トリニティ総合学園庭園部へようこそ!   作:一生ホームアローンマン

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13話 夏の終わりに

 幸いにも予想通り、それなりの規模のヘルメット団をガッツリボコった成果なのか、以降不良集団の派手な襲撃はなくなった。まあ大規模なのがなくなったというだけで形を変えてリンゴ泥棒自体は続いているのだが。

 

 ピックアップトラックの車列で突っ込んできて、枝ごとバッサリ切ってかっさらうとかいう地獄みたいな豪快ギャングスタイルをやめただけだ。

 少人数で麻袋背負ってこそこそっと入ってきて、普通にもいで持てるだけ持って逃げるこそ泥スタイル。小規模襲撃のさらに隠密版だな。

 

 被害の総量としてはかなりマシになっているらしいが、普通に対処しづらくなっているような気もする。ちょいちょい夜番の巡回が仕事になったけど、あんまり役に立てていない感。

 

 索敵とか警戒とか、そういう細かい仕事は全然向いてないのかもしれない。炎で明るくしても、見つけるより先にこっちがバレて逃げられるし。集中力散漫で人の気配とか見逃しがちだし……。

 

 夜目が利くという正実の人が、すぱーんと長距離狙撃でこそ泥倒したりしてるのを見ると、すごいなーって思うよ。そういうの全然です。

 

 ゲーム三昧の夜型生活の成果か、夜番自体はそんなにつらいわけでもないんだけど、こういうのってどうあがいても場所も時間も選べる攻撃側が有利だよね。

 たまーにいざ戦闘となればトラウマ刻んでやるぜ~と、頑張ってビビらせてはいるのだが。

 

 具体的にはダメージ的にやりすぎにならず、でも夜中一人でトイレに行けなくなれくらいの気持ちで、丸ノコくんをぎゅんぎゅん回してぶっ飛ばしてます。効果のほどは不明。

 トラウマになって二度と来ないでくれると良いなあ、と思ってるけど、ゲヘナの犯罪者無限湧きはガチらしくあんまり減る気配なし。

 

 ただ本格襲撃がなくなった分、時間的に余裕ができたのも確かなので正実に行ってみることに。強くなりてえ……って気持ちがね、怖い顔の恐怖を上回ったのだ。

 

 少なくともちょっと強いヘルメット相手だとボコボコ、みたいなのはなんとかしたいよね。丸ノコの扱いにほんのり慣れたのや、成長期なのか実戦重ねるたびに強くなってる気はするんだけど、ここらで一回きちんと学んでもいいと思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連絡入れて正実の詰め所に行ってみたところ、豪華で綺麗で整った部屋にて紅茶など頂いてしまう。なんかイメージ違うなあ。

 庭園部はもう農家丸出しみたいな感じだから、こういうトリニティ臭みたいなのはあんまないんだよね。いや、部室とか古い倉庫とか文化遺産かな? みてーな建物いっぱい持ってはいるんだけど。

 

 ハスミ先輩と被害状況報告やら、ゲヘナ丸ごと滅ぼしてやりたいよね~HAHAHAなんて雑談してたら、あんまり物騒なこと言うんじゃないと、ハスミ先輩ともども銃床でゴンゴン殴られる。

 あなたやっぱ普通に喋れるし意外とまともなんすねツルギ先輩……。

 

 その後訓練所に移動し、戦闘訓練開始。さぞやスパルタなんだろうなあと身構えてたら、なんか普通に初心者講習みたいなのが始まった。

 銃の構え方から被弾面積を少なくする姿勢、立ち方動き方、翼や遮蔽の使い方に、味方のためにフロントマンが意識すること。

 

 文字通り手取り足取りツルギ先輩に教わってしまった。声にドスは利いてるけど、端的ながらしっかり喋るし。なんか良い匂いした。生肉とか血の匂いとかさせてそうな雰囲気なのにどういうことなの? 

 普通にドキドキしちゃったじゃねえかよ。見た目と中身の不一致が過ぎる。ハスミ先輩はシンプルに存在してるだけで心のなんかに悪いしよぉ。

 

 最後に強敵相手の模擬戦ということでツルギ先輩とバトル。あからさまに手加減してくれてたけど、相手にならんねマジで、俺が。

 丸ノコくんぶち当てる以外に勝ち目なさそうなのに、欠片も当たる気がしない。

 

 あちらも丸ノコくんが気になってたようで、言われた通りに炎全開全力バトル。でもキラキラファイアーどんだけぶつけてもツルギ先輩はちょっと鬱陶しいな、くらいのノリであんま効いてない感じ。

 

 こっちのショットガンはツルギ先輩がすげえ高速で動くからさっぱり当たらん。それに対してあっちの銃撃はヘルメットなんか比較にならんくらい重くて痛くてガンガン当たる。銃なのに使い手によって威力が全然違うのはどういう理屈なんすかね……。

 

 しばらくどうにか耐えてたところ、散弾クリーンヒット連発でついにぶっ倒れ、ハスミ先輩のストップかかって終了。はー、本職の人はやっぱ違うのな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「かなり厄介だった」

