【第一部①:エリナのファーストキス(1)】
ある日、帰宅途中のエリナを待ち伏せていたディオと、その取り巻き。ディオは強引にエリナの腕を掴み、背景に『ズキュウウウン!』という擬音が出そうなほどの勢いで、激しくエリナの唇を奪った。
取り巻き達から「さすがディオ、俺たちにできない事を簡単にやってのける。そこにシビれる! あこがれるゥ!」と賞賛が響き渡った。
ディオは口を拭い、これ以上ないほど不遜な笑みを浮かべて指を指す。
「エリナ! きさまの初めての相手はジョナサン・ジョースターではない! このディオだッ!!」
ディオは勝ち誇り、高笑いをする。しかし、エリナは頬を赤らめ、指をモジモジさせながら俯く。
「…あの、キスは初めてではありません……」
「な、何だと!?」
ディオの笑顔が凍りつく。
「……ジョジョと、どこまで進んでいるのだッ! どこまでッ!!」
食ってかかるディオに、エリナは恥ずかしそうに顔を伏せて言った。
「その…、最後まで…」
「最後!? 最後だと、えっと、最後って何だ!?」
すると背後から、ジョナサン・ジョースターが現れた。
「すまんディオ。お子様のお前には少し難しかったかな…」
ジョナサンは申し訳なさ気にディオに言った。
「オレは人間を止めるぞジョジョー!!」
そうして自ら石仮面を被り、吸血鬼になるディオなのだった。
おしまい☆
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【第一部②:エリナのファーストキス(2)】
ディオがキスをした直後、エリナの口臭がヤバすぎた。
「こ、こいつはくせえッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーッ!!」
ディオは白目を剥き、鼻を抑えてのたうち回る。
「あの、最近ちょっと胃の具合が悪くて…」
「胃が悪いだと? ちがうねッ!! こいつは生まれついての口臭だッ!! 便所のネズミの糞にたかるウジ虫ですら、これほどのにおいは放たねえッ!!」
ディオの喉元に熱いものが込み上げてきた。
「ヤバいヤバいヤバい、吐いちゃう吐いちゃう~ッ!!」
ディオは雨上がりにできた道路の水溜まりで口をすすぐ。
「これならまだ泥水の方がマシだ~」
「侮辱ですわ~(ToT)」
おしまいw
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【第一部③:パンの枚数】
霧の町ウィンドナイツ・ロット。
ジョナサンは吸血鬼になったディオと対峙した。
「ディオ! お前は今までに何人の人間を食ってきたんだ!」
ディオは階段の上で不敵なポーズ(ジョジョ立ち)を決め、鼻で笑う。
「お前は今まで食べたパンの枚数を覚えているのか?」
(勝った。これには答えられるハズがない。この返しこそ、俺が人間を超越した証しなのだぁァァ!)
