トリニティ総合学園庭園部へようこそ!   作:一生ホームアローンマン

31 / 62
31話 補習授業部の人々

 夜は目を皿にしてこそ泥を探しては念入りに焼き、朝はセミになって摘果作業やったり、ドローンくんで早生リンゴの収穫に、その辺の草刈りに蔦払い。暑い日中はクーラー効いた部屋でぐでぐでお昼寝。

 夏休みも開始からちょっと経つが、充実した農家ライフを送るばかりである。いや女子高生の生活かこれ? 

 

 まあ疑問に思ったところで仕事がなくなるわけでもない。今日は草刈りロボくんと手持ちの草刈り機、除草剤の噴霧器やらを軽トラに乗っけて、麦わら帽かぶって出発進行である。

 クソ広いトリニティ郊外の道をトロトロ走っていると、見覚えのある人影……というか三角耳二つがベールをピンと押し上げた、特徴的なシルエットがとことこ歩いている。

 

 でももし見間違えだったら恥ずか死ぬので、ちょっと追い抜かして顔を確認。ああ、思った通り。なら声をかけてみようか。

 

「へい、お嬢さん。乗ってかなーい?」

「え? あ、ワカナさん」

 

 おはようございますとマリーちゃんに微笑まれ、渾身のナンパネタは軽くスルーされてしまった。うん、まあそれで良かったんだ……。

 

「どうしたの、こんなとこで*1

「はい、実はこの別館に用事があるんですが……」

 

 メモを渡されると、それは果樹園のわりかしご近所さん*2の、使われていなかった建物の住所が記されていた。

 たまーに行くところだし覚えがあるが、最近も見たような。

 

「ああ、ヒフミちゃんが合宿してるとこじゃん」

「ご存知でしたか」

 

 ちょっと前、残念ながらの夏合宿決定お知らせとともにモモトークで聞いていた。勉強してるとこに遊びに行くのはどうなんだと思って、近場とは言え訪ねるのは控えていたが。

 

「ヒフミちゃんに何か用事?」

「いえ、補習授業部の別の方に少し……」

 

 ああ、そういえば別の人も普通にいるんだった。というかそっちの人々がメインか、補習授業の。

 未だにメンツ全然知らないんだけどね。おバカさんのプライバシーに配慮してか、ヒフミちゃんも話さないし俺もあえて聞かないし。

 まあ別に知ってはいけないということもなかろうが。俺もかつてはおバカさんだったのだから(意味不明)。

 

「えっと、マリーちゃん、アレじゃなければマジで乗ってく? 俺もせっかくだからヒフミちゃんに会いたいし」

「よろしいのですか?」

「もちろん。乗り心地はいまいちだけどね」

 

 謙遜でなくわりとマジでいまいちな普通の軽トラだが*3、冷房くらいは流石についてる。午前中とはいえ夏の屋外よりはマシだろう。

 助手席に積んでたペロロ棒を荷台によけて、マリーちゃんを乗っけた。

 

「狭くてごめんねえ。……いやほんとマジで」

「いえ、いえいえ。ありがたいことですから……」

 

 ただでさえ狭い二人乗りの軽トラ運転席、俺のクソデカ羽は畳んでもつっかえるのだ。マリーちゃんが助手席窓に押し付けられるような状態になってしまう。

 

 クッションかなんかと思っていいからと言えば、だいぶ躊躇した後、俺の羽を背中に敷いて落ち着くポジションを確保したマリーちゃん。なんかほんとにごめんなさいね……。

 二人して頭を下げ合い、恐縮しきりのマリーちゃんとともにどうにかこうにか、ヒフミちゃん&謎の三バカ訪問ドライブは出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ、立派な建物ですね……。プールもあります」

「ちょっと前までドロドロ緑だったんだけどねー。ヒフミちゃんたちが掃除したのかな」

 

 綺麗にするだけして使わないってこともなかろうし、勉強合宿と言っても案外楽しくやっているようだ。

 まあヒフミちゃんとあの先生さんが教師役をやって、そんなピリピリした雰囲気になるはずもないか。

 

「ええと、入り口は……こちらにチャイムがありますね。ごめんくださーい」

 

 ピンポーンと音が鳴るが、特に何も起こらない。しばし待つも反応なし。留守にしているのか、あるいは親機のほうが壊れてて中では鳴ってないとか? 

