トリニティ総合学園庭園部へようこそ! 作:一生ホームアローンマン
ハルナどうにかしろ問題の先回り回答みたいなつもりで書いたんですが、そもそも結局大戦争展開やめたしお中元交換で手打ち(?)したし敢えて触れる必要なかったっすね。
ギャグ描写の考察を突き詰めるようなもんでただのノイズだったかもしれません。
ゲヘナ関連はワカナちゃんの動機づけとして重要ではあるんですが、本題ではないのでほどよい距離感を保ちたい……。
「わーっ! 海ですよ、海! ようやく着きました。本物の海ですよアズサちゃん!」
「……うん、海だ」
数日後、ヒフミちゃんの運転する戦車で、俺たちは無為ヶ浜にやってきていた。キヴォトスでもまあまあ有名なリゾート地だ。近場にはなんかの史跡だとか古い町並みとか色々あって、じっくり観光するのも楽しそう。
今回は日帰りの予定だが、デカいホテルとかもあるし中々栄えてる感じ。人口密度の関係か日本の海と比べたら全然人がゴミのようだって感じじゃないのもプラスポイント。
そんな素敵な海を前にしテンション上げていこうとするヒフミちゃんに、やや微妙な感じでつぶやくアズサちゃん。
ちなみにコハたんは諸々の疲れが出たらしく夏風邪でダウン中。ハナコさんはシスターフッドの手伝いで抜けられないとかで両者欠席だ。前回やたらとセクハラされたのも自分は行けない腹いせ含みだったのかもしれない*1。
こんな事言うのもアレだが、補習授業部+俺みたいな微妙にアウェイな感じにならなかったのは良かったかも……。
……こんな時に俺一人遊んでて良いのかなあというのがあったので、先生からの誘いは一旦保留にしていた。普通に仕事もあったし。
ヒフミちゃんたちが遊びに行くのは、これまで散々大変な思いしてきたんだからお疲れ様会でいいとして、俺はどうなんだって感じ。
ミカ様は今も牢で不自由な……いや、わりと豪勢だったしその上ナギちゃん様に結構注文付けてたみたいだけど。まあともかくみんな色々大変な時期なのに。
そんなこと考えつつぽわぽわちゃんに相談した所、秒で作業のシフト書き換えられて参加の返事まで勝手に発信された。いつの間にやらヒフミちゃんとモモトーク交換していたらしい。女子ネットワーク……!
あっけにとられていると、さっさとお出かけの支度をしな、なんて言いながら陸上ちゃんが俺を部室から放り出す。ざ、雑! 俺の扱いが雑!
しかしまあ、ヒフミちゃんと一緒に遊びたいなあってのがずーっとあったのも確か。せっかくだから同期たちの心遣いに甘えることに。
エデン条約調印式が近づき、シスターフッド同様さらに忙しくしているセリナちゃんにめちゃくちゃ羨ましがられたりもしつつ、いざ海へということになった。
救護騎士団の団長さんは結局調印式が終わるまでは行方不明継続という話なので、セリナちゃんの団長代行もそこまで続くそうな。そのため半泣きのセリナちゃんを見捨てていくのは心が傷んだが、まあなんかお土産買って帰るので……。
ともかく、そんなこんなで俺も謎メンバーによる海水浴に参加していた。水着は去年プール行く時にヒフミちゃんたちと買ったやつ。
潜水服みてーなやつを買おうとした所、可愛くないと却下されたため、ハイネックのアロハな感じのビキニに落ち着いた。
1年たってわりとキツくなっていたが、調整したらなんとかギリ入ったのでまあよかろう。
ヒフミちゃんは……なんか去年と違うな。フリフリ大量で実に可愛らしい白ビキニ。透明の防水バッグにいつものキモい鳥グッズが忍ばされているのはご愛嬌だろうか。
そしてアズサちゃんはとにかくトロピカル。無表情にトロピカルな華やかビキニ。でっけえリボンにフリフリに、髪飾りや羽アクセまで水着に合わせたトロピカル。
本人の雰囲気に見合わず、びっくりするくらい浮かれているが、ヒフミちゃんが選んだんかな……。
「きへへ……ぐへへへへへ!!」
そして体に自信がないと着れないタイプのシンプルな黒ビキニをバッチリ着こなす、スタイルばつぎゅんの美人さん……。のはずなのだが表情と奇声でなんかの妖怪にしか見えねえツルギ先輩。
エッチなような、そうでないような……。コハたんの判定が待たれる。
「ふう、ようやく着きましたね」
最後に実はわりと顔を合わせる機会多いんだけどあんま話したことない、正実1年の対物ライフルで人撃つやべーやつことマシロちゃん。
おっぱいないけど鍛えて締まった体してるからか、妙にセクシーなフリフリ黒ビキニ。
マジでどういうメンツ……?
