砂と偽りのアルフライラ   作:しちご

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Ex-06 6103A.D.

 

―― 6103A.D.

 

地球化計画の設定も随分と前に終わり、高位新人類も育った60+2世紀。

 

何もかもが一段落で、微妙に余暇の出来たアルフライラと兵器廠の爺は、

今日も勝手に占拠して事後承諾させた共同研究室に籠って遊んでいた。

 

入り口には、古代日本語で「メカ部」と書かれた札が貼られている。

 

「マジンガーは、駄目だあ……」

 

そして口から魂を吐き出す様な風情で、少女が零す。

 

「シミュレータの時点でヤバいのが丸わかりだったな」

 

最大の問題は、操縦席のパイルダーである。

 

その機動や性能には何の問題も無い、ただ単に位置が悪い。

巨大ロボの頭の上に視点を置かれると、歩行するだけで搭乗者は死ぬ思いをする。

 

コクピットが丸見えのデザインのため、誤魔化す事も不可能であった。

 

「ルストハリケーンの再現に、物凄く苦労したのにー」

「まあ残念だが、鉄城のアイオーンはお蔵入りと」

 

ジタバタと無念を全身で表現する少女と、残念そうな表情でデータを片付ける爺。

 

「さて切り替えていこう、次は何を造るよ」

「昭和が続いたし、次は平成にでも手を出してみようかー」

 

そしてたまには寸胴以外が見たいと、贅沢な要望。

何にせよ、とりあえずダイナミックプロから離れたいと無言の同意が在った。

 

「あと操縦席が外から見えないのは、必要条件だね」

 

今さっきの失敗を思い起こし、互いに頷く。

 

「平成と言えば、何だろうな」

「細くて機動が派手かつ大仰で物理的に理不尽な感じかな」

 

すこぶる偏見に満ちた意見である。

ちなみに昭和ロボの場合、これから派手と大仰が取り除かれて太くなる。

 

「ノズルが動く、噴煙が出る、ゆっくりと離陸するみたいな感じか」

「そして無駄にエフェクトが輝きまくり、動き出したら理不尽に早い」

 

そして手頃な例は無いかと、記憶を手繰るアルフライラの脳裏に綺羅星が輝いた。

 

「タウバーンみたいな感じで」

 

2010年の作品、STAR DRIVER -輝きのタクトー 全25話の主役機である。

ちなみに研究室では同スタッフの次回作、キャプテンアースは無かった事にされている。

 

「アイススケートみたいに姿勢を動かさずに滑り出す巨大ロボか」

 

片足爪先立ちの姿勢のまま、地面を滑る様に高速で機動する主役機であった。

 

「無理じゃね」

 

物理法則を見た目だけ誤魔化すにしても無理が在ると、老人は言う。

やっぱそこだよねーと、少女が嘆息して天井を仰いだ。

 

機動はどうとでもなる、空間などどの様にでも踏破は出来る。

 

しかし巨大質量を視認可能な状態で空間内に高速機動させた場合、

それ自体は可能でも、それが周囲に与える影響はどうにもならないと。

 

切り裂かれ前方で圧縮される大気、削れる大地、控えめに言って惨事である。

 

「前に試しに限界まで削ってみたけど、やっぱ無理そうだね」

「骨格入れたら普通に自立しそうな設計だな」

 

どれだけ軽量化を果たしても、巨大質量が動くと言う現実は変えられなかったと。

少女が表示した没案、限界まで軽量化を重ねた構造設計図は爺が受け取る。

 

「まあこの資料は後日、重機にでも使うとして」

 

軽やかに舞う巨大ロボ、周辺環境への影響は極限まで無い方向と。

沈思黙考の時間が幾らか過ぎ、はたと老人が気が付いた顔で言う。

 

「そもそもだ、質量が、無ければ良い」

 

そこに発想に意を得たとばかり、アルフライラが言葉を重ねた。

 

「触れる立体映像」

 

原寸大のフィギュアが、原寸大のデジタルフィギュアに成った瞬間である。

 

「式を空間に構築するまでの時間稼ぎに、段階的に映像が変化していく感じで」

 

途端に騒々しくなる研究室。

 

「こう、まずはワイヤーフレームで水晶みたいな感じに展開だな」

「あ、それ知ってる、その後で金色になるやつだ」

 

語る内、爺とアルフライラの脳裏に先だってサルベージした全26話が思い浮かんだ。

 

―― REIDEEN

 

2007年に製作された、勇者ライディーンのリブート作品。

 

4クール予定が放送中に2クールに短縮されたため、物語後半に置かれていた

様々な展開の全てが無かった事になる代わり、様々な悲劇も起こらなかったと言う。

 

最終的に何ともマッタリとしてしまった、黄金巨神の冒険活劇である。

 

そして、互いの正面に引き出したディスプレイに同じ機体が表示された。

造るべきものは定まった、ならば後は詰めていく作業のみ。

 

「よし、二人分の割り当て使って装甲破砕のパターン計算するぞ」

 

中枢コンピュータの研究員2人分の割り当てをフルに活用して構造を計算する。

 

