トリニティ総合学園庭園部へようこそ! 作:一生ホームアローンマン
「おはようございます!!! 呼ばれて飛び出てトリニティのシューティングスター! 宇沢レイサ!! 颯爽登場です!!!」
「うるせえ!!!!!」
「わぁ、元気だねえ」
例の集団とアポ取るために連絡を取った宇沢ちゃんだが、なんか連れてきてくれるということでお願いしたのだ。そして部室で待ち合わせることになり朝も早くからクソデカボイスで鼓膜にダメージを受けている。
声のデカさは相変わらずだが、それに加えて距離近くなってきたというか、お互い雑になってきた感がある。メンタル的にだけじゃなくて物理的にも近くなったせいか鼓膜ダメージも加速している。耳がキンキンするんじゃあ。
ツッコミがてら割と強めにバシバシデコにチョップを入れてやるのだが、なんか知らんけど妙に嬉しそうにしてるし……。
「はじめまして……ではないけど、ちゃんと挨拶するのは初めてだね。庭園部の新入部員の聖園ミカです。よろしくね、レイサちゃん」
「は、はい! よ、よろしくお願いします……」
そんな俺らをニコニコしながら眺めていたミカ様だが、軽い挨拶から入り、宇沢ちゃんの星型の髪飾りのメーカーの話だとか、俺とバトった時の話だとかで盛り上がり始める。
盛り上がるというかスルッとグイグイ行くミカ様に宇沢ちゃんがややしどろもどろにどうにか答える感じだが。
人のこと言えた口ではないが、わりと人見知りの気がある宇沢ちゃん。
しかしやや方向性は違うが、二人共星が好きだとかアクセサリー関係だとか趣味が合うようだ。意外におしゃれ上級者なんだよな宇沢ちゃん……。
あとは俺との戦闘時*1の宇沢ちゃんの獅子奮迅の活躍にミカ様は感心してるし、宇沢ちゃんもミカ様の隕石とか宇宙爆発とかのハイパーパワーに畏敬の念を抱いてるようだしで、なんだかんだ話が弾んでいる。
俺をボコった話で盛り上がられるのはちょっとなんとも言えないんだが……。
そんなことを思っていると、バァン! と部室のドアが勢いよく開かれ、ズカズカと数人の少女たちが侵入してくる。
「おらおら~この放課後スイーツ団に逆らおうってのはどこのどいつだい!?」
「あんま舐めてるとこの恐るべき妖猫、キャスパリーグ様がだまっちゃいないよ! ……ぶふっ」
ノリノリのグラサンピンク、なんかニヤニヤしてる金髪ツインテ、バッテン黒マスクにバット装備の黒髪清楚系? 不良スタイル、顔真っ赤で前二人をボガボガ殴る猫耳の子が現れた。
カチコミか? カチコミだろうか。たぶんカチコミ……いやまあ、この子達が待ち人なのだがツッコミ待ちと思われたのでとりあえずエンチャントファイアアイアンクローでピンクの子の顔面掴んでぐらぐら揺すっておく。指の長さが足りないのでアイアンクローっていうかおでこ鷲掴みなのだが。
「ンダックラー! ヤンノカオラー!」
「あぁあぁぁぁあああああ!!! 焼けちゃう! 美味しく焼き上がってしまう!!!」
「ハム! じゃなかったナツ!」
ツッコミ用ということでぬるめの火加減だから特にどうということもないはずなのだが、ものすごく良いリアクションである。
金髪の子は大爆笑してるし、猫耳の子は心配しているようで全然そうでもなく、プスプスと煙を上げるピンクの子の焼き加減チェックにツンツンつついている。なんだこいつら……。
黒髪の子だけはわりと本気っぽい様子でわたわたと止めに入ってきたのでリリース。
いやしかしこの子らなんて言って連れてきたのよ宇沢ちゃん。
「はい! せっかくのなので久しぶりに杏山カズサに挑戦状を! 私も随分強くなりましたからね。もはやキャスパリーグが復活したとしてもこの世を恐怖のどん底に突き落とすことなどできないぞ! という所を見せようかと……!」
シュッシュとシャドーボクシングで強さアピールをする宇沢ちゃん。どういうことだってばよ。
