トリニティ総合学園庭園部へようこそ! 作:一生ホームアローンマン
「あれかな、やっぱお嬢様オブお嬢様みたいなハイパーお嬢様の手をわずらわせた上に、ベタベタくっついてたのがマズかったのかな……」
いつもの自習用の空き教室、ヒフミちゃんセリナちゃん俺のいつものメンバー。小一時間ばかりひとしきりミカ様かっこヨかわヨトークを済ませたところ。
また昨日セリナちゃんに貼ってもらった、眼力強めふくろうのビッグブラザー様絆創膏を撫でつつ一晩考えた結果を披露する。
廊下で会った知らない人に、君良いモノつけてるねビッグブラザー様ファンクラブに入らない? とか謎の勧誘を受ける呪いのアイテムだ。
ミカ様率いるお嬢様軍団、パテ? なんとか*1みたいな人々が速攻で駆けつけてくれたおかげで、大規模襲撃にも関わらず損害は軽微。みんなで一休みしてからの片付けも、日が出てるうちに終わるくらいだった。なのでわりかし穏やかな気持ちで今日を迎えている。
そして二人は俺の発言に他の人と同じくすげえ微妙な顔をする。いやなんなんだよみんなして。そんなにか? そこまでの罪なの? 明日にはお肉屋さんの店先に並ぶのね案件なの?
「えっと、そのぉ、なんといいますか。悪いことをしたというわけではないと思います」
「私は御本人どころかティーパーティーの方ともさほど面識がないので、なんとも言えませんが……」
あはは……と言葉を濁すヒフミちゃんに、うーんと唸るセリナちゃん。なんだよもー。なんかあるならはっきり言って欲しい。
「まあ、その、なんでしょう。ミカ様のことはナギサ様から少しお話は伺っているのですが*2。気難しい方だと……」
「えぇ? 全然そんな感じなかったし、気さくな姉ちゃんって感じだったけど」
こっくり頷くヒフミちゃん。だよね。コミュ力の高さが滲み出てたもん。陽の気で溶けそうだったぜ。
「うぅん、そうですね。気難しいとは違いますかね。なんといいますか……そう、自由な方だと*3」
「悪い方ではないとも聞きますが、それ以上に衝動的に色々なさるというのは有名ですね」
……あーなるほど。俺がアホすぎって話じゃなくて、ミカ様になんか変な噂があるとかそういう話か? まあ可愛いしな。可愛くて偉くて目立つってなれば、色々言われるってことはあるかもしれん。
陰口みたいになっちゃうし二人は嫌いだよねそういうの。
「私は帰宅部で、特になんの柵もないですから。ある意味気楽にお話させていただいているところもあるのですが、所属がある方は……」
「前にも少し話したことがありましたが、トリニティは巨大で、そのトップのティーパーティーの方ともなれば、清廉潔白な博愛主義というばかりではいられないでしょう。お付き合いをするにしても、距離感はよく考えたほうがいいかもしれません」
お付き合いとか急に言わないでくれびっくりしたわ。……いやまあそうよね、人付き合いの方だよね。真面目な顔のセリナちゃんを前にアホすぎることを考えている俺である。
アレかな、なんか心配されてんのかな。所属に、付き合いね。つまり政治か~。よーわからんというか、全然ピンとこないんだが……。
しかしまあ、ちょっとはしゃぎ過ぎてなんか勘違いさせてしまったかもしれないな。でもそんくらいあの流星は特別だったんだよ。
キヴォトスの生徒はなんか謎の神秘パワーを持ってることちょいちょいあるけど、その中でもすごく、本当に綺麗で。
なんつーのかな、一目惚れじゃないけど、心を奪われてしまったんだ。
……直近で見た別のやつがハンバーガーだったから、落差で余計にてぇてぇモノに見えたってのもあるかもしれない。
でもそれは別に、好き好き大好きでミカ様に突撃ー! してくとかそんなわけもなく、遠くから眺めて可愛いしゅき……したいだけというか。それこそマジでアイドルを見るようなもんでさ。
そんな事を訥々語れば、二人はほっと一安心のご様子。王子様にちょっかいかけるおもしれー女ムーブ、からのひどい目にあう流れを本気で警戒されていたんだろうか。
しないよしないよそんなこと。