「56憶7千万の破損パターンの組み合わせ、これは酷い」

「量子コンピュータでも映像だけだと解析不能すぎるな」

 

さらにフラクタル化、複数テーブル乱数使用での無尽蔵の組み合わせ。

最終的に天文学的な数に至る破損パターンは、もはや逆算が不可能なほど。

 

その内に何故かお互い、変な笑いが出てくる様に成った。

 

「衝撃には反対側から力場をブチあてて相殺する感じでうひゃひゃ」

「うひひ247カ所の同時破損までは対応できるか、何かな」

 

にやけ顔のままで首を捻った爺が、両手を広げこうと語り始めた。

 

「こう、全身を使って後ろを庇う的なムーブがやりたくないか」

「ボロボロになりながら攻撃を一身に受ける感じだね」

 

意を得たりと頷く老人に、切れる札がアルフライラには在る。

 

「バロンバーリアを映像の内側に展開しよう」

「次元断層か、次元干渉されない限り貫通不能だな、ヨシ」

 

いつも通り、浪漫のために超科学の浪費が加速していった。

 

「そして驚異的な自己修復機能を付ける」

「単に映像です」

 

「解析できない、いったい何なんだこの素材はッ」

「単に映像です」

 

「暗闇でなお光り輝いている、何なんだこの装甲はッ」

「映像ですからー」

 

茶番を続け、終には耐え切れずゲラゲラと笑い出す馬鹿二人。

 

「とりあえず名前は幻想装甲とでも付けておこーぜ」

「やばい、幻すぎる」

 

在りもしない新素材が秘匿情報に書き込まれた瞬間である。

 

「ライディーンだし、満を持してフラッシュドライブも搭載だね」

「ゴッドソードで斬りつけたりするのか」

 

空間転移を組み込む事に何の躊躇いも無い。

 

「早、過ぎる、いつ斬ったんだッ」

「斬撃途中の映像作ってませんからー」

 

再度ゲラゲラと笑いながら、転移前と転移後の姿勢映像を画面に表示。

 

「モーターヘッド的に、空間転移後は斬り終わった姿みたいな」

「ゴティックメード的に、騎士以外にはそうとしか見えない的な設定か」

 

突然に、天使が狭間を歩いたかの如き静寂が訪れた。

 

「モーターヘッド」

「ゴティックメード」

 

そして時折、互いに譲れないもので衝突する。

 

そんないつもの光景が続く。

 

「アイオーンの中では戦闘力低いし、ヤルダバオトとでも名前付けて登録しとくか」

最低品質のアイオーン(ヤルダバオト)って、酷いネーミングだー」

 

そんな名前で登録してしまったからと言うわけでも無いのだろうが。

 

この後すぐに、時間軸の彼方へとアルフライラが追放されてしまったため、

元ネタの教義の如く、ヤルダバオトはアイオーン計画の中で最後の機体となってしまう。

 

「情報化したけど、質量の無い構築式だけだから素体に内蔵すら可能だね」

「実体が無いせいで、容量が権能1個分よりも遥かに軽くなったな」

 

何にせよ完成した機体、これまでとは違い実体の無い構成式のそれ。

情報端末に入れて持ち歩きながら、今日の部活を終えたアルフライラは考える。

 

さてどうしようかと。

 

とりあえずこの方向性なら夢が広がる、サイバディの機動も余裕で再現可能だろう。

そんなスタードライバーな未来を思い浮かべつつ、考えを進める。

 

しかし何だ、機体だけ増えても何と言うか二人では微妙に寂しい。

 

誰か巻き込むかと考えつつも、それも難しいと即座に自答が返る。

 

そもそもこの時代で巨大ロボと言われても古すぎる、21世紀日本で例えれば、

徒然草や枕草子に萌えまくる古典フェチの様な生き物である。

 

居ないわけでは無いが、メジャーな趣味とは言い難い。

 

いや、でも男の子ならロボだろと、少女が自分を棚に上げた思いで反論。

 

だが誰が居るのか。

 

長男は何か鼻で哂いつつ、後になって異様に粘着質な設定厨に成りそうだ、却下。

ラマディもロボは好きになりそうだけど、何か方向性が陽の生き物過ぎる、アウト。

エミールは話を頑張って合わせようとはしてくれるだろうけど、何かもう心が痛い。

銀はキョロ充の悪いとこが出そう、最終的に皆が不幸になる未来しか見えねえ。

 

弟どもを思い浮かべて、悉くに駄目出しをしつつ最後の一人。

 

そして丁度良く、歩く先に獲物の姿が見えた。

 

しかしこの時、実はアルフライラは疲労が限界を迎えた部活明け謎テンションであり、

頭の中は完全にスタードライバーに切り替わっていると言う酷い状態であった。

 

そのため、一言目からこの様な有様に成る。

 

「ザハブ、キミは銀河の声を聞いた事が在るか」

 

言葉には単に、お前もロボを好きに成れとの意味しか籠ってはいなかった。

 

だがしかし、特に何も考えていない無駄に思わせぶりだったお馬鹿な会話が、

後の時代に綺羅星の神話に変わってしまう事を、まだアルフライラは知らない。

 

 

 





【挿絵表示】

次回から2章予定ー
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