シャドーパンチを向けられた猫耳ちゃん……推定杏山カズサちゃんは心底げんなりした顔をしている。
「だから、勝負とか喧嘩とかそんなのしないって言ってるじゃん……」
「まあ、普通の女子高生は好き好んで喧嘩しないよねえ」
苦笑いで同意するミカ様に、猫耳ちゃんはちょっとびっくりした後、何か尊いものを見るような顔を向けた。
うむ。ポニテ作業エプロンミカ様はお姫様感こそ若干薄れたが、上品で優しいお姉さんみたいな雰囲気がすごいのである。無軌道人間だらけのキヴォトスでは激レアなタイプ。
まあ最近元気出てきたからか舌鋒鋭いというか、お口わるわるで口撃力えげつない片鱗もちょっと見えてきたが……。
「ともかく、ジョーダンはこの辺にして。こんにちは、庭園部の人々。スイーツショップに関わることで、我ら放課後スイーツ部の助けが欲しいと聞いてやってきたよ」
グラサン外しておでこ揉み揉み、気を取り直したピンクの子はお目が高いねとドヤ顔を決める。
ひたすら爆笑していた金髪の子もひぃひぃ言いながら目尻に浮いた涙を拭くとキリリとした顔になる。
黒髪の子はマスク取ってバットを鞄にしまうと、スイーツ部の子たちを紹介してくれたので今更ながら互いに自己紹介。
お互いに存在を認知してはいたのだが、まともにお話するのはなんだかんだ初めてになるか。
ピンクの子がリーダー的存在の柚鳥ナツ、金髪ツインテの今どきJKっぽい子が伊原木ヨシミ、クールっぽい猫耳ちゃんが杏山カズサ、黒髪清楚系ちゃんが栗村アイリ。
キャスなんとかいう二つ名持ちで宇沢ちゃんのライバル(?)らしい杏山ちゃん、なんとなく強そうな空気があるな。
しかしこのおもしろ集団にあの店の命運を託して大丈夫かという疑問はある……だが、とにかくすごい自信なのでどうにかしてくれるのではないか。そうも思う。
変なやつほど妙に実力があるのはこのキヴォトスではよくあることなのだ。
「えーと、宇沢ちゃんから事情は聞いて……聞いてないのか?」
宇沢ちゃんの方を見るとアホみたいな顔をしている。柚鳥ちゃんの方に視線を移せばこっちも謎のドヤ顔をしている。
宇沢ちゃんはアホっぽく見えて意外と繊細で真面目な子、という印象だったのだがどうやらこの集団に混じるとただのアホになるらしい。
「なんかすみませんほんとに。事情はほぼ把握してないので1からお願いします……」
「んじゃまあことの起こりから……」
気まずそうに頭を下げる杏山ちゃん。伊原木ちゃんと似たようなノリの良さも感じるが、なんだか苦労してそうでもある。
ともかくかくかくしかじかご説明。お爺ちゃんの洋菓子店についてと庭園部との関わり、ミカ様がティーパーティーやトリニティ自体との関係についても補足いれつつ。
大変思い入れがありどうにか存続の道を模索したい。そういうことを語った。
「……宇沢っ、てめー! ガチのやつじゃんかよこれよぉ!」
「街遊びになれてないお嬢様のためにオススメの店紹介するとか、真面目な話にしたって精々取引先のお店の評判チェックとかその程度だと思うでしょーが宇沢コラ!」
「ぬっ、ぬわー! やられはしません! やられはしませんよ!!!」
柚鳥ちゃんと杏山ちゃんが宇沢ちゃんをサンドして左右からバッシンバッシンどつき回し、宇沢ちゃんはちょっとニヤニヤしながら楽しそうに耐えている。
いや、なんかうん、申し訳ないね。放課後スイーツ部とかいう謎の部活だもんね。そうだね、マジな話を持ってく所ではなかったじゃんねどう考えても。
「なんかごめんね……。ええと、まあわざわざこんなとこまで来てもらったし、お茶でも……」
「あいや待たれい部長さん。別にできないとは言ってない。むしろやる気に満ち溢れている。ぜひ私達に任せて欲しい」
早くもお茶飲んで帰ってもらうかという空気を出したのを察してか、宇沢ちゃんの頬をぶにぶにしていた柚鳥ちゃんがこちらに手のひらを向ける。
えぇ、マジ? やれんのか?
