トリニティ総合学園庭園部へようこそ! 作:一生ホームアローンマン
部屋を出ると、もう暗い時間らしかった。窓の外はすっかり日が落ち、光度控えめの灯りが廊下を照らしている。
そして周囲の部屋の扉がバキバキだったりそこかしこの壁にでっかい穴があいてたり、戦争でもしたのかな? という有様だった。
ミカ様が装備を探すためにやったのだろうが、とんでもねえな……。
いやまあ俺だってやろうと思えばできるだろうけど素手では無理かな流石に。いやいけるか? その辺の壁をゴンゴン叩いてみる。
おっとそんなことはどうでもいいんだ、俺も装備を探さないと。
ミカ様も目的は同じだったわけなのだからわかりやすい足跡をたどることに。穴があいてる方へしばらくうろうろ進んでいけば、扉がこじ開けられた倉庫のような部屋があった。
全体的に埃っぽくなんだかよく分からん物もごろごろ転がっていたが、手前の辺りにはちゃんと俺の装備が置かれていた。ショットガンのボディに輝く星が、暗い中でもよく見える。
思えば、部長との出会いが
居場所がある。帰る場所があると思えるのは本当にありがたく、嬉しいことだ。心細くなったときにはいつも背中を押してもらえる。
ただまあ、俺のやったこと大概ろくでもないというか、庭園部にとったら俺よりもっといい人がいたんじゃないかとも思う。もっとなんでもちゃんとできて、賢くて……。部長は時々妙に勘が鋭いというか、急に変なこと言い出す事があったけれど、俺なんかに何を見ていたのだろうか。
考えてみれば騒ぎの最中ずーっと地下にいたし、さっきまでほぼ寝っぱなしだったから部活の方の様子はさっぱりわかんないんだよなあ。果樹園とか無事なんだろうか。混乱に紛れて略奪とかされてないか心配……いやトリニティ全体がめちゃくちゃだったんなら流石にもっと金品の類を狙うか?
まあ部員の子たちが普通にお見舞いに来てくれてたみたいだし、そうそう変なことにはなってないと思うが……落ち着いたら顔出さないとなあ。
よろしく頼むと言われて、その信頼に応えられていない事実にちょっと凹む。……でも、まあ、うん。そういうのも後だ後。
ちゃんとできてないわりに甘えっぱなしで、それでも許してくれて。うちの子たちには本当に頭が上がらない。
倉庫にはベルトや弾薬もまとめて置かれていたので手早く身につける。部長は大概スパルタだったが、パワーとスタミナ以外はダメダメで何をするにも手際が悪かった俺を、それでも良いんだと笑ってくれた。
ショットガンの星をしばし見つめて、腰後ろにマウント。暗闇の中でも道に迷わないようにと描いてくれた、この明るい星を目指して。目を塞がなければそこにあるのだ。だから、止まらずに進めばきっとたどり着ける。
ダメならダメでもダメなりに、為すべきことを為さねばならない。
隣にドンと立てかけられていた異様な存在感を放つ回転ノコギリも手に取る。
存在感を放っているのは回転ノコギリというよりはペロロ様のプリチーフェイスなのだが。細切れになった上、焼けて灰になって風に吹かれて消えたはずのキモい鳥が復活していた。こいつ、自己再生を……。
一瞬じゅくじゅく蠢きながら復活をとげる鳥の姿を想像したが、まあそんなわけはないのである。
たぶんヒフミちゃんが新しいのを作ってくれたのだろう。
楽園を守護するために、天使ケルビムに与えられた回る炎の剣。こいつが俺のもとに来た意味はなんなのだろうか。クソ親父が言うには偶然、あるいは運命。部長はビビッと来たなんて言っていたか。
下手に大きな力を得てしまったからこそ、多くを望みすぎて失敗して、失望して、そんなことばっかりだったようにも思う。でももう、柄を握る手は吸い付くように、体の一部のようで。
……いやまあ、キモい鳥とにらめっこしながら真面目な事考えてもしまらねえな。ペロロカバーに触れてみると、明らかに前よりいい生地な感じがする。
ペロッとめくってみれば、タグには防炎カーテンとか用の燃えにくい生地だと書いてある。シンプルに厚くて丈夫そうでもあるし、なんか奮発されてしまったようだ。
前のペロロエコバッグよりサイズもぴったりになってるし、内側の刃が当たる所が革で補強されているから雑に扱っても破けたりすることはないだろう。
カバーとして付け外しもしやすいような位置にスナップボタンが付けられ、簡単に留められるようになっている。
おまけにおでこの所……被ったときにちょうど目に当たる所には視界確保だろうか、小さな穴が空いていた。
こいつをぱっと外して上半身に被れば一瞬で覆面ペロロ強盗の出来上がりというわけか。なるほど、ようできちょる。
……いや、被らねえよ。なんでだよヒフミちゃん。どういう状況を想定してるんだ? 急に顔隠さなきゃいけなくなることある?
