トリニティ総合学園庭園部へようこそ!   作:一生ホームアローンマン

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12話 ヘルメットと救護の心

 丸ノコくんのお披露目からしばし。何度目かの戦闘を経て、まあまあ使い勝手も把握して、バンバンブンブンファイアーするのにも慣れてきたかなあというところである。そもそもヘタクソな銃のリロードがさらに難易度上がったので鋭意練習中。

 

 今のところ最初のような大規模な襲撃はなく、ほどほどに小粒と言うか、適当に殲滅できる程度なので余裕はある。でも不定期に夜襲かけられるもんだから、睡眠不足がややつらい所である。

 

「ふわわわわ……ぁふっ」

 

 大あくびしながらお手々ふりふり、ちょっとぶりのファミレス集合。セリナちゃんとヒフミちゃんは元気そうで結構なことだ。俺も眠い以外は特になんともないし。夏の暑さもさらに増してきたからね。体調には気をつけなければ。

 

 いや、気をつけなきゃいけない程やわじゃない感もあるが、そんなこと言ったらセリナちゃんに叱られるので。すでに席についていた二人はにこやかに俺を迎えてくれたが、ボックス席の奥にひょいと置いた荷物に困惑顔。

 

 武器としてだけでなく、農機具としてもバリバリ優秀なもんだから、庭園部ではあっというまに馴染んで忘れてたけど、丸ノコくん持ち歩くのはまあ変だよね。

 思えば道行く人にもチラチラ見られてた気がするわ。セルフ羞恥プレイ~……。SNSで不審ロリとして拡散されてたらどうしよう……。

 

「えっと、ワカナちゃん……これをどうぞ」

「?」

 

 カバンをごそごそしていたヒフミちゃんから袋状の布をいただく。

 

「大きいペロロ様エコバッグです」

 

 なるほど、たしかにデカい。広げて見れば取っ手もある。いやしかしこれをどうしろと? バッグの正面にはキモい鳥の顔、両脇には羽。

 なんとなくひょいと頭に被ってみる。布地を透かして前が見えるな。鳥顔の上下が逆になってしまうのが難点か。

 

 キモい鳥の顔が前になるように押さえて、ぐるりとあたりを見渡せば、ヒフミちゃんとセリナちゃんは思わずと言った感じで吹き出す。やったあ、ひとウケ取れたぞぉ。……いや、なんだこれ。

 

「あの、違……いえ、そうですね。セリナちゃんもどうぞ」

「あ、はい。私もですか……まあ、ふふっ。こういうのもたまには」

 

 俺は一体何を、と思っている間に、なぜか同じものを2つ追加で出したヒフミちゃん。ボックス席のこっちがわに移動して、セリナちゃんと一緒にかぶる。わぁい3ペロロ! 

 

 顔を見合わせてみたり、ピースしながら3人で自撮りをパシャパシャ。逆さキモ鳥覆面JK3人組の画像が程よく量産されたところでようやくバッグを脱ぎ、撮った写真を眺めてもうひと笑い。楽しかったけど、一体何だったんだろうか。

 

「えーっと、危険物を持ち歩く時は、ケースに入れたり、せめて布を巻いたりして隠すのがマナーといいますか。場合によっては正実に捕まってしまうこともあるので……」

 

 あっ。……なるほど、そーいう。銃器丸出し、手榴弾をアクセサリーみたいにしてるのが普通の世界でも、そういうの気にするんすね……。

 まあ変なものは隠せ、銃は普通だから変じゃないと言われればそうかもしれない。

 

「でもこれ一応刃物だから。破けちゃうかも」

「大丈夫ですよ!」

 

 かもっていうか被せた状態でちょっと手荒にしたらまず貫通する。ペロロエコバッグを丸ノコくんカバーにする事の懸念を示した俺に、ヒフミちゃんは鞄からさらに同じものやサイズ違いをズラズラ。

 

「急なお買い物に備えて量産した自作グッズなので! 破れたらまた新しいのを差し上げますね!」

「アッハイ」

 

 逃げ道を塞がれ、仕方なく丸ノコくんにキモい鳥カバーをする。取手で根本を縛れば悲しいことにジャストフィットだ。

 ピザカッターを背負うのとキモい鳥棒を背負うの、どっちが不審だ? 俺にはわからない……。部長が作ってくれたベルトで試しにバチンと止めて、背を向ける。

 