 まあ使ってなかった建物だし、細かいとこに不備があってもしょうがないか。こんなところに訪ねて来る人間も少ないだろうし。

 

「うぅん、仕方ありませんね。入ってしまいましょうか。……失礼します」

 

 せやなーと頷けば、マリーちゃんがドアを開けて中に入る。外観同様、結構立派なエントランスだ。

 俺も続いて中に入るが、何やら違和感。なんだろう、と思って首を傾げていると、マリーちゃんの足元になんかあるのに気づく。

 ワイヤーだろうか。マリーちゃんが足を引っ掛けた瞬間、ピンと何かの弾ける音。

 

 とっさに肩を掴んで後ろに下がらせ羽ガード。案の定爆風が襲いかかったが、バサッと払えばほぼ無傷だ。

 日常生活でクソ邪魔なだけじゃあないんだぜ、この羽はよ! 

 しかしキヴォトスじゃあ挨拶代わり程度の威力だったが、ブービートラップ? なんでこんなとこに? 

 

「えっえっ? こ、これはいったい……?」

「あっ」

 

 びっくりして後ずさるマリーちゃんの足元にまたなんかある。逃げる先を予想して仕掛ける、追い込み漁タイプの罠。

 なんか部長に教わったやつを思い出すなあ。ゲリラ戦なんていつやるんだよと思ったが、実際ちょくちょくやることになるし、こうして食らう側としても役に立つとは。

 

「きゃあっ!?」

 

 マリーちゃんを羽で包んでガード。さっきよりやや威力強め。そして爆発で飛ばされる想定先にさらに大きな……。うんうん、やっぱなんかあるわ。

 

 めんどくせえからそれっぽいの全部焼こう。

 バチンとペロロ棒……丸ノコくんを背中から下ろし、カバーを外して火をつける。

 

 細かいものを燃やすのはちょっと難しいが、大雑把でいいならある程度なんとかなる。

 ぎゅんぎゅん回した丸ノコくんを一振り。きらめく炎が豪華なエントランスをさらにド派手に彩り、ワイヤーとかのトラップ動作部分をあらかた燃やす。

 

 大体は沈黙したようだが、燃やしたことでむしろ発動したやつらが連鎖的にドッカンドッカン大爆発を起こしてしまう。おお、やぶ蛇やぶ蛇。

 ざっくり軽く学んだ程度の俺では太刀打ちできない相手のようだ。しかし耐久任せに乗り越える。

 再び羽包みにしたマリーちゃんも、ちょっと焦げただけでほぼ無傷のようだ。

 

「……手練だな。だが、いかなる襲撃者も撃退する。それが私の任務だ」

「なんだぁ、テメエ……!」

 

 爆発の煙の合間、奥の方から謎の人物が現れる。長い銀髪に紫基調の髪飾り、それと同系統の花飾りで華やかに彩られた白い翼。ドレスのような改造制服を着た、俺と同じくらいのちんまい背丈はまるでお人形さんのようだ。

 だがその氷のような無表情からは何もつかめない。少なくとも友好的な存在ではないだろうが。

 

 なんなんだこいつは一体。テロリストかなんかか? ヒフミちゃんはどうした? 

 嫌な想像が頭をよぎるが、しかしまあここはキヴォトス世紀末。合宿所がテロリストに占拠される、なんて中学生妄想みたいなこともあるだろうと思い直す。

 

 ヒフミちゃんが襲われるということは、たぶん過激派反モモフレ組織かなにかではと状況分析。

 キモいマスコットが天下を取ることを許さない審美眼つよつよテロリストと、キモい鳥を抱えて徹底抗戦を叫ぶヒフミちゃんの図が浮かぶ。

 

 ぷふっ、心中でちょっと吹き出す。よし、落ち着いた。大体そんな感じだろ。それになんにしてもやること変わらねえわ。とりあえずぶちのめそう。

 

 マリーちゃんを羽で押して下がらせ、腰後ろからショットガンも取り出し、丸ノコくんの回転数を上げる。

 ギュンギュン唸る鉄の咆哮が、煌めく炎のよだれを垂らし、ふわっふわの絨毯をさあっと撫でてパチリと消える。

 

