始まりがあれば終わりがあるように、出会いがあればまた、別れもあるのです。
永遠に続く二人の関係、それはどんなに幸せな事でしょう。
ここ、きらめき高校には一つの伝説があります。校庭の外れにある一本の古木、その袂で卒業の日に女の子からの告白で生まれた恋人たちは、永遠に幸せな関係になれるという伝説が。
??「あなたが・・・」
今日は卒業式、卒業生の一人、藤崎詩織は覚悟を決めていた。ずっと想い続けていた幼馴染みである
小波への想いを自覚したのはいつからだろうか。幼馴染み、友人としての好きから、自分でも気付かない内に異性として好きになっていた。その想いに気付いてからはずっと迷い、悩んできた。もし想いを拒絶されれば今までの関係ではいられなくなる。好きな気持ち、ずっとそばにいたい気持ち、そして、それを拒絶される不安が詩織をずっと悩ませた。
しかし、卒業式の日に告白すると永遠に幸せになれると言う伝説の木が、詩織の想いを後押した。そんな訳で、詩織は朝早くに教室へ行くと、意中の小波の机に一通の手紙を忍ばせた。伝説の木の下で告白するため、彼を呼び出す手紙である。
そうしてつつがなく卒業式は終わり、いよいよ告白する時が迫ってきた。
詩織は少し早めに教室を飛び出し、伝説の木へと駆け出す。しかし、そこには、大勢の女子生徒が待機していた。そう、伝説にあやかりたいと思ったのは、詩織だけではなかったのだ。
ちょっと告白しずらいな、そんな気まずさを感じなら歩いていると、そこに詩織の見知った顔があった。美樹原
詩織と美樹原は以前から親しい間柄だったが、以前に詩織は美樹原から小波が好きであると打ち明けられた事があった。その美樹原がいるという事は、自分と目的が同じという事で間違いない。
詩織「めぐ、来てたんだ」
美樹原「あ、詩織ちゃん。詩織ちゃんも来たんだね」
詩織「うん」
美樹原「小波くん、だよね?」
詩織「うん」
美樹原「そう、だよね・・」
詩織「ごめんねめぐ、たとえあなたでも、小波くんだけは譲れないの」
美樹原「ううん、謝る必要なんてないよ。だって、それは私も同じだから」
詩織「じゃあ、やるしかないわね」
美樹原「勝負よ、詩織ちゃん」
そうして二人は数mの距離をとって対峙する。
先に仕掛けたのは詩織の方だった。右ストレートを美樹原の顔面に叩きこむ。しかし、美樹原は首を軽く曲げ、詩織のストレートを頭部で受け止める。すると、詩織の右拳から血が
詩織「硬い、どうして!?」
すると美樹原は自身の頭部をコンコンと軽く叩く。
美樹原「これ、ヘルメットなんだ」
詩織「なんですって!?」
美樹原「今日、きっとこうなる気がしていたの。だから、事前に頭髪に擬態できるヘルメットを準備しておいたんだ」
詩織「でも、守ってるだけじゃ私は倒せないわよ」
美樹原「分かってる。でも、ヘルメットにはこんな使い方もあるんだよ!」
詩織「!!」
美樹原はダッシュで詩織まで近づくと、ヘルメットを脱ぎ、それの上下をひっくり返して詩織の頭部に叩き落とす。
美樹原「食らえ、アルティメットインパクト!!」
まさかの美樹原の反撃に、詩織は反応が一瞬遅れ、メット攻撃をモロに頭部に受けてしまう。そして、額から垂れて来た血を詩織は舌でペロリと舐める。
詩織「なるほど、覚悟が足りなかったのは私の方ね。いいわ、私も腹を括る。ここからはもう、手加減できないから覚悟してね!」
詩織は大きく息を吸う。そして息を吐きながら全身に力をこめると、全身をピンク色のオーラが
美樹原「ここからが本当の勝負だね、詩織ちゃん!」
一方その頃、伝説の木の下では他の女生徒達もバトルをしていた。
紐緒結奈 VS 如月未緒
紐緒「戦闘レベル、ターゲット確認、排除開始」
如月「まさか、あなたにも人としての感情があったんですね」
紐緒「余計なお世話よ。さっさと妄想の世界へ帰りなさい!」
如月「妄想に囚われてるのはあなたの方じゃないですか? まともな知性があれば科学力で世界を征服しようだなんて思わないと思いますけど」
鏡「さっさと消えなさい。彼にはあなたのような下衆な女性は相応しくないわよ」
朝日奈「どっちが下衆よ、いつも取り巻きばかり連れたビッチのクセに」
鏡「あれは彼らが勝手についてくるだけよ。私は彼らに身も心も許した事はないわ」
清川望 VS 虹野沙希
虹野「頑張ってるあなたを応援するのが好きだった。でも、今だけはあなたを応援できない」