犯罪者仕様の件はなにかの間違いだということにして、丸ノコくんを背中のバンドで固定し背負った。
ともかく準備は完了だ。耳をすませば、遠くからバタバタと騒がしく人が動いている気配がしている。ミカ様の脱獄騒ぎで人が集まってきたのだろうか。
周囲を捜索しているのかこちらに来る様子はないが、グズグズしている暇はなさそうだ。さっさと離れるべきだろう。廊下の窓をガラッと開けて飛び出して、アリウス自治区に向かった。
「えぇ……何があったのこれ」
アリウス自治区へ向かう道、廃棄された地下道にやってきたのだが……死屍累々の有様というか、なんだか見覚えのあるガスマスク集団があちらこちらにバタバタ倒れていた。
普通に銃撃で倒されてるのも多いが、近くの壁ぶち抜きで奇襲かけられました、みたいなバトル漫画かなんかでしか見ないような戦闘痕もちょこちょこあって、とりあえずしっかり追えてることは確信する。
まあ、距離詰めてぶちのめすのに壁抜きって実際有効なんだけどね。ツルギパイセンが演習でよくやってるから俺もなんとなくセオリー覚えたし。ただ見た目が果てしなくアレというか、完全に悪役になっちゃうというか。パニック映画のモンスターなんだよなあ。
やってる最中は楽しいけど、一般正義実現委員会の子に恐怖と尊敬入り混じりみたいな目で見られることがあるのはちょっと複雑……。
できたての穴をくぐってショートカットしたりもしつつ道を進んでいくと、統制が乱され何もできないまま全滅したような集団がいくつも転がっている。ガスマスクで隠れて分からないが、めくってみればたぶん恐怖の表情で固まっていることだろう。
迷えば、敗れる。怖気づくと人は死ぬ。戦におけるメンタルの重要性は色んなゲームと正実での訓練で体に刻み込まれたが、それが目に見えるようだ。
いやまあ倒れてるガスマスクたちは全員ちゃんと息してるけど。大体気絶してるか、痛みに呻きながら瓦礫の陰に隠れている。たまーに攻撃してくる根性あるやつもいるが、軽く炙れば即ぶっ倒れるくらいの消耗ぶりだ。
ミカ様の短機関銃や隕石や宇宙爆発や素手壁破りの跡……特徴ありすぎる戦闘痕でもなければ、ガスマスク集団の武器の跡でもない戦闘痕もいくらか見つかる。たぶんミッちゃんの武器*1だろうか。なんかすげーゴツいの持ってたし。そしてそのアリウススクワッドの面々がガスマスクに混じって倒れている、なんてことはない。
キレたミカ様が無差別にやっちまってるとか、リーダーちゃん達が早くも……ってこともないようでちょっと安心。
ミカ様とスクワッドで交戦自体はしてる感じだが……状況が少し掴めんな。でも、戦闘で多少なり時間をかけながら進んでいるようだから急げば追いつけるはず。
古びた地下道のような部分から天然の洞窟部分へ。さらにその先の遺跡みたいなとこ……カタコンベ*2だっけ? を抜ければアリウス自治区だ。
「迷ったーっ!!!」
嘘でしょ? マジかよ。この状況で、迷子?
道すがらゴロゴロぶっ倒れた金髪ガスマスクたちを、ヘンゼルとグレーテルのパンくずよろしく道標として辿っていたのだが、そいつら見かけなくなったなあと思ったらいつの間にか道を見失っていた。
そりゃあ記憶力にそこまで自信はないしさあ、ちょっと1回連れてってもらっただけの場所だから怪しいかもなーとか思わないでもなかったけどさあ。
この、緊急事態じゃん! なんとかなると思うじゃん! 潜在能力大覚醒するタイミングじゃん!
あっちへうろうろこっちへうろうろ、いつの間にやら現在地すら不明。似たような景色ばかりでもはや何もわからない。
ちょっと前まではあー見覚えあるある正しい道進んでるみたいな感じだったのだが、錯覚だったようだ。
「……あれ、これ不味くね?」
ミカ様をぶちのめしに行くとか、リーダーちゃんを助けに行くとか、遥かそれ以前の問題である。
食料はお菓子がいくらかエプロンのポケットに入ってるくらい。最悪遭難して死ぬのでは?
