今回のお話は史実や科学的根拠を元にしたフィクションです。
できるだけ史実や科学的根拠、客観的事実で構成していますが、ある程度の自己解釈も含まれますのでご容赦ください。
ここの内容をもっと知りたい、などのご意見がありましたらお知らせください。
これは特定の宗教への勧誘ではなく、あくまで『歴史上のデータとしての聖書』を科学的に分析する試みです。
ですが、ある程度の宗教色もありますので、苦手な方はここでバックしてください。
【原作あらすじ紹介】
西暦2019年、世界を襲った謎の緑色の光線により全人類は石化してしまう。
それから3400年、文明は全て崩壊。ストーンワールド(石の世界)と化した世界で復活を遂げた千空は、科学文明の再興と、全人類の救済、そして怪光線の正体を暴くために動き出す。
【登場キャラ紹介】
石神 千空(いしがみ せんくう)
16歳の高校生。自作ロケットで宇宙に行くのを夢見て、日々様々な実験を行っている。
あらゆる分野の科学知識に精通しており、ストーンワールドで起こる様々な困難を科学知識を活用して乗り越えていく。服の胸元に【E=mc²】と書くほど、科学を絶対的な信条にしている。
大木 大樹(おおき たいじゅ)
千空の幼馴染みで大親友。千空の実験を日常的に手伝っている。
ストーンワールドでは無尽蔵の体力と、超人的な馬鹿力で、千空をリーダーとする科学王国で肉体労働を全般的に担う。難しい事を考えるのは苦手で、暴力反対の平和主義。
Chapter1 『科学の産声』
西暦2019年。人類がまだ石化光線を受ける前、文明がまだその「輝き」を失っていなかった頃の話。
千空の家の自室は、相変わらず理化学機器や科学書の迷宮だった。その片隅で、千空はベッドに寝そべり、一冊の分厚い、黒い包装の本を読んでいた。
そこへ、扉をノックする音ももどかしく、大樹が顔を出した。
「千空ッ! 遊びに来たぞ! おおう、なんだ、ずいぶん難しそうな本を読んでいるな。科学の文献か? それとも新しいロケットの仕様書か?」
「ようデカブツ、こいつは『聖書』だ」
千空は大樹の方に顔を向けながら、淡々と答えた。大樹は目を丸くし、部屋の中に一歩踏み込む。
「せ、聖書だと!? お前が…、あの科学一辺倒のお前が、クリスチャンにでもなったのか!?」
「ちげえよ、そういう宗教的な話じゃねえ」
千空は上半身を起こし、その分厚い本の厚みを手の平で確かめるように持ち上げた。
「こいつは『科学書』として読んでも最高に面白いんだぜ。いいかデカブツ、現代の科学の発展に最も大きな貢献をした本を二冊挙げろと言われたら、ユークリッドの『原論』と、この『聖書』だと言われている」
「なっ…!? 聖書が科学の発展に貢献しているだと!? 俺はてっきり、科学と宗教は水と油のような、決して相容れないものだと思っていたぞ!」
大樹の驚愕の声が部屋に響く。千空は不敵に笑い、ページの一節を指でなぞった。
「普通はそう思うわな。だが、逆なんだよ。聖書から人類の科学が始まったと言っても過言じゃねえ」
「聖書から人類の科学が始まっただと?」
「ああ。例えば大昔、自然物ってのはそれそのものが『神』であり、信仰の対象だった。太陽を見りゃ、エジプト神話なら『ラー』、ギリシャ神話なら『ヘリオス』、日本神話なら『天照大御神(アマテラスオオミカミ)』って具合にな。海も山も雷も、全部が意思を持った神様だったわけだ」
「そうだな! 自然は畏れ多い、神聖なものとして
「例えば富士山なんかは『女神様』扱いされてたんだぜ。女神様が嫉妬するからって、明治時代に入るまで女性は富士登山禁止だったんだ、クソ笑えるぜ」
「そう言えば近所の神社のデカい木も、御神木様だと言って崇められていたな。そう言う風習は今でも残っているぞ!」
「だが、聖書はそれを根底からぶち壊した。この本は、『自然物は全て神が造ったものだ』と言い切ってるんだ。太陽も海も、神そのものじゃなく、神が設計したただの『被造物』に過ぎねえってな」