「うーん、逆のほうがいいですかね……。今度はお顔が逆さのバージョンも作ってみますね」

 

 ヒフミちゃんは新デザイン案をメモに取り、セリナちゃんは地味にずっとウケていた。いやあ平和だな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギイィィィと、掻きむしるような金属音が徐々に高く大きくなる。回転ノコギリの出力を上げ、噴き出す炎を周囲に散らす。煌めく炎と、スクラップになったピックアップトラックからあがる黒煙混じりの炎が闇を払う。

 

「ははは」

 

 笑おうか。ツルギ先輩のような狂った笑顔は無理にしても、俺が怖い顔するよりは笑ったほうが威圧感出るだろ。負け戦は悔しくて仕方ないが、勝てるなら楽しいし笑えるぜ。

 

 謎のハイパワーで金属だろうがお構いなしにミンチにできる丸ノコくん。初手で一気に突っ込んでトラック一台爆発炎上させたのが効いてるのだろうか、敵のヘルメット集団は俺が前に出るのに合わせて一歩退く。

 キヴォトスじゃ大概の物より人間のほうが頑丈な気がするんだが、まあビビるよな。

 

「……ッ! 撃てっ! 撃てっ! うてぇぇぇっっっ!!!」

「コイツ以外は雑魚だ! なにも変わらねえ! とにかくコイツをヤレッ!」

「うわっ! うわぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 狼狽して腰が引け、揺らめく炎に目測を誤り、ビビって俺の顔も見られない。そんなのの銃撃が効くはずもなかった。

 常にドアとかに挟まないように気を使わないとだったり、仰向けで寝るとめちゃめちゃ違和感があったり、普段は邪魔で邪魔で仕方ないクソデカ羽で体を覆い、一気に広げて薄い弾幕を弾き飛ばす。

 

「あっはははははははっ!」

 

 ザコが効かねえんだよ! という気持ちを込めて呵々大笑。まあ、普通にガンガン当たっててまあまあ痛いんだけどさ、そこは我慢我慢である。羽にも神経通ってんだよ当たり前だけど。

 しかしこの無敵演出の効果は抜群だ。ヘルメット集団の前衛は士気が崩壊し、腕利き以外は一気に逃げ出す。

 

 指揮官らしい色違いヘルメットが怒声を張り上げ継戦を促すが、一度雪崩を打ったら止まらない。前衛の雪崩にビビった後衛も逃げ始めている。ここが勝負どころと一気に距離を詰め、偉そうなヘルメットに絶望的な金属音を響かす丸ノコくんを叩きつける。

 

 ゲヘナの奴らは種族悪魔ってことらしいが、今日の俺は悪魔より悪魔的だぜ。色違いメットは一瞬でぶっ倒れ、動揺が拡大する。近場に残った最後の一人もぶちのめしてやろうと丸ノコくんを振り回す。

 

 

 

 

 

 ……が、普通にサッとかわされる。追い打ちのショットガンも、照準がもたついたせいか集弾率の低いとこに踏み込まれてカス当たり。そいつはこうやって使うのだとばかりに、ヘルメットはポンプアクションのショットガンをバンバン撃ち返してくる。

 お腹中心にガッツリ全弾ヒットでめちゃめちゃ痛い。ゲロ吐きそう。

 

 伝説の装備が早くも通用しないとかどうなの? もうちょっと気持ちよく無双させてくれてもよいのでは? 言わんこっちゃないとばかりに嘲笑うツルギ先輩のオリジナル笑顔が脳裏に浮かぶ*1

 

 つかおかしいじゃん! 戦隊モノのザコ敵みたいな見た目のやつがなんでこんな強いんだよ! 必殺技食らってバタバタ倒れるのが仕事だろうがよお前! 一般ヘルメットに地雷みたいに強いの紛れこませんじゃねえ! 強いなら強いらしい格好しろよ! 

 

「ハッ! どこみてんのよウスノロ! ヘタクソ! クソチビッ!」

 

 あ~ッ! あったまってきたぁっ!!! つよヘルメットは細かく立ち位置を変えつつ的確にこっちの攻撃を避けつつ煽りつつバシバシ撃ってくる。いてえんだよぉ! 