ディオの背後に『ゴゴゴゴゴゴ!』と圧倒的な優越感の擬音が踊る。だが、ジョナサンは一点の曇りもない瞳で即座に言い放つ。
「8364枚だ!!」
「……えっ? マジ…??」
ディオの思考が停止する。
「当たり前だディオ! 僕の父、ジョージ・ジョースター卿から『パンは命の糧、一切れたりとも疎かにしてはならない』と教わってきた! 僕は毎日、食卓でパンの枚数と焼き加減を日記に記録している!」
「おいおい、マジかよ~。記録するか、普通…」
「で、お前は何人の人間を食ってきたんだ。たった数日の事も覚えてないのか、認知症かお前は!!」
取り巻きの屍生人(ゾンビ)たちも「反論されてて草w」とヒソヒソ話を始める。あまりの屈辱に、ますますジョナサンを始末する決意を深めるディオなのだった。
おしまいw
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【第二部:ナチスの科学力は世界一!】
その男の背後にはナチスの威信をかけた巨大な実験設備があった。シュトロハイムは胸部から突き出た銃器機関銃をガチガチと鳴らし、狂気すら感じる笑顔で叫んだ。
「見よ、この機械化された肉体を! 柱の男をも凌駕するこの威容をッ! 我がナチスの科学力は世界一ィィィィイイイイ!!」
その熱狂の渦中に、独特の姿勢で座り、薄ら笑いを浮かべた謎の男がヌッと現れた。
「それってあなたの感想ですよね?」
「な、ナニィ! 感想ではない、事実だ! れっきとした事実だ!!」
シュトロハイムの額に血管が浮き出る。
「いや、何かそう言う客観的なデータとか、ソースってあるんですか? 他国の科学力と比較した表とか、論文の数とか?」
「ソースは俺だッ! この肉体を見れば分かるだろ。他にこんな事ができる国があるかッ!」
シュトロハイムは改造が施され、機械化された全身を男に見せつける。
「いやー、多分やろうと思えばやれる国、結構あると思うんすよね。ただ、普通は倫理的にヤバ過ぎてやらないだけと言うか、やりたいって言っても予算が通らないってのがあるんですよ」
男はパチパチと瞬きをしながら、さらに追い打ちをかける。
「あなたの存在が証明できるのは、ナチスの科学力が高い事じゃなくて、ナチスが非人道的な人体実験を平気でやれちゃう、ちょっと倫理的にヤバい集団って事なんですよね」
シュトロハイムの誇り、愛国心、そして改造された電子頭脳が、論理の矛盾(パラドックス)に耐え切れずショートする。
「ナ、ナチス…、ヒ、人道、違ウ…、世界イチ、…アババババババババッ!!」
ガッシャアアン! と音を立てて頭頂部から黒煙を噴き上げ、シュトロハイムは膝から崩れ落ちていく。
「あ、やべ、壊れた…」
男は薄ら笑いを浮かべながら去っていく。
「あ、多分今の世界一はアメリカっすw」
おしまい☆
※ざっくり調べた所、第一次世界大戦中の科学力世界一はドイツ、ジョジョ第二部(1938年~1939年)はアメリカが世界一っぽいですw
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【第三部:ジョジョに微妙な冒険】
1987年、日本。
とある牢獄、鉄格子の向こう側、暗がりに鎮座する一人の青年――空条承太郎。17歳にして195センチの巨躯を持つ彼は、自らを「悪霊」に憑りつかれたと称し、独房に閉じこもっていた。
駆け付けた祖父のジョセフ・ジョースターと、その友人のモハメド・アヴドゥルによって、承太郎は独房から引きずり出される事となる。
時を同じくして承太郎の母、ホリィが突如として倒れた。100年の眠りから覚めた一族の宿敵、ディオが発する呪縛。それはスタンドの才能を持たぬホリィの命を、内側から蝕み始めたのだ。
ホリィを救う方法はただ一つ、エジプトに潜むディオを見つけ出し、始末する事だ…。
そうして承太郎一行は、命がけのインドへの旅路につく。だがこの時、承太郎は知らなかった。100年に及ぶ因縁の対決が、エジプトまでの旅路が、あんなしょうもない結末になろうとは…。