 そんな俺の威嚇行為もどこ吹く風、冷たい鉄面皮は何も変わらず、あちらも腰を落として臨戦態勢。

 ゲリラ屋の巣の中で戦うのは、流石に分が悪いかもしれない。速攻で決めるか、最悪すべてを燃やすか……。

 

「わ、ワカナさん、いけません。まずはお話を……」

 

 ケホケホと咳き込みながら、マリーちゃんが俺の羽をくいくい引っ張る。

 むむむ。そういうのはまず殴り倒してふん縛ってからすればいいと思うのだが……。

 

「あ、アズサちゃん! いったいなにを……! わあっ!? ワカナちゃんッ!?!!??」

「あ、ヒフミちゃんじゃん」

 

 迷って止まった所、叫びながらダッシュでエントランスに飛び込んできたのはヒフミちゃんだった。ちゃんと無事だったようだ。よかったよかった。

 それにしてもヒフミちゃん見るの久しぶりだな。夏休み開始からモモトークだけだったから、生ヒフミ成分が嬉しい。うおぉー! 丸ノコくんをブンブンして再会を喜ぶ。

 

「ふぎゃんッ!?」

「アズサちゃんっっ!!?!??」

「あ、すまない。隙だらけだったから、つい……」

 

 マリーちゃんとヒフミちゃんに意識を削がれた俺に謎の少女、アズサ? の銃撃が炸裂。スコーンとおでこに当たった銃弾は天井に跳ねてめり込んだ。

 ついで脳天スナイプすんじゃねえよ痛えなあもう。いやマジで結構痛いな、うぐぐ……。

 

「あら、マリーちゃん……と、そちらはどなたでしょう」

「あ、は、ハナコさん……」

 

 うお、おっぱいデッカ……。ヒフミちゃんの後ろからさらに知らない人が現れる。どうもマリーちゃんの知り合いらしいが、シスターっぽくはないな。

 しかしなんとなく見覚えがあるような。知り合いではないはずだが、どこで見たんだったか。

 

「と、とにかく! 全員武器をしまってくださいっ!!!」

 

 無表情テロリスト・アズサを抱きしめて制圧していたヒフミちゃんが叫ぶ。

 うん、まあ、戦闘する感じじゃなくなったよね。脳天ブチ抜かれたけど、ヒフミちゃんと既に仲良しっぽいから特に文句ないわ。

 

 ショットガンしまって、丸ノコくんにペロロカバーをかけて……。なんか、同じく銃をしまってたポーカーフェイスちゃんがキラッキラした目で見てる気がする。

 

 無表情なのに目が輝いてる。なんだ? まさか反モモフレ団じゃなくてむしろ過激派モモフレ団だったのか? 

 カバーかけてペロロ棒になった丸ノコくんをゆっくり振ってみれば、視線が左右に追いかける。

 

 表情豊かに無表情な……えっとアズサちゃん? と一緒に後ろのヒフミちゃんも合わせて体を左右に揺らして楽しそう。うむ。

 

「何やってんのよあんた達……」

「あ、コハたん! コハたんじゃないか! 最近行方不明だったコハたんがなぜここに?」

「コハたん言うんじゃないわよ! あんたこそなんでこんなとこいんのよ!!!」

 

 デッカい人、ハナコさんの影から出てきたのはなんとコハたんだった。

 正実の訓練で見かけないなあと思ってたら、まさか補習受けてたとは。意外と知り合い密度が高くてちょっと安心。

 

 しかし、いよいよ収拾がつかなくなってきた様を見かねたのか、奥から先生さんがやってきて鶴の一声。

 

「みんな、とりあえず上で座って落ち着こうか」

 

 そういうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、お水」

 

 荒れてしまったエントランスを出て、普段使っているらしい掃除のされた教室で、適当に椅子を並べて一同着席。

 ホワイトボード一面にでっかくペロロが描いてあったり、あちらこちらにぬいぐるみなどが置かれ、教室がモモフレ侵食されているのはヒフミちゃんの仕業だろうか。

 

