トリニティ総合学園庭園部へようこそ!   作:一生ホームアローンマン

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49話 あなたの横に

「また迷った……」

 

 ……え、嘘でしょ? そんなことある? 

 これからラスダンまっすぐ突き進んでついに姿を現したラスボスと最終決戦! みたいなノリだったじゃん。

 

 しかし現実は変わらず、寂れた廃墟の町の街路。ガス灯の頼りない光に照らされながら呆然と立ち尽くしている。ダメ元で妹ちゃんを呼んでみるが、当然応える者はなく、俺の情けない声が虚しく木霊するだけ。

 頼りにしていた、恐らくミカ様のものであろう戦闘音はいつの間にかすっかり止んでいて、向かうべき方角すら既に定かでない。自治区に入ってからもちょいちょい道標になっていたガスマスクの死体、もとい気絶したアリウス生徒ももう全然見かけない。

 

 ノリと勢いでどこからともなく湧いてでるアヴァンギャルドエロ幽霊をひたすら焼却成仏させながらダッシュしてきたため、ここまでの道筋すら曖昧だ。

 いや、だってしょうがないんだよ。この街なんかおかしいんだって。妙に入り組んでると言うか、わざと迷いやすく作ってるとしか思えねーっていうか*1……もっと都市計画しっかりしろよと声を大にして言いたい。

 

 だがそんな言い訳を重ねてみたところでなんの意味もない。

 詰みです、と哀れなアホに現実を突きつけるような冷えた風が吹き、やたらと古ぼけたよくわからん謎のファッション誌の切れ端が顔面に張り付いた。

 

 勇んで飛び出てみたものの、ミカ様には追いつけねえリーダーちゃんも見つからねえ何も為せずにちょっとハイレグ燃やすだけ。

 黒幕の赤いのの居場所なんか余計に分かんねえし、威勢よく啖呵切ったのアホみたい。実に空虚じゃありゃせんか? 人生空虚じゃありゃせんか? 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 俺は敗北者だ……。

 若干呼吸が乱れて涙目になりながら、チラシをぶん投げてトボトボと歩き出す。

 

 それにしても、ひでえ所だ。どこもかしこも荒れ果てて、なんというか、楽しそうな雰囲気が微塵もない。

 トリニティにも端っこの方にはそれなりにある、人が住まなくなって荒れてしまった街、というのとはまた違う。人の生活の気配はある。あるのに、荒れている。荒んでいる。

 

 こんな所でどんな人が、子供が暮らすというのだろう。世の中の何もかもを憎んでいるようなリーダーちゃんを思い出す。

 およそあらゆることに期待することをやめて、諦めきってしまったようなミっちゃん。姫ちゃんも、花壇巡りやトリニティの温室探検やろうと言った時、酷く寂しそうにしていた。

 ヒヨちゃんだけはなんというか、言ってることの割にバイタリティに溢れているというか。美味しそうにお菓子バクバク食ってた印象しかないからそんな悲壮な感じはしないんだけど……。

 

 キヴォトス(ここ)は、いいとこなんだよな。

 変なのとかムカつくのとか頭おかしいのもいっぱいいるけど、それ以上に良い人いっぱいいるし、楽しいし。

 

 そんな中にこんな場所がある。何も与えられず、ただ空虚なばかりで。

 その上、リーダーちゃんと姫ちゃんは死ぬ……殺されるかもしれないという。

 

 そりゃあ、いくらなんでもあんまりじゃないか? 

 流石に誰も彼もが無条件で幸せになれるなんて思っちゃいないが、それにしたって酷い。この世界にふさわしくない。

 

 どうにかしたい。どうにかしたいのだが、どうにもできない。

 突如素晴らしいアイディアが閃いて行き先が判明する、みたいなことができるような賢い頭は持っていない。

 

 このまま広い街をひたすらダッシュで闇雲に駆け回ってもなんの成果も得られないだろう。

 アホすぎて脅威にならないと見做されたのか、ちょいちょいどこからともなく湧いてきて襲撃かましてくるハイレグねーちゃんたちの出現すら散発的になってきた。

 