旅の途中、ジョセフが言った。
「承太郎、心して聞け。ディオという男は、若き日のわしの祖父ジョナサンから、最愛の女性の唇を奪うという、もっとも卑劣な手段で攻勢をかけたのだ。その時の衝撃は『ズキュウウウン!』だったといい聞かされている」
「そうか……」
何を聞かされているんだ俺は。そんな先祖のどうでもいい話、子孫にまで言い伝えるなよな…。
「だがしかし、祖母エリナはすでに、祖父との行為を済ませておったのじゃ!」
おいおい、この話まだ続くのかよ…。
「だがなあ、そんな事はどうでもいい!」
そこは同意だが、じゃあ何故話した…。
「わしの波紋呼吸の師匠、リサリサ先生に淡い恋心を抱いていたら、それがわしの実の母と知った時の衝撃と言ったら…」
やれやれだぜ…。
そうして訳の分からない話を聞かされながら、一行はディオの潜伏するエジプト、カイロに到着する。
ついに承太郎は、一族の仇敵であるディオの館へと辿り着いた。母の命、仲間の犠牲、そして100年の因縁。極限の緊張感が漂う中、ディオの側近であるテレンス・T・ダービーが立ち塞がる。彼は魂を賭けた「テレビゲーム」での対決を承太郎に迫った。
「いいだろう。……受けて立つ」
(……いきなりレトロゲームとか……俺は一体、エジプトまで来て何をやっているんだ…)
そしてついに…。館の屋上、月明かりの下で承太郎とディオが対峙する。
「ついに来たか、承太郎」
伝説の死闘が始まる……かと思われたその時。ディオは懐からおもむろに、不気味な輝きを放つ「カードの束」を取り出した。
「承太郎。……肉体で争うのはもう古い。これからは知力の時代だ。この『マジック&ウィザーズ』というカードゲームで決着をつけようではないか」
「……あァ?」
「こいつはメチャメチャ楽しいぞ。さあ承太郎、カードの剣を取れ!!」
ディオは高らかに宣言する。
「決闘(デュエル)!!」
そうしてバトルは進む…。
「…俺は、ミノタウルスとブラッド・ヴォルスと生贄に奉げ、『
「まったく、やれやれだぜ…」
重厚で壮大な冒頭はどこへやら、いつの間にか微妙な冒険になっていた。
これは『ジョジョの奇妙な冒険』ではなく『
おしまい☆
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【第三部:困った時は物理で解決①】
エジプト・カイロ。
灼熱の太陽が石畳を焼き、肺の奥まで砂が入り込むような乾燥した空気が一行を包んでいた。DIOの潜伏先を示す一枚の「写真」を手に、承太郎たちは数え切れないほどのカフェやバザールを巡り歩いていた。
そんな中、立ち寄った薄暗いカフェ。ジョセフが店の客たちに、あの影に覆われた館の写真を見せて回る。誰もが首を横に振る中、隅のテーブルで静かに酒を嗜んでいた一人の男が声を上げた。
「……その館なら知っている。私に訊ねたのは正解だ」
男の名は、ダニエル・J・ダービー。整えられた口髭と、勝負師特有の鋭い眼光を持つ男だ。ジョセフは直感した。この男の纏う空気……ただの市民ではない。
「教えろ。情報料を払う」
ジョセフが財布を取り出そうとしたが、ダービーは指を立ててそれを制した。
「金はいらん。私は
「賭けだと? 悪いが急いでるんだ、そんな時間はない。何なら情報料を上乗せする」
しかし、ジョセフより早く、ポルナレフが身を乗り出した。これまでの旅の疲れと苛立ちが、彼を前のめりにさせる。
「いいぜ、だったら俺が賭けてやるよ」
「グッド!」
「やめろ、ポルナレフ! この男、得体が知れん……!」
「心配するなよジョースターさん。適当な賭けでパパっと勝って、さっさとDIOの野郎を拝みに行こうぜ」
ダービーが提案したのは、ごく単純な賭けだった。皿の上の魚の燻製を二つ投げる。そして、『店先にいる猫が、左右どちらの燻製を先に食べるか』だ。
ポルナレフは「右」を選んだ。右の燻製の方がわずかに大きく見えたためだ。「俺が猫ならデカい方を選ぶ…」しかし――
