トリニティ総合学園庭園部へようこそ! 作:一生ホームアローンマン
そしてなんだかんだで時は流れて本番当日。細々したトラブルは無限に発生して死ぬかと思ったがデカい問題はなく、どうにかこうにか無事開催までこぎつけていた。
トリニティの広場を一つまるごと借り切った会場には既に人が溢れている。
大量の出店やキッチンカーに、少し高くなった特設ステージ。背後にその様子が中継できる巨大モニターが設置され、今は各種CMやこの間作ったPVが垂れ流されている。
実際どんだけ人が集まるもんなのかと思ってたけど、やはり女子高生を誘引するスイーツパワーは凄まじいらしい。
スタートしてすぐなのにどこもかしこも人だかりだ。トリニティ以外の自治区からも結構来ているようで、見慣れない制服の姿もそれなりに多く見える。
「ふふーふ。今宵この地は人の子らの欲望渦巻くソドムの市。憧れは止められねーんだ」
関係者控えの大型イベント用テントで、うんうん頷きながらよくわかんねー事を言っている柚鳥ちゃん。昼間だしみんな健全にお菓子食べ歩いてるだけだし度し難くもない……。
いや……遠目に見える、なんか両手に大量のお菓子抱えて貪り食ってるハスミパイセンはまあまあ度し難いかもしれない。
それを呆れたような顔、たぶんそんな顔で見ながら一緒に歩いてるツルギパイセンはチュロスみたいなのをチマチマ囓っている。
「どうやら本日の警備は万全なようだね部長さん」
うむり。柚鳥ちゃんの言葉に深く頷く。正式な警備は庭園部の人員と正実に頼んで配備してもらった一般正実ちゃんの一部だけなのだが、普通にプライベートで来てる戦力がデカすぎる。
非番とはいえなんかしら事件が起これば対応してくれるだろうし。もう何も怖くない!
「カズサから色々とトラブルがあるかもみたいな話を聞いてたけど、平和に終わりそうで何よりだよ」
「うん。流石にこの状況で暴れるバカは……いや既にちょっと居たんだけど、今日のところは本格的なのはないと思う」
なんか列に横入りしたのなんだので早速喧嘩というか銃撃戦発生の報は届いていた。
うちの子がアンブッシュからナタでぶん殴って鎮圧したらしいけど、まあそんくらいならいつものキヴォトスである。
「話の流れからして、今日はなくとも後日にはなんかあるのかな?」
「……おそらく多分?」
自信満々だったロボ男が意外にもマジで美味しいお菓子を作ってきたらそうはならない可能性もあるが……。
ふぅと柚鳥ちゃんが息をつく。茫洋とした瞳にほんのりと憂いが乗り。
「どうして世界はもっと甘やかで平和でいられないのだろうか。人生なんて、僅かな甘味とお喋りとで満たされるものなのに」
「本当にねえ……」
よく働いて、甘いものみんなで買い食いしてゲームして寝て。
うん、本当にそれだけでやっていけたらどんなに良いことだろうか。
「……同意が得られるとは思わなかったな」
「なんで?」
シパシパと瞬きしてこちらを見つめる柚鳥ちゃん。
そんな意外な事ある? 誰でもわりとそんな感じじゃない?
「レイサから話を聞いて、もっと苛烈な人だと思っていたよ。常に力を求め続けているというから」
「いや、いやいやいや……平和主義の大人しい奴っすよ俺は*1」
そりゃあ必要なら暴力に走る事に躊躇いはないし、ムカつくやつはとりあえずぶん殴りてえみたいになるけどね。それになんだかんだ正実の過酷な訓練続けてるのも間違いではない……。
ま、まあ傍から見たら結構武闘派のヤバい奴かもしれないけどさ、必要にかられてやってるだけだもん。おかしいのはどっちかっていうとこの世界そのものだよ。俺は悪くヌェ!
「ふふ、確かに。
なに言ってんだこいつ……*2実は巨大化するタイプの宇宙人だったりするのか?
