漫画アニメ短編集&救済の物語   作:クリリ☆

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【前書き】

 本作をここまでお読みいただき、ありがとうございます。
 今回は謎解きのご案内です。

 作中の核となっている伝承。

『天にそびえる(まなこ) その懐に青き炎 竜の(つの)砕けるとき、白きたまゆら時を貫く』


 ですが、現時点では『天にそびえる眼』、『青き炎』は判明しておりますが、『竜の角』はまだ謎のままです。しかし、実はすでに『竜の角』も作中に登場しております。
 それが何を指すが、ちょっぴり考えながらお読みいただければ、更に楽しさが増すのではないかと思います。実際にそれが判明するのは最終話(6話)となりますので、お楽しみに。

 それでは、引き続き本編をどうぞ。



忍たま乱太郎✕戦国自衛隊✕ルパン三世 霧のエリューシヴ【リクエスト作品:白きたまゆらの伝説④】(救済)

 

  【ドクタケへの手土産】

 

 その頃。忍術学園が明日の決行に向けて緊張感を高めているのとは対照的に、ドクタケ城の出城の中庭では、異様な光景があった。

 燦々(さんさん)と降り注ぐ太陽の下、伊庭(いば)の小隊を離反した矢野陸士長と、彼に同調した4名の隊員たちが、無機質な鉄の光沢を放つ重機関銃を構えていた。

 彼らがドクタケへの「手土産」として持ち込んだ近代兵器の威力を示すため、中庭の端には頑丈な太い木の的がいくつも設置されている。

 

「……始めろ」

 

 矢野の冷徹な号令とともに、射手が引き金を引いた。

 

 ――ズガガガガガガガガガッ!!!

 

 戦国時代の人間が聞いたこともないような、鼓膜を裂く怒号のような連続発射音が城内に轟き渡る。一瞬にして白煙が立ち込め、放たれた大口径の弾丸は、木の的に「穴をあける」などという生易しいレベルではなかった。肉厚の木盤を一瞬にして粉砕し、木っ端微塵に周囲へと吹き飛ばした。

 射撃が止んだとき、そこには的の破片すら残っておらず、ただ煙を上げる地面が抉れているだけだった。

 

「おおおお……! なんという凄まじい破壊力じゃ……!」

 

 その光景をそばで見ていた出城の城主、木野小次郎竹高(きの こじろう たけたか)は、目を丸くして大興奮で立ち上がった。

 立ち上がると同時に、彼の腰の周りに取り付けられた、竹ひごと紙で作られた「馬のハリボテ」が滑稽にゆさゆさと揺れる。

 

「見事な威力じゃ! これほどの鉄砲があれば、わしが天下を統一するのも時間の問題だな! パカラッ、パカラッ!」

 

 竹高が高笑いすると同時に、背後に控えていた従者が、二枚の木の板を「パカパカ!」と必死になって打ち鳴らし、馬の足音を再現した。

 

 竹高は「本物の馬から落ちると縁起が悪いから」というあまりにも情けない理由で、決して本物の馬には乗らず、常にこの張り子の馬を腰に下げて歩く男なのだ。

 その横では、身体の半分ほどもありそうな巨大な頭をもつドクタケ忍者隊首領、稗田八方斎(ひえた はっぽうさい)も、顔を赤くして狂喜乱舞していた。

 

「これは素晴らしい! このような恐るべき力が我がドクタケ忍者隊に加われば、まさに鬼に金棒! はーっはっはっは……お、おっととと!」

 

 調子に乗って大笑いしながら身体を後ろに反らせた瞬間、あまりの頭の重さに重心を失い、八方斎の身体がそのまま真後ろへとひっくり返りそうになる。

 

「首領、危ないっ!」

 

 すかさず側に控えていたドクタケ忍者が数人がかりで突っ込み、その巨大な頭をラグビーのスクラムのように全力で支え、なんとか転倒を防いだ。

 

「ふぅ、危ないところだった……」

 

 冷や汗を拭う八方斎、パカパカと音を立てながら満足げに頷く竹高。

 その狂言めいた滑稽なやり取りの前に、矢野たち5人の自衛隊員は、一見すると恭順を示すかのように深く平伏していた。しかし、地面に視線を落とす矢野の目は、一切笑っていなかった。

 それどころか、前髪の隙間から覗くその瞳には、浅ましい戦国の大物たちに対する、底知れない軽蔑と冷酷な光が宿っていた。

 

(……なんだ、この頭の狂ったバカ殿は。本物の馬にすら乗れないような臆病な将が、天下人になどなれるわけがないだろうが!)

