トリニティ総合学園庭園部へようこそ! 作:一生ホームアローンマン
ミカ様とお話してからしばし、知らないところで何やらきな臭い計画が進行中でも、そんなことはお構いなしに定期試験とかいう学生には回避不能のイベントが開催である。
最近は予算会議の準備やらで忙しくしてたので少々不安だったが、合間合間にちまちま勉強してた甲斐もあってかアベレージ70で無事突破。
もはや安定感が出てきたね。学力面で入学当初の面影はすっかりないと言っていいだろう。優等生というにはちょっと遠いが、中の下くらいのポジション。
圧倒的成長を実感するがそれはともかく、テスト当日にヒフミちゃんが居なかったのが気がかりだ。
休み時間ごとにセリナちゃんと一緒にモモトーク連打したり鬼電かけたりしたのだが、結局テスト終わっても反応なし……。
何かあったのだろうか。セリナちゃんと一緒に直でお見舞い行くかと相談していると、ちょうどヒフミちゃんから連絡。
テストの日取りを誤認したままペロロ様ゲリラライブに参加して、スマホの電源切ってたとか。
いや、そんなことある???*1
とりあえずキレてるアングリーアデリーさんのおバカ! ぬぼっとした顔のウェーブキャットさんのどんまい! 笑顔のピンキーパカさんのがんばれ! スタンプをいつもの3人グループトークに投下しておいた。
セリナちゃんは侍スカルマンさんのご無事でなにより、スタンプを投下。
ヒフミちゃんからはお辞儀ペロロのご心配おかけしましたスタンプが返ってきた。
まあまあ、一安心というところである。事件事故、病気の類でなかったのは良かった。再テストかなんかになるのかな。
俺が赤点とった去年は追試と、科目によってはレポートだったが。丸ごとサボった事例は聞いたことがないのでどういう処理になるかは分からない。
病欠なんかと一緒で再テストなら特に問題ないだろうが、補習や課題になるといよいよ遊べなくなりそうでやだなあ。
まさか、俺が心配する側に回ることになるとは思わなかった。
「……ヒフミちゃん? なんでいんの!? てかテストは結局大丈夫だったの???」
「こんにちは、ワカナちゃん。先日は心配かけちゃってごめんなさい、えーと、その関係でここにいるといいますか……もう始まっちゃうので、詳しいことはまた後でですね」
後日、部活予算会議の本会議の日。ティーパーティーのお偉いさんと全部活の部長が集まるドでかい豪華な会議室で、なぜかヒフミちゃんを発見。
会議自体はシャンシャン会議というか、結論が始めっから決まってるので、会議というより通達と確認の儀式みたいな感じ。なのでわりとどーでもいいのだが。
セリナちゃんは救護騎士団団長代理として、ここしばらくずっと一緒に部長会議に参加してるからいいとして、ヒフミちゃんとここで会うのは初だ。
まさかついにモモフレファンクラブとか発足したのだろうか……。いつかやると思ってました(友人W)。
まあテストの関係というから違うだろうが、それこそモモフレライブでテストサボるような女である。油断はできない。
ヒフミちゃん、優等生の顔して意外と侮れない爆発力があるからな……。ああ見えてちゃんとキヴォトスの民なんだなあって、たまに思い出させられます。
開始の時間が迫っていたため、立ち話もほどほどに苦笑いのヒフミちゃんと別れると、クセの強そうなメンツが空席を埋めていく。
大まかに派閥ごとに分かれているようで、ティーパーティーの三大派閥が大枠を作って、その傘下の部活がそれぞれ近くにまとまってる感じ。
無党派層というか、正実・シスターフッド・救護騎士団がそういうのから離れたところで我関せず。泡沫部活はその周りになんとなーく固まって。
トリニティの勢力図がほんのり表れてるような席順である。
そしてヒフミちゃんはなぜかナギサ様のフィリウス分派集団のど真ん中に配置されて、なんとなく居心地悪そうにしていた。