猫は、左の小さい方の燻製を取り、続けて右の燻製を咥えた。
「悪いな。私の勝ちだ……」
「な、何だと……!? そ、そんな馬鹿な!」
「勝負はついた。代償を支払ってもらおう。……代償は、お前の『魂』だ」
ダービーが呟いた瞬間、空気が凍りついた。
「な……身体が……動か……な……」
ポルナレフの絶叫さえ虚空に消える。彼の身体から、白く透き通った「何か」が強引に引き抜かれ、ダービーの手元へと吸い込まれていく。ポルナレフの身体は生気を失い、そのまま椅子から崩れ落ちた。
「おい、ポルナレフ! しっかりしろッ!」
ジョセフが駆け寄るが、その肌は既に粘土のように冷たくなっている。
ダービーの手のひらの上には、一枚の『ポーカーチップ』が握られていた。そこには、生気のない表情を浮かべたポルナレフの顔が刻印されている。
「貴様……スタンド使いかッ!」
承太郎の背後から、怒りに燃える『スタープラチナ』が姿を現す。
「いかにも。私のスタンドは『オシリス神』。賭けに負けた者の魂は、強制的にこのコインへ変えさせてもらう」
カイロの静かなカフェは、一瞬にして逃げ場のない「賭博場」へと変貌した。
「てめえ、3対1で俺たちに勝てるとでも思っているのか?」
「ククク、無駄だよ。いいのか? 私が死ねば、ポルナレフの魂は二度と元には戻らない。……私を殺せない以上、君たちに残された道は、この私の『賭け』に乗ることだけなのだよ」
ダービーは勝ち誇った笑みを浮かべ、承太郎を冷ややかに見つめた。ジョセフとアヴドゥルは、苦渋に満ちた表情でダービーを睨みつけるしかない。ギャンブラーの土俵に引きずり込まれた時点で、主導権は完全にダービーにある……誰もがそう確信した、次の瞬間だった。
「ギャアアアアアアッ!!?」
静寂を切り裂いたのは、ダービーの悲鳴だった。
承太郎が動いたのではない。彼の背後に現れた『スタープラチナ』が、目にも止まらぬ速さでダービーの右手の人差し指を、まるでアメ細工のように容易くへし折っていた。
「……ポルナレフを元に戻せ。次は腕をへし折るぞ」
承太郎の低く、地を這うような声。ダービーは指を抱えて悶絶しながらも、必死に虚勢を張った。
「ば……バカな……! いいのか……!? 私に何かあれば、ポルナレフの魂も道連れだぞ……」
ボゴォッ!!
言葉が終わるより早く、鈍い破壊音が響いた。
スタープラチナの拳が、今度はダービーの右腕の骨を容赦なく粉砕した。
「……聞こえなかったのか? 俺はポルナレフを『元に戻せ』と言ったんだ。……次はないぜ」
承太郎の瞳には、一切の躊躇がない。ダービーは戦慄した。この男……「もし戻らなかったら」という不安よりも、「戻るまで壊し続ける」という覚悟の方が遥かに上回っている。
「そ、そんな……ありえない……! 貴様、正気かッ!?」
「承太郎、私にもやらせてくれ。ポルナレフがやられたままで、私も腹の虫が収まらないんだ!!」
一歩前に出たのはアヴドゥルだった。その背後には『マジシャンズ・レッド』が、ダービーの脂汗を蒸発させるほどの熱気を帯びて立っている。
「いいぜ。だが、殺すなよ」
「分かっている。……だが、『死んだ方がマシだ』と思うくらいには、痛めつけてやらないと気が済まない」
二人の会話は、もはや交渉や取引ではなく、解体工事の打ち合わせだった。ダービーは顔面を蒼白にし、カタカタと震え始める。
「あ……あの、賭けを……ルールを……」
「黙れッ!!」
アヴドゥルの拳が、ダービーの顔面に深々と突き刺さった。
崩れ落ちるダービーを見下ろしながら、ジョセフが顎に手を当て、思い出したように言った。
「そう言えば承太郎。この前、磁力使いの女(マライア)に襲われたんだが……スタンド使いを意識不明の重体に追い込んだら、能力が解除されたことがあった。こいつも
「……フン。ジジイにしてはなかなかの名案だ。試してみる価値はあるな」
承太郎が帽子を直し、スタープラチナを前に出す。その拳から放たれる圧力が、カフェの空気を歪ませた。