 

 感想戦では開口一番これである。ほんとぉ……? 常時余裕顔かハラワタくらい尽くしてやるみたいな顔だったじゃん。

 

「ええ、広範囲に広がる炎幕は非常に厄介……有用なものでしたね。練度の問題か敵意の強さか、威力的にはさほどでもありませんでしたが、それでも確実に体力を削られるのは脅威です」

「タフネスも、良い」

 

 タフって言葉は俺のためにある……? つーか炎ちゃんと効いてたんだ。ヘルメットとかはお湯ぶっかけられたくらいのリアクションはしてたんだけど、ポーカーフェイスが過ぎるだろ。

 

「あとは練習だ」

「堅実な持久戦を仕掛ければ、格上相手にも一矢報いることは十分可能でしょう。ツルギの言うように銃撃やリロードなど、基本的な動作の精度を上げていけば、ドンドン強くなれますよ」

 

 言葉少ななツルギ先輩をハスミ先輩が翻訳しつつの総評は、思った以上に高評価。手も足も出ねーでボコボコにされた気しかしないんだけど……。ともかくこんな感じで今後もちょいちょい見てもらえることになった。

 

 ちなみに丸ノコブンブンアタックは格上にはまず当たらんからやめておけとのこと。一撃技には頼らず、大人しくDoT*1ダメージで削れというわけだ。

 見た目わりと華やかなのに、結局どこまで行っても泥臭い感じなのがちょっと悲しいね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正実ブートキャンプで定期的に鍛えられつつ、ほどほどにイベント消化しながら夏の後半も過ぎていった。部活と訓練休みにまたヒフミちゃんたちとお出かけしたりも。

 

 ということでお出かけなんだけど……ペロロ様ヒーローショーってなんなんすかね。商業区近くのでっかい公園、特設ステージでやたらとキビキビした動きで戦うキモい鳥着ぐるみたち。そんなんをキモい鳥型うちわフリフリ、死んだ目で眺めている。

 

 特撮ヒーローみたいなノリで仲間たちと共に大活躍するキモい鳥を、うちわぶんぶん振り回して応援するヒフミちゃんは非常に可愛らしいですけど、状況が意味不明すぎます。

 

「わぁ~! ペロロ様! 今です! ……やったぁー!」

「「「わぁぁぁ!!!」」」

 

 ヒーローショーらしく、ちびっこにもまあ一応人気らしい。子どもたちがヒフミちゃんと一緒に歓声を上げる。流石のヒフミちゃんもちびっこには配慮したようで、俺らは子どもたちのすぐ後ろに陣取っているが。

 

 そしてなぜか俺ら以外にも普通にJKがそれなりにいるのなんなんだろうね。しかも熱量が、ヒフミちゃんレベルのは中々いないけど、応援上映の熱量がおよそ変なデカくてキモい鳥に対するものではないぞ。

 

 キヴォトスじゃあんまりっていうか存在しないけど、イケメンアイドルとかそういうのに向けるやつでしょ、それは。……この世界の人間にはアレがイケメンに見えてる可能性が微レ存? 

 

 一瞬狂気に飲まれかけるが、周囲大盛り上がりのペロロ様活躍シーンでも、曖昧に微笑みながら控えめにうちわを振っているセリナちゃんを見て正気に戻る。

 だよね、こいつらがおかしいだけだよね。

 

 キモい鳥が常にでろんと口の端から垂らしてた舌が、ぐにょーんと伸びてベロベロ舐めて悪党を倒す……。

 そんな風邪引いた時に見る夢みてえなので盛り上がってる奴らが正気のはずがない。悪夢に飲まれているに違いない。

 

 どういう技術なんだよあの着ぐるみ。なぜ舌が伸びる。しかも質感が妙にリアルでヤバい。

 

 まあセリナちゃんもセリナちゃんで、どうもヒロインポジションらしいピンキーパカさんが出るとわりとテンション上げてたけど。いや、あのぬぼっとしたカバみたいな顔で感動的なセリフを吐かれても困るのだが。

 

 ほんのり涙ぐみ、モモフレハンカチで目尻を拭っているヒフミちゃん筆頭に、周囲との温度差がすごい。

 

 途中最前列のちびっこが悪役らしいシルクハットの猫おじさん? の着ぐるみに攫われたり、モモフレたちがパリピネズミと電車の悪魔合体みたいなやつにぶっ飛ばされたり、ヒフミちゃんたちがそれに悲鳴あげたりしつつも、最後はキモい鳥が悪役をベロベロ舐めて倒していた。

 

 人質の女児も巻き添えで舐められてたけど、なんか嬉しそうにキャーキャー言ってる。そしてヒフミちゃんはそれを心底羨ましそうに眺めている。どういうことなの……。

 

 脳が理解を拒む光景をヤケクソ拍手で流し、イベントの終わりを祝福した後、人混みに流されるまま物販の列へと向かった。

 仲良し親子か、捕まった宇宙人みたいなバンザイ状態で両サイド二人に手を繋がれているので、はぐれる心配はない。

 

 そして一番暑い時期は超えたとはいえ、夏の屋外で激しく動いたヒフミちゃんはもう蒸し蒸しである。

 ニッコニコの早口で感想をまくしたてる彼女の体は汗まみれで、キモ鳥Tシャツもかなり透けて下着丸見えである。男が全然いないせいか、キヴォトス女子隙だらけになりがち。

 

 全身グッズ装備でビジュアル的にはちょっとアレだが、とてもとても元気になるね! 