千空は髪をかき上げながら、窓の外の太陽を指差した。
「つまり、自然現象ってのは崇める対象じゃなく、全てが観察し、解き明かすべき『科学の対象』に変わったんだ。石ころや水たまりと同じ、ただの物理的な構造物(オブジェクト)になったってわけだ」
「おおう、つまり、神という絶対的な存在を一点に集約したことで、逆にこの世界のすべてが『調べていいもの』に解放されたというわけか!」
千空はベッドから起きると、首筋を軽くトントンと叩く。
「聖書はな、『創世記』の世界の始まりから、『ヨハネの黙示録』の世界の終わりまでが記されているんだが、これを『科学』という物差しを通して読み解くと、最後まで全く違和感なく、一貫性を持って読むことができるんだ」
「それはすごいな。壮大な物語が一本の線で繋がっているというわけかッ!」
「数千年も昔に書かれた書物が、しかも時代も立場もバラバラな様々な著者によって書かれた本がだぜ? それが科学的な一貫性を保ち、しかも矛盾がないなんてのは、バケモノじみた話だろ。そそるぜ、これは!」
Chapter2 『宇宙の始まり』
「じゃあ、せっかくだから何か例を挙げてくれ! 聖書がどう、科学的なんだ?」
「そうだな……。なら俺の好きな分野、宇宙の話をしてやる」
千空は部屋のホワイトボードに、宇宙の始まりを示す一点のドットを描き込んだ。
「聖書の初めには、『宇宙の始まり』が書かれている。つまり現代科学における『ビッグバン』の記述だ」
「ビッグバン…。確か、宇宙の始まりにあったという大爆発の事だったか。だが、それは一体何なんだ?!」
「アホほど大昔、およそ138億年前、極小の、それでいて超高エネルギーの一点から始まった爆発的膨張だ。これがビッグバンだ」
「138億年前……。そんな気が遠くなるような昔の事が、なぜ確かと分かるんだ? まさか、誰かが見ていたわけでもあるまい?」
大樹の素朴な疑問に、千空は不敵な笑みを浮かべて数式を書き加える。
「今じゃ科学者でビッグバンを疑ってるヤツはいねえ。地球が丸いってのと同レベル、もはや常識だ。宇宙は今現在も加速しながら拡大し続けている事が観測されている。拡大を逆再生すりゃ、元は一点だったと考えるのが、100億%合理的なロジックだろ」
「しかし千空! 聖書の記述が、本当にビッグバンを指していると言えるのか!?」
「最初にこのビッグバン説を提唱したのは、ジョルジュ・ルメートルっていうベルギーの科学者だ。だがこいつ、同時にカトリックの神父でもあった」
「なっ…、科学者でありながら、神父でもあったのか!?」
「最初は『科学に宗教を持ち込むな』って批判もあった。ルメートル自身は『宗教と科学は分離している、観測データがすべてだ』と言っていたがな。だが、聖書の記述がルメートルのインスピレーションに影響を与えた事は想像に難くねえ」
「偶然かも知れないが、確かに聖書がインスピレーションを与えた可能性はありそうだな!」
「このビッグバン、あの世界一有名な科学者、アルベルト・アインシュタインをも出し抜いた例でもある」
「アインシュタイン……、知っているぞ! あの、あっかんべーの写真のヤツだな!」
「そうだ。アインシュタインは自分が作り上げた『一般相対性理論』を宇宙全体に当てはめてみた。すると、理論上の計算結果は『宇宙は拡大しているか縮小しているかのどちらかだ』という結論を弾き出したんだ」
千空はホワイトボードに『Λ(ラムダ)』と記号を書いた。
「ところが、当時のアインシュタインは『宇宙は大きさが変わらず、安定している(静的宇宙)』と強く信じ込んでいた。だから自分の計算結果に、あえて『宇宙定数(
「アインシュタインが、自分で出した計算結果よりも、自身の思い込みを優先させたという事か!?」
「だがその後、ハッブルっていう科学者が宇宙が実際に拡大している『証拠』を見つけちまった。アインシュタインは、ハッブルがいるウィルソン山天文台を訪れ、自分の目でそれを見て、ようやく宇宙定数を撤回した。アインシュタインはそれを『人生最大の過ち』だったと認めた。つまり、聖書に書かれた始まりの記述は、アインシュタインの知性すらも、数千年前から出し抜いていたって訳だ」