「ひ……ヒイイィィィ!! 待て! 待ってくれェッ!!」
ダービーは、先ほどまでの優雅なギャンブラーの面影など微塵もなく、床に這いつくばって土下座した。
「すみませんでしたァッ!! 今すぐポルナレフは元に戻す! コインも全て返す! だから……
ダービーが絶叫と共に能力を解除すると、彼の手元にあったコインが光を放ち、肉体へと還っていく。
「お……おおう……? 俺は一体……?」
目を覚まし、状況が飲み込めていないポルナレフ。
承太郎はやれやれと溜め息をついた。
「……どうやら魂は元に戻ったようだな」
「そ、そうだ! だから、もう……」
安堵の表情を浮かべるダービー。しかし、承太郎の瞳の温度は変わっていなかった。
「それじゃ、もう一つ。DIOの居所を吐きな。そうしたら
「そ、それは、それだけはァ! それでは私がDIO様に殺されるッ……」
「……そうか。じゃあ、てめえには用はねえッ!!」
「もしかして、オラオラですかぁッ!!!」
ダービーが叫ぶ次の瞬間、スタープラチナが狂ったように両手を素早く打ち抜き、ラッシュ攻撃を繰り出していく。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
「アバアアアアアアアッ!!?」
カイロの空に、ギャンブラーの悲鳴が虚しく響き渡った。
ポルナレフが戻った喜びと、積み重なった怒りを乗せたスタープラチナのラッシュ。ダービーは文字通り「物理的」に粉砕され、
「やれやれだぜ」
ポーカーもコインも不要。承太郎たちの旅は、どんな困難も物理で解決していくのだった。
←To Be Continued
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【第三部:困った時は物理で解決②】
カイロの街に夕闇が迫る直前、満身創痍の一匹の犬が、承太郎たちの前に姿を現した。
ニューヨークの野良犬の帝王、イギー。
その片足は無惨に失われ、砂に血の轍を引きずっている。彼は単身、DIOの館の門番である猛禽『ペット・ショップ(ホルス神)』との死闘を制し、ついに「目的地」を突き止めていた。
「……お前が見つけたのか。よくやった、イギー。お前の勇気は無駄にはせんぞ」
ジョセフはイギーを抱きかかえ、スピードワゴン財団の医療班に緊急手配を済ませる。イギーが指し示した先には、写真で何度も見た、あの影に覆われた不気味な館が静まり返っていた。
「ジョースターさん、すぐに乗り込みますか?」
アヴドゥルが『マジシャンズ・レッド』をいつでも出せる構えで問う。
「いや、待てアヴドゥル。ヤツは吸血鬼じゃ。もう太陽が沈むまであとわずかしかない。太陽の沈んだ夜は、文字通りヤツの時間。今このまま乗り込めば、得体の知れぬスタンド能力の餌食になり、全滅は必至……」
ジョセフは鋭い眼光で館を見据え、不敵な笑みを浮かべた。
「……乗り込むのは、明日の朝。ヤツの最も嫌う『太陽』が昇ってからじゃ。もっとも、『乗り込む』必要があれば、の話だがな」
翌朝、午前8時。
カイロの住民たちが「避難訓練」の名目でその区画一帯を立ち入り禁止にさせられた後、街の静寂を切り裂く轟音が響き渡った。
館へと向かっていたポルナレフは、上空を見上げて開いた口が塞がらなくなった。
「な、なんだありゃあ……!? 財団の救援ヘリじゃあねーぞ! あの数は……軍隊か!?」
カイロの空を埋め尽くしていたのは、スピードワゴン財団がチャーターし、最新鋭の武装を施した数十機の攻撃ヘリ部隊だった。
「よし、時間通りじゃ」
ジョセフが懐から無線機を取り出し、冷徹な声で合図を送る。
「……ターゲット、あの館一帯。『やれ』!!」
『イエッサー、ミスター・ジョースター!』
無線の返答と同時に、空が火を吹いた。
ヘリのポッドから放たれた無数のミサイルと爆弾が、美しい放物線を描いてDIOの館へと降り注ぐ。
ドゴォォォォォォォン!!!!!
