 

心底に嫌そうな剣士の後ろで、終に猫神がゴロゴロと鳴りだした。

 

「そんな、余人に気を許さぬセルサール卿がああも容易くッ」

「あの少女、もしや猫神の上に在ると伝説の ―― 猫飼い神」

 

周囲に猫弾きですと訂正する創世神に、冷や汗を流す赤将アキーク。

 

「さて少女よ、話そうか」

 

やがて宴もたけなわに、武神がアルフライラに声を掛けた。

そして要求は何も変わらないと、涼しい顔で繰り返す板の神。

 

「僅かも曇り無き忠義、実に見事な物だね」

 

そして言葉も繰り返し。

 

「だが此処に、大義が在る」

 

同時、世界が接続され神殿がアルフライラの支配下に置かれる。

武神と猫神の頬が引き攣り、造神たちは知らず膝を折り首を垂れた。

 

「神造故か、防御が成っていない」

 

神威に打たれ、震える造神たちの上で気楽な声がする。

完全に掌握された魔素の流れが、神々の力を奪い視線も上げられない。

 

何者なのか。

 

大神の威光届かぬ辺境ならばいざ知らず、赤の大神の膝元で在る神殿で、

何の抵抗も無くごく自然に世界を切り取り、奪い去った異常。

 

「貴女はもしや、以前にアハマル様の語った」

 

畏怖に揺らぐ神々の中で、汗を流し問い掛けたロカームの言葉を、

遮る様にアルフライラは言葉を続けた。

 

「赤の大神ではなく、我が妹アハマルが笑える様に」

 

透き通るような声が、死せる勇士たちの神殿を染める。

 

「武神ロカームと連なる者たちよ、私に従え」

 

赤の大神が姉の来訪に気付き急行した時には、既に神殿は酩酊させられていた。

 

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