俺の懐疑的な視線を特に気にせず柚鳥ちゃんは続ける。
「まあともかく、機会があれば今回のお礼を言おうと思ってたんだ。大きなスイーツイベントの主催、いつもは通りすがるだけだった夢たちの手助け。自分でやることになるとは思ってなかったけど、この準備期間は思いの外楽しかったよ。踏み出せたのはきっかけをくれたあなたたちのお陰……ありがとね」
いつもの微妙にシニカルで読めない感じではなく、素直にぽやっと笑う柚鳥ちゃん。
誰かの夢の手助け……実際このイベントではスイーツ部が推薦してきたセミプロくらいのパティシエが多く参加している。
まあ腕前はピンキリだそうで、予選投票を抜けて決勝戦まで上がってこれるかは謎。
でもそういうのとは関係なく、自分の作った美味しいお菓子をみんなに食べさせたい! みたいな情熱を感じる人々だった。
「スタート地点からめっちゃノリノリだったし、いっつもこんな感じなのかなと思ってたけど、そういうわけでもないの?」
「そうだね。勢いに任せて走り出すこともあるけど、基本的には小規模な活動しかしてないよ。SNSで良いお店の紹介するとかそれくらい」
放課後スイーツ部の名の通り、身内でお菓子やお茶会を楽しむのがメイン活動の同好会みたいなものらしい。
頭のおかしい部活溢れるキヴォトスにあってなんと真っ当な……いや、それが部活になってるってのがまあ変ではあるんだが。
「穏やかな暮らし、たまのパッション、戦と勲……ふふーふ、これぞ青春」
「そうかな……そうかも……」
なんか不純物が混ざってる気もするが……まあ変なことをするのも、間違えるのも、勢いで突っ走って転ぶのも、それはそれで青春なのかもとも思う。
正しい道を迷わずまっすぐ進めればいいけど、そうするのはきっととても難しい。俺がこうして……多分恐らく、間違ってはいない道を歩けているのもきっと奇跡みたいなものなのだろうから。
「さて、部長さん。決勝戦まではまだまだ時間がある。ここはしばらく私が詰めてるから、部長さんも会場を回ってくるといいよ。せっかくだからね」
「ん……そうだね、それじゃお言葉に甘えて」
知り合いの姿もチラホラと見かけたし、他の面々も既に警備や視察なんかで出かけているし、俺もそれに倣うべきだろう。
人混みは苦手だが、柚鳥ちゃんの言う通りせっかくのお祭りだ。ふりふりと手を揺らす柚鳥ちゃんに別れを告げ、俺も雑踏へと乗り出した。
トリニティスイーツグランプリのタイムテーブルとしては、開場からお昼すぎまでは予選投票タイム。午後から予選の勝者で決勝戦。特設ステージで調理の様子を中継したりしつつ審査員が勝者を決める、という感じになる。
勝者にはスポンサー効果で結構豪華になった賞金とかトロフィーとかを進呈。お店の後継者の方は特別審査員のお爺ちゃんが別で判断するが、まあ優勝者になるのではないだろうか。
予選投票は一般のお客さんがやるので今まさに進行中だ。両手に山程大量のお菓子を抱えているような人もいるが、大体はあちらこちらうろつきながらちょびちょびちょっとずつつまんでいく感じで楽しんでいる様子。
お店の側もそういうのを見越して一口サイズだったりシェアしやすかったりなものを出してるとこが多いようだ。
あちらこちらに色んな店や企業のポップや幟になんかのキャラクターの等身大パネルとかが置かれ、いかにもお祭りといった空気を醸し出しており実にいい雰囲気……なのだが、目を引くやや異様な一角がある。
うん、モモフレンズの仲間たちですね。
いや別にモモフレイベントでもなんでもなかったはずなんだけどね。なんでだろうね。いつの間にかすっかり侵食されて……。侵食の代償としてすごい格安でめちゃめちゃ広告やってくれたりしたからいいっちゃいいんだけどさ。
おぉ……モモフレゾーンをペロロ着ぐるみが練り歩いてちびっこに風船配ったりしてる。
しかもコック帽にエプロン装備の特別なパティシエさんスタイルだ。そしてなんか見覚えのある顔が腹に張り付いてないか?
