トリニティ総合学園庭園部へようこそ!   作:一生ホームアローンマン

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15話 君は最強で無敵のアイドル

 強い……! 

 

 車スクラップにしてやったし、あわよくば退いてくれねえかなとか思ったけど、そんなわけもなく戦闘開始。一人ずつ丸ノコくんのサビにしてくれるわ! と突っ込んだがこのイカレポンチども、ヘルメットとか不良とか話にならんレベルの精鋭だった。

 

 後方に構える変な女スナイパーが特にヤバい。ヘッドショット一発掠めただけで気が遠くなった。何発かいいのもらったら落ちる。

 つか初手で炎出して撹乱してなかったら怪しかった。ヘッショクリーンヒット、怯みからのコンボで即落ちしてたかもしれん。危なすぎる。最優先で回避。

 

 前衛の変なやつ……いや変なのしかいねえんだけど、どこからともなく食い物出しては回復する意味不明な生物……。いやゲームじゃねえんだぞメシ食って回復してんじゃねえよ! 

 

 腹いせ混じりにガンガン散弾撃ち込むが堪えた様子がない。いや効いてんだけどメシ食うとあからさまに傷が治っている。キヴォトス人神秘のテクノロジーやめろ! 

 

 そして遊撃の金髪デカチチ、特筆するところはないがなんというか普通に強い。シンプルに戦闘が上手い。こっちの行動に的確に差し込んで咎めてくるというか。止めてスナイパーに撃たせりゃ勝ちだというのがしっかり分かってる動き。

 大きな隙を見せたらこいつに刺されて、そのままゲームセット一直線だろう。全力で炎バラ撒いて牽制してるがいつまで保つか。

 

 とりあえず前衛のハンバーガー女を丸ノコで潰さないと埒が明かないんだが、金髪がいる限りは無理そう。ハンバーガーと金髪の射撃は大して痛くない、いやめっちゃ痛いは痛いんだがダメージ的にはさほどでもない。我慢我慢気合! 

 

 でもチリツモで動きが鈍ればスナイパーに殺られる。その前に状況を打開しないとなんだけど……普通にどうしようもない。

 一応金髪も炎でダメージは受けてるはずだから、俺とあいつの根性バトルの様相を呈してきてはいる。バーガーは火傷も治っている。あいつが一番意味わからんかもしれん。

 

「ふふふっ。あなた、タフですね……!」

 

 アーッ! 無理だよアレ! 頭と胴体切り離したら頭だけで食いついてくるタイプの妖怪だよ! そういう顔してるもん! 消耗戦で勝てる気がしねえよ! 

 ギラギラ笑顔を向けてくる金髪が怖すぎる。突っ込んで叩き潰して楽になりたいが、どう考えても悪手だ。動けない。

 

 ツルギ先輩ハスミ先輩が来ればなんとかなるはずだから、とにかく耐えてればなんとかなる……いや無理か? 

 ここほんと僻地なんだよね。襲撃の報告から全速力でも市街からじゃまだまだかかる。

 

 なんかないかなんか……! 

 

 

 

 逆転の一手を探した俺の目に飛び込んだのは、だいぶ遠くまで転がって鎮火に成功した簀巻き女だ。こいつもわけわからん謎の存在だがたぶん仲間だろ。ならば! 

 

 ばら撒きから収束に切り替えた炎を一直線に飛ばし、簀巻き女に再び着火。くぐもった悲鳴をあげてびたんびたんし始める。そら、流石に救助に一手割くだろ。

 

「おや、これは……チャンスですね」

 

 金髪がニヤリと笑い不穏な構え。アカン。着火で牽制の手が緩んだ。ハンバーガー女もここぞとばかりに高カロリーな物を色々貪り食っている。離れたスナイパー女も不敵に笑うのみで、跳ねる簀巻き女は当然スルー。

 

 血も涙もねえのかこいつら! 

 

「ウェルダンでお願いします~!」

 

 グレネード!クソがっ!