「先日、キヴォトス屈指のグルメ紹介アカウント・美食研究会*2により実在が明らかにされた伝説のスイーツ店『Flowing Honey』。早速行ってみたらやってなくてガセネタだったかとがっかりしたんだけど*3……こんな事情だったとはね」
美食……なんか聞いたことあるような。ゲヘナ野盗の親玉テロリスト集団……は給食部だっけ?*4
お爺ちゃんSNSとか苦手だし取材とかあんま受けないらしいし、店舗の方の知名度低いんだよな。トリニティ生は学食で季節のイベントとかで出るのを食べてるから存在は知られてるみたいだけど。
「まあ正直私たちでどうにかできる話? って感じはするけど……良いお店が無くなるのは寂しいしね。やるだけやってみよう」
「トリニティはキヴォトスの中でも特にスイーツ文化が盛んですから。一国一城の主を目指して移動販売したりお店で修行してる若手の人もいっぱいいます。そういう人たちに声をかけてまわれば、一人くらいは店主さんのお眼鏡に叶う人がいるかも……」
栗村ちゃんがえいえいむんと気合を入れ、杏山ちゃんが鼻を押さえながらそれを見ている。てぇてぇさにやられたらしい。
まあともかく、野生の凄腕パティシエなんかいねえだろという話だったが、野生のやる気に溢れた若手は結構いるらしい。
お爺ちゃんももう全然動けないなんてわけでもないし、仕込めばモノになる原石もいるかもしれない。
早くも心当たりをあーだこーだ言いながらリストアップし始めたスイーツ部の面々を見ているとマジでなんとかなりそうな気がしてきた。
「じゃあ、せっかくだから大会開こっか! 若手のパティシエが腕を競って最高のお菓子を作る……そう、トリニティスイーツグランプリ!」
いいこと思いついたと言わんばかりにニコニコしながらぽんと手を打ってそう提案するミカ様。
やろうと思って、簡単にできるものじゃないぞ。
「素晴らしい」
おいおいと言おうと思うよりも前に打てば響くような肯定の声。
柚鳥ちゃんはいつもの茫洋とした表情に、しかし確かにギラギラとした輝きを瞳に浮かべていた。
「キヴォトス最高のスイーツ。それはまさしく我らの求めて止まない至高の頂き。しかしてそれは触れること能わざるもの。永遠に終わらない旅の終わり。だけれども……そう、トリニティの、若手の、そんな区切りをつけるならそれは終わりではなく途上であり旅の道筋をさらに鮮やかに彩るメルクマール」
杏山ちゃんは何言ってんだこいつとジト目で眺めている。俺も多分似たような顔してる。伊原木ちゃんはいつもの病気かとスルー。栗村ちゃんはあははと苦笑い。
しかし宇沢ちゃんはなにか通ずるものがあるのかニコニコしてるし、言い出しっぺのミカ様はちょっと首を傾げた後うんうんとうなずいた。
嫌な予感がするぞぉ……。
「ロマンだね。素敵だね。やろう。やらいでか」
柚鳥ちゃんはすっと息を吸い拳を高く掲げ、告げる。
「ここに、トリニティスイーツグランプリの開催を宣言する!」
「わぁー!」
腕を振り上げた柚鳥ちゃんによりなんか勝手に開催宣言がなされ、ミカ様は嬉しそうにぱちぱちと手を叩いている。
宇沢ちゃんもノリノリでぱちぱち。お前そういう人が集まるようなイベントごと苦手じゃないの? 俺の仲間じゃなかったのか? 裏切ったのか? 遊園地に魂を奪われたのか?
しらっとしていた伊原木ちゃんだが、まあ楽しそうだしいいかと言う感じでぱちぱちし始め、栗村ちゃんも流されるようにぱちぱち。
おいおいブレーキかけられるのはもう君しか……と杏山ちゃんを見れば、栗村ちゃんがぱちぱちし始めた瞬間にさらっと迎合していた。こ、この猫耳……!
正直なとこそういう人がうじゃうじゃ集まるようなイベントは好きじゃない。
モモフレライブとか、友達と一緒にそういうのではしゃぎ回るのがすごく楽しいのも否定はしないというか、嫌いじゃないかな、ちょっと好きかも……くらいに改善しつつあるのは確かだけど。
とはいえそういうイベントに参加するのと主催者側に回るのじゃぜんぜん違くない? 文化祭で庭園部カフェの責任者やるだけでもひっくり返るくらい大変だったぞ。
それを1からイベント企画、それもなんか妙にでかい規模になりそうなのを……ってのはちょっとどうなんだ。 そう思うのだ。思うのだけど……。
「頑張ろうね!」
「っすね!!!」
既にやる気満々で実に楽しげなミカ様を見てノーと言えるか、無理だ!