 

 もはやこっちがやられ役パワーキャラのごとく、全力で丸ノコをぶん回す。案の定軽いステップ回避で逃げられ先程の焼き直し。相手のショットガン当たり過ぎたかクラクラしてきた。

 でもええねん。叩きつけた先の地面を掘り返すように振り回しつつ、こっちもショットガンを乱射。

 

 炎・散弾・かっ飛ぶ土塊! ちょこまかと回避しつつこちらに射撃を加える腕は敵ながらあっぱれ。流石だと言いたいが、甘いぞヘルメット野郎! 

 

 ほとんど面制圧の範囲攻撃は確実につよつよヘルメットの体力を奪い、さらにご自慢のフルフェイスメットをどろんこにしている。腕で拭っても泥が広がるだけだ。

 

 ついでに炎は周囲のザコを襲う。押される俺を見て勢いを盛り返しそうになった一般ヘルメットどもが、やっぱり無理だとビビって逃げ腰になっている。こっちは味方の援護ありだが、つよヘルメットはもはや孤立無援だ。

 

 ハッハァッ! もうほとんど前見えてねえんじゃねえの! 後で直すこと考えると憂鬱だが、ボッコボコになった地面についに足を取られたヘルメット。今度こそトドメの一撃だ! 

 

 ……振り下ろした丸ノコくんはダイビングヘッドで回避され、ついでにスパッツ丸出しにしたスカートの内側から、グレネードがいくつもコロコロ。

 

「ヘルメット団なめるんじゃないわよ! クソチビぃッ!!!」

「どわぁ!!!」

 

 爆発でふっとばされ、ゴロゴロ転がり木に叩きつけられた俺に、捨て台詞を投げつけてつよヘルメットはダッシュで逃亡した。ダメージ的にはさほどでもなかったが、不意を突かれたせいか衝撃で動けない。

 

「ははんっ!ざまあみなさいっ!」

 

 ちくしょーめ。異能生存体みたいなつよヘルメットは逃げ足も一流だったようで、その姿は見る間に小さくなり闇夜に消えていく。

 しかしまあ、強硬に抵抗していたのはあいつだけ。気を取り直して掃討状態に入るとすぐに戦闘は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファミレスでのんびりダラダラして帰宅後。夕飯も食べてお腹いっぱいになり、うたた寝し始めたそのタイミングでの大規模襲撃であった。このキヴォトスには平和もクソもないようだ。数は初回とおんなじか、やや少ないかくらい? 

 ヘルメット野郎だけでなく俺自身も泥んこだし、普通にめっちゃ撃たれたので傷だらけ。酷い有様だったが、果樹園の被害自体は前のヘルメット共の襲撃のときよりずっと少ないようだった。

 

 それを思えば頑張った甲斐はあったのかなー、という感じ。多数をまとめて攻撃しつつ、味方の視界補助・敵の妨害になる炎バラ撒きがやっぱ優秀だ。丈夫なキヴォトス人に炎は案外致命的なダメージにならないようだが、サポート効果が思った以上に高い。

 

 ザコヘルメットはビビって逃げようとした所に庭園部のみんなや正実のこの辺巡回担当の人たちが追い打ちをかけ、しっかり倒しているので捕縛されたのが多い。

 食い詰めた荒くれ者が無限に湧いてくるとかいう噂の、キヴォトスの中でも特に世紀末なゲヘナの連中とは言え、流石に再び頭数を揃えて襲ってくるには時間がかかるはず……。

 またしばらくは安心だろう、たぶん。

 

 

 

 

 

 今回は戦闘後も動けたので、自力で救護騎士団を訪ねてみた。すると待ち構えていたセリナちゃんに秒で全裸に剥かれて風呂場に叩き込まれ、わっしゃわっしゃ洗われる辱めを受けている。

 

「痒いところはありませんか~♪」

「全身痛痒いっすけど……」

「我慢してくださいね」

 

 聞いた意味は? ……なんかこう、お風呂イベントってもっと色気があるものじゃないの? セリナちゃんは服脱ぐどころか腕まくりしただけだし、なんつーかペットとか幼児の扱いじゃない? 