 

 矢野は心の内で冷たく吐き捨て、平伏したまま拳を固く握り締めた。

 現代社会のルールに縛られ、燻り続けていた自衛官としての圧倒的な能力。それをこの時代なら、思う存分発揮できると確信してここへ来たのだ。何も、こんな滑稽な戦国大名の草履持ちで終わるつもりは毛頭ない。

 

(ドクタケの財力と人員は、俺たちがこの時代でのし上がるための足がかりとして、せいぜい利用させてもらう。このバカ殿も、あの頭のデカいだけの老忍も……用が済めば俺がこの城の、いや、この国のトップに成り代わってやる)

 

「ハッ。我が小隊の力、すべては木野小次郎様、そしてドクタケの天下統一のために捧げましょう」

 

 矢野は顔を上げると、嘘に塗れた完璧な軍人の敬礼を捧げてみせた。

 その胸の奥で、ドクタケという巨大な組織すら食い破ろうとする、黒く狂った野望の炎がゴーゴーと音を立てて燃え上がっていることなど、目の前の竹高たちは知る由もなかった。

 

 

 

  【決戦前夜】

 

 忍術学園の裏手、夜の帳が下りた広場で、自衛隊の隊員たちは小さな焚き火を囲んで円になって座っていた。パチパチと爆ぜる薪の音だけが響く中、彼らの表情は一様に暗く、沈み込んでいた。

 賑やかな食堂や、褌の騒ぎが嘘のようだった。彼らの心をじわじわと支配していたのは、リアルで濃厚な「死の予感」だった。

 

 本来の作戦では、自衛隊の役割はあくまで陽動と撹乱のはずだった。ルパンたちが隠密行動で出城の要を叩く間、近づいてくるドクタケ兵を近代兵器の音と威力で適当に威嚇射撃し、時間を稼げばいい――その程度に考えていたのだ。

 しかし、戦車を含めた装備の半数が矢野たち離反者に渡ってしまった以上、そんな安全な茶番で終わるはずがない。

 しかも、これから刃を交えるのは、日常的に命のやり取りをしている本物の戦国武者や忍者たちだ。実戦経験も、実際に人を殺す覚悟も、平和な現代で訓練ばかりしていた自分たちとは雲泥の差がある。その上、敵の先頭に立つのは、自分たちの武器を熟知した狂気の元同僚・矢野なのだ。

 

「明日の今ごろ、俺は生きてるのかな……」

 

 誰かがポツリと呟いた言葉が、重く夜の空気に溶けていく。底なしの不安と焦燥が、隊員たちの心を確実に蝕んでいた。

 そこへ、暗闇を割って伊庭がひょっこりと明るい表情で隊員たちの輪に割り込んできた。いつも険しい表情をしている伊庭からすると、そのあまりに不自然な態度に、隊員たちが怪訝な顔で見上げる中、伊庭はニカッと不敵に笑って、全く意外な提案を口にした。

 

「お前たち、女が欲しくないか?」

 

「……え?」

 

 隊員たちは一瞬、その言葉の意味が理解できず、呆然と互いの顔を見合わせた。

 

「ど、どういう意味ですか、伊庭三尉?」

 

 根本二曹が眉をひそめて問い返す。

 

「この近くにな、夫を亡くした未亡人たちには、男が夜這いをかけてやるのが礼儀だっていう、奇妙な風習がある村があってな」

 

「なんですって!?」

 

「もうすでに、彼女らとは話をつけてある。――行って、好きなだけ抱いてこい」

 