そもそもちょっと一回話しただけの相手にグイグイいけるようなコミュ強パリピなら、もっと友達うじゃうじゃいるから。
未だにクラスの半分くらいと挨拶以上の会話できないからね俺。部活の人は流石にみんな仲良くなったけどさ。
「まあ、クラス単位でなにかするというのもあまりないですしね。……モモフレンズ喫茶もあんまり良い反応はもらえなかったですし」
さっきホームルームで言ってましたねそれ……。俺はそっと目をそらした。セリナちゃんは版権モノはマズいですからね、と紅茶を飲みつつ常識的にスルー。
トリニティではもうちょっとすると学園祭があり、自治区全体がお祭りムードで大いに盛り上がるんだそうな。
ただ基本的に出し物は部活とか企業とか単位であとは有志だ。全クラスそれぞれ何かやる、みたいな形ではない。
モモフレンズ喫茶を諦めきれないヒフミちゃんは同好の士を集めて公式と交渉して、とかブツブツ言ってるのでマジでやるかもしれない。ちょいちょい謎の行動力を発揮するよねあなた。
俺は普通に庭園部でイベント参加だ。収穫祭と銘打って果物スイーツカフェをやる予定。
最後にド派手な襲撃を受けたものの、通算すると例年より少々被害多めという程度におさまったそうで、店を出すのに支障はない。
まあだからいいよね、というわけでもなく、結局逃げおおせたらしいあの角付きども次あったら徹底的にぶちのめしてやるぜくらいの気持ちなのだが。
いや、3対1とはいえボッコボコだったし。なんか妙に丸ノコくんの調子良かったから耐えきれたが、また同じことできるかと言われたら微妙なんだけどね……。
スナイパー変な女に不意を撃たれたらそのままノックアウトされそう。
なんでリンゴ泥棒なんかやってんだよお前ら意味分かんねえよ……。
ハスミ先輩が言ってたけど、ゲヘナで有名なテロリスト集団とかいう話だし、給食部*4。有名なテロリストってのがまず何? やっぱ紛争地帯なの?
まあ収穫はもうちょっとで完全に終わるから、角付きどもとのリベンジマッチがあるとすればまた来年だろう。
それまでにはもっとパワーアップしておきたいね。正実との訓練も続けてるし、ガンガン強くなれると信じたい。いい動きした俺にツルギ先輩が極上スマイルを見せてくれることも増えてきたし。
いや怖えんだよ。正実の人らと喋ってる時はたまに普通の美少女顔になるのに、どうして普段そんな妖怪じみてるんだあんたは。
指導の時は普通に喋ってくれるんだけど、いざ雑談とかになると全然コミュニケーションが取れないのである。
……俺が未だにビビってるのが原因なのかもしれないが。
ひとまず怖いことを考えるのはやめて、目の前の楽しいイベントのことを考えよう。救護騎士団ではなんかやるのかとセリナちゃんに聞いてみれば、結構色々仕事があるようで大変そうだ。
「救護騎士団ではチャリティバザーの運営や、学園祭中の救急対応、迷子センターなんかをやる予定ですね。私も各担当を持ち回りで。学園祭の特別イベント、というよりは通常業務の拡大版みたいな感じなんですけど、こういう時こそ怪我人や具合を悪くする人が増えますから……」
なるほどなあ。確かに人混みになるとトラブル増えるだろうしな。そしてトラブルが半分くらいイコール銃撃戦なんだろうなあと予想がついてきた辺り、俺もキヴォトスに染まってきたと言える。
「うちは珍しい晴れの舞台だってみんな張り切ってるなあ。お菓子作りの練習めっちゃしてるし、ほら」
ちょうどいいので鞄からタッパーを取り出した。自分がお菓子作りをすることになるなんて夢にも思わなかったが、やってみれば案外楽しいものだ。実はちょっと前から学園祭に向けてガッツリ練習中なのである。
とにかく数をこなして体で覚えろ、ということで手作りお菓子を大量生産している。そのため最近は3食アップルパイ。胸焼け気味なのでせっかくだから二人のお弁当と交換してもらうことに。
「おぉー、これは……」
「中々……」
現れた俺の自称アップルパイに言葉を失うお二人。うん、言いたいことを言ってくれてもいいんだよ?
