砂と偽りのアルフライラ   作:しちご

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Ex-Ex 白逝悲鳴

 

帝国旗下諸王国が一角に、スノゥホ王国と言う国が在りました。

 

その国の王女は美しく、白蝋化した屍体が如き白い肌に黒い髪、

浮きあがった静脈は貴き青い血を示し、頬は鮮血の如くに紅く染まって。

 

あれ、それって近親婚の特ちょげふげふん。

 

まあ何はともあれその姫は白い雪の如き屍の姫、白雪姫と呼ばれていました。

 

その一族は何故か、そう何故か、あくまでも何故か病弱でありそれなりに前に、

母親であるお妃さまが早逝し、王さまは後添えのお妃さまを迎えました。

 

国内貴族は論外、可能な限り遠くの王家から、決して血縁が繋がらない様にと。

 

そうして継母となったお妃さまは生命力に溢れた小麦の肌の健康美人で、

これで娘の情操教育もきっと大丈夫と、王さまは胸を撫でおろしました。

 

しかしその新しいお妃さまは、白雪姫を性的に虐げていると噂されています。

 

―― ほーらワイト、笑って笑って

―― は、はいお義母さま

 

今日も薄暗いお城の奥で、姫様が淫靡な悲鳴を上げていると言われていて、

国民の期待と忠誠がうなぎ上りと成っているのです、王国の未来は安泰ですね。

 

―― さあ張りきっていくわ、今日のエクササイズの重点項目は腹筋よッ

―― い、いえあーッ

 

いつしか自然と手は股間に伸び、嬌声と共に汗にまみれた身体が震え、

獣の様にひたすらに腰を振る、開発されてしまった幼き性、みたいな。

 

―― 手を前に降ろして、トゥイストッ、トゥイストッ

―― ひ、ひいぃ、つ、ついすと、ついすとッ

 

そんな日々も幾らか過ぎ、姫様の呼び名が白雪の姫から白い野猿に変わった頃、

隣国の死体愛好癖の王子が嫁を探すために出奔したと聞き、王さまは迎撃に。

 

お妃さまは、臣下から何故か期待を込めて注がれる桃色視線に首を捻りながら、

何はともあれと国政と国内勢力の引き締めなど、様々な仕事に手を付けます。

 

スノゥホ王国は比較的新しい国で、いまだ前王権の傷跡が深いのです。

 

地上の楽園と喧伝されていた前王国は、明けの明星と呼ばれる悪魔と

それに唆された魔女、そして手下である7人の魔人に散々な目にあわされ。

 

終には滅亡してしまいました。

 

空白地と成った王国に仕方無しと隣国から人と兵を出し、混乱をおさめ、

統治をはじめたのがスノゥホ王国の成り立ちになります。

 

その時に土地にのさばっていた7人の魔人が、まあ既に民から散々な目げふん、

いやそれはともかく、森へと逃げ出し、そのまま潜伏して時が流れたそうです。

 

いまだ森に在る末裔たちに向けて、素直に出てくるのなら罪には問わぬと

恭順を促す書簡を送っても何の返答も無く、近隣への襲撃などを行う始末です。

 

王国も今では彼らの事を人に足りぬ者、7人の小人と呼んで蔑んでいました。

 

まあそんな些事はどうでも良いのです、そのうち征伐されて無くなるでしょう。

所詮ははじまりの魔女の再誕を信じ、森で怪しげな儀式を行う邪教の輩です。

 

そんな事よりお妃様は、1枚の不思議な魔法の鏡を持っていました。

 

嘘か真か、神代より伝わると言われる不思議な魔法の鏡。

持ち主が鏡に問い掛けると、正しい答えを返してくれると言います。

 

「鏡よ鏡、魔法の鏡」

 

さて、今日もお妃さまは魔法の鏡に問い掛けます。

 

「この世で一番美しいものはだぁれ」

 

鏡は迷い無き合成音声で即答しました。

 

「猫です」

 

この惑星における至高の生物です、当然の回答ですね。

 

「いや待てやこの鏡」

「ちッ、うっせーな、毛無し猿如きが艶付きやがってよ」

 

鏡からサンプリングされたクソデカため息の音が響きます。

何故か神代で王の大神に対して吐かれた長女の溜息の音にそっくりです。

 

「よし、聞き方が悪かったわね、人間だと誰よ」

「猫系獣人の誰かじゃね、まあ誰が良いかは好みで変わるだろよ」

 

毛皮の柄とか、などと答える鏡をお妃さまがシバくも微動だにしません。

 

そして獣人度合いとケモナーレベルの相関図が鏡に表示され、

ちょっと人に因ると補足が入り、そうじゃねえだろとお妃さまが叫びます。

 

「この国の人間だとどうよッ、この条件ならちゃんと答えるわよねッ」

「厨房裏で飼われている三毛だな、人懐こくてぷくぷくしてる」

 

あくまでも本日のマイフェイバリットなので、日によって最高猫は変わる模様。

 

「人間言うたわよッ」

「やかましわッ、毛無し猿の見分けなんざつくかッ」

 

お妃さまのヤクザキックが炸裂するも、鏡は罅一つ入りません。

さりげなく不壊属性が添付されている様な気がしてきました。

 

「貴様の臭いを消してやるうううぅぅッ」

「必殺、ミラーシュウウウゥトッ」

 

かくして半日ぶり4578回目の決戦がはじまりました。

 

綺麗に割れたお妃さまの健康的なシックスパックが勝利を求め輝き叫び、

煌めく夜空にひとつ平和の誓いを叫ぶ鏡の、正義の剣が抜かれます。

 

つまり、そうですね、一言で言えばこうなります。

 

だいばくはつ。

 

爆音の響く城で、庭の林檎の樹に登って実を齧っていた白猿が呟きました。

 

「今日もお義母さまは元気だなあ」

 

スノゥホ王国は今日も平和であったそうです。

 

「ワイトもそう思いますわ」

 

何処とも知れぬナレーションに軽く同意を入れる白い猿。

 

後にお妃様が産んだ息子と王権を賭けて大舞会で争う王女、

白猿猴ワイトの若かりし日でも在ったとか無かったとか。

 

めでたい気がしない事も無し。

 

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