漫画アニメ短編集&救済の物語   作:クリリ☆

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ドラゴンクエスト3【ニートの僕が他力本願で世界を救ってしまった件 ー前編ー】 ニートから勇者へ

「ユウシャ、私の可愛いユウシャ、起きなさい」

 

朝、突然身体を揺さぶられる。どうやら母さんが僕を起こそうとしているようだ。しかし昨晩は遅くまで起きていたため、まだ眠い。

 

僕の名前はユウシャ。中学校を卒業して以来、就職も勉強もしていない。俗にいうニートである。夜更かし、朝寝坊は当たり前で、毎日自宅でゴロゴロして自由気ままに過ごしていた。

 

「うるさいな、昨日は遅かったんだよ、ゆっくり寝かせてくれ」

 

僕は不快感を示すため、少々ぶっきらぼうに言って、布団に更に包まり二度寝しようとする。しかし、いつもなら僕が少々ゴネればすぐに引き下がる母さんが、今日は食い下がってきた。

 

「駄目よ、今日はあなたの16歳の誕生日。王様に謁見してから魔王討伐の冒険に行く大事な日じゃないの」

 

王様に謁見? 魔王討伐? いきなりの母さんの意味不明なパワーワードに、思わず僕はベッドから起き上がってしまう。

 

「母さん、何素っ頓狂な事言ってるの。今日はエイプリルフールだっけ?」

 

「ユウシャこそ何を言ってるの、前々から母さんが言っていたでしょ、あなたが16歳になる日に、勇者として魔王討伐の冒険に行くって」

 

「マジかよ」

 

僕は母さんの事の言う事にあまり興味や関心がなく、何か話していても、別の事をしながら適当に相槌や生返事などを返していた。どうやらそれらの中に魔王討伐の話が含まれていたらしい。

 

「さあ、そういう訳だから支度して。今日のために特別な衣装も用意してあるんだから」

 

「で、でも、いきなり魔王討伐と言われたって…」

 

「いいからいいから。それに、王様と謁見の約束もしてあるんですからね」

 

以前、僕に父親がいないのは『あなたの父オルテガは、勇者として魔王討伐の冒険に出かけた』からだと聞いた事があった。しかし、それがまさか本当だとは思わなかった。

とにかく、止むを得ず母さんが準備した服に着替えた。と言っても、いわゆる旅人の服であった。

 

「立派よユウシャ、馬子にも衣装とはよく言ったものね」

 

馬子にも衣装って、どちらかと言えば相手をバカにした言葉のような気もするが、嬉しそうに目を細める母さんに、そのような意図は感じられなかった。きっと純粋に見栄えが立派という意味で言ったのだろう。

 

「それと、これも持っていきなさい」

 

そう言うと母さんは僕に棒切れを一つ渡してきた。

 

「何これ?」

 

「ひのきの棒よ」

 

「ひのきの棒? 何に使うの?」

 

「武器よ」

 

「武器って、敵と戦う時に使う、あの武器?」

 

「そうよ、それ以外に何があるっていうの?」

 

「ちょっと待ってよ、これって子どもがごっこ遊びで使うヤツじゃん」

 

「あら失礼ね。ちゃんと持ち手の部分に滑り止め用にサラシが巻いてあるでしょ」

 

「だからって、仮にも勇者が魔王討伐の冒険に出るのに、子どもの玩具(オモチャ)って…」

 

玩具(オモチャ)とは失礼ね、ちゃんと武器屋に売ってたんだから、れっきとした武器よ」

 

「まあ、百歩譲って武器屋に売ってたとしても、せいぜいトレーニング用でしょ」

 

「大丈夫。確か王様から支度金ももらえるらしいから、それでちゃんとした武器を買い直しなさい。いくら支度金がもらえるからって、手ぶらで行くのも体裁が悪いでしょ」

 

「いや、こんな玩具(オモチャ)をぶら下げていく方がよほど体裁が悪いような」

 

「いいから黙って行くわよ!」

 

「あ、はい…」

 

結局最後は母さんの気迫に押し切られる形で僕はひのきの棒を装備した。

 

「それじゃユウシャ、王城まで一緒に行きましょう」

 

「え、いいよ。すぐ近くだし一人で行けるよ」

 

「駄目よ、今日はあなたにとって大事な旅立ちなの。母さんも一緒に行かせて」

 

母さんはにっこりと笑みを浮かべる。が、目は全く笑っていなかった。

以前母さんの紹介で2度ほど就職面接を受ける機会があったが、僕は2度とも面接会場まで行かず、途中で逃げ出してしまった事がある。どうやら母さんは僕が途中で逃げ出さないように監視するつもりなのだろう。笑顔の奥で目が『絶対に逃がさないわよ』と言っているようだった。

 

「大丈夫だって、これから魔王を倒しに行こうってのに、母親と一緒じゃカッコつかないじゃん」

 

「いいからいいから、母さんがお前にしてやれる最後のお手伝いだから」

 

そういうと、母さんは僕の腕をグッと掴む。その手にはかなり力が籠っていた。駄目だ、逃げられない…。

そうして僕は観念して家を出た。何とか逃げ出せないか隙を伺うが、母さんは微塵も隙を見せない。そうしてとうとう、王城の前まで来た。後はもう一本道、完全に逃げ場はない。

 

「さあユウシャ、いってらっしゃい」

 

そうは言いながらも母さんは帰る様子を見せない。どうやら僕が王城に入るまで見届けるつもりらしい。

僕は恐る恐る門を守る番兵の前まで行く。そして後ろを振り返ると、まだ母さんはこちらの様子を見ていた。

 

「何者だ貴様?」

 