 

 全力で丸ノコくんを引き戻し、全力で叩きつけ、爆撃を切り払う。カスが効かねえんだよ! ちょっと焦げたが全然動ける。せいぜいブルーレアってとこだなハッハァ! 

 

 ちょっとびっくりした顔してる金髪に炎を吹き付け、再び動きを制限、これで盤面は振り出しに……あぁあぁぁぁ~~~スナ女が消えた~!(絶望)

 

 爆発に紛れて木陰に隠れたらしい。見えてたからなんとか避けれてたのにこんなんもう無理じゃん! 

 

 ハンバーガーと金髪で削り態勢、見えないスナイパーの狙撃に神経をすり減らす俺。下手に撃って居場所をバラすような真似は当然しない。必殺の時を静かに待っている。

 簀巻き女も二度目の鎮火に成功し静かになった。

 

 

 

 チリチリと後頭部をおろし金で擦り下ろされるような、嫌すぎる感覚。いつどこから来るかわからない狙撃を勘で避け、金髪を焼き落とし、ハンバーガーを叩き伏せ、スナイパーに突撃する。

 できるのか、そんなことが。

 

 無理なのか。奪われるのか。背後の古樹林には、艶々と輝く深い赤に染まった良いリンゴがたくさん実っている。

 

「粘りますねえ……ちょびーっと頂きたいだけなんですけどね。リンゴ一つのために、そんなに頑張らなくてもいいんじゃないですか~?」

 

 ブチッと何かがキレた音を聞いた。マジでキレ過ぎるとこんな感じになるんだな。逆に冷静になった頭の何処かで、ぼんやりと走馬灯のように流れる記憶を眺める。

 

 みんなで木に張り付いてハサミでチョキチョキ、セミの声。終わったら一緒にシャワー浴びて、頭わしわし洗われたり、一緒に帰って買食いしたり。

 一緒にしんどい思いをして、一緒に過ごしたからこそ庭園部のみんなとグッと仲良くなれた気がする。

 

 背後にあるのはそれがまさに結実したものだった。たかがリンゴ一つ、では断じてない。冷静な頭を無視して体は反射的に動いている。丸ノコを振り上げ怒りに任せた回転が莫大な炎を生む。

 

 輝く炎の隙間から獣が笑う。足元、大きく一歩を踏み込んだその瞬間、狙いすましたような神業の一撃。

 そうだよな、そのリンゴ一つのためにこんなことやってるイカレどもが、本気でそんな事を言うはずがないか。

 

 ブラフの煽りで顔真っ赤。冷静さを欠き、致命的な隙。

 

 適当なバラ撒きだったが、それに便乗したハンバーガーのマシンガンで完全に体勢を崩す。

 当然のように終わりを告げる狙撃の音がなる。

 

 

 

 回避は不可能。気合入れれば即落ちは避けられるかもしれない、が金髪たちは既に追撃の構え。止まればその瞬間ゲームセットだ。

 

 ダメなのか。無理なのか。俺には、何も守れないのか。

 

 涙が零れ頬を伝った。

 

 流星が空を駆けた。

 

「は?」

 

 

 

 狙撃が直撃する。頭がぐわんぐわんして動けない。ベチャッと倒れて、しかし追撃は来ない。

 

 視界の奥、星の落ちた先には宇宙があった。キラキラと地上に幾千万の星々が渦巻く銀河が生まれ、はじけた。

 

 「ドーン☆」

 

 宇宙の跡で、スナ女がぶっ倒れる。後方からザッザッと規則的な足音がいくつも続く。なんとか体を起こして周囲を見れば、白いケープが特徴的な、謎のお嬢様集団。

 

「こーれーはー……一本取られましたね。撤退!」

 

 金髪は即断即決、適当にグレネードを撒き散らして脱兎のごとく走り出す。簀巻きとスナ女を担いでいったあたり、マジで血も涙もないわけでは無いらしい。

 

