漫画アニメ短編集&救済の物語   作:クリリ☆

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デキる猫は今日も憂鬱✕ドット勇者

かなり親和性の低い作品同志であり、両方の作品を知っている方がどれだけおられるか心配だったため、今回は両作品について軽い解説をさせていただきます。
本編をより楽しむ一助となれば幸いです。


デキる猫は今日も憂鬱
主人公はクマ程のサイズのある巨大猫の『諭吉』。家事が一切できないポンコツOLの福沢幸来(さく)に拾われるが、あまりのポンコツぶりにこのままでは自分まで共倒れしてしまうと危機感を覚え、料理や家事を全て完璧にこなして幸来のサポートをするようになります。嬉しい事があると『クックック』と笑うのが特徴です。
そんな飼い主と飼い猫のほのぼの日常コメディです。時に1人と一匹の絆に涙する事も。
個人的には原作をずっと読んでおりますが、アニメ化もしたので、今ならお手軽に視聴する事ができます。

ドット勇者
エモン大陸という大陸で、天使や魔族、人間にエルフに獣人など多種多様な種族が共存する聖庭で主人公(神覚者)が様々な冒険をする物語。
本編登場のバアルは、物語に登場する勇者の一人(一匹)で、巨大なサイズの猫。恐らく諭吉とほぼ同サイズ。
役割はタンク(盾役)で勇者一行を身を呈して守ります。大剣を持っており、人語を話す事もできます。



なお、今回の物語はデキる猫は今日も憂鬱の始まる前、すなわち幸来が諭吉を拾う前の話という位置付けと考えております。それじゃ絶対に整合性が合わない、などと思われた場合は諭吉ではなくバアルを拾った並行世界と捉えてもらっても構いません。
ちなみに今回はバアル視点で物語が進みます。
前置きが長くなってしまいましたが、本編へ移りたいと思います。


デキる猫は今日も憂鬱 ✕ ドット勇者【化け猫バアルの苦悩】

我は猫である。名前はまだない。どこで生まれたのかとんと見当がつかぬ。ただ、薄暗い箱の中でニャアニャア鳴いていた事だけは記憶している。

しかし鳴けども鳴けども助けなどはない。しかも鳴くたびに全身から活力が失われているような心地がする。

 

もういい疲れた、眠ろう。そう思い我は目を閉じる。もはや我はこのまま力尽きて死ぬのかも知れぬ、誰からも愛されず、誰からも必要とされず。そうして目を閉じてしばらく経った頃、突然天井が開け、人間の女が我を覗き込むように見つめていた。

もしかしたら我は理性では生きる事を諦めておきながら、本能は生を望み、体力の一滴(ひとしずく)まで助けを求める鳴き声に全振りしていたのかも知れぬ。

 

助けが、来たのか? 我がその人間を見つめると、その人間は泣きそうな表情を浮かべていた。何故泣きそうな顔をしている? 辛い事があったのか、それとも我の身を案じて…?

などと思っているとその人間は我の身体を両手で掬い上げ、そのまま早足で歩きだす。何だか身体がグラグラ揺れる。まるで揺り篭に揺られるような心地がし、そのまま意識を失った。

 

どれほどの時間が経過したのか、我の口に何やら細い管のような物を差し入れられ目を覚ます。後に知った事だが、これはスポイトと呼ばれる微量の液体を抜き差しする道具だそうだ。(くだん)の人間は我の口にスポイトで何らかの液体を流し込んできた。最初は戸惑ったが、もはや我に抵抗する体力も残ってはいない。ただ人間にされるがままに任せた。流し込まれてきたその液体は猫肌に温められており、ほんのりと甘みが感じられた。何と力強く濃厚な、天界から降り落ちてきたとしか思えぬ、まさに天使の(しずく)

 

一口飲むごとに四肢に、尾に、活力(ちから)(みなぎ)ってくるのを感じた。ああ我は生かされたのだな、この人間に。ならばこの恩に報いなければなるまい。この人間の女を我が(あるじ)とする事に迷いの余地は皆無。この瞬間、我が持てる全てを(あるじ)に奉げると心に決めた。

 

 

そうして我が主に仕え始めてから数カ月が経過する。その間に分かった事があるが、主は我に与えた慈悲と反比例するかのように、とにかく自己管理が絶望的なまでに出来ぬ。特に料理などをしている姿は見た事がない。食事はいつも外から買ってきたおにぎりや弁当、菓子パンやカップ麺ばかり。あるいは栄養補給のみを目的としたゼリーやドリンクで済ませている。まだ若いと思われるが、肌ツヤも悪く、髪質もパサついている。目の下にはクマができており、それを化粧でごまかしている。