マズイマズイマズイ……焦りに身を任せてダッシュするがそんなことで事態が好転するはずもなく、同じところをぐるぐる回っているような気すらする。
どうする、いっそ壁ぶち抜いてひたすら直進するか? うぉぉん俺は人間シールドマシン*3だ! ……やるか? マジで。方角わからんし最悪生き埋めだがワンチャンに賭けるしかないか?
お目々グルグルで血迷いかけ、背中のペロロ棒に手をかけたところ、なんとなーくこっちだよーみたいな気配がする。
いやなんだそれは。ホイミン*4か? ホイミンがいるのかこのダンジョンは? カタコンベと言うだけあってお墓っぽいのやら人骨っぽい何かやら転がっててマジでダンジョンっぽいが、モンスターまで?
立ち止まり様子を見ていると、なんとなーくちょいちょいおでこを突かれているようなむず痒い感覚。
そしてまたこっちだよーというよく分からん感じの呼び声、物理的なアレではなく、こいつ脳内に直接……という感じなのだが。
明らかに怪しいが、このまま洞窟の中をグルグルするのも一か八かで直線番長になるのもそれ以下の選択肢だろう。誘われるままそちらに向かってみることにする。
蟻の巣みたいに枝分かれする洞窟を、こっちだそっちじゃないよの声に従い進んでいくと、なんとなく他より整ってるようなとこに出てきた。おお、確かここをさらに進めばアリウスに着くはず……。
「あぁ?」
崩れかけた柱の陰になんかビカビカ赤く光ってるのが居る。
ツボ……というかデカいソウルジェムというか、一抱えくらいある大きさの怪しいなんかである。なにこれ……。
その怪しいツボから、そろそろとこちらに手を伸ばすような気配。
比喩的なものであってなんとも説明しづらいのだが、精神的なものというか。頭の裏側にそっと触れようとしていると言うか。なんとなく覚えのある感覚。
「……あぁっ! てめぇ!!!」
思い出し、丸ノコくんを抜きながら叫べば、ピィと泣いてツボはぴょんぴょん跳ねて瓦礫の隙間に隠れる。
精神の同調、妹ちゃん……妖精みたいなあいつの気配だった。今はツボ(?)に入っているらしい。
今更どの面下げて出てきたというのか。ロリってた時はそれこそ妹……だかなんだかわからんけど、とにかく身内という感覚があったが、今となっては洗脳かましてくるただの不思議生物だ。
赤やら紫やら青やら黄色やらビカビカ光が瓦礫の裏から漏れていて、欠片も隠れられていない。
丸ノコくんでまるごと粉砕して焼き尽くしてやろうか。あの光る玉が可燃物なのかは知らないが少しはすっとする……。
ツボがちらっとこちらを覗くように横腹を見せている。こっそり様子をうかがうような動き。赤・黄色・紫、不安に揺れるような光は、またこちらに“手”を伸ばしてきた。
「……」
以前は問答無用というか、クソ親父が何かしていたのか逆らいようのない感じだったが、今は気合を入れればバシッと簡単に振り払ってやることもできそうだ。
……でも、指先だけで触れるようなつもりで、こちらからも手を伸ばす。
ごめんね、怒らないで、嫌いにならないで。
そんなあれこれが混ざりあったものが伝わってくる。
「はぁ……別に、怒ってないよ」
思えばクソ親父の被害者仲間というか、同じバケモノで、俺より生まれたてで……まあ、妹ちゃんだ。
さっきまで道案内してくれてたのもこいつだろうし、また乗っ取ろうとか合体しようとかそういう気もないみたいだし。こんな心をぶつけられたら嫌いになれない。
ペロロ棒を背中に戻し、緑と黄色にチカチカ光るツボをぺしぺしと叩く。なんとなく喜んでいるようだ。
確かこいつは破壊の権化みたいな存在だと言われてたような気がする。恐怖だかなんだか……合体したときも、そんな衝動が溢れてきていた。今はなんとも無邪気な様子だが。
「ま、なんでもいいか。お互い生まれちまった以上、どうにか生きてくしかないもんな」
道はこっちでいいんだよなと尋ねれば、なんとなくサムズアップするような気配。親指というか手も足もないけども、あってるってことだろう。
先を急がねばと、ぴょこぴょこ跳ねるツボに手を振れば、あちらもバイバイと言う感じの雰囲気を出してくる。
だいぶ寂しそうな感じも一緒に出してきたので抱えて持ってくか……? とちょっと迷う。いや流石にそれはないか。ダンボールに入った野良猫拾うんじゃねえんだぞ。寮監の3年生にあったとこに返してきなさいと叱られるのが目に浮かぶ……いやツボだしなあ。大丈夫か?