 本校舎のクラス教室もそうだが、自分の領域を作り出すタイプの能力者なんだよな、ヒフミちゃん。

 そういうところが可愛らしくもあり、愛好してるのがよりによってキモい鳥だから分からなくもあり……。

 

「ありがとうございます」

「さんきゅーコハたん」

「だからそれやめなさいよ」

 

 一度決めた呼称はなかなか変えられないものなのでダメです。俺の中でコハたんは、下江でもコハルでもなくコハたんなのだもはや。

 それに俺にも普通に冷たいお水くれたし、本気で嫌がってるわけでもなさそうだし。

 ともかくそんな教室で、マリーちゃんと一緒にこくこく水飲んで一息。

 

「ふぅ、びっくりしました。入った途端に何かが作動して……。庇っていただいてありがとうございます、ワカナさん」

「いやいや。ああいう時くらいしか役に立たないからね」

 

 頭を下げるマリーちゃんに両手を振る。まあ結局誰も彼もキヴォトス人だから、よっぽど酷いことにはならないわけだが。それでも耐久力の差はあるしな。

 見たとこマリーちゃんはそんなでもないタイプだから、俺がタンクになるのが正解というものだ。

 

「アズサちゃん……」

「……ごめん。てっきり襲撃かと」

 

 そうこうしているうちに、ヒフミちゃんが無表情ガールアズサちゃんの背中を押し出して、俺とマリーちゃんの前に立たせる。すると彼女は案外素直に頭を下げた。

 

「えぇっと……? 今日も平和と安寧が、あなたと共にありますように……」

 

 なぜかお祈りを捧げたマリーちゃんは、なにがなんだかわからないという様子で首を傾げている。

 まあそうよね。襲撃ってなんだよ紛争地帯じゃねえんだぞ。そんな気軽に敵襲とかあってたまるかよ。

 ……そう思っていた時期が俺にもありました。マリーちゃんにはそのままで居て欲しいものだ。

 

 補習受けるのにブービートラップ仕掛ける意味はちょっとわからんけど、まあ人んち入ってなんか爆発したくらいで騒ぐこともないだろう。

 いや、なんかおかしいな……騒ぐべきなのか? まあいいか。いや良くないのか?

 

「と、ところでどうしてシスターフッドの方がこんなところに……? それに、ワカナちゃんまで」

「俺はマリーちゃんの用事の付き添いというか、遊びに来ただけだから。とりあえずお気になさらず」

 

 話を変えようと尋ねたヒフミちゃんに答えるが、遊びに来たって何よバカにしてんの? と、コハたんは俺の背中に回って両手親指でグリグリアタック。

 地味に痛いぜ。羽バサバサアタックで攻撃をやめさせつつ、マリーちゃんに手で促す。

 

「あ、はい。ええと、こちらに補習授業部の方々がいらっしゃると聞きまして。ただ、ハナコさんもここにいらっしゃるとは存じておりませんでしたが……」

「……私も、成績が良くないので」

 

 マリーちゃんに見つめられたデッカいハナコさんが微笑む。いや、笑い事じゃねーだろ。

 

「そう、でしたか。はい……」

 

 マリーちゃんはめちゃめちゃ心配顔である。……なんだか意味深な雰囲気。どういう関係なんだろうかこの二人。

 

「ハナコ、知り合いなの?」

「あはは、少しだけご縁があって、といいますか。それでマリーちゃんは私を訪ねて……というわけでもなさそうですね。補習授業部にどういった用事で?」

「あ、はい。本日は、補習授業部の白洲アズサさんを訪ねてこちらに参りました。伺ったところ、ここにいらっしゃると聞きまして」

 

 今更ながら、マリーちゃんの用事について聞いていなかった。名指しされたアズサちゃんは、私? と首を傾げる。

 マリーちゃんが言うには、なんでもクラスメイトにいじめられてた子が居て、その子をアズサちゃんが助けたらしい。

 

 やっぱあるところにはあるもんだな。幸いと言っていいか、身の回りの目につくところでは無いようだが。

 ヒフミちゃんはちょっと聞いただけでも沈痛な面持ちだし、コハたんは結構キレている。俺は流石に全然知らん人にそこまで感情移入できない。

 

「……まあ、聞かない話ではありませんね。みなさん狡猾に、それに陰湿な形で行うせいで、あまり表には出てきにくいですが」

 

 ハナコさんの無表情よりも読みづらい微笑は、俺と同じく知らん人だし、ということなのか、あるいは。……穿ち過ぎかな。

 それに、初対面の相手に考えることではないか。

 

「……そういえば、そんなこともあったな。ただ、数に物を言わせて弱い対象を虐げる行為が目障りだっただけだ」

 

 こっちはこっちで無表情無感動に、しかしカッコいいことを言うアズサちゃん。なんだお前、不良漫画の主人公か?