「あはは……なんといいますか、個性的ですね?」
「素朴な感じで、素敵だと思いますよ」
「……味は悪くないんだよ、ほんとだぜ?」
見た目は小学生の無軌道な粘土細工みたいになってるのだが。
しかし嘘ではなく味はいい。そこらの市販のやつと遜色ないくらいはある、マジで。作りたてなら普通に完勝するレベル。
でもなんか難しいんだよね、綺麗に形つくるの。どうしてもお店で売ってるみたいなキレイな感じにならないというか。それ以前の素朴な手作り品みたいな域にすら達しない、半分前衛芸術というか。
上手にできる先輩とか部長に教わってるんだけど、なぜか改善の兆しはない。俺、こんなに不器用だったっけ。
ぢっとぷにちっさい手を見る……。
同じ庭園部一年でもぽわぽわちゃんなんかすげー上手だから、シンプルにセンスが無いのかもしれない。陸上ちゃんは見た目キレイだけど味壊滅だったりするから、最下位争いをしている状態。
ともあれナイフで適当にカットして進呈。代わりに二人からお弁当をちょっといただくことに。ヒフミちゃんはキャラ弁……ペロロ様弁当である。
キモい鳥の再現度がやたらと高くて、逆にヘタクソに見えるハイクオリティだ。元のデザインが歪んでんだよなあ。
全体的にホワイトオムレツで出来てて、中身はチキンライスだったり野菜だったりで見た目のわりにバランスが良く健康的。ミックスベジタブル入った羽を一枚頂いた。
セリナちゃんの方もとても綺麗なお弁当。肉野菜ご飯のバランスがいい感じだが、やや茶色多めだろうか。救護騎士団はわりとハードだからその分かもしれない。肉団子をいくつか頂く。
うーん、美味い。普段外食か冷凍食品か超雑な自炊かみたいな感じなので、女の子の手料理が身に染みる。いやパイとかタルトとかケーキとか、庭園部の人々が作ってるのをモリモリ食べてるんだけどさ。
「あ、ほんとに美味しい」
「ですね。シンプルだけどきちんと出来てます」
俺のアップルパイも好評のようでなによりだ。ちょっと覚悟決めて食って、心底意外みたいな顔されたけど。味は美味いって言ってんじゃねーか。
「まあ本番も良ければ遊びに来てよ。それまでには、ええ、なんとかもうちょっと形にできたらいいなあとは思ってます……」
「ふふっ……。ええ、自由時間にお邪魔しますね。こちらには来ることがないのが一番ですが、何かあれば遠慮なく来てくださいね」
それはそう。事あるごとに救護騎士団の世話になってるけどね。せっかくのお祭りだし、何事もなければそれが一番だ。たぶん無理だろうけど……。俺はもうキヴォトス人の民度を逆方向に信じている。
「私も頑張ってモモフレンズの企画を通しますね。ワカナちゃんたちにも楽しんでもらえるようなものを……!」
おお、ヒフミちゃんが燃えている。……ちょっと悔しいが、最近この微妙な集団に愛着湧いてきてしまったところはある。
ヒフミちゃんに周りから削られて、顔面だけになってしまったお弁当のキモい鳥もまあ、なんというか、愛嬌があるように見えなくもない。キモかわ? ……いややっぱキモい鳥はキモいわ。そこは譲れない一線だわ。
でも目が怖い、立つとキモいが第一印象だったウェーブキャットさんは、枕抱いてるうちになんとなく悪くないような気がしてきたし不思議。
これが単純接触効果とかいうやつだろうか。ピンキーパカさんとかスカルマンさんは元から普通に可愛いしね。
ともあれヒフミちゃんが楽しそうでなによりである。学園祭は暫く先、しかし企画からやるとなるとあんまり時間ないからどうなることかという感じではあるが。応援だけはしておこう。
感想評価等ありがとうございます。ここだー!というところで評価めっちゃ増えたのはとても嬉しいですね。
そんなこといいつつ感想返しがちょっと追いつかなくなってきたのでさっと返せるやつだけみたいになりそうですが……。目は通してます。励みになります。
今回は書きたいシーンのための捏造文化祭の前フリでした。ぶち込むためのアップルパイの前フリでもあります。