うぉぉぉっ! と一気に場が盛り上がる。まだ特に何をしたわけでもないけどみんなでぱっちんぱっちんハイタッチ。
まあね、いいけどね。うん……早まった感はあるよね。だってさあ、このメンツでイベント企画するとして責任者は誰だ?
「放課後スイーツ部主催! より庭園部主催! の方が通りがいいだろうからね。よろしくお願いするよ、軽部ワカナさん」
俺の手が柚鳥ちゃんのぷにっとした手で握られ、ブンブン上下に振り回される。そうなるよなあ!
地味ーな部活とはいえ長いことやってるもんだから、設立1年未満の謎部活と比べたら知名度も信用も遥かにあるのだ、庭園部。
俺さぁ、責任者とかリーダーとかまとめ役とかそういう言葉がすげー嫌いなんだけどさあ……でもなあ。
「私があんまり目立つと良くないだろうし……お願いね、ワカナちゃん。その分精一杯サポートするから!」
えいえいむんと気合を入れるミカ様。こ、この笑顔を曇らせるわけにはいかん……!
仕方ない。やると言ったからにはやるしかない。
全トリニティ規模での一大スイーツイベントの企画・主催・運営を……?
で、できらぁ!!! やってやるぞと振り上げた拳と叫んだ声はちょっと震えてしまっていた。
そんなこんなでトリニティスイーツグランプリ・TSGの企画が発足。早速準備を始めることとなった。
マジでやることがたくさんあるのだが、ひとまずは大前提として店主わんこさんに再びのご挨拶である。
店主さんにはざっくりした企画の概要をご説明。
若手のパティシエとかを集めて料理対決していい感じのがいれば、とりあえず店員さんとして雇ってもらって良ければおいおいお店継いでもらうとかそんな感じで……。
「そりゃあ俺だって喜んで店閉めようってわけじゃねえ。有望でやる気のある若えのが継いでくれるってんなら是非もない。だが、なんか……思ったより大事になってないか? 大丈夫?」
大会を開いて後継者候補を探す、という構想自体はわりと好意的に受け入れられたが……うんまあ、そうね。
後継者探しってさ、俺もなんかこう、捨て猫の里親探しじゃないけどさ、ノリ的には料理漫画の序盤のご町内の個人店VS個人店みたいなちんまりした感じの展開を考えてたんだよ。
でもいきなり終盤の日本一決定戦に飛びますみたいな雰囲気しててね、怖いよね。
ミカ様なんかは元はそれこそ学園規模の仕事してた人だから、むしろそっちの方が自然なのかもしれないが。
しかし柚鳥ちゃんとか1年生なのに全然気負ってなくて大物感がすごい。店主さんとぶんぶん握手した後お店のケーキ食わせてもらって目をキラッキラさせている。
あとのスイーツ部の面々+宇沢ちゃんもお気に召したようでニッコニコだ。この味を途切れさせるわけにはいかない! と決意を新たにしている。
それとついでに最初来たときのあの変なロボ男たちが嫌がらせとかするかもという話になり、宇沢ちゃんが護衛というか重点的な見回りをすることも決まった。
いかにもなんかやらかしそうだったしね。関係ないとこで後継者決まるとなったら実力行使とかするかもだし。
「そういうことならこのトリニティのナイツオブラウンド! 宇沢レイサにお任せあれ!」
お前一人で円卓なのか? しゅっしゅとやる気あふれるシャドーを繰り返す宇沢ちゃん。
ちょっと心配になるがまあ腕は確かだし大丈夫だろう。こういう辺鄙なとこの見回りは自警団の本業でもあるようだし。
トリニティの治安維持を担うのは正義実現委員会ではあるのだが、いかんせん数が足りない。予算も人員も潤沢ではあるのだが、それでもトリニティ全域をカバーするには不足気味という感じなのだ。
さらに言えば、政治的要地である学園そのものや人が多い市街地や繁華街など重点的に警備している地域には詰所も多いのだが、それ以外の周縁部は後回し気味である。
正実は単騎でどんな相手もボコボコにするツルギパイセンなんかが例外的な存在で集団戦術が基本。
応援を呼べばすぐにわらわら一般正実ちゃんが集まってくる体制こそが要なので、どうしてもそうならざるを得ないのだ。
一般正実ちゃんが少数で事に当たると撃破誘拐人質身代金要求のコンボが決まるので……。
そういうある種僻地を蔑ろにするような姿勢に憤り立ち上がったのが自警団と言える。少数精鋭でフットワーク軽く辺鄙な所を重点的に回る姿勢は対照的だ。
まあ宇沢ちゃんがそういうめんどくさいこと考えてやってるようには全く見えないが。
「まあ、そこらのチンピラ程度なら相手にならないしね。お散歩がてらやっておくよ」