 

先日などは夜中に帰ってきたと思ったら、靴も脱がず、その場で倒れるように眠り込んだ。まだ子猫の我は身体も小さく、主をベッドまで運ぶ力はない。我にできる事といったら、せいぜい身体を冷やさぬように主の腹部の辺りに潜り込んで一緒に寝て温もりを届ける事くらいだ。明け方にようやく起きたと思ったら、我に食事(エサ)を与えると、シャワーだけ浴びてまた仕事に出かけた。

 

主はオーエル(OL)という職業らしいが、このままでは過労で死んでしまうのではないか。もし主が死んだら、誰が我の食い扶持を稼ぐのだろうか。間違いなく、主が死んだら我も共倒れだろう。このままではマズい。

そうだ、主が自己の管理ができぬのなら我がやってやろう。我が主を管理してやろうではないか。

 

さて、まずどこから手をつけるか。少し考えたが、やはり最優先は栄養補給に違いない。かつて死にかけていた我に主が与えてくれたのは食料だった。人が生きていくにはまず食事が最重要なのは間違いない。とは言え、いくら我が高い知性を有していたとしても、やはり肉体はまだ子猫。作れる物などたかが知れている。とりあえず、まずは一度も使用されているのを見た事がない炊飯器を使ってみる事にした。

 

夜間、主が眠っている間に、いつ買ったかも分からない米を炊飯器の内釜に入れ、何度か米を研ぐ。そして炊飯器の時間を設定してスイッチを押す。そして炊き上がったご飯にしょうゆとふりかけを混ぜて握る。この時サランラップで包んで握れば我の小さい手でも、毛を付けずに握る事ができる。そして最後に海苔を巻いた。初めてにしては上出来ではないか。朝食をしっかり摂る。これぞ人が生きていく上で最も基本的な事だろう。

 

翌朝、主が起きるとキッチンにある我の作ったおにぎりに気が付いた。

 

「あれ、おにぎりだ。どうしてこんな物がここにあるの?」

 

すると、おにぎりのすぐ近くにいた我に目を付けた。

 

「まさか、漱石が?」

 

ちなみにここで主を紹介させていただくと、名前は福沢幸来(さく)。20代半ばから後半と思われるオーエルだ。そして、我を漱石と命名した。何故漱石かと言うと、何やら偉い文豪の名前から取ったそうだ。

ある時、「あなた、いっつも堂々としてるよね。何ていうか、吾輩は猫であるって感じ。だから、あなたの名前を漱石にしましょう。夏目漱石っていう、お札の肖像画にもなった事があるすっごい文豪なんだよ」と教えてくれた。

 

だが我にはその名前はピンと来なかった。偉い文豪から取ったと言っても、我は書物などに興味はない。偉くもないし立派でもない、信じてるのは胸のドキドキだけである。それよりも実は我は自分の事をバアルと呼称している。何故バアルかと言うと、先日見たテレビ知識に起因する。

 

先日テレビで、大工道具の紹介というのをやっていた。そこでバールという道具を紹介していた。

何やらてこ状の道具で、打ち損じた釘などを抜く機能を有しているらしい。しかし、近年は木材の止め具には釘よりもビスが主流になりつつあり、バールの需要は減っているそうだ。

寂れつつある道具に哀愁を感じるとともに、元々捨て猫だった我もどことなく共感した。必要とされぬ我と、需要が減っているバール。そして、主の人生を修正してやろうという覚悟は、打ち損じた釘を引き抜くのと、どこか通じているように思えた。そうだ、我はバールだ。しかし、そのままでは芸がないから、ほんの一捻りを加えてバアルとしよう。主は我を漱石と呼ぶが、我は自分をバアルという事に決めたのだ。

 

それにしても主はアホである。

普通、猫がおにぎりを作ったとなったら、その知能と能力に驚嘆するものであるが、主の反応はそうではなかった。

 

「へえ、猫ってしつければおにぎりも作れるようになるんだねえ、知らなかったよ。ありがとう漱石」

 

そう言って主は我の頭を撫でた。まあ、撫でられる事は嫌いではないし、むしろ労力に充分見合う報酬であるとも思うが、普通こんなに素直に納得するものであろうか。猫がおにぎりを作ったなど、もっと怪訝に思わないものであろうか。