「けへへへへ……きひゃひゃひゃひゃ───!!!」
だからこええんだよぉ。まあ、海でテンション上がってるだけと思われるが……。
この人仕事中はクールだし、ハスミ先輩と一緒にいるとわりとツッコミに回るしで、中身がまともよりなのはわかってるんだけどさあ。
それはそれとして血に飢えたモンスターが獲物を前にして狂喜しているようにしか見えねえんだよなあ。
あんまり、っていうかツルギ先輩と全然親しくなさそうな補習授業部組はドン引きだ。
「ツルギも楽しそうだね。良かった」
「!?」
シンプルなサーフパンツにアロハなシャツを羽織った先生は、貴様のハラワタを喰らい尽くしてくれるわみたいな素敵スマイルを浮かべるツルギ先輩を見てうんうんと頷く。
こ、こいつ、できる……!
ヒフミちゃんたちはマジかよみたいな目で先生とツルギ先輩を見る。しかし、先生の判断は正しいだろう。
アズサちゃんはゲリラ屋の本能が当局と馴れ合うことを許さないのか、めちゃめちゃ正実組を警戒しているが今回普通にただのバカンスと思われる。
ハスミ先輩が出したミッションリストとかいうのも見たが、普通に夏の海遊びの定番みたいな感じだし。
しかしアズサちゃんだけじゃなくて、ヒフミちゃんも正実組にビビってるような雰囲気でややギクシャク。
こういうときはどうするべきか。去年の俺だったらオロオロしてただけ……というか今も知らない人いたらオロオロしてるだけだろうけど、今回は全員知り合いである。アズサちゃんとマシロちゃんは言うほど親しいというわけでもないが、両方脳天ぶち抜かれた仲である。
ならばやることは一つ、1年以上かけて鍛え上げられた女子高生仕草を見よ。
「ヒフミちゃんヒフミちゃん、いぇーい!」
「え? ワカナちゃん? ……ええと、いぇーい!」
特に意味もなくテンションぶち上げて、両手ハイタッチ、と見せかけてヒフミちゃんの開いた脇を掴んで高い高ーい!
俺がちっちゃいのでそんなに高くないが。
「ひゃあ!? あぁぁあぁぁぁあ~!?」
砂浜をダッシュしながらそのまま回転回転! 海へ向かってどっせーい!
発射点は低くともパワーのおかげか、思いの外飛距離と高さが出た。ドップラー効果の悲鳴をあげるヒフミちゃんは見事な放物線を描いて海に落ち、ばっしゃーん! と大きな水柱が上がる。
「む、まさかワカナも敵勢力だったのか……!?」
ツルギ先輩たちを威嚇していたアズサちゃんが驚愕の表情……大体無表情だが微妙に眉が跳ねた、を浮かべるのを見ながら一気に距離を詰める。
掴もうとすればなんか華麗な動きでさばかれ、逆に投げられそうになるが。
「むぅっ!?」
「わははははははは! 流石だといいたいが!! 甘いぞ!!!」
腕力任せに無理やりホールド解除。そのまま逆に両腕を掴んで振り回す。ジャイアントスイングの逆バージョンというか。
「むぅぅぅぅぅぅん!?」
「お前もいっけぇぇぇぇーっ!!!」
遠心力を利用したのが良かったのか、トロピカルアズサちゃんは無闇に羽をパタパタしながら立ち泳ぎしているヒフミちゃんの頭上を越えて着弾。さらに高く水飛沫が上がり、ヒフミちゃんが悲鳴をあげる。
回りすぎて頭くらくらしてきたが、次! しかしマシロちゃん追っかけて捕まえようと思ったら姿が見えない。
あれどこ行ったとキョロキョロしてるとこちらです、と下から声が。なんか頭上で手を組み、砂浜に仰向けに寝そべっている。
「できるだけ高く、遠くにお願いします」
「君ノリいいなあ!?」
正義実現委員会らしくクソ真面目で堅物なイメージだったのだが、まさかの投げ待ちである。しかしまあリクエストされたならそれに応えないわけにもいくまい。
両足を掴んで全力ジャイアントスイングからの射角調整。天までとどけとぶん投げれば、マジでアホみたいな放物線を描いてかっ飛んでいく。
あはははは!と大笑いしながら吹っ飛んで行くその姿はまさにキヴォトス人間砲弾。お楽しみいただけたならなによりです。
海上で合流していたヒフミちゃんアズサちゃんが、着弾したマシロちゃんの跳ね上げた滝のような海水に打たれている。
よし、いい仕事したな!