 

 その後、いじめやってた奴の策謀でアズサちゃんは正実と3時間激闘を繰り広げた後、捕縛されたとのこと。弾薬が切れなければもっと長く戦い、道連れを増やせたとは本人の談。

 ツッコミどころが多すぎて意味わからんぞ。

 

「それで、その方が報告も兼ねて私たちの元を訪れてくださり、アズサさんに感謝したいと……ただ学園では見つけられずに、ここにたどり着いたという次第です」

「……そうか。別に特別感謝されるようなことじゃない。結局私も最後に捕まったわけだし」

「後半は特に関係ないと思いますが……」

 

 シスターフッドって何やってんだかわからんとこあったけど、ちゃんとそれっぽいことやってんだなあ。

 そしてヒフミちゃん、ツッコミはそこだけでいいのか? 

 

「それにあの事態は気の毒だけど、いつまでも虐げられてるだけじゃダメ。それがたとえ虚しいことであっても、抵抗し続けることを止めるべきじゃない」

 

 なんだお前? 不良漫画の主人公の師匠役か? やたらとカッコいいな。

 ……俺はどうだろうね。なんだかんだで敵をぶちのめすパワーがあるから抵抗してるだけで、弱いままだったらさっさと逃げてるかもしれない。

 勝ち目のない敵に、それでもと抗う勇気なんてあるだろうか。……ないよなあ。主人公の器ではないな。

 

「……そうかもしれませんね。はい、あの方にもそう伝えておきます。ふふ、アズサさんは暴力を信奉する氷の魔女……だなんて噂がありましたが、やはり噂は噂ですね」

 

 にこやかに告げるマリーちゃんだが、氷の魔女て。そういう二つ名みたいなの流行ってんのトリニティ……? 

 二つ名バトルするか? 『暴力を信奉する氷の魔女』と、『火あぶりの刑に処す異端審問官』どっちがマシだ? 普通の果樹農家兼植木屋さんですよ俺は。

 

「なるほど、そんなことが……。ところでそちらの方は? ヒフミちゃんとコハルちゃんのお友達でしょうか」

「あ、庭園部の軽部ワカナっす。よろしくおねがいしまぁす……

 

 マリーちゃんのお話が一段落したところで、今更ながらにご挨拶。知り合いの知り合いとか、友達の友達とか、そんなポジションの人が一番苦手な俺である。

 知り合い多めからのやや高めテンションで始まるも、もそもそと縮こまる語尾。

 

「浦和ハナコです。軽部さん、よろしくお願いしますね。ところでコハルちゃんとは随分親しげなご様子ですが……どういったご関係で?」

 

 俺としてはむしろ、コハたんが短期間ですげえ馴染んでる方が意外なんだけど……。

 正実でもわりと人見知りっぷりを発揮してるから、今この場の方が落ちついているようにすら見える。

 しかしまあ、俺とコハたんの関係ってなんだろうね。初対面の勢いがすべてみたいな……? 