……うん、ヒフミちゃんとアズサちゃんっすね。
風船配ってたペロロ着ぐるみに二人でひしと抱きついている。えぇ……と視線を向けていたらペロロがこちらに気づいて雄々しく翼を広げた荒ぶるペロロのポーズ。
定まらない視線からは何がいいたいのかさっぱりわからないが、恐らく歓迎してくれているようだ。そして荒ぶるポーズの余波で俺に気づいた二人がこちらに顔を向ける。体はペロロに貼り付いたままだが。
「あっ、ワカナちゃん! この度はこのような素晴らしいイベントを開催して頂き誠に……」
「ワカナもペロロ様を抱きしめないか? 幸福な気持ちになれるよ」
いやまあ、ヒフミちゃんにとってすばらなイベントになったのは君がなんか勝手にモモ社と連絡を取ったからだし……大企業と一般JKに謎の繋がりがあるのちょっとよくわかんないけどまあいいや。楽しそうで何よりです。
アズサちゃんの方は怪しいなにかの勧誘のようだな。やるけど。挨拶もそこそこに、場所を空けてくれた二人の間でデカいペロロ着ぐるみの腹に抱きつく。
「あっ、これ……いいね……」
「だろう」
「素敵ですよね……」
干したての羽毛布団のようなぬくもり……ほんのりチキンのスパイシーな香り……。
どんな素材使ってるんだろうか、抱き心地が良すぎる。ペロロの胴体に顔を埋め、思わずパタリパタリと翼が動く。
「む、ワカナの羽と合わせて、全身を包まれるような……」
「このままお昼寝しちゃいたいですね……」
ほわぁ、と深く息を吐きながら至福のひとときを味わっていると、後ろからパシャリとシャッターの音が。振り向けばニッコニコのハナコさんとなんとも言えない顔をしているコハたんが。
ハナコさんは片手にナイフを持つアサシンスタイル*3で器用に複数のチョコバナナを保持したままスマホを構えている。
「うふふ、いい画が撮れました。こんにちはワカナさん」
「あ、どもっす……」
モモフレに狂ってない正気の人間に見られるとちょっと恥ずかしいなこれ。
おひとついかがと渡されたチョコバナナを、照れ隠しがてら素直に受け取る。
「ご存知ですか? まずはペロペロと先端のコーティングを舐め溶かすのが正しいチョコバナナを食べるときの作法で……」
「そんなわけないでしょ! 変な食べ方させようとするな! 死刑!」
黒い棒状のものを舐め舐めさせようとするハナコさんに死刑宣告が出されるのを苦笑いで眺めつつ、普通に歯を立てて噛じる。
流石に夏祭りの屋台とかで売ってるようなやつとは違うらしく、コーティングが複層になってて複雑な味が楽しめるし、トッピングのカラースプレーもなにか工夫があるようで安っぽい味ではない。
普通に美味えなと思いながらモグモグしていると、ハナコさんはまぁまぁ言いながら顔を赤くしてお喜びである。
いやペロペロさせたいんじゃなかったのか? なんでもいいのか?