 その言葉が呼び水だった。

 明日の命が分からないという恐怖の裏返しとして、彼らの本能的な「生への執着」が爆発する。重苦しかった空気は一瞬で消し飛び、隊員たちはにわかに色めき立った。

 『愛は兵士を勇者に変える』とはよく言ったものだ。いつの時代も、男の不安や恐怖心を忘れさせるのは女性の存在なのかも知れない。

 

「俺は行くぞ! お前はどうする!?」

 

「馬鹿、行くに決まってんだろ! 行かない理由があるか!」

 

 我先にと腰を浮かせた隊員たちは、伊庭が手配した地元の案内人の後を追うように、暗い夜道へと猛烈な勢いで走り出していった。それを見送りながら、伊庭はふっと優しい、どこか寂しげな笑みを浮かべる。

 

 しかし、気がつくと、火の粉を散らす焚き火の前に、まだ2名の隊員がぽつんと残っていた。

 

「おい、菊池。お前は行かないのか?」

 

 伊庭に声をかけられた菊池一等陸士は、寂しげに微笑みながら、胸のポケットから大切にしまっていた一枚の写真を取り出し、愛おしそうに見つめた。

 

「……俺は、未来に婚約者が待ってるんです」

 

「そうか。だが、この時代での浮気ならノーカン(ノーカウント)だぞ?」

 

「いいんです。俺は、あいつ以外抱きたくないんです」

 

「……そうか。分かった。お前は立派だよ」

 

 伊庭は菊池の肩をポンと叩くと、今度はもう一人、複雑な表情で座り込んでいる三村一等陸士へと視線を向けた。

 

「おい、三村。お前はいいのか? 普段のお前なら、真っ先に飛び出しそうなもんだが」

 

 三村はバツの悪そうな表情のまま、ポリポリと頭をかいた。

 

「いや、俺は……その」

 

「どうした?」

 

「すいません、実は……」

 

 三村はきまずそうに、広場の端にある深い茂みの方へと視線を巡らせた。伊庭がその視線を追うと、大きな木の後ろから、戦国の粗末な着物を着た一人の若い村娘が、心配そうにじっと三村の方を見つめて佇んでいた。

 その様子を見て、伊庭はすべてを察し、破顔した。

 

「なんだ……お前、もうこっちの時代に、いい人ができたのか。なかなかやるじゃないか」

 

「すいません伊庭三尉……。隊の規律を乱すような真似を……」

 

「気にするな。明日がどうなるかは誰にも分からん。……行ってこい」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 三村は弾かれたように立ち上がると、そそくさと足早に、木陰で待つ村娘の元へと駆け寄っていった。二人はそっと手を重ね合わせると、そのまま静かに夜の茂みの中へと消えていった。

 残されたのは、焚き火の明かりに照らされる伊庭と菊池の二人だけ。

 

「明日、絶対に全員で生きて未来へ帰るぞ、菊池」

 

「はい、三尉」

 

「大丈夫だ、兵器の半数は失いはしたが、近代兵器というものは付け焼き刃の技術で扱えるものではない。こちらの優位は変わらないんだ」

 

「でも俺、死にたくもないですが、誰も殺したくないんです」

 

「そうだな……」

 

 二人は静かに炎を見つめながら、誰も死なずに済む、そんな奇跡を祈るのだった。

 

 

 

  【作戦開始直前・きり丸の失踪】

 

 翌朝。

 朝靄の立ち込めるドクタケ出城の目と鼻の先にある木々の間に、忍術学園の精鋭、自衛隊の残存部隊、そしてルパン一味の連合軍がひそかに集結していた。

 

「……伊庭三尉。やはり、こちらの接近はすでに気づかれていると見て間違いなさそうです」

 

 偵察から戻った根本二曹の報告に、伊庭は静かに頷いた。

 本来ならば、大怪盗の隠密スキルと自衛隊の機動力を活かした「完全なる奇襲」で一気にケリをつける予定だった。しかし、こちらの内情も戦力も熟知した矢野たちがドクタケ側に寝返った以上、奇襲など通用するはずがない。

 

「想定の範囲内だ。敵が待ち構えているのなら、こちらも腹を括るまで。基本方針は変わらない。自衛隊と学園側が正面からドカンと派手に陽動を仕掛け、その隙にルパンたちが城内へ潜入する」