 何か奇跡でも起きない限り、俺はこのまま役立たずの木偶の坊……。

 無力感に打ちのめされて、レンガ敷きの道路に崩れ落ちていると、ずずんと大きな振動が何度か続く。

 

 地震、ではない。なにか巨大なものが崩れたような。

 ……地下? 手のひらで触れていた地面から突き上げるような衝撃を感じたのだ。

 

 跳ね起きて走る。地下で何かが起きている。場所はわかった。

 入り口は? 振動の方向へ走りつつ地下への入り口がないか探す。しかし地下鉄でもあるまいし、それらしいものがわかりやすく標識を出しているということもなく、全くわからない。

 

 振動があった場所の真上辺りまでたどり着き、周囲の廃墟の壁をぶち破りながら探索するが、地下への階段みたいなものは全然ない。

 そもそも地下室があるとかではなく、それこそ地下鉄みたいにどこか遠くから別の場所へつながるトンネルが真下を通ってるだけかもしれない。

 

 入り口が見つからないのではなく、存在しない? 

 またダメなのか。間に合わないのか。

 

「……いいや!」

 

 道がなければ作ればいい、今まで散々見てきたことじゃないか。素晴らしいアイディアだ。解決策、すなわちパワー!

 適当に地面を丸ノコくんでぶっ叩く。ギャリギャリと舗装を引っ剥がしていく音と感触を確かめながら周囲を走り回りながら何度も叩く。

 

「よし、ここだ」

 

 いくつかの候補地から良さげなところを選定。ゴンゴンと地面を打つ。なんとなーくレベルだが、ここは“薄い”。

 丸ノコくんを高々と振り上げてギュンギュン回し、煌めく炎も吹き出しながら全力で地面に叩きつけた。

 

 削り、抉り、焼き溶かし爆砕する。俺が何をしようとしているのか気づいたのか、またハイレグ集団が集まってくるが爆炎の余波で消えていく。

 うはは! 本当に丈夫だなあ丸ノコくん! ここまでの無体をするのは流石に初めてなのだが、こんだけ乱暴にしても刃こぼれ一つないのはマジですげーわ。さすがは神器と言わざるを得ない。

 

 二度、三度、叩きつけて掘る、というよりもはや砕き進む。

 数メートルは下ったかというところでフッと抵抗が消え、そのまま俺は落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎と瓦礫と共にダイナミックエントリー! したは良いが思ったよりずっと高い。地下通路というか、首都圏外郭放水路*2じみた巨大地下神殿って感じというか……。

 はえーすっごいと思うまもなく重力に引かれ落ちていく。待って待ってそんなに落ちる心構えできてない。バタバタと羽ばたくがいくらクソデカ羽にロリボディでもマジで飛べるようにはできていないのだ。落ちる。

 

 無駄な努力も当然虚しく、べしゃっと地下回廊に墜落。20メートル近く落下したが、このくらいでは怪我一つしない頑丈ボディなのがありがたい。

 もうもうと舞う土埃にゲホゲホするが、咳をしても一人。周囲には既に誰もいない。

 

 ただ、戦闘があったのは間違いないようだ。

 めちゃくちゃぶっとい巨大な柱がぶち折れて行く手を完全に塞ぎ、その手前には無数の弾痕が刻まれている。ものすごい高熱でガラス化したような爆発跡痕もあり未だに熱を持っている。マジでなにがあったんだという感じ。

 

 別の場所にはポツポツと、血のような黒い染みもタイルの床に垂れている。

 ……これらはミカ様とリーダーちゃんが戦った結果なのだろうか。

 

 恐らく地下のすげえ振動はこのドデカ柱が折れて倒れた時のもの。

 たどり着くまでに手間取ったからここでの戦闘は終わってしまったようだが、それも恐らくついさっき。

 

 ヤバそうな気配はビンビンする。だが、まだ決定的に終わってしまった証拠はない。

 きっと間に合う……はずだ。そうだと思いたい。

 

 しかし、また道がわからない。いい加減にして欲しい。

 柱が塞ぐ地下回廊の先、よく見れば脇に細い通路があるから迂回して進むことはできそうだ。なんなら俺は柱をぶっ壊して直進することもできるだろう。

 そして回廊の反対側、塞がれていない方。普通にこっちに戻った可能性もある。

 

