トリニティ総合学園庭園部へようこそ!   作:一生ホームアローンマン

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4話 ガンショップに行こう

 トリニティ自治区はくっそ広い。具体的にどんなもんかはちょっとわかんないけど、端から端まで移動するとなればそれなりに手間がかかるくらいにはでかい。

 

 中心部にはトリニティ総合学園……ほんとはその中でも大聖堂が中心らしいが、ともかく普段通ってる学校施設がある辺りが中心部で、俺が寝起きしている寮はいうなれば辺境の過疎地方面だ。これから行く市街地方向とは学校挟んで反対側になる。

 

 そんな不便な地形に根っから出不精なのも相まって、近所にちょろっとあるコンビニとか、学内の購買部とかで買い物全部済ましていた。正直別にそれで困らなかったし……。そんなわけでトリニティの栄えてる地域には全然行ったことがないのである。

 

 最近は外に出てる時間が長いが、バリバリインドア派の人間だし、異世界ショッピングモールへのドキドキワクワクよりは知らないお外に出かけていく不安のドキドキに心臓を高鳴らせつつ、おっかなびっくり近場の駅から電車に乗り込んだ。

 

 ガタンゴトンと電車に揺られ……いや、性能いいのか電車は揺れも音もなくすーっと進んでいるのだが。古風でエレガントな雰囲気が強いトリニティだがなんだかんだで近未来キヴォトス、地味なところで現世より良くなってるのを感じることがままある。

 

 この場合電車の擬音はどうなってしまうのだろう。ボタンを押す擬音もスマホの普及でぽちぽちからタップタップに変わったらしいし。隅っこの席で座って窓の外を流れる景色を眺めつつ、そんなどうでもいいことを考えて時間を潰す。

 

 同じように市街に向かうらしいトリニティ生や、見慣れない制服の生徒もちらほら。みんな何人かの集団できゃいきゃいしている。そういうのが近くにいると、一人は寂しいなあとかそういうのがじわじわ忍び寄ってくる。

 

 基本ずっと一人だったはずなのだが、近頃ちょっと集団行動を続けていただけでこういうのをどうやってやり過ごしていたか忘れてしまったのだろうか。それがいいやら悪いやら。

 

 なんとなくそわそわしながら駅が1つ過ぎ2つ過ぎ……急行止まるはずもない過疎駅スタートだったのでゆっくり鈍行だ。それなりに時間をかけて目的地に到着した。改札を出て駅前の待ち合わせスポットでお上りさん丸出しにキョロキョロしていると、すぐに部長が見つけてくれた。デートのごとく駅前で待ち合わせである。

 

「やっほワカナちゃん。それじゃ行こうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 部長に連れられ商業地区を散策。学生向けで女子しかいないような所のせいか見慣れない景色ばかりで、なんとなく居づらい。チェーン店の類も見たことないのばっかり。カイザーなんちゃら*1みたいなのが比較的目につくだろうか。

 

 知ってるのは水色看板が目印のコンビニ、エンジェル24*2くらい。異世界ショッピングモールの景色はやはり違和感と不安が勝った。そんな慣れてない感を出しまくっていたせいか、普段からほんわかニコニコ部長の笑顔が深まりあっちこっちを指しながら教えてくれる。

 

 

 

 

 

 歩き回る内にいつのまにやら手を握られ、半分引きずられるようだ。頭一つ以上の身長差が憎い。姉妹どころか親子かな? なレベル。周囲の学生や店員も微笑ましく見ている気がする。ああまたしても羞恥プレイ。ロリキャラ尊厳を無視されがち。

 

 しかしまあその甲斐あってか、服飾化粧品ファンシーショップに文房具雑貨、食料品医薬品電化製品、大体行きそうな店……というかトリニティ女子が行くようなとこは網羅する勢いだ。軽く買い物しつつなんとなく把握した。

 

 いやまあいらねえだろコレみたいなのも大量にあったけど。ヒラヒラのいわゆるゴシックロリータ専門店とか。部長やめろ、高い服買い与えようとするな。怪しいおじさん構文もやめろ。よくわかんねえキモい鳥のでっかいぬいぐるみもいらねえんだ! 