最初は栗村ちゃんと一緒に行動する気満々だったようだが、柚鳥ちゃんに何事か言われて数発ぶん殴った杏山ちゃんが宇沢ちゃんと一緒にやることに。
二人でなにやらわちゃわちゃじゃれ合ってるし随分仲良しなようだ。
なんか、うん、良かったねえ……。遠くから宇沢ちゃんウォッチングしてる友人らしき存在はちょいちょい見かけていたが、実際ちゃんと仲良しなところを見ると安心させられる。
謎の親目線発揮しつつ次のお仕事。実際料理対決に参加する若きパティシエたちを集めなければなのだが、そこはスイーツ部の残りのメンバーが走り回ってくれる模様。
選りすぐりのイカれたメンバーを集めてくるぜぇとはニヤリと笑う柚鳥ちゃんの談。
まあそれに頭引っぱたいてツッコミ入れてた伊原木ちゃんと苦笑いの栗村ちゃんはまともそうなので多分大丈夫だろう……。
せっかくだからマジでトリニティ1のスイーツの祭典にしようぜと気張っていたので期待もできる。
若手の野良夢追い人だけじゃなくて普通に一般業者の参加者も募ってみようかという話にもなり、こっちはうちの取引先のお店に声をかけたり。
最低限は集まるだろうと思って軽く話通そうと電話かけたら二つ返事で参加表明が続々。
そっから横に広がったのかなんか知らないとこからもドンドン電話来るし、すげえ勢いで話が膨れ上がってるのを感じる。
勢い任せの言葉だけだったはずのトリニティスイーツグランプリにあっという間に実態が……。
おっきい会場取らないとねーと笑いながらミカ様はナギちゃん様にモモトーク飛ばしたりしている。
大丈夫? これ本当に大丈夫? 玄関前に小さい雪だるま作ろうと思ったらさっぽろ雪まつり*5だ! みたいな感じに雪崩のごとく巨大化してんだけど?
そんなこんなで庭園部の通常業務もこなしつつTSGの企画を進めることしばし。
「や、やることが……やることが多い……!!」
スイーツ部の参加者勧誘は順調なようで次から次へと料理対決へのエントリーが埋まっていく。というか既に多すぎるので一般投票で予選からの決勝戦という感じの段取りに。
参加希望者の審査もスイーツ部の方で軽くやってくれてるが、最終決定は俺。
増える参加者に合わせて広いイベントスペースを確保する必要があり、運営スタッフも雇わなければならない。
スタッフは庭園部のグループトークで募集したら温室の管理とかで抜けられない一部除いたほぼ全員がノリノリでやるやる言い出したし、なんならもっと早く言えとか詰められたし。
それでもスタッフ足りなさそうだからバイト雇ったり、規模がデカくなった分宣伝広告にもそれ相応にお金かけるべきだよねとかなったり。
そう、何はなくとも金! 金! 金! である。持ち出しでは当然どうにもならないので出資を募る必要があるが……。
「件のお店の存続はティーパーティーにも関わることですし構いませんよ……と言いたいところですが。簡単には頷けませんね」
ミカ様と一緒にナギちゃん様に会いに行ってやたらいちゃいちゃするのを見せつけられ、ともかくこの調子ならコネで楽してズルして予算ゲットですわー! とか思ってたら普通に却下された。
どうして……。
「だよねー。あーあ、昔はあれやろこれやろですぐできたのになー……」
「ミカさんの立場も、ティーパーティー自体の置かれている状況もかつてとは全く違いますからね。それに二つ返事をするには既にイベントの規模が大きすぎます」
ブーたれるミカ様をサラッとスルーして紅茶を一口。ナギちゃん様がこちらを向いて続ける。
「第三者から見てもティーパーティーが出資するにふさわしい、文化的で素晴らしいイベントであると示すことができる資料のご用意を。運営計画や、食品関連ですから衛生管理に関わる部分は特に重点的に」
「はぃ……」
至極ごもっともな要求である。衛生関連は以前の文化祭のときに散々やったし、資格もとってあるからまあ大丈夫だろうが……。
資料、プレゼン……部活予算獲得を目指したしんどい日々の記憶が蘇るぅ……。
「少し話を聞いただけでも素敵な催しだと思います。資料についてはある程度以上の内容であれば私の権限で通すことができるでしょうから、あまり気負いすぎないでください」
「あ、うす」
あ、甘やかされている……? *6
そんなこと言うくらいなら手伝ってくれれば良いじゃーんとかミカ様がナギちゃん様に絡んだり反撃ロールケーキで黙らされてたり色々あったが、ともかくお金の問題もなんとかなりそうである。
そんなこんなで資料作成・書類審査・関係各所に挨拶回り・会場下見・機材発注・設営・なんかよくわからんチンピラロボをバーベキュー!