「わあぁぁん! 待ってぇー!」

 

 いややっぱないかも。やや行動が鈍かったハンバーガーは普通に見捨てられている。

 グレネードはお嬢様軍団の精密射撃で空中で撃ち落とされて爆発するが、それに紛れてハンバーガーもどうにかダッシュで逃げていった。

 

「じゃ、みんなで追撃ね。でも前線の子たちの救援を最優先で」

「よろしいのですか。ネズミは巣穴を潰さなければいくらでも湧くものですが。それに、急な演習で皆気が立っております」

「とりあえずはナギちゃんと会長さんの顔を立てるよ。セイアちゃんのお小言もゴメンだし。追撃は領境まで」

「……かしこまりました」

 

 何言ってんだかよくわからんけど、指示を受けたお嬢様軍団が駆け出した。何はともあれ援軍で、助かったのか? 

 ぽかんとしたまま座り込んでいた俺に手が差し伸べられる。見上げればどっかで見たような顔。

 

「……アイドルみてーなピンクの人」

ぷふっ! あははっ! なにそれ、ピンクの人なんて言われたの初めてだよ。でもアイドルみたいはちょっと嬉しいかも~」

「……パテル分派領袖*1、ティーパーティーの聖園(みその)ミカ様です。あなた、トリニティ生として言葉遣いには気を配ったほうがよろしいですよ。ミカ様、私も前線の指揮に出ます。何かあればご連絡を」

「はーい。……ぷくくっ」

 

 思わず口をついて出た言葉にピンクの人……ミカ様はなんかめっちゃウケてるけど、お付きのお嬢様リーダーみたいな人はすげえピキピキした顔でダッシュしていった。

 やべーよ不敬罪じゃん。でもしょうがないでしょ。唐突に戦闘終了して全力で気ぃ抜けてたんだもん……。

 

 ピキリーダーの後ろ姿から目をそらしつつ、差し伸べられたミカ様の手をつかむ。ふわふわのすべすべでこれぞお嬢様ハンドって感じ。

 だが意外な力強さですっと立たせてくれる。おぉ、頼もしい……。

 

「あーあー、ボロボロドロドロ。ええと、……庭園部の軽部ワカナちゃん、だよね」

「っす。この度は助太刀いただき誠に……」

「や、そーいうのいいから。普通でいいよー」

 

 下げた頭が持ち上げられ、クソ高そうなハンカチでぶっ倒れたときの顔面の泥やら煤やら、ごしごし落とされていく。

 こんなん雑巾とかでやるレベルのアレっすよ。いや流石に雑巾はヤかな、おしぼりくらいで……。

 

「あーっと、その……助けてくれてありがとうございます。マジピンチで、もうダメかと」

「どういたしまして☆ 偶然、近場で演習しててね。……あぁ、もう大丈夫なんだから、泣かないで」

「や、泣いてねっす。気のせい」

 

 気が抜けたせいか、なぜかボロボロ涙が出てくる。ごしごし雑に腕で拭えば、頭の上にぽんぽんと柔らかい感触。ぁー……なんなの、もう。

 どいつもこいつも俺の頭早押しボタンかなんかと思ってんのかよ。そんなに叩きやすいか? 

 

 優しく撫でるその手の暖かさに、止まらない涙がもっと止まらない。恥ずかしくて仕方がない。無理やり収めて、それでも無理だから頭を下げて隠して。

 

「じゃ、俺も皆の救援に行きます。あざっした」

 

 回れ右ダッシュ。が、肩掴まれて腕一本でたやすく止められ抱き寄せられる。そのまま二人でペタっと地べたに座って強制休憩タイム。

 ええ、なにこれ。合気道の達人か何か?*2 他人に体を自由に動かされる感に戦慄していると耳元で囁き声。

 

「だーめ、無茶しちゃ。うちの人たち結構優秀だから、ザコは相手にならないし。私もそこそこ強いんだから、また厄介なのが出てきたらズドンってするよ。ワカナちゃんはがんばった分お休み。いい?」

「……うす」

 

 あぁあぁぁあぁぁ~耳がゾワゾワするんじゃ~。なんだこの脳みそ撫で回されてるみたいなの。

 偉い人ってこうなの? なんか下っ端に言う事聞かせる特殊能力持ってるわけ? 