「おおう、凄いな聖書というヤツは」
Chapter3 『世界の成り立ち』
「その後に続く世界の成り立ちも凄いぞ。完全に科学的根拠と一致する」
「そう言えば聞きかじった程度だが、世界は神が作ったという説と、自然に進化してできたという説で、世の中は分かれてるんじゃないのか? まあ、もっとも日本では進化論が主流だが」
「『創造論』と『進化論』だな。だがなデカブツ、最新の聖書解釈じゃあ、もうこいつは正解が出ている。まず聖書じゃ、神は『6日間』で世界を作ったとされているが、元の言語であるヘブライ語の『ヨーム』という単語には、24時間の『日』という意味と同時に、『時代』という長い期間を指す意味がある」
「時代、だと!?」
「つまり、神は6日で世界を作ったんじゃなく、『6つの時代』を経て世界を完成させた。そう解釈すりゃ、地質学や生物学的な成り立ちと照らし合わせても、アホほど違和感がねえ」
大樹は腕を組み、ふむ、と深く唸った。
「と言うと、やはり人間は進化してできたという事は間違いないんだな?」
「ああ、化石やDNAの並び、積み上げられた物理的な証拠(エビデンス)はそれを示している」
「つまり『神が人間を作った』という説は、科学によって否定されたという事か?」
「いいや、それとこれとは別問題だ」
千空はホワイトボードの端に、武骨な『ハンマー』と、『日本刀』の絵を書き殴った。
「いいかデカブツ、例えば刀鍛冶師が一振りの日本刀を作ったとする。鍛冶師が工程の中でハンマーや研ぎ石を使ったとしてだ、そいつを完成させたのは誰だ?」
「そりゃあ、刀鍛冶師だ」
「だろうな。決して、『ハンマーという道具が、この刀を作りました』なんて言うヤツはいねえ。神がいたとして、だ。『進化という道具』を使ったとしても、それは『神が人間を作った』というのと変わらねえ」
「おおう、なるほど! 手段が進化であろうと、それ以外だろうと、その設計図を書いた者がいれば、それは『創造』に他ならないという事か!」
「そうだ、手段は関係ねえ。人間の成り立ちが進化かどうかと、神がいるかどうかの考察は、分けて考えなくちゃならねえ」
Chapter4 『聖書の矛盾を探せ!』
大樹は聖書に対し、強い興味を示し始める。
「なあ千空、俺にも聖書を少し見せてくれないか?」
「ああいいぜ」
大樹は聖書を受け取ると、そのまま創世記の第1章を読み始める。
『初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。
神は言われた。
「光あれ。」
こうして、光があった。』
(ムム、この記述おかしくないか? さっき千空はビッグバンから始まったと言ったが、聖書は「天地」が先で「光」が後になっている。これでは順序が逆ではないか…?)
疑念を感じつつも、大樹は更に聖書を読み進める。
『夕べがあり、朝があった。第一の日である。』
(夕があり、朝があった……。明確に一日のサイクルを指しているではないか。これで『日』を『時代』と訳すのは、いくら何でも強引過ぎないか……?)
「おい千空、いきなりだが聖書の矛盾を見つけてしまったぞ! しかも2つもだ!」
「ほう、この短時間に2つも見つけるなんて、やるじゃねえかデカブツ。それじゃその矛盾とやら、ご高説願おうか」
挑戦的な眼差しで見つめる大樹を、千空は軽やかに笑いながら見つめ返した。
続く☆
【製こほれ話】
今回は宗教と科学をガチ融合させる、自分の中では『異色作』です。
また、本作は全編を通してひたすら千空と大樹の対話形式のストーリーとなります。物語としては退屈かも分かりませんが、せめて皆様の知的好奇心を少しでも刺激できればと思います。
それはそうと、Dr.STONEアニメ、いよいよ最終章始まりましたね。原作は未読なので、メチャメチャ楽しみです。
作中の口調など改めてチェックしようっと(^^)