轟音と共に、100年の歴史を持つ館の屋根が吹き飛び、壁が粉砕される。一発や二発ではない。一帯を更地にするための、容赦のない「絨毯爆撃」だ。立ち昇る黒煙がカイロの空を覆い、爆風が承太郎たちのコートを激しくなびかせる。
「ちょ、ちょっと待ってくださいジョースターさん! これはヤバイんじゃあないか!? 近隣には住民がいるんだぜ……!」
ポルナレフがパニック状態で叫ぶが、ジョセフは平然と義手の指で耳をほじった。
「大丈夫じゃ、ポルナレフ。この一帯の住人は昨日から全て避難させておる。……いいか、ヤツの能力が何だろうと、『物理的に存在している場所』そのものを消滅させれば関係ないんじゃ。 太陽の光を遮る屋根がなくなれば、吸血鬼は塵になる。シンプルじゃろう?」
「やれやれ……。じじいの『策』ってのは、いつからこんなに大雑把になったんだ」
承太郎は呆れたように帽子を直すが、その目は爆炎に包まれる館を冷ややかに見つめていた。
カイロの空に鳴り響く爆音。30分近くに及んだ容赦のない絨毯爆撃は、もはや「戦闘」ではなく、ただの「地鳴らし」だった。
かつてDIOの館があった場所は、今や見る影もない。石造りの外壁も、豪華な内装も、そして吸血鬼が潜んでいた暗い地下室までもが、何万トンもの爆薬によって粉砕され、剥き出しの太陽光の下にさらけ出されていた。
爆撃が止み、立ち込める黒煙が砂漠の風に流されていく。辺り一面は見事なまでの更地。そこには「影」一つ残っていない。
「……やりすぎじゃあねーか、ジョースターさん?」
ポルナレフが呆然と呟く。
「いや、吸血鬼を相手にするならこれくらいが適正じゃ。灰の一片も残さず、太陽の光で焼き尽くす。これが最も確実な『除霊』なんじゃよ」
ジョセフが不敵に笑ったその時、彼の持っていた最新式の無線機が、緊迫した、しかし明るいトーンの声を拾った。
『こちら、日本支部! ミスター・ジョースター、聞こえますか!?』
スピードワゴン財団の連絡員の声は、喜びに震えていた。
『報告します! 先ほど、ホリィさんの容態が劇的に回復しました! 高熱が嘘のように下がり、生命徴候(バイタルサイン)も全て安定! 医師団によれば、もう命に別状はありません。繰り返します、ホリィさんは助かりました!』
その言葉を聞いた瞬間、一行の間に沈黙が流れた。
ホリィの命を蝕んでいたスタンドの呪縛……それが解けたということは、すなわち。
「……終わったんだな。ヤツが、DIOが死んだという証拠だ」
アヴドゥルが深く息を吐き、静かに十字を切った。
「やれやれだぜ。結局、ヤツのスタンド能力が何だったのか……拝む暇もなかったな」
承太郎は帽子を深く被り直すが、その口元にはわずかな、しかし確かな安堵の笑みが浮かんでいた。
死闘になるはずだった戦いは、一撃の拳を交えることもなく幕を閉じた。
「アブドゥルも、ポルナレフも、イギーも、花京院も……そして承太郎。全員、生きとるな?」
ジョセフが全員の顔を見渡す。
そこには、欠けた者は一人もいない。イギーは財団の最新医療で命を取り留め、動物病院で安静にしていた。
「当たり前だぜ、ジョースターさん。こんなあっけねー結末で死ねるかってんだ!」
ポルナレフが花京院の肩を叩き、豪快に笑う。
「ええ、本当に。……でも、せっかく戦線に復帰したのに出番がありませんでしたね」
花京院も穏やかに微笑んだ。
カイロの更地の上に、遮るもののない太陽が輝いている。
100年にわたるジョースター家とDIOの因縁は、最新兵器による絨毯爆撃という「圧倒的な物理」によって、チリ一つ残さず清算されたのだった。
エジプト・カイロの空港。
かつて多くの別れがあったこの場所は今、雲ひとつない快晴と、心地よい風に包まれていた。