 今は戦闘音がしない。嫌になるほど静かだ。アリウス自治区(ここ)はずっとそうだ。誰もが息を潜めているかのように、静まり返っている。

 リーダーちゃんもどこか、この静寂の中でミカ様から隠れているのだろうか。死ぬような出血ではなさそうだが、負傷しているのは間違いない。

 

 急がないとマズい。マズいが、道は前後どちらか……。

 今度は二択だから闇雲ダッシュよりはまだマシ。でも、人の命がかかっているかもしれないとなると即断できない。

 

 うじうじしてたのが吹っ切れて、気持ちよく大暴れだぜというところじゃないのか。

 なんでこうも俺にプレッシャーをかけてくるんだこの世界……!

 

「う、うぐぐぐぐ……」

 

 ……仕方ない。立ち尽くしていても本当に状況が悪くなるばかりだ。

 腰からショットガンを抜き、床に立て、人差し指だけで支える。

 

 どちらに転ぶかわからないように、まっすぐに。

 こんなんでええんかと思うが、仕方ない。神頼み、先輩頼みだ。俺の一番星はいつものように綺麗に光っている。

 

 そっと、指を離した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これは」

 

 歌声が聞こえてくる。

 ガシャンと倒れた銃口が示す先。柱が塞いでいない戻る道の方からだ。

 

 キリエ? 

 入学したての頃に音楽の授業で教わって、集会なんかでもちょくちょく歌う定番の聖歌。

 

 Kyrie Eleison.主よ、憐れみたまえ。

 そうやって神様の慈悲を求める、罪深い小さなヒトが、赦しを乞うための歌。

 

 綺麗な歌声だ。そしてどこか聞き覚えがある。

 

「……ミカ様?」

 

 まさか、もしかして、本当に……やっちまったのか? 

 だからキリエを? 死にゆく貴様に送る鎮魂歌(レクイエム)だぁ~みたいな……? 

 

 歌声には、やけにスッキリしたような感情が乗っている。重いしがらみから解放されたかのような。

 間に合わなかったのか……!? ショットガンを拾い上げて声の元へダッシュで向かう。

 

 巨大な地下回廊、神殿のようなそれを戻っていくと、途中が大きなホールになっていた。

 トリニティの大聖堂によく似ている。それこそ皆で集まって賛美歌を歌うような。隅に置かれた古びた蓄音機から、キリエの伴奏が流れ続けている。

 

 ピンクの長い髪に、月や星のアクセサリーをあしらった白い翼。追いかけてきた人の後ろ姿は、戦闘の跡か少し汚れている。

 ドタバタダッシュしてきた俺に気づいたのだろう。ミカ様はゆっくりとこちらに振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ、ワカナちゃんじゃーん! どうしたの、こんなとこで?」

「えぇ……?」

 

 どうしたのじゃねーよ。

 振り向いたミカ様は、牢獄でみたときのようなやべー目はしていなかった。なんかふつー……というか、去年のキラキラしてた頃に戻ったような。

 

 いや、違うな。キラキラはしてるけど落ち着いてるっていうか、なんだろう。大人っぽい? 

 アイドルみたいなねーちゃんから大女優のお姉さんにジョブチェンジしました、みたいな妙な貫禄を感じるというか。

 

 大人の階段登っちまったのか? どんな意味で? 心配になり周囲を見渡すが、特にガチの死体が転がってたりはしない。

 なんか隅っこの方にガスマスクのアリウス生がちょこちょこぶっ倒れて転がってたりするけど、ちゃんと息はしてるようだ。

 

「あの、リーダーちゃん……サオリを殺すとか言うのは?」

「ん? ……ああ、あはは! そっかそっか、それで追いかけてきたんだ。お人好しだねえ、君も」

 

 けらけらと笑って手を振りながら、あれは無し無し、なんて軽い調子で言う。

 えぇ? あんな地の果てまでも追い詰めてブッコロしてやるみたいなノリだったのに、この数時間で一体何があったんだよあんた……。

 

「サオリはね、今アツコを助けに行ってる。先生も一緒だから、きっと心配はいらないよ」

 