 

「オッケー、任せときな。魔毛の野郎のタイムマシンのパーツだかお宝だか知らねえが、サクッと見つけ出してやるよ」

 

 ルパンが不敵に伊庭と顔を見合わせる。作戦の最終確認を終え、いよいよ各自が配置につこうとした、その時だった。

 

「――あれ? おかしいな。……きり丸がいないぞ?」

 

 ふと周囲を見回した土井半助が、鋭く声を上げた。

 学園を出発するときには、確かに他の忍たまたちと一緒に隊列に加わっていたはずだった。しかし、ここへ来てその姿がどこにも見当たらない。

 

「大丈夫ですよ土井先生! きりちゃんなら、これですぐに……」

 

 乱太郎はいつものことだと苦笑いしながら、「まぁ見ててください」と懐から一枚の文銭を取り出した。

 これを地面に落とせば、どんなに離れていても音を察知してマッハの速度で飛び込んでくる――それが『摂津のきり丸』という少年のお約束だった。

 

 ――チャリン。

 

 乾燥した土の上に、金属の硬い音が小さく響き渡る。

 乱太郎としんべヱは、今にもブッシュを突き破って「小銭ィー!」と叫ぶきり丸が現れるのを待った。

 

 しかし。

 数秒が経ち、十数秒が経っても、周囲の森は不気味なほどに静まり返ったままだった。聞こえるのは、風が葉を揺らす音だけ。

 

「……き、きりちゃん?」

 

 現れない。その事実が、その場にいる忍術学園のメンバーたちに、一気に冷や水を浴びせかけた。

 あの一文銭の音にだけは命を懸けるきり丸が、音を聞いて現れない。それが意味する事態の深刻さに、一同の顔からサッと血の気が引いていく。

 

「どうしよう……本当にいない。きり丸に、何かあったんだ……!」

 

 乱太郎が真っ青になって声を震わせる。

 そのただならぬ様子に、周囲の自衛隊員たちも顔を見合わせた。速水たちが「そう言えば、海岸で最初に会ったとき、やたらと金にがめつい、たくましいガキがいたな……」と思い出す。

 

「全く、何をやってるんだ、あいつは……!」

 

 土井先生は厳しい口調で吐き捨てたが、その眉は悲痛なほどに吊り上がり、表情は家族の身を案じる父親としての心配でいっぱいになっていた。きり丸は身寄りのない戦災孤児であり、土井先生にとっては私生活でも一緒に暮らす、我が子も同然の存在なのだ。

 

 焦燥が広がりかけたその時、山田伝蔵が土井先生の肩にずしりと重い手を置いた。

 

「土井先生。……きり丸のことは頼みます」

 

「いや、しかし山田先生! これから作戦を決行するという時に、私が前線を離れるわけには……!」

 

「生徒の安全が最優先です」

 

 山田先生の低く、しかし断固とした声が土井の言葉を遮った。その目は、何があっても子供たちを守るという忍術学園の教師としての揺るぎない覚悟に満ちていた。

 

「正面のドクタケは、私と自衛隊の皆さんで十分に引き付けてみせましょう。土井先生は、学園の大切な生徒を……きり丸を、必ず連れ戻してきなさい」

 

「……! わかりました。ありがとうございます、山田先生!」

 

 土井先生が深く一礼した。

 

「土井先生! 私たちも、僕たちも連れて行ってください!」

 

 すかさず乱太郎としんべヱが必死の形相で訴え出る。

 

「三人組」の絆だ。土井先生は一瞬、危険なドクタケ城内に二人を同行させるべきか激しく迷った。しかし、きり丸の痕跡を見つけるには、普段から寝食を共にしている彼らの五感が最も頼りになる。

 

「……分かった。乱太郎、しんべヱ。私から絶対に離れるんじゃないぞ。ついて来なさい!」

 

「「はい!!」」

 

 

 

  【三隊、それぞれの道へ】

 

 こうして、当初の作戦予定にはなかった「きり丸の失踪」という不測の事態により、連合軍は急遽、3つのチームに再編成されることとなった。

 