「けひ」
「ぇあ……マジすか」
腕で額の汗を拭き拭き、本格的に三半規管がやられてきた所に後ろを向けば、ツルギ先輩が両手を広げ、ハグ待ちのごときポーズで待ち構えている。
マジすか。マジか。とりあえず3人海にぶちこんでこの空気なんとかなれみたいな計画だったんだけど。流石にツルギ先輩投げんのこえーよ。
しかしいつもの怖い顔ではなく、なんとなく可愛げのある斜め顔でこちらを見つめるパイセンを無視するわけにもいかない。
……ええい、もう知らんぞ!
脇を掴んでリフトアップ、頭上でぐるっと180度回転ウルトラ飛行体勢。意図を察したのか、特に筋肉バキバキというわけでもないのにピタッとまっすぐ姿勢を維持してくれてる辺り流石だぁ。
助走距離を十分取って、砂浜を全力ダッシュ。そのまま背筋使ってスローイン、ツルギミサイルじゃあ!!!
「はっしゃぁっ!!!」
「きえええぇぇぇぇぇぇっっ!!!」
飛距離と高さはそこまでだったが、スピードは一番だったかもしれない。ヒフミちゃんアズサちゃんと立ち泳ぎしながら、ニッコニコでなにやら話しているマシロちゃんの方へかっ飛んでいく。
そしてちょっと横辺りに派手に着水。3人に大波がかかり、きゃーきゃー盛り上がる声が。
ヨシ!
しかしこうなるとまだターゲットは残っているな……。唐突な全部人力鳥人間コンテストをニコニコしながら見ていた先生さんの側に寄る。
毒を食らわば皿まで。ツルギ投げたらもう怖いもんなしである。ちょっと海と回転でおかしくなってるかもしれない。
「先生さん、脱ぎなっ!」
「え、えぇ……?」
私も……? と首を傾げる先生さんだが、意外と素直に上着を脱いだ。中々いい体してんな……。
まあともかく、背後に回ってお姫様抱っこスタイルで持ち上げる。
「そ、そういう感じなの!?」
「優しくするから安心しなぁ!!!」
頑丈なキヴォトス人と違って貧弱一般人な先生さんをぶん回したら、手足もげたりしそうだしな。波打ち際に寄って、腕力のみでぶん投げる。
ぅわぁぁぁと情けない悲鳴をあげて控えめな*2放物線を描く成人男性。着弾先にツルギ先輩たちが慌てて泳いでいった。
せっかくの海だしね。ぶち上げていこうじゃん。海上で先生の周りに集まる少女たちはもはやあんまりわだかまりも無さそうだ。投げた甲斐があったというもの。
旅の恥は掻き捨てと言うが、こういうときは恥を捨ててとんだりはねたり叫んだ方がめっちゃ楽しい。モモフレイベントで学んだ女子高生の真理であった。
まあ俺はプライベートじゃインドア派なので、のんびりさせてもらうがね……。先生さんの残した荷物をあさり、パラソルを立てビーチチェアを設置する。
な ぜ か いつの間にやら周囲に全然人がいなくなっていたので*3、貸切状態の砂浜を贅沢に使ったくつろぎスペース設置完了だ。
あとは冷たい飲み物やらなんやら準備したらかんぺき~。……そう思いながらでっかいクーラーボックスを探っていると、ひょいと脇に手を差し込まれて持ち上げられる。
「ひゅぃ?」
「ワカナちゃん……楽しい空と海の旅をありがとうございます。今度はワカナちゃんの番ですよぉ~?」
「お~ぅ……」
耳元でじっとりと囁かれるヒフミちゃんボイスは珍しくちょっとドスが利いている。ぽたりぽたりと肩に垂れてくる海水は、髪の毛ビショビショの証だろうか。うん、人間砲弾の着水とかで一番ダメージ受けたのは最初に投げられたヒフミちゃんだよね……。
先生さんを救出したらしいツルギ先輩も、ちょっと離れたとこで髪の毛を拭き合っている。かなりガチ目の乙女顔だ。たまに美少女になる時はあるけど、あそこまでのは初めて見たな……。
そしてアズサちゃんはむん顔でわきわきと手を動かしながら、浮いてる俺の足元に忍び寄る。