 アツコ……えっと姫ちゃんか。リーダーちゃんが姫ちゃんを先生と。そうなると心配事が一挙に減るな。

 それにしてもなにその優しい顔。慈愛顔というか。頬が煤で汚れてたりするのに、なんでか今まで見た中で一番いい顔してる気がするぞ。クッソ顔がいい。こんな時なのにドキドキする。

 

「まあ、よくわかんねーですけど、やっちまってないんなら何よりっす。さ、帰りましょ」

 

 なんだかご機嫌みたいだが、それにしたってこんな物寂しいとこにいつまでも居るもんじゃないわ。

 リーダーちゃんと姫ちゃんも気になるけど、先生いるなら大丈夫ってのはハイパーパワーアップしたのにボコられた身としては非常に説得力がある。とにかくミカ様連れて帰ろう。

 

 しかし差し伸べた手はさらっとスルーされて、スッと踏み込んできたミカ様におでこを突付かれる。

 今度はごく優しく、トンと少し押すだけのものだったが……。いやなんでやねん。

 

「私はまだここでやることがあるから。せっかくこんな所まで来てくれたのになんだけどね。ワカナちゃんは早く帰りなよ」

 

 優しい笑顔の後に、きゅっと真面目な顔。やることってなんだよ。

 こちとらガキの使いじゃねえんだ……いや、道中だいぶ怪しかったけどさ。どうにも妙な雰囲気だし、顔見てサヨナラってわけにもいくまい。

 

「……最後に君の元気そうな顔見れたのは嬉しかったな。それじゃ、バイバイ」

 

 肩を掴まれ魔法のように*3ぐるっと反転、ポンと背中を押される。痛みは全然ないのにふわりと十数メートルは吹っ飛んでホールから追放された。

 

「えぇ!? ちょっとぉ!?」

 

 首をひねって文句を言うが、さらに入口付近の天井が銃撃で爆散。がらがらと瓦礫が崩れて道が塞がる。

 そしてホールの中に湧き上がるように、多数の人ならざる者の気配。一拍の後、そのまま激しい銃撃戦が始まったようだ。

 

 あのさぁ! あんたさぁ! ほんとさぁ!!! 

 そういうとこだぞ!? 

 ちょっと前まで悪魔みてえにブチ切れてたかと思ったら、今度は悟ったような顔してさあ! 情緒不安定かよ!!!

 

「一人で勝手に盛り上がってんじゃねえよぉおおおおおお!!!!!」

 

 こんなもん、障子紙程度の隔たりにしかならねえんだ! 

 丸ノコくんをギュンギュン回し瓦礫の山に叩きつけ、その勢いのまま炎を散らす。

 

 炎とともに障害を突き破ってホールに再突入。煌めく火は大ホールの床を舐めながら突き進み、大量のハイレグねーちゃんたちを炎上させていく。

 声なき悲鳴を上げながら身悶えし、宙に溶けるように消えていく変な女幽霊たち。ざわめく心はまだあるが、今は棚上げだ。

 

「雑魚っぱが百万居たって役に立たねえって言ってんだろうがよぉ! 成仏しろ!!!」

 

 イチカちゃん指揮のもと、一般正義実現委員ちゃんたちの集団戦術で封殺されることもままあるが、それも置いておこう。

 今日の俺は強靭! 無敵! 最強! 燃え上がれ! 溜まりに溜まったフラストレーション!!! 

 

「どらぁあぁあああああああ!!!!!」

「あっ、ちょっと! ワカナちゃん!?」

 

 勢いのままハイレグねーちゃんたちの親玉みたいな全身タイツ……というか全身ラバースーツ? に亀甲縛りみたいなベルト、それにいつものガスマスクとかいうエロテロリストとしか呼べないヤバい格好のねーちゃんに突撃する。

 軽い火では倒せてない以上ハイレグより強いのだろうが、似たような見た目だしそんなでもあるまい。

 

 つーか後ろに3体くらいさっきのデカいバケモノ……アンブロジウスくん居るんだけどなにあれこわ。そんな気軽にポコポコ出していいやつなのか? 

 でも大半はただのハイレグだったみたいだし普通に勝てそうだな。

 

 ショットガン連射しつつ全身タイツに肉薄、一発で消し飛ばしてくれるわ。

 翼での急制動に軸ずらし。俺の変則的な動きに、いかにも重そうな両手の装備、バカデカガトリングガンと未来チックな巨大大砲は照準が全く間に合っていない。

 

 とった……! 