僕の様子を不審に思ったのか、門番が僕に訊ねてきた。

 

「えっと、僕ユウシャと言いまして、今日、王様に会う約束をしてるんですけど」

 

「おお、待っておりましたぞ勇者殿、さあさあ、王様がお待ちです」

 

どうやら母さんの話はガチだったようだ。本当に王様と話がついているらしい。そうして僕は王城に入る。その最後の瞬間に、母さんの方を振り返ると、母さんと目が合った。どうやら最後の最後で本当の笑顔になったように見えた。

 

「では、この通路を真っすぐ進むと謁見の間です」

 

「はい、ありがとうございます」

 

僕は観念して王宮内を真っすぐ歩く、すると階段を上がって本当にすぐ謁見の間に辿りついた。

こういう王城って、魔王軍と戦う際には軍事拠点になるもんじゃないのか? 普通お城って、敵が侵略しにくいようにわざと複雑な構造に作るというような話を聞いた事がある。が、これでは簡単に陥落してしまうのではないか。いくらアリアハンが辺境のド田舎で、魔王軍も最弱と言えど、あまりに危機感がない。もし魔王軍が本気で侵攻してきたら、あっさり落ちそうだなここは。

そんな事を考えている内に、いよいよ王様の前まで来てしまった。謁見の際のマナーなどはさっぱり分からない、どうしようかとうろたえていたら、王様の方から僕に話しかけてくれた。

 

「おお勇者よ、よくぞ参られた。うむ、そなたの父、勇者オルテガの面影があるの」

 

どうやら王様は僕の父さんを知っているらしい。父が勇者というのも本当だったのか。

そして王様は父オルテガの思い出話などをひとしきり話してから、ふと僕に訊ねてきた。

 

「それでは、これから勇者殿には長期に渡る魔王討伐の冒険に出てもらう訳だが、現場での引継ぎなどは問題ないか?」

 

「現場での引継ぎ?」

 

「うむ、学生ならば学校、職業人であれば現場の方は、長期離脱による影響は大丈夫かの?」

 

「ああ、それなら大丈夫です。僕ニートですから」

 

「ニート?」

 

「はい。仕事も学校も行ってませんので」

 

「な、何と、ニートとは。ちなみにお主、今のレベルはいくつじゃ?」

 

「1です」

 

「1だと!?」

 

「はい」

 

「何という事じゃ、小学生でもレベル3はあるというのに、まさか1とは恐れ入った…」

 

「はあ、すみません…」

 

僕のレベルが1だと知って、王様は本気で落ち込んでいる様子だった。

 

「すまん、ちょっと考えをまとめる、待っておれ」

 

王様は玉座の裏に回り、何やらぶつぶつ独り言を言っている。うーん、気になる。が、声が小さくてよく聞き取れない。

こうなったら集中だ。ニートをやりながら、たまに室外の話が気になる時に発揮する僕の集中力を見せてやる。全集中、ニートの呼吸壱ノ型、聞き耳!

 

『……、それにしてもレベル1とはまいった。しかしまあ、極限状態に追い込まれれば勇者の血が覚醒してチートスキルを発動するかも知れぬ』

 

どうやら王様なりに真剣に冒険の事を心配しているのかも知れない。僕はちょっぴり申し訳ない気持ちになった。が、ここから聞く話が僕のそんな気持ちを吹き飛ばした。

 

『…それにしても、先日お会いした勇者殿の母上、少々(とう)は立っているが、なかなかお美しかったの。未亡人独特の色香というか、何というか。いや待て、そもそも勇者とは王の血脈から出て然るべきではないのか。うむ、勇者殿に何かあったら、勇者殿の母上を側室に迎え、新たな勇者を儲けるのも悪くない。むしろ、そうなると邪魔なのは勇者殿か…』

 

マジかよ、王様が僕の母さんを(めかけ)にして、新たな子を作るつもりか。

すると、王様は涼しい顔で戻ってきて、再び玉座に腰掛ける。

 

「すまんすまん、少々考え事をしていてな。でもまあ、わしは勇者殿を信じているよ。では、冒険のための支度金をお渡しする」

 

そういうと、王様はパンパンと手を叩いて大臣を呼んだ。

 

「はい王様」

 

「大臣、勇者殿に例のものを、ああ、それと…」

 

そう言うと王様は大臣に耳に手を当てて耳打ちする。

 

「え、それでは当初の予定の100分の1…」

 

「馬鹿者、声が大きい!」

 

王様は大臣の頭を全力でパチンと叩く。

 

「良いか、貴様はわしの言った事を黙って聞いておれば良いのだ」

 

「ハッ、申し訳ありません」

 

「いいからさっさと持ってこい」

 

「ハッ、かしこまりました!」

 

くそぉ、少しは粘れよ大臣。マジで無能なイエスマンだな。

そう考えている内に大臣は宝箱を持ってきた。

 

「お待たせいたしました」

 

「うむ」

 

すると王様は僕の方に向き直って言った。

 

「それでは勇者殿、支度金じゃ。お主の健闘を祈っておるぞ」

 

「はい、頑張ります」

 

僕は適当に返事をして宝箱を開けた。すると、大きめの宝箱の中に、小さな革袋が一つ入っていた。中を確認すると10ゴールド銀貨が10枚入っていた。つまり、100ゴールドか。大臣の言葉から推察するに、もしかしたら当初は1万ゴールドの支度金が予定されていたのかも知れない。もしかしたら、本当に王様は僕を亡き者にする気なのでは…?

 

そうして、僕は憂鬱なまま王城を出たのだった。

 

 

 

続く☆

 

 

 

 

 

 

 

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