「帰ってきたらもう一度お願いしますね!」
見たことないくらいすっごいニコニコ笑顔で手を振りながら、狩りの獲物よろしく運搬される俺を見送るマシロちゃん。
人間砲弾そんなに気に入ったんだ……。こいつ相当変なやつだぜ。
「いくぞ、ヒフミ。いっせーの……」
「とぉぉぉぉぉ~!!!」
両手足を掴まれ数度往復の後、ブランコ式で勢いをつけてぶん投げられて、思いの外高くふわりと宙を舞う。くるりくるりゆっくりと横回転。
ドヤっとガッツポーズをするアズサちゃんが見える*4。なんか君、前見たときよりずいぶん表情豊かになった気がするね。やっぱデフォは無表情気味なんだけどさ。
くるり回って太陽に目を焼かれ、再び回ってヒフミちゃん。手をかざして日差しを避けながら、とびきりの笑顔で俺に手をふる。
ニヤッと笑って返して、最高点で重力に掴まれる。
ちょっとパタパタ抵抗してみたが、当然なすすべもなくそのまま急降下。ばっしゃーんと大きく飛沫を立てて、俺は波間に沈んだ。青く揺らめく太陽に向かってぷくぷくと泡を吐く。
海だー!
どうにか海から上がってバサバサして羽の水気を切ったり、マシロちゃんが満足するまで十数回バリエーションつけつつぶん投げたり、途中で混ざってきたヒフミちゃんアズサちゃんもぶん投げたり投げられたり。
ツルギ先輩も先生んとことこっち行ったり来たりしてて、俺を凄まじい高さまでぶん投げたり。
謎のテンションでゲラゲラ笑いながらしばし遊んだ。
「ヒフミ、海って楽しいな! ワカナ、ありがとう!」
「おー。でもまだまだ序の口だかんね。これは海に来たらとりあえずやる挨拶みたいなもんさ」
「なんと……奥が深いな、海は」
「海だけにね!」
しょーもないギャグは特に夏の日差しを和らげてくれることもなく、よく分からんという顔でスルーされた。ヒフミちゃんも苦笑い。
アズサちゃんは初めての海という話だから、もっともっと楽しんでもらわねえとな?
「って、違います! いえ、これはこれでいいんですけど……私達にはミッションがあるんです! それを達成していかないと……」
わたわたとバッグからメモ用紙を取り出す。
パステルカラーにポップなお菓子のイラストの可愛らしい柄、そしてやたらと達筆な文字列。ハスミ先輩が用意したらしいメモ用紙だ。
ちゃんとやらないと爪が、なんて呟いてるが正実をなんだと思ってるんだヒフミちゃん。
いやまあ名前とか評判とかツートップのビジュアルとかだいぶアレ*5だが……。
「ま、まずは砂のお城ですね……撮影は先生にお願いしますね。楽しそうな感じで写るようにお願いします」
任せて、と親指を立てる先生。いっつも生徒の写真撮ってるせいか腕がいいのでたしかに適任である。
砂遊び用のちっちゃいシャベルとバケツで、可愛らしい砂山を作り始めるヒフミちゃん。削ったり穴を開けたりしてそれっぽく整えていくが……。
「ヒフミちゃん、それじゃあまりに平凡じゃない?」
「え、えぇ!? ええと、確かに私は平凡ですが……」
いやそんな話はしてねえんだ。まあともかく、ちょっと離れたところでガッと砂地を掴んでひっぺがす。
砂浜でなければもっと一気にいけるんだが……。ちょっと湿ったところの砂をパワー任せに運んで積んで、あっという間に身の丈を超える砂の塊。
「こう、ドカッとでっかくさあ。雪まつりのアレみたいな、巨大ペロロ像作ろうぜ!」
「ぉ、ぅおぉぉぉ……! それは、とっても素敵ですね!!!」
しばし瞬き、砂浜にそびえ立つ巨大ペロロ像の姿が脳裏に浮かんだのだろう、ヒフミちゃんの目がキラキラーンと輝く。別にでかけりゃなんでも良かったが、思った以上に火がついたらしい。
せっかく人いねえしな。バエるものを作ろうじゃないか!