 

 確信とともに振り下ろした丸ノコくんが、カァンと乾いた音。いとも容易く裏拳で弾かれた。

 

 は? 

 

 本当に完璧なタイミングの受け流し(パリィ)でなければ力づくで轢き潰していたはずの回転ノコギリは、虚しく空を切り床に叩きつけられる。

 全身タイツさんが手放した左手のガトリングガンはまだ宙に浮いている。

 絶妙な力加減で体勢を崩された俺は、機動の慣性も相まって全く動けない。

 

 酷くゆっくりと、実際には恐ろしく機械的で的確な動きと速度で、右手の大砲が腹に叩きつけられ、その勢いのまま発射。

 二重の衝撃。

 

「へぶぅっ!?」

 

 ダブルお腹パンチインパクトで俺はゲロ吐きそうになりながらふっとばされた。

 誰だよあれが弱そうって言ったやつクソつえーじゃねえかよ!!! 

 

 朽ちた長椅子をぶち割りながらゴロゴロ床を転がる俺に、全身タイツはさらに追撃の構え。

 落ちるまもなくキャッチされたガトリングの銃口がこちらを向く。

 

「ああ、もうっ!」

「ふぎゅっ!?」

 

 ミカ様はゴロンゴロン転がった俺の襟首を横っ飛びでひっつかみぶん投げながら反撃の隕石落とし。

 全身タイツもそれを素早くステップ回避。仕切り直しという感じだ。

 俺はゴロゴロして壁に衝突。助かったけど、雑ぅ! 

 

「あれはユスティナの聖女バルバラ……の幽霊、なのかなあ。まあたぶんそんな感じ」

 

 トリニティ史の教科書にはのってないけど資料集とかにはちらっと出てくるような人だね、と言われるが全く記憶にございません。

 テストに出ないとこまで覚えるわけないじゃん! なんなら社会系は一夜漬けメインで戦うからテスト出るとこも既にだいぶ怪しいわ。

 

「ユスティナ聖徒会は、過去トリニティ地域をとりまとめた武力集団。そして聖女バルバラはその代表格……今で言ったらツルギちゃんみたいなポジションの人だから、すごく強いよ」

 

 それはもう、一瞬でわからせ食らいましたんで……。

 たぶん生前の本人ほどではないんだろうけどね、と苦笑いのミカ様も流石に少し冷や汗。

 

「それに、倒しても時間をおくと復活するみたい。だから……」

 

 なるほど、エロテロ聖女ことクソつよファイターバルバラさんに、1体ならともかく複数いるのはめんどくさそうなアンブロジウス。普通のハイレグねーちゃんたちも弱いけど数が多い。

 それが無限にリスポンするとなれば勝機は薄いだろう。だが、ミカ様のやるべきことというのがこいつらを倒すことだと言うなら是非も無し。

 

「死ぬまで殺せばいいんすね!」

「えーと……?」

 

 不死身の敵の殺し方と言えば暴力! 暴力! 暴力! 

 宇宙に飛ばすとか禁術で封印するとか八つ裂きにして瓶に詰めて埋めるとか、定番の色々はゲーム漫画で履修済みとは言え、俺にできるやつは暴力しかない。となればそう、吸血鬼を丸太ですり潰すようなシンプル暴力だけが頼りだ。 

 

 やられっぱなしというのも気に食わんし、成仏するまで焼いてやろう。

 相手が格上と言うならいつもの通り、泥臭く耐久戦するだけのこと。

 

 丸ノコくんを回す。甲高い金属音が連なり無粋にキリエをかき消していく。

 ボタボタと水のように垂れ落ちる煌めく炎が、汚れたタイル床に波紋をいくつも広げていく。

 

 全身タイツのバルバラさんを迂回するように走りながら丸ノコくんをぶん回し、ホールを埋め尽くすように炎を走らせた。

 手元を離れた炎の飛沫は爆発するように広がり、波のように駆ける。

 

「ああ、もう! 負けちゃうかもしれないから帰ってって言いたかったの!」

「一緒に帰るなら! 帰ります!!!」

「ほんとにもうっ!」

 

