銅の王国
歴代の聖女からの幾つかの私信
―― 歴980年12月
終焉の地の果てに聖域が存在した
そんな遠い昔話を語ろう
その場所は宵闇によって呪われていた
永く、深く、とても強烈な呪詛である
その聖域の一角には少女が閉じ込められていた
少女はたった一人だった
日々に訪れていた夜はある日、聖域を解放する
かの者の目に、少女は悲しみの表情に映った
故にその者は少女を救い出したのだった
何かしかの反応を少女は見せたのだろう
しかし、宵闇に隠され伝わらない
ただ繋いだ手から、夜の温かさを感じ
少女はその身を陽へと変じた
かくて世界から宵闇は失われ、朝が訪れる
光の中、終焉の地に喜びの声が木霊する
その場に見えるその姿は13を数えた
―― 歴981年6月
始原の球体の収束を確認
消滅まであと10年と予想されます
誤差は1年前後です
カイナン・カミンの妨害に因り
継続の調査が難しい状況にあります
破壊を急ぎます
―― 歴983年6月
我らが王が聞く、紅玉の神秘を
はじまりのアイオーン
太陽が如く紅を身に纏い
神威を示すが如く聳え立つ
その胸には紅玉と刻まれし
故に名も知れぬアイオーン、それを紅玉と呼ぶ
―― 歴685年11月
黄金は終焉に囚われている
その記憶は遥かに失われど、その性は何も変わらない
神の身を挽き潰し、奪い取った権能で太陽を失わせる
かくの神話の時代、世界の果て、ヤルダバオトは守り抜いた
そして千の夜は失われ、黎明の世界がはじまれど
今もまだ変わらず黄金は終焉に囚われている
見よ、天羽楼の悍ましき姿を
黄金の都と呼ばれる黄昏の監獄を
人を家畜と為し獣と呼び、不和と憎悪を撒き散らす
理想郷と謳われる、かの悍ましき王国を
決して油断なさるな
決して心を許すな
かの国は常に卑しく隙を伺っている
―― 歴989年1月
神様へ
また無駄遣いしましたね、お小遣い減らしますよ
―― 歴979年6月
魔素情報網に獣神権能の代替機能を確認致しました
現在、犬狼と黒猫が起動しています
王族権能に関しては確認できませんでした
確認に際して第6調査隊が過負荷により壊滅致しました
復帰まで3か月と診断されています。
国内獣人勢力の取り込みが過半数を越えました
これでカイナン・カミンの破壊に関して
全ての問題は解決された物と判断致します
―― 歴979年6月
おーさまへ
けもののひとたちがかなしむからだめー
―― 歴979年6月
跡継ぎを仕置き部屋に放り込みました
―― 歴979年7月
泣き付かれたからと跡継ぎを外に出した
どこかの馬鹿も放り込みました
反省してください