「エッチなのはダメって言ってムグ!」
俺にも死刑宣告を出そうとしたらしいコハたんにもチョコバナナが突っ込まれる。うーむ、確かに咥えてるだけでちょっと、いやだいぶエッチかもしれない……。
ムガーと憤るコハたんをなんとかなだめてせっかくなのでみんなで記念撮影。通りすがりの人に頼んで撮ってもらう。ペロロの前で5人並んでパシャっと1枚。
このペロロ着ぐるみ妙にファンサが達者で、抱きつけば止まっててくれるし撮影すれば映えを意識した翼を猛々しいペロロポーズをとってくれるし、良いペロロである。
「ほら、もう十分でしょ。道の真ん中でいつまでも固まってたら邪魔だし」
「あぁ……!」
「さようなら、ペロロ様……」
名残を惜しむ二人をコハたんが引き剥がし、それを待ってペロロは手羽先をフリフリどこかまた別のモモフレファンのもとへ移動していく。
まあ確かにあんまり専有するのも良くないしな。なんだかんだでだいぶ満足したので手を振りかえし見送った。
「ふぅ……えっと、私達はしばらくこのあたりのお店を回るつもりですが、ワカナちゃんも一緒にどうですか?」
「一応運営の視察って感じだからなあ。全体的にぐるっと見て回るかな」
モモグループ関連のお店がこの辺のゾーンでモモフレクッキーとかチョコとか会場限定品を大量に出しているので、コンプリートするつもりなのだろうヒフミちゃん。アズサちゃんもフンスフンスとやる気顔。
他のモモフレ着ぐるみもうろついてるようだしヒフミちゃんたちと一緒に回りたい気持ちもあるが、一応お仕事だしな。
「そうですか……それなら仕方ないですね。セリナちゃんも忙しそうでしたし」
人が大勢集まるデカいイベントということで、会場の隅っこには救護騎士団のテントも構えられている。
早速ボコられてた人もいるし、普通に体調不良とかの人もいるだろうし大変そうだ。
「お仕事がある方はともかく、色んな方々が今日ばかりは素直に甘味を楽しんでいるようですね。正直な所意外です。政治向きのことを忘れたわけではないでしょうが……私にそういったものを見渡す余裕がなかっただけなのかもしれませんね」
なんとなく遠い目をしながらハナコさんが呟く。
よくわからんけどまあ、庭園部主催協賛放課後スイーツ部、一応ティーパーティーの絡みもないことないくらいのアレだから、怪しい陰謀みたいなのはない……はず、たぶん。
俺の知らない所ですごい勢いで話がデカくなった感があるので断言はできないが……。
しかし、真面目な顔でちょっと物憂げではあるもののチョコバナナの先端をペロペロしてるハナコさんの絵面は半分18禁に突っ込んでおり、ジョーダンなのかマジなのか。
正直この人のこと未だにあんまりよくわかんないんだよな。
定期的に意味深発言する重要キャラっぽい空気も感じるが、コハたんにベシベシケツ叩かれて嬉しそうにアンアン言ってる様からはアホアホデカパイねーちゃんとしか思えなくもある。
「公然わいせつはダメ! 死刑!」
「ンムッ!? ……コハルちゃん、強引ですね……♡」
ペロペロをやめさせようとチョコバナナを口内に突っ込むが、見た目のヤバさ的には悪化しているぞコハたん。
ぎゃーぎゃー叫びまくるコハたんにアズサちゃんは首を傾げ、ヒフミちゃんはその両目を苦笑いでそっと塞ぐ。まあうん、なんかもう、エンジョイしてくれてるようで何よりです。
その後は補習授業部一行と別れ、ちょいちょい気になったお店のお菓子をつまんだりしつつ会場をフラフラ回る。良かったのをいくつか買ってセリナちゃんとこへ軽く差し入れでも、と思って向かったら腹痛で悶える生徒が。
すわ食中毒かイベント中止かみたいな感じでかなりビビったが、ただの食べ過ぎだった模様。あとは普通に貧血だとか転んで怪我したちびっ子だとか、ちょっとした患者がひっきりなしだった。
「大変だね……」
「ふふ、楽しいイベントは楽しい思い出ばかりを残して帰るべきですから。そのお手伝いができるのは嬉しいですよ」
そう言って、どんな相手でも笑顔でテキパキ対応する様はまさにプロである。俺の時は笑顔は笑顔でも若干怖い時が多かった気もするが……。
一時期のようにボコられてぶっ倒れて救護騎士団にお世話になるなんてことはずいぶん減ったから、あの顔を見ることも少なくなった。
課題サボった時とか授業中寝てた時とかくらいだろうか。まあそれはともかく、あんまりお邪魔してもあれなのでお菓子だけ置いて立ち去ることに。
「ありがとうございます。今日はお互いお仕事ですから、また今度どこかで遊びましょうね」
「うん。予定合わせて出かけよ」
なんだかんだエデン条約が終わってからはいつものメンツで放課後ファミレス行ったりカラオケ行ったりくらいはちょいちょいあるのだが、しっかり遊びに行きたいよねってのはある。
