石積みの上に日干し煉瓦が乗る、そんな城壁をくぐれば石畳が広がっていた。
広場を囲む城壁は太く、その多くの部分は二階建てとなっていて、
外壁を建物の壁として利用しているのか、等間隔に幾つかの入り口が連なっている。
入り口には簡素な日除けの屋根が建てられ、土色の視界を少しばかり彩っていた。
古代に在った
「うむ、特に春と秋には訪れた隊商で賑わうぞ」
博士の説明にさもありなんと頷く。
横井戸でも掘っているのか水が在る、広場を囲む様に水路が流れ、
商人風な出で立ちの人間が繋ぐ、駱駝が水を飲む姿が何頭か見える。
「水が流れるほどにあるんだね」
「まあ、水が無いと人は住めぬものじゃからなあ」
横井戸か何かかと聞くと、少し違うと答える。
「この下に古代遺跡があっての、そこからの排水じゃ」
何百年だか使われていないらしく、飲めるぐらいに綺麗らしい。
そうか、要するに地下水か。
地下遺跡そのものが井戸として機能している感じ。
そんなこんなで案内されたのは、開拓団南方本部とやら兼酒場。
物語で言う冒険者の酒場の様な物か、たぶん。
金を払い宿場を借りる、仕事を受ける、飲食を買うなど
まあ一通りを扱っていると纏め役の店主から説明を受けた。
剣士さんが朴訥な熊なら、コッチは山賊の熊だな。
「で、お前さんは何が出来るんだい」
言われて考える。
未来と言うか古代のコンピュータが扱えます、意味が無い。
クソ不味い合成食材を加工して人間の食い物に出来ます、保留。
育成、子育て支援的なものなら経験豊富だがどうだろう、ふむ。
しかし手塩にかけて育てた十三人は、皆が仲良く全力で殺し合い、
内1名に私が6千年も吹き飛ばされたわけで。
あれ、もしかして私って子供を育てたらいけない類の人間なのでは。
権能か、肉体に内蔵された権能しか価値が無いのか私は。
「み、みずがだせますぅ」
「いや、普通に貴重なのに何でそこまで打ちのめされた声なんだよ」
まあどれだけ見るからに厄くても小隊員が一人増えただけの話と、
面通し程度の軽い対話で話が纏まった感じのところ。
「ちょっと良いかしら」
何やら話しかけてきたのは露出高めの褐色おねーさん。
「まったくの新人が入ってくるのは良くある事だけどさ」
あ、コレ知ってる。
新人に絡んでくるセンパイボーケンシャってヤツだ。
「そいつらは一応は腕利きに入るからね、それらに寄生するような」
「水が出せます」
「真似は止めて女性の保護を謳うウチで働くべきよ」
掌返しが凄え。
「一晩で溜め池ひとつ程度は軽いそうじゃ」
「氷も出せるよ」
出して見せたらおねーさんが折れた、物理的に。
端的に言えば平身低頭。
「最要人待遇で迎えますのでどうかお願いします、個室用意しますから」
「そこ、ウチの新人を問答無用で引き抜こうとしない」
姫に引き寄せられつつ、目の前で何か足蹴にされている平身低頭。
「だって溜め池よ、使い放題よ、もうコレは団の共有財産にするべきじゃないのッ」
「アルちゃんはウチの子ですぅー、今更何言っても手遅れなんですぅー」
凄え、確保できなかったら即座に共有に話をスライドさせた、遣り手っぽい。
「ウチは女性の相互扶助団体だからね、何か困った事あったら相談するのよーッ」
「ええい散れ散れッ」
塩でも撒きそうなほどの塩対応、まあ貴重だから撒かないだろうけど。
「思ったより、女性が多いのかな」
「男は普通に他の仕事が出来るからのう」
置いてけぼりの中、博士が凄く世知辛い回答をくれた。
そして振り向いてみれば、何かドン引きしている雰囲気の纏め役。
「まあ、能力がえげつなさ過ぎてヤバイわな」
さよけ。
何か一般の水術師は水瓶程度、砂漠の様な土地だとコップ1杯程度らしい。
その1杯でも鍋は作れるし傷は洗えると、大変に貴重だそうで。
「氷室に氷を入れてくれ、そうしたら宿場の個室をひとつやる」
そんな事を言われて、どんなものかと無言だった剣士さんを眺める。
「隔離されないと危険だ」
凄く身も蓋も無いお言葉が来た。
まあ何はともあれ、仕事に続いて住所ゲットだぜーとな。
そんな喜びの中、周囲の開拓者さんたちから確保できた纏め役にブーイングが飛ぶ。
「うるせえ、てめえら冷やし放題だぞ、喜べッ」
言えば即座に歓声に変わる、もしやお約束のノリだったのだろうか、コレ。
ああ、利益を配分して危険度を減らしてくれているのか。
「纏め役だなあ」
「うるせえぞ水屋」
何にせよこれで住所不定無職を脱し、野良神から晴れて開拓団の飼い神に。
神かー、何か慣れない、単なる人造人間なのだが神にされていたのかー。
アレらは低位新人類を導くための素体だったから神と呼ばれても違和感は無いが。
巻き添えで私まで神の範疇に入れられるとは思わなかった。
まあ何にせよ、保有情報はH2Oでしかない、物質の生成に水も氷も違いは無い。
物質化の権能を振るうだけで衣食住確保できそうだし、まずは良かったと。
「まずはめでたしー」
気が付けば陽も暮れて、人も寝所に去るお開きの気配。