清川「これが私たちの宿命なんだね」
古式ゆかり VS 片桐彩子
片桐「キルユー、ファックユー、覚悟してもらうわよ」
古式「あらあら、まあまあ、お口が悪いですわねえ。それでは、
そうして伝説の木の下ではどこもかしこも告白権を賭けた激しいバトルが勃発した。
そんな中、詩織と美樹原の戦いは決着を迎えようとしていた。
ピンク色のオーラを纏い、余裕を見せる詩織と、立っているのもやっとの美樹原。どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだった。
詩織「めぐ、決着はついたわ。もう止めて、これ以上あなたを傷つけたくない!」
美樹原「やっぱり強いね詩織ちゃんは。でも、格闘ゲームのお約束を忘れてるよ…」
詩織「えっ!?」
美樹原「追い込まれたヒロインはね、一発逆転の超必殺技を使う事ができるんだよ」
詩織「超、必殺技…?」
美樹原「私の超必殺技のコマンド入力はね、小波
詩織「意味はよく分からないけど、あなたの覚悟、伝わってきたわ!」
美樹原「上、上、下、下、左、右、左、右、B、A!!」
美樹原がそう叫ぶと全身から金色のオーラが吹き出した。そして美樹原がヘルメットのあご紐を持ってヘルメットを勢い良く回転させる。その回転させた遠心力を詩織にぶつけようと、全身全霊の力を込める。
美樹原「これでとどめよ、ヘルメット最終奥義、アルティメットジェノサイダー!!」
美樹原が技を仕掛けようとしたその瞬間、あご紐が回転の勢いに耐え切れずに千切れ、ヘルメットが遥か遠方に飛んで行ってしまった。
美樹原「し、しまった」
その瞬間を詩織は見逃さなかった。
詩織「今よ!」
詩織は美樹原との距離を一気に詰め、その勢いをそのままに掌底を叩き込む。そして勢いを維持したまま美樹原の背部に回り込み、その背部に肘打ちを入れる。さらに間髪入れずに高速で振り向くと美樹原の背後を両手で突き飛ばした。すなわち、
※崩撃雲身双虎掌《ほうげきうんしんそうこしょう》
バーチャファイター2におけるアキラの得意技。別名アキラスペシャルとも呼ばれ、一瞬で体力の5割ほどを持っていく。そのコマンド入力難度は極めて高く、これが出せるだけでゲーセンでは人気者になれたほど。筆者の友人がこの技を出すことができ、地方の大会では幾度も優勝し、全国大会への出場実績がある。
ただし、あまりに強すぎたため、後のシリーズでは技の威力は弱体化されてしまった。
詩織の渾身の崩撃雲身双虎掌を受け、ついに美樹原はダウンする。
詩織は少しの間、美樹原の様子をうかがっていたが、ついに立ち上がる気配がない事を確信し、ハッと我に返る。そして詩織は美樹原の傍にしゃがみ込むと、そのまま美樹原の上半身を抱きかかえて膝枕をした。
詩織「めぐ、大丈夫?」
美樹原「えへへ、やっぱり強いね、詩織ちゃんは。ごめんね、詩織ちゃんの恋路の邪魔をしちゃって」
詩織「ううん、そんな事ない」
美樹原「優しいね、詩織ちゃんは。大好き。私の分まで幸せになってね」
詩織「駄目、私だけ幸せになんてなれないよ」
美樹原「でも、詩織ちゃんは勝ったんだからその資格があるんだよ。だから、幸せにならなくちゃ駄目だよ」
詩織「ううん、違うの。何だか私、自分の気持ちが分からなくなっちゃったの。私、めぐの事が大好き、だからこんな気持ちのまま、彼に告白なんてできない」
美樹原「詩織ちゃん・・」
詩織「めぐ、一緒に帰ろ。うちで傷の手当もしなきゃだしさ」
美樹原「本当に、いいの?」
詩織「うん、私めぐの事が一番好き」
美樹原「私も、詩織ちゃん大好き。離したくない!」
そうして、激しいバトルを通して絆が育まれ、友情が愛情へと昇華されていった。そして、その他の女子生徒達も・・。
紐緒「現実の世界でしか生きられない私と」
如月「空想の世界に生きる私」
紐緒「二人を足して2で割ったら、最高のバランスになると思わない?」
如月「紐緒さん、それとっても素敵な提案です」
朝日奈「ねえねえ、一緒に
鏡「あら、いいじゃない。取り巻きの男どもに食事代を出させましょうか」
朝日奈「わーい、やったあ。エイエイオーオー、ジャーンプ、ブイブイw」
清川「虹野さん、もしかしたら私は大会で入賞するよりも、君が作ってくれるお弁当が食べたくて頑張っていたのかも知れない。これからも、君に虹弁を作って欲しい」