ということでペロロ像建立が決定し、即座に着工された。ヒフミちゃんの頭の中には既に完成図ができているらしく、テキパキと指示が飛ぶ。
先生に背中を押されてやってきたツルギ先輩も合流し、戦車の中に常備されてたスコップも取ってきてくれたので作業スピードは更にドン。猛スピードでドでかい砂の山ができていく。
それを上から掘る……3Dプリンターの逆再生みたいな感じでヒフミちゃんがザクザクとペロロの姿を削り出す。
砂の城という当初目標からは完全に外れているが、中々の物ができそうだ!
「おぉ……これは中々、とんでもねえな……」
「自分の手でペロロ様を作る、そういうのもあったんですね……!」
「……イイ」
全長5メートルくらい、思ったよりド迫力のペロロ像がぬーんと降臨していた。建材が建材なのでポーズは比較的大人しめだが、とにかくデカさは偉大だ。
俺とツルギ先輩の人間重機パワーと、一切の迷いなくザクザクペロロ様を彫刻していくヒフミちゃんの技量が合わさり、ごく短時間での落成である。
ニッコニコのヒフミちゃんを挟んで像の前で記念撮影。ぴーすぴーす。
今更ながら意味不明だし全然城でもないが、いい写真が撮れたと先生は笑っていたので大丈夫だろう。
そして気づけばちょっと離れた所にも巨大な砂の……なんだろう。城塞? いや、あれは万里の長城……! かつて俺が求めたものがそこにあった。砂製だけど。
高くて長い砂の壁の上で、こちらに気づいたアズサちゃんとマシロちゃんが手を振っている。
どうやらあっちはあっちで楽しくやっていたらしい。最初は正実ということでマシロちゃんを警戒していたアズサちゃんだったが、波長が合ったのだろうか。すっかり距離が近い。
あっちの記念撮影もした後、ペロロ像の前に仁王立ちで長城を指差すヒフミちゃんVS城壁に依って大怪獣を迎え撃つ哀れな人間たち、みたいな写真も撮ってもらった。
撮影中はノリノリで薙ぎ払えとか言ってたヒフミちゃんだが、正気に戻ったのか恥ずかしそうに頬を赤くしている。うーん可愛い。
一通り砂遊びも楽しみ、さて次は何をしようか……と思ったところで銃声が。
キヴォトスじゃ別に珍しいことじゃないが、その直後に、ずしんと、地響きを立ててペロロ像の羽が片方崩れ落ちる。
「あぁあぁぁぁぁ~~~!? ぺ、ペロロ様がっ!?」
ヒフミちゃんの悲鳴とともに下手人らしき水着のチンピラたちがゾロゾロとやってくる。こんなところも治安が悪いらしい。流石キヴォトスよ……。
「あはははははは! 誰の許可もらってここで砂遊びなんかやってるわけ? あぁん? この無為が浜は昨日からあたしらのもんなんだけど!」
「砂あそびっつうか軽い土木工事レベルで意味わかんねえんだけど……まあいいや、ともかくショバ代よこせや~~~!!!」
グラサンビキニの女子高生集団が観光地のヤクザみたいなことしてる……。それはともかくせっかくの力作をよくも。許さんぞ。
「てめえらぁ……っ!?」
「おいゴル……ぁ!?」
チンピラたちをぶちのめそうとそちらに体を向けた俺とツルギ先輩の背を、凄まじい覇気が貫く。思わずびくりと振り向けば、見たことないような深く静かな怒りを湛えたヒフミちゃんの姿。
「なんてことを……なんてことを……! 絶対に許しません! カモン、クルセイダーちゃん!!!」
ヒフミちゃんが叫び、轟音とともに護岸を勢いよく戦車が乗り越えてくる。来るときにも乗ってきたうちのクラスの備品、クルセイダー戦車だ。いや、え? 誰が乗ってんのあれ?