 

「無茶をするな突出するなと言いましたよね、私。人の話を聞けない子は、そんな扱いで十分なんじゃないでしょうか」

「あぁあぁぁぁ~……」

 

 指の腹でぐぅにぐぅにと頭皮を揉まれ、痛気持ちよくむず痒い感覚で満たされる。髪に絡んだ泥も落とされていきさっぱり。同じく泥だらけだった翼も丁寧に繕われ、すっかり違和感なし。

 俺を責めるセリフ多数の割に楽しそうなセリナちゃんだが仕事が早い。頭洗って体洗って拭いてドライヤーして頭乾かして、気づけば洗浄完了でホコホコの俺が居た。

 

 その後はわざとやってんじゃないかってくらい痛く消毒されて、包帯巻かれたり湿布貼られたり。今回の絆創膏はアングリーアデリーさん。顔がピンクのデフォルメペンギンだ。

 しかしこれ怒りで顔が赤くなってるということなのか? 名前的に。それを思うとやっぱクセが強いなモモフレンズ……。

 

「それにしても……なんかすごい手際良くなってんね。セリナちゃん」

「ええ、夏休みは喧嘩に事件に事故、たくさんありますから。日々実戦で鍛えられてます」

 

 何事もないのが一番なんですけどね、と鼻をつんつんされる。やめろやめろ、俺だって銃撃戦なんかしたくねえよ。でもあっちが来るんだから仕方ないじゃん。

 

「ワカナちゃんも、なんだかパワーアップしたそうですが……」

 

 ちらとペロロ様カバーのかかった丸ノコくんの方を見て、なんとも言えない顔をするセリナちゃん。うん、実は農機具じゃなくて伝説の武器なんだ。伝説のピザカッター。

 どういうコメントしたらいいかなんて、俺も未だにわかんねえよ。見た目のキテレツさもパワーアップしたし……。

 

「ともかく」

 

 見なかったことにしたようだ。

 

「……ともかく、戦うなとは言いません。言えません。救護が必要な場に救護を、その救護騎士団のあり方の意味も、ご一緒することが多い正義実現委員会の方々の思う所も、なんとなく分かってきたように思います。誰も傷つかず苦しまないような世界であればいいと常々思っていますし、その思いがなくなったわけでもありませんが、戦うことの意義にも触れてきました」

 

 包帯グルグルの俺の腕をそっと手に取る。真剣な眼差しに、なんか適当にやってる自分が申し訳なくなる。……いや、適当というわけでもないのか。

 

 ムカつくやつらをぶちのめしたい、せっかく手をかけた果樹園が荒らされるのが心底ムカつく、育てたものを奪われたくない。

 俺の雑な語彙で表現してしまうと陳腐に見えるが、切実な思いなのも間違いない。

 

「無茶はしすぎないように。ちゃんと帰ってくるように。治しますから」

「ん……できる限り頑張る、ます」

 

 全力で前に出ないことにはどうしようもないスタイルが既に確立しつつあるので、お母さんに怒られたキッズのその場しのぎでしかないのが心苦しい。しかしそれもわかった上で、しょうがないなあと言うようにセリナちゃんは微笑み、頭ぽん。

 

 治るからいいとか別に死ぬわけじゃないとか、キヴォトス民は頑丈さにかまけてお気楽銃撃戦をしてるわけだが、優しいセリナちゃんはその風潮が嫌なんだろうかね。そもそも傷つくようなことをするなと。

 でも、現場仕事を経て視野を広げ、飲み込みつつある。

 

 なんだかね、少女から大人へみたいな思春期特有のアレを目の当たりにしているようで、居心地が悪くなるよね。

 俺はそんな成長を経てきただろうか。子供のまんま、ガキのまんま大人になってしまったような気がする。まあ今現在ロリなんだけど。

 

 でも、一応大人としてちっとはカッコつけたいよね。この優しい友人の前では、それくらいの心の余裕を持ち続けたいもんだ。

 頭わしわしやられてる状態ではカッコも何もあったもんじゃあないが、気持ち的にさ。

*1
基礎が疎かなのにフロントに立つのは危ないので普通に心配してる顔。




お気に入りも2000越えて、いやあすごい。感想評価ここすき誤字報告等もありがとうございます。

感想返しはちょっと滞ってますが時間をみつけてちょこちょこやるのでお待ち下さい。とりあえず見てはいます。

書き溜めをガッツリ加筆修正する感じで投下してるんですが、ちょいちょい感想からネタを拾ったり修正の参考にしているので助かります。やっぱ一人でやるのと違いますね。
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