それにミカ様とバトるのにパワーアップが必要かもだし。でもまた暴走したらマジで洒落にならんな……。
うぅん、クソ親父のメッセージ……俺が自分から力を求めるとかいうシチュエーション早くも今ここか?
ミカ様、なんかわけわからんくらい強いし、正面からのタイマンでは普通に負けてるし。
リーダーちゃんとの友情パワー*5でなんとかなる……だろうか? マジでヤル気のあの人を止められるビジョンが浮かばない。
ちょっと振り向き、名残惜しげにしているツボを見る。どうかした? と首を傾げているような雰囲気。
……うん。自力で頑張ろう。なんとかしよう。本当にいざとなればなりふり構わないけど、この子を積極的にパワーアップアイテム扱いなんてしたくなかった。
「また来るよ。今度は、もうちょっと一緒に遊んだりしよう」
緑ピンク黄色、ビカビカ光りまくってめっちゃ嬉しそうな気配。
素面でまた追いかけっこなりするのはだいぶ気恥ずかしいが……こんなに喜んでくれるんならまあ、やぶさかでない。
整った遺跡部分……それでもまあボロいけども、そんな古びた地下通路を抜け、ついに薄暗い廃墟の町、アリウス自治区へと到達した。
出口の近くには迷宮部分から壁をぶち破って正規ルートに合流したような大穴が開いていた。ちょっと覗き込んでみれば、最短ルートを駆け抜けたようなショートカット穴がいくつも。なんてクレバーな……。
しかし遠くからは銃声やら爆音やらとんでもない破砕音やら、そして周囲にはごろごろ転がるガスマスク。なんともわかりやすいことである。妹ちゃんのおかげでどうにか追いつけたようだ。
さあもう一息ダッシュダッシュ、と思ったところで、目の前に立体映像。
出鼻をくじかれ立ち止まる。
「わたくしの領地へようこそ、人工天使ケルビム」
この世界でも特にバケモノらしいバケモノ。好奇心の怪物ゲマトリア、クソ親父とその仲間の一人。
赤い、真っ赤な体の貴婦人。白いドレスを纏い、小さな翼を集めた仮面のような顔面には亀裂じみた奇妙な目がいくつも開き。異形、ベアトリーチェがいかにも機嫌良さそうな猫なで声で俺に話しかける。
「今日は記念すべき、喜ばしい日。そんな日に一体なんの御用でしょう。マエストロの使いですか? 彼とは話がついたはずですが……」
微笑んで告げる赤い女。急に出てきて何だこいつは。
クソ親父とあんまり仲良くなさそうだったのを見た覚えはある。あとアリウス自治区の主人だとか言ってたか。バカな子供を思い通りにするなんて簡単ですわーみたいなことを自慢気に話してた記憶がある。
ん? ……ということはこいつがリーダーちゃんたちを操ってアレコレやっていたのでは?
セイア様殺害未遂とか、姫ちゃんがなんかよくわからんけどヤバいことになってるらしいのとか……つまりは。
「お前黒幕じゃねーかバカやろぉ!!!」
ペロロカバーを外し、輝く炎を吹き出しながら回る丸ノコくんを叩きつける。
崩れかけた街路のレンガが砕け散るばかりで、立体映像相手には当然意味がないけれど、乱れた映像に映る複数の目が不快げに細められるのを見てちょっとスッキリ。
「不躾。マエストロは完全に制御を手放しましたか」
「あんたがろくでなしなのは知ってるし、俺ぁミカ様をぶちのめしに来たんだ。ついでに黒焦げにしてやるよ……!」
ミカ様の殺しを止めるのが最優先ではあるが、こいつをぶちのめすのを最終目標に変更だ。
何をどうしていいのかさっぱりわからんような状況より、わかりやすく殴りやすい悪党が出てきてくれたのは良かったポイントですらある。
「意趣返しの嫌がらせ、あるいは詫びの贈り物とでも言うつもりでしょうか、あの男……。今となっては人工天使になどさほど興味はありませんが、まあいいでしょう。しばらくそこで遊んでいなさい、ケルビム」
ぞわぞわと、湧き出すように、ガスマスクとエグい角度のハイレグとかいうえらくファンキーな格好したねーちゃんたちがどこからともなく現れる。
そして正面には金切り声のような咆哮をあげる巨大な人型のバケモノ。妹ちゃんボディにちょっと似ているだろうか、青黒の色違いって感じ。そういやこれもクソ親父が作ってたやつだ。アンブロジウスとか言ったか。