虹野「うん、いつまでだって頑張るあなたをずっと応援する。清川さんのために美味しいお弁当を一生作り続けるわ」
※虹弁
虹野沙希の作る弁当。
当時、虹野はメインヒロイン(藤崎詩織)以上の人気を誇り、ファンの間では虹野の弁当は特に『虹弁』と呼ばれていた。
片桐「アイラ―ビュー、アイニージュー、アイウォンチュー!」
古式「うふふ、素敵な言葉を
そうして、伝説の木の下には誰もいなくなった。そんな中、小波駒人とその友人である早乙女
小波「なんでお前まで来るんだよ?」
好雄「だってよ、どんな奴がお前に告白するのか気になるじゃねえか。いいだろ、邪魔しないからさ」
小波「ったく、しょうがねえな」
そうして二人が伝説の木の下に着くと、そこには誰もいなかった。小波は不審に思いながらもしばらくその場で待ってみる。が、いくら待てども来るのは小波達のように男ばかり。が、誰もがしばらく待っては淋しそうに帰っていく。
好雄「なあ小波、いい加減に帰ろうぜ」
小波「そうだな。何だか付き合わせて悪かったな」
好雄「いいって事よ。それに俺が勝手に付いてきたんだしな。それじゃうちで野郎どもを集めて卒業パーティーでもやろうぜ」
小波「おお、いいなそれ」
そうして小波と好雄は家に帰り始める。その途中、ボロボロになった女子生徒の集団とすれ違う。どの生徒も身体はボロボロだったが、誰もが皆幸せそうな表情を浮かべていた。
小波「おい、一体あれはなんだ?」
好雄「何だろう。一体何が起きたんだ…」
不思議に思いながらも好雄の家に行くと、そこには好雄の妹の、早乙女優美と、頭の両サイドを輪にして、まるでコアラのような髪型の館林見晴がいた。二人とも酷く怪我をしている様子だった。
好雄「おい優美、お前どうしたんだよ!?」
優美「ううん、何でもないのお兄ちゃん」
好雄「何でもないって事はないだろう」
館林「何ていうか、ちょっと絆を深め合っただけですよお義兄さん」
好雄「えっ、今何て!?」
ここにも新たなカップルが誕生していたのだった。
おしまいw
【おまけ】
伝説の木を見つめながら軽やかに笑みを浮かべる二つの影があった。伊集院レイと、その側近の外井雪之丞である。
伊集院はきらめき高校の理事長の孫という立場であり、毎年伝説の木で起こる出来事を知っていた。そのため女子生徒同士が戦い、自滅していくのをじっと待っていたのである。
外井「レイ様、どうやら今年も無事にバトルが終わったようです」
レイ「これで誰にも邪魔されずに彼に告白ができるというものね」
伊集院は、普段は髪を束ねて男装していたが、今は髪を下ろし女子用のセーラー服に身を包んでいた。伊集院家の女性は、高校を卒業するまで男子として生きねばならないという掟があったが、高校を卒業した今、ようやく全てを打ち明ける事ができるのだった。
外井「いいえ、申し訳ありません。実は私めも小波様の事が…」
レイ「そう、分かっていたわ。クリスマスの時のあなたの小波くんを見る目は、まるで恋する乙女そのものだったものね」
外井「申し訳ありません。小波様への想いと、この全身の筋肉の雄叫びは、私自身にも止めようがないのです!」
レイ「いいわ外井、ただし覚悟をする事ね。伊集院流総合格闘術を修めた私には、あなたの筋肉頼りの喧嘩殺法は通用しないわよ!」
そうして新たな戦いが始まるのだった。
おしまいw
※外井雪之丞
伊集院レイの側近。クリスマスでは、伊集院家のクリスマスパーティーに参加するに相応しいかの容姿をチェックする。本来は一定以上の容姿パラメータが必要だが、体力を鍛えまくると容姿度外視でパーティーに入れてくれる。これを繰り返すと、外井が主人公に告白しようとするイベントを見る事ができる。
なお、正式には外井(そとい)と読むが、実は【ゲイ】と読む事もでき、制作陣の遊び心をうかがい知る事ができるw
エピローグ
こうして今年も伝説の木の下では女子生徒たちの血で血を洗う死闘が繰り広げられた。しかしそれは、何も今年に限った話ではなかった。というより、もはやきらめき高校の伝統行事のようなものであった。
歴代の卒業生たちが男子生徒への告白権を賭けて闘っては、いつの間にやら対戦相手への絆が育まれ、多くの女子カップルが生まれていく。
そんな噂がいつしか『女の子からの告白で生まれたカップルは永遠に幸せになれる』という伝説になっていったのだった。
そして伝説の木は、ただそれを静かに見守り続けるのであった。
おわり☆