お祭り的なのとかテーマパーク的なのとか……基本苦手ではあるんだけど誰かと行くならね、まあね、楽しみだよね。軽く約束して、駆け込んできた新たな怪我人の対応にかかるセリナちゃんを応援しつつ救護テントを出た。
その後は他にもちょいちょい知り合いと顔を合わせたりしつつその辺をうろうろ。とにかく会場が広いので一回りするだけでもそれなりに時間がかかる。
お店の数も多いが、買ったお菓子を食べられるようにベンチや机も大量に設置してある。そういう所で多くの学生達が思い思いに甘味を楽しみ、感想や投票先についての相談などしていた。
トリニティのイベントらしく多くの店で紅茶も出しており、流石にティーカップではなく紙コップとかだが……その辺のスタイルの問題で激論*4を交わしている集団もあったりするが、概ね穏やかで和気藹々とした雰囲気だ。
色んな人が楽しそうに過ごしている。それを見ると、うん、なんだかんだやって良かったなあって感じ。
そんなことを思いつつブラブラと歩き回り、大体一通り見たしそろそろ関係者席に戻ろうか、という所でなんか謎の集団に絡まれた。
「スイーツ三銃士を連れてきたよ」
いきなり何いってんだこいつ。謎の集団の筆頭がグッと親指を立てドヤ顔で謎の宣言。まあ全然謎でもないんだが、柚鳥ちゃんである。関係者席は他の子と交代してきたようだ。
しかしなんだよスイーツ三銃士って。いや分かるけどさ。大会審査員が外部の有識者3人ってことだったからそれが集まったということだろう、たぶん。
「まず一人目。スイーツ大好き、偉いシスターさん」
「シスターフッドのサクラコです。本日はよろしくお願いしますね」
いきなり暗黒微笑のサクラコ様がエントリーだぁ。いやあなたスイーツ大好きなんてキャラじゃないでしょ*5。
結構な勢いでモグモグしてるのは見たことあるけどさあ。一体何を企んでいるんだ?
「『親しみ』*6を増すためにはやはりこのような場にも積極的に出ていく必要があるかと思いまして」
ニコォ、とダークオーラとともに微笑むサクラコ様*7。こわ……。
マリーちゃんとかもいるのにこんな事言うのもなんだが、怪しい宗教組織のトップだからなこの人。ラスボス候補筆頭だぜ。
「二人目。スイーツ大好き、正義実現委員会副委員長さん」
「どうも。スイーツ大好きハスミです。特別なイベントの日ですから、今日ばかりはカロリー計算は控えたいと思います」
一緒に来ていたツルギパイセンは何いってんだこいつと恐らく俺と似たような表情をしているが、ハスミパイセンは特に気にせずフフンと澄ました顔。
スイーツ大好きの称号がわりとお気に召したらしい……。
「大会審査員、特別なスイーツを誰よりも早く……とても楽しみです。」
ジュルリと食欲をあらわにしているがさっきあんだけ食べてたのに大丈夫なのかこれから。
審査員だからちょっとずつ食べる感じで、全部完食しろみたいなフードファイトになる予定はないけどさ。
「別腹ですから」
その常套句はカロリーを無効化する魔法の呪文ではないぞ。
……ないはずなのだが、ハスミパイセンのカロリー摂取量と体型維持の問題はトリニティ七不思議の一つに数えられている。
まあそれはともかく、適当な人を探してたら自薦でやってきた
巡回とかでトリニティ内のスイーツ事情にも明るいしスイーツ大好きだし。二つ返事でOKもらったから裏事情とか一切なさそうなのでとても安心。
「そして3人目。スイーツ大好き偉い人フォックス」
「じゃーん! スイーツ大好き☆セイアちゃんでーす!」
藪からフォックスにヌッと差し出されたのはセイア様。
無事に集計終わったよ~などとにこやかに言いながら手を振る代わりに両手で掲げたセイア様を左右に揺らすのはミカ様だ。
「スイーツ大好きですまない。百合園セイアだ」
謎のドヤ顔フォックスにミカ様がゲラゲラ笑っている。この人なんか見た目の印象に反して意外とノリが良いと言うか、わりと変な人だよな……。
昔は病弱だったけど最近元気になったって話だし、その辺が理由ではっちゃけてるんだろうか。まあともかく楽しそうで何よりです。
「最近は体調もずいぶん良くなってきたから。公務復帰に向けての一歩としていい機会だと思ってね。よろしく頼むよ」
ようやく地面に降ろされ、薄く微笑むセイア様のデカい耳をちょいちょいミカ様がいじり、ペシペシといちいち手で払っている。この雑に仲良しな感じよ。
最初はナギちゃん様を呼んだのだが、バランスがどうのでセイア様がやってきたのだ。なにかよくわからない事情があるのかもしれないが、この様子を見るにそんなに心配することはないだろうか。
「そして最後はわたくし、スイーツ大好き美食研究会の黒舘ハルナですわ~」
「ぎゃあっ! ヤバテロリスト!」
どこからともなくニュッと生えてきた野生の山賊王をレンガ敷きの地面にぐいぐい埋まれ埋まれと押し込める。
あぁ~という呑気な悲鳴に、ハルナがのし餅に! と言うバーガー女の叫びまで聞こえる。クソっ幻覚じゃねえ!