それに、そもそも料理を作るようにしつけられた覚えは微塵もない。我が主に教わった事と言えば、せいぜい排泄の場所くらいだ。だがまあ良い。むしろ主の理解が早くて我にとっては都合が良い。これで主の管理がしやすくなった。

 

「あ、漱石。今度は玉子焼き作ってよ。私玉子焼き大好きなの」

 

それにしても主の適応能力は高すぎであろう。我の能力に納得しているどころか、早速料理のリクエストまでしてくる始末だ。

 

「それじゃ仕事行ってくるね。材料買って帰るから晩ご飯よろしくね」

 

そうして我と主の奇妙な共同生活は真の幕開けを迎える。我は料理を始め、掃除に洗濯など、あらゆる家事をこなした。半分ゴミ屋敷と化していた主の居住スペースを数日がかりで全て片付けた。

 

そうして半年も経過する頃には、我は家事の一切を完璧にこなせるようになった。料理のレパートリーは優に100を超え、身体も気が付くともう人間のサイズよりも大きくなっている。だが、まだ悩みは尽きなかった。それは、主が華奢(きゃしゃ)過ぎるのだ。

主はとにかく痩せている。先日寝ている間にこっそり体重を計った所、50kgにも満たなかった。これでは我に何かトラブルがあった時に、あっという間に体力を使い果たして死んでしまうだろう。やはり最低でも体重は今の倍は欲しい。しかし、ちょっと食事の量を増やすと「もう食べられないよ。残りは明日食べるからラップして冷蔵庫に閉まっておいて」などと言う。

 

どうすれば主にもっと栄養を付けさせる事ができるのか。量が増やせないなら質を上げるしかない。少量で栄養価の高い物を食べさせるのだ。そして我は考えに考え抜いて一つの結論に至った。それは同種を食わせれば良いのではないかというものだ。

例えば水分を補給する時、ただの水を飲むよりも、塩と砂糖を適度に加えて体液に近い状態にするとより吸収力が高まる。ならば、主と同種の人間を捕食させれば、効率良く栄養を吸収できるのではないか。人間同士なら遺伝子レベルまで限りなく近い。

 

そうして我は主に人間を食わせる方法を考えた。そしてその過程でノッキングという技術を身につけた。

ノッキングとは生物の神経などに一定の刺激を加え、一時的に運動機能を麻痺させる技術だ。トリコというグルメ漫画では食材を新鮮なまま捕獲したり、輸送する際に活用される。我は独自の研究を重ね、人体のノッキングポイントを発見した。これで食材の確保はかなり容易になっただろう。なお、この技術を頂点まで(きわ)めると一瞬とは言え地球をもノッキングできるらしい。いずれは我もその領域に至ってみたいものだ。

 

さて、大勢いて邪魔されては目的が果たせない。程々に肥えた人間が一人でいて、周囲に誰もいない状況になるまでアパートの中からじっと外の様子を(うかが)う。そうして昼過ぎから通りを観察し、全ての条件が整ったのは夕方に差し掛かる頃だった。

一人で歩くやや小太りの男性をめがけ、我はアパートから飛び出す。そして忍び足で近づくと、すかさず背後から頸部後面にあるノッキングポイントを一突きした。

 

「うがっ…」

 

わずかにうめき声を上げ、男はその場に倒れる。軽く体をつついてみるが、抵抗する様子はない。どうやらノッキングが完全にキマったようだ。我は男を担ぎ上げるとすぐにアパートに戻り、玄関口に無造作に男を放り投げる。

よし、食材の確保には成功した。後は解体して調理するだけだ。さて、どんな料理にするか。丸焼きにしてもきっと主は大して食べれない。やはり普段食べ慣れた料理に混ぜて少しずつ食べていくのが良いだろう。少々手間だが食べやすいサイズに解体しなければならない。我はキッチンに行くと出刃包丁を研ぎ始めた。

 

そうして研ぎ始めてしばらくすると、玄関のドアを開ける音が聞こえ、続けて主の悲鳴が聞こえてきた。

それはそうだろう。室内に知らない男性がいるとすれば驚くのは道理だ。だがノッキングが完全にキマっている。男は抵抗する(すべ)はない。主に危害が及ぶ恐れはないので安心して欲しい。

 

そんな風に思っていると、ドタドタと主が駆け足でキッチンにやってきた。何やら涙目になっている。

 

「あれ、漱石がやったの!?」

 

我はゆっくりと頷く。我ながら完璧な仕上がりだ。褒めてもらえるかと思い、我はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ああ、何てこと。早く救急車を呼ばなくちゃ、それと警察も」

 

警察? 何を言っているのだ主は?