 

【陽動チーム】(山田先生 & 自衛隊残存部隊 & 忍術学園)

 ドクタケ出城の正面へと進軍し、戦車や機関銃を擁する矢野たち離反者、およびドクタケ忍軍を相手に、ド派手な正面衝突を仕掛けて敵を引きつける。

 

 

【潜入・お宝探索チーム】(ルパン & 次元大介 & 石川五ェ門)

 陽動によって手薄になった出城の隙を突き、魔毛狂介のタイムマシンの手がかり、そして城内の貴重な宝物庫へと潜り込む。

 

 

【きり丸捜索チーム】(土井先生 & 乱太郎 & しんべヱ)

 作戦区域の周辺、あるいはドクタケ出城内に回って、消えたきり丸の足取りを追う。

 

 

 

「よし、各員、配置につけ! ――作戦開始だ!」

 

 伊庭の鋭い怒号とともに、静寂に包まれていた森がドッと動き出した。

 それぞれの胸に、戦友への決意、泥棒の野心、そして教え子への祈りを抱きながら、運命のドクタケ出城攻略戦の火蓋が、ついに切って落とされた。

 

 

 

  【突撃・混沌の城門前】

 

「――突撃ィ!!」

 

 伊庭の鋭い号令とともに、最前線の隊員たちがピンを抜いた手榴弾を次々と城門へ投げ込んだ。

 

 ――ドゴォォォォン!!

 

 凄まじい爆発音と爆風が吹き荒れ、頑丈なドクタケ出城の木製城門が、一瞬にして派手に粉砕される。立ち込める黒煙を突き破り、自衛隊員たちが一斉に突き進んだ。

 

「撃て! 撃ちまくれ!」

 

 最前線に躍り出た隊員たちが、一斉に小銃や重機関銃の引き金を引く。バラバラバラバラと猛烈な金属音を響かせながら放たれた弾丸の雨は、ドクタケ忍軍が防衛用に方々に設置していた頑丈な木盾や、矢倉の柵を容赦なくハチの巣にし、粉々に破壊していく。

 

「ひえええ! なんだあの連続して出る飛び道具は!?」

 

「防げ! 防ぐんじゃい!」

 

 ドクタケ兵たちが大混乱に陥る中、今度はその隙を突いて、忍術学園の上級生たちが空中を舞った。

 

「そぉれ、煙幕弾だ!」

 

「もくもくの術ー!」

 

 投げ込まれた無数の忍具から、一瞬にして五色の煙が勢いよく噴き出し、ドクタケ側の視界を完全に遮断する。近代兵器の圧倒的な火力と、忍者の伝統的な攪乱戦術が見事な融合を見せていた。

 伊庭は胸元のトランシーバーや前線の状況を睨みつけながら、どこかで聞いたことのあるような怒号を飛ばす。

 

「左翼、弾幕薄いぞ! 何やってんの!!」

 

 ドクタケ側からも「おのれ、撃て撃てぃ!」と必死の弓矢による猛烈な反撃が始まり、戦場は一気に混沌とした総力戦へともつれ込んでいった。

 

 

 激しい矢弾が飛び交い、早くも戦場には敵味方問わずに負傷者が現れ始めた。

 矢がかすったドクタケ兵や、転んで足を挫いた自衛隊員がうめき声を上げる。――と、その硝煙渦巻く最前線に、およそ戦場には似つかわしくない、救急箱を抱えた一人の上級生がトコトコと現れた。

 

 六年生の保健委員長、善法寺伊作(ぜんぽうじ いさく)である。

 

「ああっ、危ないな! すぐに手当てするからじっとしていてね!」

 

 伊作は持ち前の「不運」で、飛んできた矢に頭巾をかすめ取られたり、目の前で爆発が起きたりしながらも、全く怯むことなく怪我人の元へ駆け寄る。そして、敵だろうが味方だろうが関係なく、ものすごい手際で包帯を巻き始めた。

 

「これで良し! 次の人!」

 

 伊作の超高速治療を受けた負傷者たちは、敵も味方も揃って頭から足先まで隙間なく包帯をグルグル巻きにされ、まるで白いミイラ男のようになってんこ盛りに積み上げられていく。

