その日、タクトは欲求不満が絶頂に達しようとしていた。それはもう、朝からやりたくてやりたくて仕方がなかった。そんな時、タクトの部屋の扉がノックされる。
「開いてるよ・・・」
タクトが返事をすると、扉を開けて運命(コゼット)が入って来た。
「マエストロ、部屋の掃除に来ました」
「そうか」
「それでは失礼します」
すると運命は箒を持って部屋の掃き掃除を始めた。その様子をタクトは椅子に座りながら眺めていると、さらに欲求が高まってきた。
「おいコゼット、やるぞ」
「やるとは、何をですか?」
「言わなくても分かるだろ? やると言ったらあれに決まってるだろ」
「さて、何でしょう?」
運命は少し考える。
「あ、分かりました。あれですね」
「そうだ、あれだ」
すると運命は上着のボタンを外し始める。その様子を見てタクトが言った。
「おいお前、何をやっている?」
「服を脱いでいますが?」
「何のために?」
「あなたに抱かれるために、ですけど?」
「はあ? 何を言ってるんだお前!?」
「ええと、普通、若い男女がやると言ったら性交を指すのではありませんか?」
「変な事を言うな。普通、やると言ったらピアノに決まってるだろ」
「ピアノが普通でしょうか?」
「普通だよ!」
「そうですか、失礼いたしました」
「それじゃ連弾(二人で一緒にピアノを弾くこと)するぞ。僕はコゼットと連弾をした事がある。お前だって元はコゼットだったんだから連弾くらいできるよな?」
「いえ、私はピアノは弾けません。叩く(戦う)専門ですので」
「何だよ、弾けないのか。所詮ムジカートなんてD2と戦うための兵器に過ぎないんだな!」
「その言い方は酷いですね。ムジカートにだって心はあるんですよ」
「嘘をつけ。本当に心があるんだったら僕に命令されたからって、簡単に服を脱ぐか。ただ指揮者の命令に従うだけの兵器なんじゃないのか?」
すると運命は俯いたまま黙ってしまう。
「ほら見ろ、図星だろう」
「マエストロ、確かに私にはコゼットの記憶はありません。しかし、魂の残滓と言いましょうか、もう少し具体的に言うと、コゼットの感情の一部が感じられるのです」
「それが何だよ?」
「どうやらコゼットはマエストロに恋をしていたようです」
「な、何だって!?」
「私にはコゼットの記憶はない、ですが、せめてコゼットの残された想いは遂げさせてあげたいのです。つまり、マエストロに抱かれる事は私にとっても本意なのです」
「いや、しかし、だからと言って・・・」
「抱いてください、マエストロ。それに、行為の後のタルトタタンは格別でしょうし」
運命はタクトの目をじっと見つめる。しかし、タクトは気恥ずかしくなってしまい、目を逸らしてしまう。
「ちょっと、気分転換だ。散歩に行ってくる」
タクトは運命をその場に残し、ヨロヨロとよろけながら足早に部屋を出ていってしまう。
「意外にヘタレなんですね、マエストロ・・・」
運命は小さく溜息をつくと、再び部屋の掃除を始めたのだった。
おしまい。