 

「ぶーぶー……」

「いやほんといらないんで……」

 

 執拗に着せ替え人形にしようとする部長をどうにかなだめて、ようやく本日の目的地に到着。ガンショップである。予想に反してやたらとデカい店構え。エアガンとか売ってるやつみたいな狭くてちっちゃい店のイメージだったが、普通に大型スーパーくらいある。そして無闇にポップでキュート。

 

 まあ女の子が一人一丁銃持ってるのが当たり前の世界だし、そういう需要に合わせているのだろう。地下に射撃場があって試射もできるそうな。せっかくだししっかり選びたい所だ。

 

「わかったよ、また今度ね。それじゃワカナちゃん銃買うってことだけどどんなのがいいの?」

「なんかコレより強そうなのを」

 

 無課金初期装備おもちゃハンドガンを取り出す。女児向け玩具の風格があるが一応撃てることは撃てる。でもちっちゃい手のひらにジャストフィットで頼りなさマックス。たぶんかなり至近距離じゃないと当たらないんじゃなかろうか。装弾数も少ないし。

 

 ミリタリー系の趣味はないので銃の種類みたいなのはさっぱりわからないが、ダラララっと大量の弾をばらまいて敵集団をなぎ倒すとか、遠くからヘッドショット一発で仕留めてビューティホー……みたいなのがかっこよくていいのではないかと思う。幸いパワーはあるのでデカくて重い銃も装備できるだろう。

 

「ふーむ、じゃあとりあえずいろいろ試してみようか」

 

 部長はカゴにざかざか大量の銃器を入れ、店員に断って射撃場に入る。レーンの先に人型の的がある普通のやつはいいとして、爆発物を試せる部屋だとかカーボン盾持ってドローンに射たれてみようコーナーとかイカれてるとしか思えないようなゾーンもあるが、とりあえず普通のとこで色々試してみることに。

 

 ひとまずまともに撃ったことほぼない初期装備ハンドガンをパンパンやってみる。かなり近くの的にすらカスリもしない。やっぱだめだ! 最強課金装備をくれ! 

 

 一旦放り投げたハンドガンをいそいそとしまいつつ、まずはアサルトライフルを試してみることに。これが一番スタンダードな銃らしい。タタタタタっと小気味良い音。発射の衝撃も腕力任せで特に問題なく押さえつけられる。近めの的に……カスリもしてないっすね。

 

 んんんんん? こんなに撃って当たらないのおかしくない? ややムキになりつつバンバン撃つがなぜか当たらない。

 

「うーん、シンプルに下手なのもあるけど、適性がないのかもねえ。合う合わないって大きいから、大体の子は自分に合った種類の銃しか使わないし*3

 

 シンプルヘタクソ。さらっと言葉のナイフで刺されたが、素直に一通り試してみる。サブマシンガン、マシンガンは駄目。スナイパーライフル全然ダメ、ショットガン、的の端っこにちょっと当たった。ロケラングレランは的の後方で大爆発。火炎放射器……。

 

「汚物は消毒だぁ~!!!」

 

 的はなんとか炎上したが火の粉で前髪が焦げてちりちりになった。やめてくれ部長、火炎放射器と言えばコレだろ? 何やってんだこいつみたいな苦笑いはやめてくれ俺に効く。

 

「えーと、ショットガンが一番向いてるのかな。それとも火炎放射器、使ってみる?」

「やめときます」

 

 真顔で即答。あんなもん使ってたらそのうち自分が火達磨になりそうだ。というかみんなが銃ばんばん撃ってる横で火炎放射器ってなんだよ。完全にネタ枠だろ*4。このキヴォトスはほとんど世紀末だが俺はモヒカンじゃない。

 

 というわけで俺はショットガンを装備したぞ。やったぁ。

 

 頼りない初期装備と違う心地よい重量になんだか感動。装弾数はショットガンだけあって少なめだが、ばぁっと弾が広がるのでとにかく当てやすい。ノーコン判明した俺でも安心だ。何度か試したら近くの的ならいい感じに破壊できるようになった。

 

「よさそうだね。それじゃ銃種はショットガンとして、どれにするか決めようか。重くても問題ないだろうし、見た目もある程度カスタムできるからフィーリングで決めちゃっていいと思うけど」

 

 一旦射撃場から店内に戻り、ショットガンの棚の前を右往左往しながらうんうん唸る。フィーリングと言われると世紀末な感じの水平2連式とかにもちょっと惹かれる気がするが、これもどう考えてもネタ枠だ。2発しか撃てないってなんやねん。

 

 強そう、使いやすそう、みたいな感じのをいくつか見繕ってまた射撃場へ。とりあえずバカスカ撃ってみるが違いがあんま分からない。決めかねて結局カッコいいやつを選んだ。ショットガンって言ったらこういう感じだよなみたいな。

 

「それじゃ最後はカスタムだね。自分でデコってもいいけどパーツごとに色変えてもらったり、いい感じに装飾してもらったりできるから、注文してやってもらうのがいいかな」

「なるほど……」

 

 今更ながらにセリナちゃんが言ってたことがわかってくる。これからずーっと肌身離さず持つものがいい感じならテンション上がるのも分かるというもの。逆に変なのにしちゃうと折に触れて落ち込むことになるかもしれない。重要な選択だ。

 

 注文用紙とペンを手にして固まる。マイ銃はかなり個性出していくポイントらしく、キヴォトスJKとしては絶対に手を抜けないという。しかし銃のデザインと言われてもさっぱりわからない。

 