 

「まあその、秘密を共有した仲といいますか」

「はぁっ!?」

 

 適当なこと言って、なんか妙な表現になったなと思ったが時既に時間切れ。

 コハたんは何馬鹿なこと言ってんのよと俺の後頭部をペシペシぶっ叩いてくるし、ハナコさんはキラーンと目を輝かせている。ゴシップな話題が好きなのだろうか。

 

「なるほど! お二人はトクベツなご関係というわけですね! 私、そういったことにとてもとても興味があるんです。どのようにスるのかとか、お聞きしてもよろしいでしょうか???」

 

 ずずいと寄ってくるハナコさんに、思わず立ち上がりコハたんとぐるっと位置チェンジ。物理的にすごい勢いで距離詰めてくるじゃん……。

 

「いや、すんませんすんませんジョーダンです……。正実の訓練とか一緒してるだけで……仕事の関係?」

「ビジネスライクに致す仲ということですか!? そしてこの体勢は……このまま3人でっ!?」

「私を盾にするな! なんなのよあんたたちっ!」

 

 なに、なにこの人怖い。コハたんを見捨てて後ずさろうとするが、コハたん越しにがっとホールドされて、ああ逃れられない。

 コハたんは俺とハナコさんのおっぱいにサンドされてむがーと真っ赤になっている。

 

 そして先生は無言でサムズアップしながら俺ら3人を連写していた。おいっ! あんたほんとに教職者かよ! 欲望に素直すぎんだろ! 

 

「ひぁあっ!?」

「ひゃん!?」

「うふ、うふふ……お二人ともとっても可愛らしいですね。そんな二人が……あんなことまで!?」

 

 際どいところを怪しいタッチでねっとり探られ、コハたんと一緒に結構ガチの悲鳴を上げてしまう。ヤベーぞ痴女だ! お、俺の貞操が!

 

「は、ハナコちゃん! ダメですよそんな! 3人でなんて!?」

「おやめくださいハナコさん! せめて明かりを消さないと……!」

 

 いやそういう問題じゃねえだろ! 頼りになるんだかならないんだかわからない援軍二人。しかしわたわたしながらもヒフミちゃんとマリーちゃんはどうにかハナコさんを引き剥がしてくれる。

 着衣乱れに息荒く、顔も真っ赤な俺とコハたんを眺めて、取り押さえられながらもハナコさんは大層ご満悦な様子であった。く、屈辱……!

 先生はその一部始終をスマホのカメラに収め、アズサちゃんはマイペースに教室の隅っこに立てかけといたペロロ棒を興味津々な様子でつついている。

 

 なんなんだこいつら!? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、女子高生団子から解放された俺は、マリーちゃんとともに逃げるように……というか逃げだした。あの変なおっぱいデカい女から。

 

 ヒフミちゃんに会いに来たのにあんまり話せなかったが、そもそも長居しても邪魔になるだろうしな。

 元気そうな様子を見れただけでも良しとしよう。

 

 女子高生団子ベストショットをスマホに表示し見せつけながら、気をつけてねと手を振る先生に見送られ、挨拶もそこそこに補習授業部の校舎を後にする。

 

 再び軽トラに乗り込み、大聖堂近くまでマリーちゃんを送っていく。

 二人して、はぁとため息。俺は無事脱出の安堵で、マリーちゃんの方はちょっとお悩みっぽい感じだが。

 

「ハナコさん、以前はあんな風ではなかったんです。それに、とても聡明な方で補習を受けるなんてことも……」

 

 えぇ、アレが? 春めいた頭のやべー感じの痴女にしか……いや、そうか、思い出したぞ。

 浦和ハナコっていえば去年全教科満点とかとってたヤベー奴じゃん*4。式辞とかもちょいちょいやってたし、どっかで見た気がしたわけだ。

 

「とても悩んでいる様子なのは知っていたのです。それに、今もきっと。なのになんのお力にもなれず……」

 

 元気すぎるほど元気な痴女にしか見えなかったが、マリーちゃんがそう言うならそうなんだろう。うーん、しかしなんもわからんしなあ。

 

「それこそイジメとかなら、やってるやつ探し出して黒焦げにしてやれば終わりだろうけどねぇ」

「え、えぇ……? えぇと、そ、そうですね。そういうわけでは、ないようなのですが……」

 

 だよね。そうなると物理で解決できないことはわからないから、一般論的なことを言うしかない。

 

「まあ、本人が大丈夫大丈夫って言ってるうちはどうしようもない。助けてって言うのを見逃さないように、いざという時にさっと助けられるように、そんくらい?」

「いざという時……はい、そうですね。サクラコ様とも少しお話してみようと思います。ワカナさん、色々ありがとうございました」

 