 

「ごめんね漱石、私がちゃんと(しつけ)しなかったから分からなかったんだよね。漱石は悪くないよ。だからね、私が自首して、ちゃんと罪を償ってくるからね、ごめんね」

 

自首? 自首とは確か、犯罪を犯した者が自らの罪を認め、警察に出頭する事だったか。えっ? 主が自首、どういう事だ!?

ここに至ってようやく我は気付く。そうか、人間が人間に無制限に危害を加える事が許されたら、人間同士の集団生活が成り立たなくなる。どうやら我が行った行為は、人間からすると犯罪に該当するようだ。

しかもどうやら主は我の犯した犯罪に対して責任を取るつもりでいるらしい。それはマズい、このままでは我のせいで主を犯罪者にしてしまう。主に対して恩を仇で返すことになってしまう。

 

違う、主には何の罪もない。悪いのは全て我だ。主はむしろ被害者だ。そうだ、主を被害者にしてしまおう。我は主に近づくと、頸部にあるノッキングポイントに一撃を加える。

 

「漱、石…」

 

主は驚きの表情を浮かべたままその場に倒れた。ああ、もう我は主とは一緒にはいられぬのだな。

我は主との決別を覚悟し、倒れ込んだ主に向かって深々とお辞儀をした。

 

そして玄関を開け、全力で駆け出した。主は先ほど警察に連絡を入れていた。まあ、すぐに助けが来るだろう。そして動けなくなって倒れていれば主は被害者としか思われない。人間ほどの巨大な猫を飼っていて、飼い猫にノッキングされたなど、そんな事信じる者は皆無だろう。我さえ主のそばにいなければ、主は清廉潔白(せいれんけっぱく)なままいられるはずだ。

 

だが、これから主は一人で生きていけるだろうか。願わくば、我に代わる助け手が主のもとに現れますように。

 

そうしてどこをどう(はし)ったのか分からぬが、気が付くと先ほどまでとは、かなり光景が変わっていた。舗装された道路はなく、辺り一帯は木しかない。しかも、あちこちから全身を刺すような強い殺気が感じられる。

 

これも後に知った事だが、どうやらこの地はエモン大陸という大陸の聖庭という場所らしい。神に天使に魔族、それに人間やエルフ、ドワーフや獣人など実に多種多様な種族が覇権を争いながら共存している不思議な世界だ。

面白い、正直飼い猫のままではつまらないと思っていた所だ。完全に弱肉強食のこの世界こそ、我の知能と才能を存分に活かせるというもの。我はここで生きていこう。

 

そうして我の第二の猫生(びょうせい)が始まったのだった。そして、その後の我の活躍を知りたい者はスマホアプリ、『ドット勇者』をプレイされると良かろう。

 

それと、主のその後を知りたい者は『デキる猫は今日も憂鬱』という書にその詳細が書き記されているらしい。

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 

 




おまけ☆


『闇堕ちに憧れて』

バアルがエモン大陸に行きついて早数年。バアルは人語を解するだけでなく、話す事もできるようになっていた。
行く当ても目的もないただの野良猫であるバアルは、大陸中を武者修行の旅をして回っていた。そんなある日、とある村の宿屋に泊まった時の事である。宿屋の店主の子どもがバアルの部屋にやってきた。


男の子「猫ちゃん可愛いよ~、フワフワ~、モフモフ~w」

女の子「猫ちゃん、かわちぃw かわちぃw」

男の子「猫ちゃん、お話しできるの? 何か喋ってみて~?」

バアル「強さを手に入れるためには、無意味な善など捨てても構わないさ」

男の子「何か怖い〜(ToT)」


バアル(い、言えない。ただ闇堕ちに憧れているだけの、特に意味のない厨二病発言だなんて、言えない〜)


女の子「怖いょ〜(ToT)」


バアル(くっ、仕方ない・・)

バアル「あの、怖くないニャン。ちょっと悪ぶった事を言ってみたいお年頃だっただけニャン。仲良くしてね、ニャ〜オw」

男の子「わーい、良かった〜w」

女の子「猫ちゃん、かわちぃかわちぃw」

バアル「ウニャ~、ゴロゴロ〜w」


そして・・・


ココ「私のポジションが脅かされようとしている。こうなったら始末するしか、ニャ〜ォ・・」


こっそりバアルを見ていた猫獣人のココは、バアルに強いライバル意識を燃やしていた。そうして、新たな火種が生まれようとしていたのだった。


おしまいw
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