えぇ、そこ? もしや権力者の寵愛を笠に着て、我欲を尽くす悪女ムーブ……? いやそんなわけはないだろうが……。
ちょっと着物ヒフミちゃんと着物ペロロがナギサ様にあーれー*2されてるビジョンが浮かんだが、そういう楽しそうな雰囲気ではない。
とりあえず横のセリナちゃんをちょいちょいつついて、ヒフミちゃんを指差し確認。
おやっという顔をしているので、セリナちゃんもなにか知っているわけではないようだ。
仕方ないので、ヒフミちゃんに向けて机の上で小さく手をフリフリしておいた。セリナちゃんと一緒にフリフリ。気づいたヒフミちゃんも、笑顔で振り返してくれた。
……ヨシ! 特に意味はないが、よし。
反対隣のツルギ先輩は、いつものどこ見てんだかわからない斜め顔で無反応だったが、セリナちゃんの隣のシスターサクラコがこほんと小さく咳払い。
おっといけねえ、手はお膝。
「さて、それでは皆様お集まりのようですので、本年度の部活動予算会議を開催いたします」
定刻となり、ナギサ様の挨拶とともに会議が始まった。ナギサ様の横ではミカ様がなんの感情も伺えない澄まし顔。反対側にはセイア様の代理だという、やや顔色悪い人がうつむき加減に座っている。*3。
会議は淡々と恙無く進行していく。予算の増減とその理由、各部・委員会の長へ確認、承認。予め決まっていることを流れ作業のように。
無駄な時間だなあと思うが、まあこういうめんどくさい手続が結果的に色々なことを上手くいかせるのだろう。しらんけど。
大半の部が終わって、最後の方で庭園部の予算についても確認される。他の人達と同じように、問題ありませんと頷いて終了だ。
ここで異議あり! とか叫んだらどうなるんだろう、とちょっと思ったが、まあいい方向に転がることはないんだろうなあ……。
そして最後の最後でヒフミちゃんが、補習授業部? とかで呼ばれる。
わりとみんな首を傾げてる様子だったが、ナギサ様から説明が入る。特殊な部活動で、部員の成績が向上したら廃止される。特に予算はつかないが、補習に関わる施設利用などに関して優先権を持つ、とかなんとか。
どうも今年から成績不良者のサポートが手厚くなったようだ。
言われてみれば去年わりと酷かったもんね。ロボ教員が態度わりぃんだよなあ。腐ったみかんはゴミ箱へ、みたいなの丸出しでさあ。
いやまあこっちがバカなのが悪いと言われればそれまでだが、それにしたって教育者って感じじゃねえって言うか……。
キヴォトスには“先生”が居ない、ってなんかで聞いてたけど、こういうことかと思ったよね。それを思えば、補習授業部というのは良いシステムなのかもしれない。
ヒフミちゃんが部長ってことは、優等生が劣等生の面倒見る感じなのだろう。
それはそれでどうなんだという気もするが、なんとシャーレの先生が顧問につくという。じゃあマジで安心だね。あの先生が教員としてどうなのかは知らないけど、少なくともロボ教員よりはマシだろう。
俺も去年二人が居なかったら相当ヤバかっただろうし、まだ見ぬ今年のダメな子には朗報だな。きちんと面倒見てもらえそう。
ヒフミちゃんについては、テストサボりの罰則代わりってことなのかな。普通に再テスト受けられればそれが一番だっただろうけど、そこはしゃーなしってとこかな。
うんうん、悪い話じゃあないね。ナギサ様がダメな子のことを考えて制度改革したってのは、なんにも悪いことじゃない。
「でも~……」
それじゃヒフミちゃん俺らと遊べなくなるじゃ~ん……。
会議が終了し解散後、セリナちゃんと一緒にヒフミちゃんと合流。久々にファミレス行こう、となったけどセリナちゃんがまだ仕事あるというので教室でちょっとダベるだけ。
こういう細かいとこでもフラストレーション!
「いたっ、あいたたたっ……! あの、ワカナちゃん、痛いです……」
痛くしてるんだもんよ。手のひらニギニギマッサージである。ツボ押し! ツボ押し!