仕事仕事の日々であるが、なんかもう己の限界というか能力不足というか適性外というか。そんなものをひしひしと感じる。
突発的暴力以外上手くできた気がしないよ……。
書類仕事は遅い! 知らない人*7と楽しくおしゃべりできない!
誰か代わってくれねえか……俺もう自分がにこやかに挨拶してるか顔面引きつらせてるだけかわからねえんだ。
「ダメだ」
「ワカナちゃんが私達の部長さんですから」
力尽き果て部室でぐでぐでしながら弱音を吐いていたら陸上ちゃんにピシャリ。ぽわぽわちゃんが謎の信頼感を出してくればうんうんと腕組みで同意するし。
いや、俺だぞ! めっちゃ今更だけど部の顔ポジションがこんなんでいいのか!?
それに発案ミカ様とはいえ勝手にできらぁして仕事増やしまくっちゃったしさあ。
みんな手伝ってくれてるけどさあ、良くないじゃん? そういうの。
「バカ」
いてえ!
チョップチョップと結構マジのやつが陸上ちゃんから脳天にゴスゴス落とされる。
「ワカナがずっと頑張ってるのは見てるからな。それに、あのお姫様も」
「頑張ってる人に着いていきたいな、助けたいなって思うのは普通のことですよ。あとお菓子とお祭りが嫌いな女の子はあんまりいませんから」
いつものように、陸上ちゃんがわっしゃわっしゃとかき回してボサッた髪をぽわぽわちゃんが整えて。
最後にぽんぽん叩いたら二人は仕事に向かう。
なんか泣きそうになりながらそのまま談話室のクッションで突っ伏していれば、わちゃわちゃやってきた後輩ちゃんたちに囲まれる。
「お疲れ様です!」「なんか甘いもん食べますか!」「紅茶入れますね」「マッサージもしますね! ……ふへへ」「止まるんじゃねえぞ……」「ミカ様もお茶どうぞー!」
「わ、ありがとねー」
なんというか以前よりさらに舐められてるというか遠慮が無くなったというか……。
跳ね返す気力もなく潰れたまんま揉みくちゃにされる俺と、一緒に仕事してきたらしい何人かと優雅で楽しいティータイムするミカ様。
どうしてここまで差がついたのか。年上っぽさ、お姉さん力、カリスマ性……。
仕事はまあ、だいぶグダっている。
上手くいかないことだらけだし、外部との交渉ではこいつ大丈夫かよみたいな顔されることも多い。
でも、みんなのお陰でなんだかんだちょっとずつ、でも確実に形になってきている。
……頑張ろう。
だいぶ遅くなりました。気がついたら1ヶ月以上経っている……!
大体骨はできたしパッと書けるやろとか思ったら全然でした。
とりあえず追加4話4万字くらい。
どうもフリーハンドを与えられると逆に困るというか、イベストっぽいなんか~で書き始めてひたすら迷走したような気がします。
とりあえずなんとなく完成かな~くらいにはなったので年度が変わる前に投げておきます。
ところでセイアちゃんが来ない!
生放送のたびにセイア実装!と叫んでるんですがなかなか来ませんね。ナギちゃん復刻に合わせてそろそろマジでぬるっと来るんじゃないかと期待してるんですが。