 内容的には全く同意できないので雑にツッコミを入れつつ、蒸しヒフミちゃんを堪能していたが、それも僅かな間。

 

 セリナちゃんが汗拭きシートやタオルを渡すと、元気の出る蒸しヒフミちゃんは、あっという間に制汗剤の爽やかな匂いに上書きされてしまう。ああ、柑橘類の香り……。

 

 セリナちゃん自身もちょっと汗ばんでいた体をシートで拭い、ついでとばかりにもう一枚出して、俺の顔面やら首筋やらわしわししていく。

 さっぱりしたけどさあ。泥んこになって洗われるとか、汗だくの体拭かれるとか、マジでママと男子小学生か? 普通に俺にも渡してくれるんじゃいかんかったのか? 

 

 いやまあこれも悪くないというか、普通に嬉しいんだけど、やっぱ恥ずかしいんですよね……。周囲の視線が夏の空気よりも生ぬるい。なんならメイン観客のキッズたちと同類に思われてないか? 

 

 流れ着いた先の物販コーナーで限定グッズを爆買いするヒフミちゃんを横目にしつつ、まあせっかくだからということでウェーブキャットさんデスクピローを購入。

 

 長い胴体の猫の机で寝る用枕だ。この猫、立ち姿がやたらとキモいんだよな……。でもまあ実用品だし。学校でのお昼寝が快適になること間違いなし。

 

 ピンキーパカさんグッズをいくつか買っていたセリナちゃんにお昼寝計画を悟られ軽いチョップを食らいつつ、複数のドでかいキモい鳥エコバッグをパンパンにしたヒフミちゃんと合流。

 

 帰りの電車でウェーブキャットさん&ピンキーパカさんの情報と、止まることのないマシンガンエピソードトークを食らいつつ半分寝ながらの帰宅である。

 

 

 

 

 

「……ヒフミちゃんはさあ、なんでそんなにその、ペロロ様が好きなん?」

 

 寝ぼけていたせいか、ついぽろっと禁断の質問が出てしまう。まあ常々思っていたことだから、仕方ないのかもしれない。ヒフミちゃんのモモフレトークが、スッと止まる。

 

「……そうですね、個性的で、特別で、同じ特別な仲間たちと絆の力で困難を乗り越えて、ハッピーエンドを掴む。そんなペロロ様たちモモフレンズのお話が大好きなんです。子供っぽくて、少し恥ずかしいんですけど……」

 

 あまり突っ込むと地雷かなあとか思ってたけど、案外さらっと答えてくれた。私は普通なので、トクベツに憧れがあるんです、なんて頬を染めながら付け加える。

 

 思ったより、それこそ普通な理由。思春期特有のアレの、こじらせていない健全なやつ。

 個性というならモモフレンズほど個性的(へん)な連中も居るまい。それに、ハッピーエンドが好きというのは実に理解しやすい。

 

「んまあ……勧善懲悪とか、友情努力勝利! みたいなわかりやすいのがいいよね、何事も」

 

 水戸黄門とかジャンプ漫画3大原則みたいなのがね、なんだかんだで王道を征く、ベストな選択なんだよね。わかるわかると俺が同意し、セリナちゃんもニコニコと頷けば、ヒフミちゃんの顔がパッと明るくなる。

 

「ええ、本当にそうなんです!」

 

 そして勧善懲悪と言えば~から、爆速マシンガントークが再開し、ヒフミちゃんとモモフレの出会い編、絵本やアニメシリーズの神回紹介などに至り俺は寝落ちした。

 

 モモフレンズのことは別にそんなに好きじゃないけど、キラッキラしたヒフミちゃんの笑顔は好きですね……。

 

 猫枕は抱きまくらとしてもそれなりに快適で、早速のお役立ちであった。ヒフミちゃんも褒めてくれたがいい買い物をした。まあ俺とセリナちゃんが買った全てのグッズを褒めてたが。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで暑さやグングン伸びる草木やリンゴ泥棒と戦った夏が終わっていく。伝説のピザカッターの加護ぞあるというべきか、夏の終わりの方はまあまあ平和だったので、2学期も終始こんな感じで過ごしたいもんである。

 

 まあ収穫の時期はもうしばらくで終わりだし、リンゴ泥棒自体物理的に不可能になる。

 平穏は確約されたようなものだな、わはは。

*1
Damage on Time.敵に対して継続的に一定のダメージを与え続けるタイプの攻撃。




今回はつなぎの回って感じでしょうか。水着回をカットしてペロロ回をやるのは我ながらどうなのか。でも私服蒸しヒフミさんはわりと妄想してて楽しかったです。

そして次回は例のあいつら。
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