 

「一人で頑張っちゃダメだよ。色々しがらみはあるけど、私たちはみんなトリニティの仲間なんだから。特に私なんかはティーパーティーの一員、困ってるトリニティ生がいたら助けるのがお仕事なんだ。ワカナちゃんも、困ったことがあったらなんでも言っていいんだからね?」

「はいぃ……」

 

 今なんでもって言ったよね! なんだこの女俺のこと好きなのか? 全身ふわふわめちゃめちゃいい匂いする~死ぬ~しゅきぃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺がミカ様に脳みそコネコネされてる間に戦闘が終わったらしく、遠くから聞こえていた銃声が止む。さらにしばらくすると前線で合流していたらしいツルギ先輩、ハスミ先輩、うちの部長、ミカ様の部下っぽいお嬢様軍団がザカザカやってくる。

 

 俺がミカ様にぬいぐるみ扱いされてるの見たハスミ先輩と部長がすげえギョッとした顔してるし、ツルギ先輩すら真顔なんだけど……。

 なんですか、やっぱ不敬罪ですか。でもこのポジションもうちょっと堪能したいんだけど。

 

 そんな事を思っていたら立ち上がったミカ様にひょいと抱え上げられ、部長にパスされる。ああ、これはこれで安心感……。

 

 硬い声でお礼を言う部長とハスミ先輩。ミカ様はわりと気さくに話してるけど。

 なんだろうね、俺はあれか、礼儀知らずな田舎者で偉い人に近づいておもしれー女と思われて悪役令嬢にイジメられる系のポジションなのか? 

 

 学校の生徒会長ってそんな偉いもん? いやまあそうか、学校ごとに自治区あって国みたいなもんと思えば、王様とか大統領みてーなもんではあるのか? ……不敬罪っすね。

 

「それじゃ、バイバーイ☆」

 

 俺が勝手にどんよりしている間に、ミカ様は手を振ってお嬢様軍団と去っていく。ま、まあ気分は害してないようだから! 大丈夫だろ! 

 リーダーさんまたピキってたけどさ。こわ……。

 

「ワカナちゃん、ごめんね。キツいとこ一人で任せちゃって……」

 

 心底すまなそうに謝る部長。いや、普通にファインプレイでしょ。放置してたら変な女軍団に余裕で突破されてただろうし、部長の眼力はあまりにも有能。

 そもそも前線だってクソきつかったんだろうから文句なんてない。

 

 ハスミ先輩も頭を下げるが、いや、分かってるんだ。もうちょっと早く来てくれよというのはもちろんあるけど、どうしようもないのは分かってる。

 

 夜間の巡回とかも増やしてくれてるし、今回近場に居た人らも巡回強化の影響だし、それでシフトとかわりとキツいらしいのもセリナちゃんに聞いてるから。

 どこから目線だよって感じだけど、ようやっとる。

 

 そういうのもろもろと、ミカ様が助けてくれたから大丈夫! キラキラドカーンッ! って感じでめっちゃすごかった! とちょっと興奮任せのハイテンションで伝えると、全員にすげえ微妙な顔をされた。

 ツルギ先輩すらちょっと目をそらす。

 

 なんでぇ……?

*1
集団を率いる主だった人物。ここではなんか偉い人程度の意。

*2
腕力。




やっと出せたー!

我々はセイアちゃん死亡()以降のメンタルボドボドミカしか見たことないので想像するしかないのですが、去年のミカはメンタル以外弱点のない女のメンタル万全状態なのでかなり最強キャラと思われます。
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