「わたくしが高次の存在として再誕した暁には、あなたも人工天使も手駒として使ってあげます。マエストロなどよりよほど上手にね」
「意味分かんねー寝言ぺらぺら並べてんじゃねえよ……!」
赤い女、ベアトリーチェの姿が消えると同時、周囲から一斉に変な奴らの群れが襲いかかってくるが、戦闘準備は既に万端だ。
周囲からの銃撃を正面デカイのに向けて突っ込むことでかわし、鋭く巨大な爪の薙ぎ払いを跳んで避け、そのまま異形の腕を踏み台に高く飛ぶ。
丸ノコくんの回転は最高潮、溜めはバッチリ済んでいる。対空迎撃に放たれた青い炎弾の群れは身をひねり、翼に風を受けた空中制動で宙を滑るようにかわす。
バケモノの咆哮よりもさらに激しく巨大な金属音を響かせながら、丸ノコくんを全力で振り下ろす。
「ドタマかち割ったらぁあぁぁああああ!!!」
ギャリギャリと、一瞬の拮抗。しかし回転する刃と炎に削り溶かされアンブロジウスは弾け飛んだ。巨体を貫きそのまま丸ノコくんを地面に叩きつけ、溜め込んだ炎を弾けさせる。
爆発的な勢いで輝く炎が周囲に展開し、ファンキーねーちゃんたちを一瞬で焼き尽くす。
ものの十数秒で壊滅だ。雑魚っぱがどんだけ居たって役に立たねーっていっただろうがよぉ。ってあれ、焼け、消え……え? 死んだ?
ねーちゃんたちは灰も残さず消えている。火加減間違えてやっちまったのかと顔面蒼白になるが、よく目を凝らせば、アンブロジウスと同じように宙に溶けていくのが見えた。
いかにもバケモンだったデカいのはいいとして……あっちも人ではなかったのだろうか。パッと見から幽霊みたいな雰囲気はあったが。
もしかしてあのねーちゃん達が
「なんまんだぶなんまんだぶ」
思わず口をついて出てしまったが、一応ミッションスクールみたいなのに通ってる身としては神よ憐れみたまえとか言った方がよかったかもしれない。
まあ、いいか。線香代わりに火を追加。キラキラ輝く盛大な送り火は、信仰心なんてさっぱりな俺でも多少は救いのあるもののように見えた。
……しかしバケモノ、バケモノね。一歩間違えば俺もこいつらと同じようなものだったのかな。いや、今ここにいる俺と彼女たちになんの違いがあるというのか。
なんか思考がヤバい方向に行きかけたので、ポケットからお見舞い品のモモフレチョコを取りだして噛じる。甘い。そして歯磨き粉の味。歯磨き粉の味?
微妙な気持ちになりながら口内のチョコを舐め溶かしつつ、個包装の袋を見てみればペロロが口にチョコミントアイスを突っ込まれているやつだった。なんだこの奇妙な絵面……。
色々な味のが入ってるモモフレアソートから適当に一掴み取ってきたのだが、どうもハズレを引いたらしい。ちょっと頭スッキリしたような感じはするけど、なんか思ってたのと違うな?
口をモニョモニョさせてチョコミントの残り香を追い出しつつ、指先から輝く火を灯す。廃墟みたいなとこだがポイ捨てもなんなので、チョコミントペロロの包装を焼いて先へ進む。
さっきもそうだったが火のめぐりが良いというか、なんとなくパワーアップしてるような気がする。妹ちゃんと合体したときにとんでもなく巨大な力を扱った感覚がいい方向に働いているのだろうか。
……これなら、やれるかもしれない。先程聞こえていた戦闘音を頼りに、ミカ様達が向かったであろう方向へ急いだ。
ということでアリウス突入回でした。
妹ちゃんことヒエロニムスくんちゃんをこんな萌えキャラみたいにするのはどうかとも思ったんですが、総力戦でツボのサムズアップがネタにされるたびに実はこっちのツボが本体とかありそうだなと思ってたのでこんな感じになりました。
アリウス突入は色々手順が必要なんですがその辺をふっとばすために再登場。勘で掘り進んで到着!とかミカが直進した道をついてくとかも考えましたがまあこんな感じで。
そして赤い人ことベアトリーチェも一応登場。この人は本当にマクガフィンになっちゃったというか、悪役であるという以外の役割が本作でも特にないんで出なくてもよかったんですが、殴っておきたいなあという気持ちもあり。
せっかくなので映像越しだけどパンチしておきました。