「では私も反対側を」
「あっ、あっ、あぁっ……! だめぇ……ですぅっ!」
セリナちゃんも乗っかって、ヒフミちゃんの両手を二人でグイグイしている。
セリナちゃんは俺の適当なのと違ってなんとなくプロっぽい。ツボ押しまで習得しているのか……。だが負けるものか、質より量で対抗せんと、すべすべの手のひらをグリグリ両手で押しまくる。
ヒフミちゃんの悲鳴も絶え絶えになり、手のひらが熱々の血行ヨシになったところでぼちぼち終了。
「……やっぱ夏も遊べない感じ?」
「一応、早めに終われば夏休み前には補習授業部解散! ということもあるそうなんですが……」
補習授業部は、ヒフミちゃんプラスお嬢様学園の劣等生3名で構成される予定。その4人全員が同時に特別試験とやらをパスすることで解散、補習終了となるそうだ。
それなりに、というかキヴォトスの中でもかなり人数多いこのトリニティで、ダメな子が3人だけというのはわりと奇跡的な気がする。
しかし、それでもちょっとやそっとでは合格できなさそうな感じの条件だ。
「結局、俺は学力並までいくのに半年くらいかかった気がするけど。俺3人を今から夏休みまでの短期間で仕上げるって……いけそう?」
ついと目をそらすヒフミちゃんの手を再びニギる。アツアツだぜ。
「あぁあぁぁ……! す、すみません、ちょっと無理かもしれないですっ……!」
「その方々の現在の学力や潜在能力はわかりませんし、スパルタでやればなんとかなるかもしれませんが、あんまり現実的ではないですよね」
セリナちゃんもニギニギ再開。うーん、だいぶ楽しくなってきた、今だけは。でもなぁ……先の話がなあ。
「えっと、夏休み前の一次試験がダメだったら、勉強合宿になるそうで……。やっぱりそれが終わるまでは遊びに行くという訳にはいかないでしょうし、最悪夏休み丸ごと補習で終わるかもしれません……」
私としてもそれは避けたいですが……というヒフミちゃんだが、自信はなさそうだ。
「今年の夏は私が団長代理として色々仕切らないといけませんし、ワカナちゃんも部長さんとして忙しいですし。ヒフミちゃんの予定が自由じゃないと、本当になかなか一緒に遊びには行けないですね……」
やだぁ~……。不満アピールとしてヒフミちゃんの肩をボスボス軽く頭突くが、あうあう言われるだけで何も変わらない。
「俺もシャーレ入ろうかな……」
遊びに行くわけではないが、そしたらだいぶ一緒に居られる時間が増える気がする。
なんていうか、去年当たり前だったちょこちょこお出かけが無くなって、本当に寂しいのだ。どうもメンタルがざわざわしてしまって制御不能。
「あ、それはいいかもしれませんね。ワカナちゃんと一緒に色々やれたら楽しそうです」
パンと手を打つセリナちゃん。思いつきだったが、わりといいアイディアかもしれない。
他校の知らない人いっぱいいるとこやだなあと思ってたが、二人だけじゃなくて宇沢ちゃんもいるし、ツルギ先輩とハスミ先輩も部員らしいし、知り合い結構いるのだ。それを思えば、そんなに居づらいとこでもなさそうだ。
「そうですね、みんなで一緒に……。どちらにせよ、補習授業部の件が終わらないと私は無理なんですが……」
ほわっと笑った後ずーんと沈むヒフミちゃん。そうだったよ。結局そこが問題なんだよなあ、このペロキチ娘が。ゲリラライブでテストサボるってなんだよ。
再び不満を表明するため、ヒフミちゃんが教室に常備しているペロロぬいぐるみを奪って、キモい鳥ブンドドアタックを顔面にバスバス連打。
「あ、あぁ~! や、やめてくださいワカナちゃん……!」
やめろと言いつつ嬉しそうな顔をするんじゃない。喜ばせようと思ってやってんじゃないんだぞ。
俺が満足するまでペロロアタックした後、セリナちゃんがピンキーパカさんぬいぐるみの手でヒフミちゃんの頭をよしよしと撫でて慰めていた。ヒフミちゃんは終始ご満悦である。
「……まあ、俺も二人にお世話になった身だから、あんまり文句言えないや。そのダメな子たちをしゃっきり一人前にしてあげてくれぃ」
ペロロぬいぐるみをその辺に置いて、シャーレに入部どうのもひとまず置いて、補習授業部の成功を祈るとしよう。
もしかしたらそいつらが、実は爪を隠した向学心溢れる超優秀な実力派エリートとかで、すぐに試験突破するかもしれないし。
ヒフミちゃんも散々
「そうですね。ヒフミちゃんに、先生もついているならきっと大丈夫です。早いうちに終わって、夏休みもどこかに遊びに行けますよ」
「えっと、はい。……ええ、やる前から不安になってたらダメですね。頑張ります!」
うぉおー! と気合をいれて燃え上がるヒフミちゃんに、その意気だその意気だうぉおー! と謎に盛り上がり、補習授業部の前途を祈ってその日は解散となった。
わりと今更ですがトリニティのテスト関連はよくわからないので色々ぼやかしております。
コハルが2年生のテスト受けて3回落ちたとかハナコが全学年のテスト満点とか、一体どういう仕組みで、テストのスケジュールとかどうなってんだとか……。
採点はAIかなんかでなんかめっちゃ早いみたいですが。
まあなんかいい感じになってるんだろうということで深掘りはやめておきます。
あとヒフミさんのテストブッチも本当にどういう仕組みなんだろう……。書いててちょっとペロロ様にナギサ様の顔面くっつけたコラを思い出しました。
実際はもっと真面目な方法か、ナギサ様の謀略云々がただの深読みなのかもですが。