 聖堂そばの路肩に止めたら、ちょっと覚悟を決めたような顔をして、マリーちゃんは軽トラから降りていった。

 うーむ、そんなにマジ顔で臨む案件なのか……。楽しそうで安心、と思ったけど、ちょっと心配になってきたなヒフミちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、あんなメンツで大丈夫か? とヒフミちゃんにモモトーク送ってみた所、たぶん大丈夫、と羽を握って力強くサムズアップするキモい鳥スタンプが送られてきた。……心配だ。

 

 ついでというか、先生から送られてきたという5人でわちゃわちゃしてる女子高生団子写真*5と、いつの間に撮ったのかアズサちゃんが勇者パース*6でペロロ棒構えている写真も送られてきた。

 

 ペロロ勇者と化したアズサちゃんは無表情ながら心なしフンスというか、ドヤ顔している気もする*7。なんだこれ……。

 でもまあ、可愛いですよね! とヒフミちゃんは楽しげだからまあいいか。

 

 せっかくなので色々聞いてみたが、コハたんも日々めっちゃ頑張ってるし、ハナコさんはなんだかんだみんなに色々教えてるらしい。痴女るのもたまにだとか。そう聞くと案外問題なさそうにも思える。いやちょっとでも痴女るのは問題だが、勉強できるなら目を瞑ろう。

 ハナコさんの件が色んな意味で不穏というか、どうなってんだろって感じだが。しかし俺にできることはなにもない。ともかくも頑張ってほしいものだ。

 

 百折不撓、と包帯巻き巻きでボロボロになりながらも羽ばたくペロロスタンプを押す。そしてセットの雲外蒼天、雲の上の青空を感涙とともに飛び回るペロロスタンプで追撃。

 四字熟語モモフレスタンプシリーズである。

 

 数秒経たずに感恩報謝、と全身を震わせ歓喜にむせぶ同シリーズのペロロスタンプが返ってくる。

 うん、まあ……大丈夫そうかな。

*1
こ ん な と こ ろ。補習授業部の合宿所はかなり郊外にあるが、それよりさらに郊外に果樹園および庭園部の部室はある。

*2
田舎感覚での近所。距離的にはまあまあ遠い。

*3
トリニティマークと庭園部のリンゴ太陽マークが側面についてちょっと特別感がある。気持ちだけ。

*4
ちなみに1年生のテストだけでなく、3年生の特別クラスなどを含めたすべてのテストで満点だったらしい。ちょっと意味がわからないレベルの才媛である。

*5
健全。

*6
サンライズ立ちとも。大きく足を広げ、半身で右足を前に出し、剣先を敵に向けてかまえる。この場合丸ノコカバーとして歪んだペロロ様の顔面が大写しになる構図。

*7
(ᓀ‸ᓂ)




水着コハルめっちゃ嬉しい……そして水着ハナコが振動属性とかいう。シュレディンガーの水着下着問題。あと水着アズサはこの前引いたし水着ヒフミさんも最近やっとかけら集まったんで水着補習授業部並べられそうなのもめっちゃ嬉しい。新イベとても楽しみですね。



まあそれはともかく、トラップでひどい目にあうマリーを助けるというハイパー地味原作改変回でした。それとワカナちゃんと補習部の顔合わせ。

ヒフミさんには懐いてる・コハたんをからかう・ハナコにセクハラされる・アズサと一緒にモモフレ……でわりと絡みやすい感じに。
ハナコのセクハラはたぶんそれなりの発動条件というか、お仕置きとか仲良しとかあると思われますが、今回はさっさと帰れ目的ということでワカナちゃんにも。

今更ですがおバカ路線を貫いて補習部叩き込まれてもそれはそれで良かったかもなー感。JKイチャイチャ路線でいくなら間違いなくこっちだった。

書き始める前はイチャイチャ路線あんま考えてなかったんですよね。ミカのことばっかで。感想でみて確かに女の子たちをもっとイチャつかせた方が心豊かになるなと、ヒフミさんセリナちゃんとの絡みを増やす方に路線変更しました。修正前は全体的にもっとあっさり目でした。

まあともかく補習授業部の人々との距離感はわりとストーリーラインに直結してくるので程々な感じに。そのためワカナちゃんは基本的に蚊帳の外。さてどうなる、というところです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。