砂を派手に撒き散らしながら横付けした戦車に飛び乗るヒフミちゃん。そのままチンピラ軍団にうぉぉぉ~~~と砲撃しながら突っ込んでいく。
ん? んんん? 俺の横には同じくあっけにとられるツルギ先輩。後方には特に疑問もないようで、憤慨しながらも城壁の上から援護射撃をしようとしているスナイパーコンビ。
先生はちょっと後ろでタブレットを起動して、戦闘指揮の準備をしている*6。クルセイダーちゃんは華麗にドリフトキメたりしつつ的確に砲撃、チンピラ軍団を翻弄している。
だ、誰ぇ……? 誰が動かしてたのあの戦車……*7。
「……援護するぞ」
「あ、うす! 行きましょう!」
必要あるかは分からんが、と首を傾げるパイセンとともに突撃。
既にチンピラ軍団は大方蹴散らされて潰走状態だったが、とりあえずキラキラファイアー攻撃……と思ったらなんかねっとり炎離れが悪い。
いつもはもっとサラサラしてる感じなんだけどなあ。これも衣装効果とかいうやつだろうか。適当に溜めてぶん回したら巨大な炎の剣みたいのが出た。先生の指揮も敵の位置とか全部わかるし最大限巻き込めるタイミングとか教えてくれるし、なにこれ楽しい……!
「あぁ、ペロロ様……こんな痛ましい姿に」
「ばにたす、ばにたーたむ……」
最初の銃撃と、砂浜での激戦(?)の結果、ペロロ像も万里の長城も半壊していた。悲しいなあ。何が悲しいってあの手のものは帰り際にドロップキックでぶっ壊すのがお約束だが、それができないことだ。
そこまでやって海遊びだと思ってるので……。というか海でも山でも原状復帰は義務だ。流石にあのサイズの建造物は残して帰れん。ヒフミちゃんは一生保存しておこうみたいなテンションだったけど。
「全ては虚しい。だけど、それでも抗い、戦い続けることにきっと意味はある。次は砂にセメントを混ぜて鉄筋も入れて丈夫な砂のペロロ像とスカルマン像を作ろう、ヒフミ」
「ええ、やはり防御力が大事ですからね。その時は私もお手伝いしますよ」
ペロロ像の前で崩れ落ち、静かに涙するヒフミちゃん。そして慰めながら素っ頓狂なことを言っているスナイパー組。
それはもはや砂の像じゃないのでは、と冷静にツッコミを入れている先生だが、パシャパシャ撮影は継続中。戦闘指揮も意味分からんくらいすごかったけど、まともなのかそうじゃないのかよくわからん人だ……。
「海、夏……友情、青春。青春……?」
そしてパイセンはしきりに首を傾げている。いつも斜めだから分かりづらいが。自分で提案しといてなんだけど、ペロロ像づくりの時点で意味不明だもんね……。
まあでもヒフミちゃんは最高の笑顔を見せてくれたし、パイセンもわりと普通に楽しそうだったから、選択ミスではなかったと思いたい。
まあ、小説みたいにキレイなのばっかが青春じゃないっすよ。アホみたいだったり意味わかんなかったり、ダメだったり失敗したり上手くいかなかったり、それでもそうだ。
あれも青春、これも青春。きっとそう。
ぐりーんと逆方向に首を傾げてしばし、ツルギ先輩は納得したように一つ頷いた。
ということで海だー!回前編でした。
ワカナちゃんはロリでおっぱいデカくてやや小さめの水着というかなり趣味を盛ったビジュアルになっております。シンプルめに可愛いヒフミさんとトロピカルなアズサの間に置いて違和感ない感じのデザインに仕上がりました(脳内)。
セリナちゃんも出そうかと思ったんですが元からの4人+1の時点でもはや扱いきれないので断念。ちょうど団長もいないのでお留守番です。
こういうの書いてると楽しいですが地味に自傷ダメージが入りますね。この夏俺どこにも……ルビコン3しか行ってない……。