 平然と炎を受けながら、チラとこちらを見るバルバラさんに正面からミカ様が突っかけた。

 ミカ様のサブマシンガン連射、バルバラさんはガトリングを応射、追撃の隕石落としが回避され。

 

「……あなた達のために、祈るね」

 

 しかしその先に置くように必殺ショットの銀河が回る。ラバースーツのシルエットが大砲の反動を利用しつつ身を捻って全力回避するも、宇宙爆発の余波で大きく体が削られる。

 対するミカ様はしっかり大砲を避けて既に追撃の構え。タイマンなら普通に分があるようだ。

 

 つーかなんか前よりだいぶパワーアップしてる気がするなあの宇宙爆発。元から威力ヤバかったのに……。メンタル改善して絶好調という感じである。

 まあともかくあちらはお任せで良さそうだ。敵はバルバラさんだけではない。

 

 迂回しながら走り、後方に控えていたアンブロジウス軍団に既に肉薄している。

 ミカ様を絨毯爆撃しようとしていたらしい青い炎弾は、俺に気づいて目標変更。まとめてこちらに集中砲火。もはや壁のようだ。俺のキラキラファイアーとコントラストが綺麗だね。

 

 多少の被弾は必要経費。薄いところに全力で突っ込んで、さらに接近。

 青い炎の壁を突き抜けまずは正面1体目。丸ノコくんを前に突き出し、振り回される長爪の根本を翼で弾き、そのままお腹を削り抉りぶち抜いて奥2体の前に出る。

 

 味方ごと焼いて切り裂こうと言うのだろう、炎弾を構える左、両手の爪を振り上げる右。

 左の顔面にショットガンを連射してひるませながら右の正面、振り下ろす爪を翼利用の急速横スライドで躱しつつ、丸ノコくんでアスファルトじゃないがタイル床ガリガリ切りつけつつ高速ターン。

 

 背後を取ってそのまま丸ノコくんを全力で振り上げる。真っ二つというにはお行儀が悪いぐちゃぐちゃの切れ味で、これで2体目。

 消えゆくデカいのの残滓を破って炎弾が迫るが、1体分なら大したことはない。

 

 当たるやつだけホームラン。蒼炎に赤く煌めく炎をブレンドした大玉を打ち返す。

 最後のデカいのの上半身が大炎上。顔を抑え、身悶えするそいつにショットガン連射して追撃、撃破。

 

 わはは、さっきみたいな超絶技巧でぶちのめされなきゃ力押しでこんなもんじゃい。

 と思っていたら後頭部にカンカン銃撃。地味に痛い。

 

 振り向けばハイレグねーちゃん達がぞわぞわ復活している。なにもないところからほわほわ湧き上がる様はマジモンの幽霊そのものだ。

 ほんとに無限復活するんだ。アリウスに来てから、どっからともなくいくらでも出てくるなあとは思っていたが。……少し、怖気づく。

 

「ワカナちゃん、戻って来てくれたのは嬉しいんだけどさ。ここは私だけでいいから……」

 

 俺がデカいの倒してる間にバルバラさんを殴り飛ばし、追撃の必殺ショットで消し飛ばしていたミカ様が、申し訳無さそうに言う。

 ハイレグねーちゃんたちの復活に合わせてか、既にぞわぞわと何やら瘴気のようなものが集まっている。デカいの復活の予兆のようだ。

 

「先生がきっとなんとかしてくれるって、私は信じてる。けど……もしかしたら、間に合わないかもしれないから。ね?」

 

 幽霊みたいなこいつらにきっと慈悲はないだろう。やられたらたぶん、そのまま死ぬことになる。

 人の死、己の死。終わってしまうこと。言葉にすればこんなにも軽く、心臓を締め付けるように重たい。

 

………………うぅぅあぁあぁぁぁ!!! うるせぇえぇえええええええ!!!!!