 なんとなく思いつくままに書いてみるとなんかにょろにょろしょぼくれたヘビみたいのが銃身に這っていた。恒例のお土産、剣に巻き付くドラゴン的な。しかし絵心がなさすぎる。それに完コピできてたとしても酷い。絶望的センス。

 

「……まあアレだったら色変えたりするだけでもいいんだけど。例えば私のはこんな感じで」

 

 にょろにょろを抱えて停止した俺を見かねたのか、部長は自分の銃を見せてくれる。レトロな感じのスナイパーライフル。金属部分には植物の蔦が絡まるような彫刻がされており、なにかの芸術品のようだ。ストックには小さくリンゴと太陽の庭園部のマーク。主張しすぎず、溶け合うように存在していた。お、オシャレ上級者……。

 

 恐れ慄いた俺は紙とペンをすっと部長に差し出し、頭を下げる。できないことはできる人に任せるのが一番なのだ。

 

「うーん、自分でやるのがいいと思うんだけど、まあいいか。……まずはそうだね。ワカナちゃんの好きな物とかをモチーフにしてみようか」

 

 好きな物……わかんねえ。なんだろう。俺は何が好きなんだ? マグロとか焼肉とか? いやそんな食いしん坊バンザイデザインの銃は嫌だ。最初に思い浮かんだのはドラゴンだったが、男子小学生の裁縫箱みたいになること請け合いなので止めておきたい。

 

 またも停止した俺を見て諦めたのか、サラサラと部長はいくつかの仮デザインを描き上げる。翼を広げた鷲、吠えるライオン、体を丸めて眠る牛、夜空に輝く一つの星。

 

「えっとね、キミを見てなんとなーくイメージした感じ。どう?」

「すげー……」

 

 しばしすげえボットになった俺はそれぞれを眺め回す。銃身の配色、絵柄の配置、どれも素敵で、だからこそふと思う。俺をイメージしたとは? 

 

 鷲は分かる、羽見たまんまだ。俺を見てパッと見で思うのは羽デケえなだろう。小さめボディに対してちょっと比率おかしいんじゃねえかって感じに羽デカいのだ。ビジュアルは気に入ってるけど日常生活では死ぬほど邪魔。

 

 ライオンもまあ、ややボサ金髪が風に吹かれて強風JRPG主人公頭になることもままあるからそれだろうか。きちんと手入れしたほうがいいですよとセリナちゃんに言われたり、シャンプーやコンディショナーの選び方にブラッシングとかドライヤーの使い方なんかをヒフミちゃんが教えてくれたりするのだが、めんどくさくて仕方ねえんだ。

 

 ヒフミちゃんの艶々クリームイエローの綺麗な髪と比べると、同じ金髪系でもくすんでボサッてるのがよくわかる。しかしめんどいものはめんどいので自然乾燥じゃいかんのかと言ったらめちゃめちゃ怒られた。ひん。……まあそれはひとまずおいておこう。ドライヤーとかヘアケア用品はさっきまとめて買ったしな。

 

 そして牛さん、角あるんですけどコレは……TSバレ!? ギョッとして部長を見るが不思議そうに首を傾げるのみ。いや、うん、そうだよね流石に意味分かんねえよ、読心能力者レベルでしょそんなん。パワーあるからとかそんな感じですかね。つーかよく考えたら牛さん雌雄どっちも角あるわ。

 

 デザインとしては鷲、ライオンの勇ましい感じと比べたらのんびりした可愛い感じ。好き嫌いで言ったらカッコいい方が好きだが、自分のイメージと言われるとこっちの方かもしれない。

 

 そして最後の星は……なんだろう。さっぱりわからん。でもパッと見ですごく惹かれる感じがある。シンプルに美しいし黒ベースの全体的な印象はとてもクールでいい感じ。動物さんシリーズと比べてどんな服にもあわせられそうなのもいいな。……うーん、どうしようかな。

 

 悩み悩んですげーボットからフリーズロリになった俺を、部長は特に急かすこともなく見守ってくれていた。

 

*1
カイザーコーポレーション系列。カ○ジの帝愛みたいな大企業グループ。金融や建設、軍事を中心に多角経営、表向きは普通の企業だが後ろ暗い犯罪にも手を染めている。近年はトリニティ自治区にも進出中。

*2
キヴォトスで有力なコンビニチェーン店。ゲームプレイヤーの拠点であるシャーレビルの1階にも入っており、バイトのソラちゃんはファンアートの叡智絵率がやたら高いことで有名。

*3
キヴォトス女子は銃にこだわりがあり、マイ銃以外はあまり使わない。爆発物などのサブウェポンはわりと容赦なく使う。

*4
温泉開発部のメグや敵モブが使うが割と普通に強い。




銃に詳しくないので悩み悩んだ挙げ句ぼかすことに。ひとまずブローニング・オート5を想定。ライフルっぽい見た目のやつがやっぱカッコイイですね。あと他キャラと被ってないやつということで。
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