絨毯爆撃で更地となったDIOの館の調査と後始末をスピードワゴン財団に任せ、一行はそれぞれの故郷へ帰るための搭乗手続きを終える。
「本当に……。本当に、長い旅だったな。なあ、みんな」
ポルナレフが、まだ少し信じられないといった様子で仲間たちの顔を見渡す。
隣には、腕を組んで堂々と立つアヴドゥル。その足元では、コーヒー味のガムを噛みながら不機嫌そうに、しかしどこか誇らし気に鼻を鳴らすイギーがいた。
「ああ。多くの困難があったが……こうして全員で帰路につけるとは、感無量だ」
アヴドゥルの言葉に、花京院が穏やかに頷く。
「一時はどうなることかと思いましたが……。結果的に、僕たちは誰一人欠けることなく、この旅を『最高の形』で終えることができたんですね」
「カッカッカ! 当たり前じゃ! わしの緻密な計算(と爆撃)があれば、吸血鬼の一匹や二匹、敵ではないわい!」
ジョセフは豪快に笑い、隣に立つ承太郎と花京院の肩を、これでもかというほど強く抱き寄せた。
「特に承太郎と花京院は未成年じゃからな。無事に親元まで送り届ける義務がある。ホリィや花京院のご両親に、お前たちの元気な姿を見せてやるのがわしの最大の使命なんじゃよ!」
ジョセフの瞳には、冗談めかした言葉の裏に、心からの安堵と愛情が滲んでいた。しかし、抱き寄せられた承太郎は、やれやれと帽子を深く被り直す。
「よく言うぜ。てめえのせいで何度死にかけたことか。……帰りは絶対同じ飛行機には乗らねえからな。てめえと一緒に乗れば、またどこかの砂漠に不時着するか、大西洋に墜落するのがオチだ。俺はもう御免だぜ」
承太郎の冷ややかな、しかしどこか冗談を含んだ言い返しに、花京院が思わず吹き出した。
「ふふ、確かにジョースターさんと一緒だと、空の旅も『アトラクション』になってしまいそうですね。……でも、僕は構いませんよ。スリルがあるのは嫌いじゃありません」
「おお、花京院! お前だけはわしの味方じゃな!」
そんなやり取りを、ポルナレフが少し寂しげな、それでいて満ち足りた表情で見つめる。
「……ま、お前ら。またどっかで会おうぜ。この絆は、どんな物理攻撃でも壊せやしねえからな」
「ああ、また会おう。友よ」
アヴドゥルが力強く握手を求め、一行は一人ずつ、固い握手と抱擁を交わす。
彼らは、明るい未来への約束と、絶え間ない毒舌の応酬を心から楽しんだ。そうして太陽の下、承太郎たちが乗り込んだ飛行機が、青空へと向かって力強く離陸していく。
窓の外に広がるカイロの街、そしてかつて戦った砂漠を見下ろしながら、承太郎は懐から一枚の写真を取り出した。
エジプトで撮った、5人と1匹が揃った集合写真。
「……やれやれだぜ」
そうして承太郎の旅は幕を閉じたのだった。
おしまい☆
【制作こぼれ話】
エリナのファーストキス(口臭編)。当初はディオの口臭がひどく、エリナが泥水で口をすすぐ、まあ、原作の流れに沿っていく展開を考えていました。
しかし、ディオの口が臭くても面白くない、エリナに「ゲロ以下のにおいがプンプンするわ!」と言わせても、原作程のパンチ力がない。
そこで、立場を逆転させてみました。
口臭がきついエリナ、スピードワゴンの名台詞を原作のパンチ力を落とさず言えちゃうディオ。挙句には知的でクールなディオが語彙力ゼロになって「吐いちゃう吐いちゃう」のギャップが楽しくて、自分が想像した以上の化学反応を起こしてくれましたw
海馬(津田さん)のセリフ、個人的には子安さんボイス(ディオの声優さん)で違和感なく再生できてしまいます。子安武人さん、津田健次郎さん、どちらも渋いイケメンボイスだから親和性が高いのかも知れません。