 

「う、動けん……」

 

「これじゃ戦いようがない……リタイアだ……」

 

 身動きを完全に封じられた怪我人たちが、戦闘不能(強制リタイア)となって大人しく転がっていく中、伊作はさらに奥の負傷者へ手を伸ばそうとした。

 だがその時、五色の煙を突き破り、ギラついた刀を構えたドクタケ忍者が伊作の背後に飛び出してきた。

 

「隙ありィ! 忍術学園の小僧、覚悟ッ!」

 

「あ、危ない伊作!」

 

 背後からの奇襲。しかし伊作が振り返るより早く、鋭い金属音が響き渡った。

 割り込んできた大きな鉄製の武器――『ヌンチャク』が、ドクタケ忍者の刀を力任せに弾き飛ばす!

 

「お前ら、俺の同室(伊作)に手ぇ出してんじゃねえぞ!!」

 

 現れたのは、六年生の用具委員長であり、伊作と同室の食満留三郎(けま とめさぶろう)だ。

 食満は自慢の武器をぶん回し、襲いかかるドクタケ兵たちを次々と叩き伏せていく。

 

「ありがとう、留三郎!」

 

「気にするな、お前が無事で良かった! それでは伊作、お前は手当てに集中しろ!」

 

「分かった!」

 

 更には六年ろ組の体育委員長、七松 小平太(ななまつ こへいた)が両手に苦無を持って、戦場を縦横無尽に駆け回る。しかも、離反した自衛隊による大砲による砲弾を、まるでバレーボールでも打ち返すかのように弾き返した。

 

「いけいけどんどーん!! このまま一気に押し通す!!」

 

 熱く吠える小平太の獅子奮迅の活躍により、城門前は完全に忍術学園側が優位となり、ドクタケ側の全戦力が正面へと釘付けにされていった。

 

 

 

  【潜入・それぞれの階段】

 

 正面で両軍がド派手にぶつかり合っているその隙に、手薄になった出城の脇へと回り込む影があった。

 ルパン一味、そして土井先生率いるきり丸捜索チームだ。

 

「おいおい、正面はえらいお祭り騒ぎだねぇ。今のうちに上がらせてもらおうじゃねえの」

 

 ルパンはひらりと軽い身のこなしで脇の城壁を乗り越え、城内へと潜入する。次元、五ェ門もそれに続いた。さらに少し遅れて、土井先生、乱太郎、しんべヱの3人も音もなく城壁を越え、出城の内部へと足を踏み入れた。

 

 城内の通路は、陽動が見事に引っかかったおかげで、もぬけの殻だった。

 目の前には、上へと続く立派な木造の階段と、薄暗い地下へと続く石造りの階段の二翼が広がっている。

 

「よし、お宝ってのは高い上階にあるってのが、古今東西泥棒世界の鉄則だ。俺たちは上に行くぜ!」

 

 ルパンがニヤリと笑って次元たちに目配せし、一味は軽い足取りでトトトッと上の階へと駆け上がっていった。

 一方、残された土井先生たちは、暗い地下へ続く階段を厳しい目で見つめていた。

 

「土井先生……きり丸、どこにいるんでしょう……」

 

 乱太郎が不安そうに囁く。

 

「もしも……もしもきり丸がドクタケに捕まって、捕虜になっていたとしたら、連れて行かれる場所は一つしかない。地下牢だ」

 

 土井先生は最悪の事態を想定し、懐から忍び刀の柄に手をかけた。その表情には、普段の優しい教師の面影はなく、大切な教え子を奪還せんとする凄腕の現役忍者の鋭さが満ちている。

 

「乱太郎、しんべヱ、足元に気をつけて私についてきなさい。きり丸を助け出すぞ!」

 

「「はい!」」

 

 ルパン一味は現代へ帰るための希望を胸に上階へ、土井先生たちはきり丸への祈りを胸に薄暗い地下へ。

 それぞれの目的を果たすため、連合軍の潜入部隊は二手に分かれ、静かに城の深奥へと進んでいくのだった。

 

 

続く☆

 

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