なんでいんだよこいつ! 文化祭にも来てたけどゲヘナの連中気軽に越境しすぎだろ!
嫌すぎる三銃士の4人目を召喚してくれた柚鳥ちゃんに非難の目を向ければブンブンと首を振られる。呼んでないらしい。
「本日も我々は善良な一般客です。それはそれとして審査員として特別なスイーツをいただければとも思いやってきましたが……」
「ダメに決まってんだろ爆発オチが見えてんだよぉ!」
隙をついてすいと抜け出し、お菓子な事を言いだしたヤバテロ女。
ネットで生配信とかもするイベントにこんな危険人物出せるわけないだろいい加減にしろ!
というかなんでテロリストが余裕で野放しになってんすかと正実メンバーを見れば、今日はまだ何もやっていないので、という残念そうなお言葉が。
おぉ、キヴォトスの罪と罰よ……*8。
「まあ、こいつらは私が見ておこう」
「おなしゃす」
ツルギパイセンが一睨みすれば、まぁ怖い怖いと余裕の笑みを浮かべるヤバテロ女。だがよく見ればちょっと冷や汗が浮いている。
後ろでひたすらスイーツ食ってるバーガー女と金髪女もスッと目をそらす*9。流石パイセンだぁ……。
料金以下のマズイ飯を食わせるレストランは爆破するなんてしょっちゅうよ、とかいうヤバテロリストがヤバすぎる話を聞いたり、それで今日爆破事件が起きてないからスイーツ部の店選びの目は確かだとか言われたり。
そんな嬉しいんだかなんだかよくわからない結論を得つつ、いよいよ大会本番である。
ということで色々詰め込みつつ大会本番へな感じでした。
ちょいちょい触れつつやってないヒフミさんセリナちゃんとなんかやるイベント回もどっかでやりたいですね。今のところパッと思いつかないんですがトリニティ文化祭(本物)一緒に回るとかかなあという感じ。
そしてスイーツ三銃士を言いたいためだけに新コンテンツで大活躍中のサクラコ様とかにもご登場願いました。
サクラコ様ゲーム開始当初によくわからないままグラサンにしてそのまま塩漬け状態だったのでマジで大活躍する日がきてかなり嬉しかったり。
あと三銃士の四人目と言いたいためだけに美食研も登場……当初はスイーツ部+美食研+先生を迎えてイベント準備みたいな構想だったんですが、流石に人多すぎて全く捌ききれなかったのでスイーツ部だけに落ち着きました。
それもナツ以外はさらっと流す感じなので本当に人数増えると収拾がつけられない。力量が足りないっすね。
まあともかくその辺の名残で美食もちらっと出る感じです。
先生は当初イベストだしってことで出すつもりだったんですが、問題解決する、助言する、背中を押す、みたいな先生ポジションはティーパーティーと庭園部の人々にやってもらいたいかなと思い直しカットに。
まあ一応絆っぽいのもやったしええやろ……ということで。
今回イベストっぽいの色々詰め込みまくろうとして迷走しまくった感がこの辺からチラチラ見えてるかもしれません。
まあスイーツ部はバンドイベントがマエストロ・グレゴリオくん経由で音楽の線あるしーみたいなのが結構あるので足りないところは未来の自分に投げておきます。