「わぷっ!?」

 

 丸ノコくんをギュンギュン回して炎を溜めて、勢いよく地面に突き刺す。

 一瞬の間。

 

 球形に爆発した炎がホールを埋め尽くす。俺とミカ様にはちょっと温めの暴風のように。

 しかしハイレグねーちゃんたちは身を焦がし、消えきれなかったとしても床に残った熾火が最後までじわりじわりと焼いていく。

 

「俺はっ! あんたをぶちのめしに来たんだ! 殺すだ死ぬだバカなこと二度と言えねえように!! これ以上余計なこと言うと痴女軍団とまとめてボコボコにすんぞ!!!」

 

 振り返り、ぽかんと口を開けるミカ様を睨みつける。

 そうだ。好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。ムカつくやつはぶん殴る。それが俺だ。それでいい。それだけでいい。それ以外の細かいことも難しいことも知らない。

 

 そんな俺に、ふふっとミカ様が笑みをこぼす。

 いや笑うとこじゃねーぞ。俺はマジだぜ。

 

「そっか……。うん、ワカナちゃんにぶたれるのは嫌だな。だから……頑張らないとね」

 

 炎の壁に吹き散らされて、しかしすぐにまた集まり始めた瘴気に向かい、銃を構えるミカ様。

 既にうっすらと全身タイツガスマスクの姿が見えている。

 

「誰かを殺そうなんて、いっそ死んじゃおうなんて、もう思わないよ。死なせちゃうかもとも思わない。勝って、一緒に帰ろう。私たちの母校(トリニティ)へ」

 

 ちょっと目から汗が出たのを袖で乱暴に拭い、ミカ様の横に立つ。

 キラキラして、しかも今は揺るぎなくそこにある。そうだ。そういうあなたについていきたかった。一緒に居たかったんだ。

*1
弾圧を受けて脱出(エクソダス)してきたアリウス分派の自治区なので、外敵に対する備えとしてそういう町並みになっていると思われる。

*2
埼玉県春日部市にある世界最大級の地下放水路。しばしば特撮番組などで決戦のバトルフィールドとなる。一般見学も可。

*3
腕力




VSユスティナ聖徒会ということで最終決戦です。
バルバラさんとミメシス軍団に相対するミカのかっこいい背中スチル、あれの横にアルちゃん置いたコラがありますが今回の絵面大体そんな感じ。

ミカとの合流をどの地点にするかはめちゃくちゃ悩みましたが最後の最後、キリエの後にしました。スクワッドの面々と会う機会がここで最後なので、もうちょっと前倒しして顔合わせるかというのもあったんですがミカVSサオリの邪魔をしたくなかったので。ワカナちゃんは邪魔にならないタイミングまでずーっと迷子です。それでいいのか主人公という気もしますが……。

ミカVSサオリは非常に印象的なシーンと言いますか、ミカがこれまでのすべてに決着をつけるシーンなのでいじりたくなかったんですね。初見の時はここのヘイロー破壊爆弾の話、そういやそんなのあったなあって感じで流しちゃったんですが某所でミカはヘイロー破壊爆弾で殺される気だったのでは?少なくとも死んじゃってもいいやくらいのあれだったのではというのを見て一気に味わい深く……。

罪人にハッピーエンドなんかないと思ってる二人が戦って、死のうとするくらいのやけっぱちがあらかじめ先生に阻止されてて、その先生は自分を撃った生徒を必死で助けようとしてる。
それを見て自分の感情に振り回され続けて悪い方へ悪い方へ突っ走ったミカが、ここに来てはじめて感情に折り合いをつけて敵を助ける選択ができた。この赦しのシーンはエデン条約全体というかブルアカ全体で見てももうほんとに、好き……。

という感じなのでワカナちゃんはメンタル的に大成長を遂げるミカの目撃者に。あとは一人で戦うミカへの救援という感じになりました。
バルバラさんはどんだけ強いのかわりと謎なんですが、タイマンだったら普通にミカに負けるけど取り巻きいるとキツい。無限リスポンするから耐久戦だと非常に強い、くらいのラインに設定。ワカナちゃんはリスポン無しならバルバラさんにゴリ押しで勝てるけど結構ボコられるからあんまり長くは保たないくらいの感じでしょうか。

あと最終決戦がVSユスティナになってVSベアおばにならなかったのでベアトリーチェさんは画面外でボコられて画面外で涙目敗走して画面外でボッシュートされて退場してます。なむ。
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