「んあ?」
ぱちくりと瞬きをし、目を覚ましあたりを見渡す
どこまでも広がる砂漠の中のオアシス。そんな場所の芝生で何故かその人物は眠っていたらしい
「ん…なんか腰痛…ってそりゃこんな石段の上なら痛くなるわ」
小柄なその人物はポリポリと頭をかく
黒いコートのような荘厳な衣装。腕の袖はだいぶ余り、袖がぷらぷらと揺れている
お尻の辺りからは細長い尻尾が伸び、長い銀髪の頭部からは捻れた黒と紫のしましまの角が2本伸びていた
透き通るように美麗で、それでいて深淵のように深い金色の瞳をその小柄な少女が思案するようにこめかみに指を当てる
「……吾輩、なんでこんなところにいるんだ…?」
不思議な容姿をした彼女の名は
ラプラス・ディア・ハイエストデス・サーティン・ダイナアートオブ・インパクト・サイン皇・ロード・オブ・The・ダークネス
……と全て綴ると非常に長いため普段は専らラプラス・ダークネスと名乗っている
その正体は、世界征服を企む秘密結社・holoXの大いなる総帥その人であり、日々「この面白い地球を手に入れる」ための征服活動に勤しんでいる人物である
現在はホロライブというアイドル事務所に所属し、動画配信などで面白い世界を作るための征服活動(どこからどうみても芸能活動だが)に邁進している
「おいモノローグ‼︎ カッコの中余計だぞ‼︎」
何も無いはずの頭上を見上げ、ラプラスがツッコミを入れる
はぁ、とため息をつきながらラプラスは首輪のスイッチを押してコートや首輪などを消してワイシャツを着たような身軽な姿へと変わるとパタパタと両手で顔を仰ぐ
「……あつい…そりゃ砂漠の真ん中だから当たり前か…」
ラプラスは気怠げに立ち上がるとオアシス中央の湖に足を運び、じっと湖を見据えた後どこからか取り出したコップで水を汲み、ぷはぁと息を吐き出す
「あ、思い出した」
水分を取って思考の整理ができたのか、ラプラスがことの顛末を思い出して手を打った
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ある日
とある雑居ビルにあるholoXのアジト入り口の扉を開き、背が高くスタイルの良い女性が黒いダンボールを抱えて入ってきた
「よいしょ…なんか重いな…」
「ふぁ?ふぁんふぁふぉれふぁ?」
階下のリビングでテレビの前に腰掛けてカップケーキを食べながらゲームをしていたラプラスが入り口の方を振り向き、菓子パンを咥えたままで声を上げる
「口に食べ物咥えたまま喋らないの、ラプラス」
「…ふぁーい」
女性ーholoXの「女幹部」である鷹嶺 ルイがたしなめるとラプラスは大人しくカップケーキを貪りごくんと飲み込む
「……改めてなんだそれ?」
「ラプラスの荷物じゃないの?なんか事務所の入り口に置かれてたんだけど…」
ゲームを中断したラプラスの側にルイが黒いダンボールを置く
そこそこサイズのあるダンボールをラプラスがジッと眺め、その上面の宛名書き付き手紙を見つける
「秘密結社holoX様へ…吾輩達のことを知るとは只者では無さそうだが…」
「いや、私たち配信とかもしてるからもうそこまで秘密結社でも無いとは思うんだけど…」
ラプラスの言葉にルイが呆れ半分のツッコミをしていると、リビングの扉が開き、白衣を着たピンクの髪の女性が入ってくる
「おやおやぁ?なんか面白そうなものがあるねー?」
「ああ、博士。なんかうちに届いた謎の荷物なんだが」
ラプラスが「博士」と呼ぶ人物は頭のてっぺんに生えた狼のような耳とお尻から生えた尻尾を揺らしながらラプラスたちの側にある黒ダンボールに近づくと小さなガジェットを近づけたりしながら興味深そうに観察を始める
「うーん、怪しい反応は無いねぇ。ただ他の反応も無いからほんとに何がなんだがわからないなぁ…」
秘密結社holoXの頭脳ー博衣 こよりがうーんと唸りながら黒ダンボールを軽く持ち上げて揺さぶる
「……なんだか少し重たい感じのものが何個か入ってる…みたい?」
「こよりにも分からないものってなんだか怖いけど…」
「幹部の警戒もわかるが、中身が気になって仕方ないのは事実だ」
こよりが持ち上げたままにしていた黒ダンボールが横から突然かすめ取られ、こよりが首を傾げる
「細かいことは開けて考えればいいんじゃない?さかまた、思い切って開けちゃうぞー‼︎」
黒いフード付きパーカーを着た少女がハイテンションに黒ダンボールの蓋に手をかける
「あ‼︎おいこら新人‼︎勝手なマネはよせ‼︎」
ラプラスが少女ーholoXの「掃除屋兼インターン」こと沙花叉 クロエの勝手な行動を嗜める
「いーじゃん。さかまたたちなら多少のことなら大丈夫大丈夫」
楽観的に返しながらクロエは黒ダンボールをこじ開けようとするが、中々開かない
「ぐぎぎぎ…‼︎なんだこれ開かない…‼︎」
「ーここは風真にお任せでござる‼︎」
ージャキーンッ‼︎
クロエの持つ黒ダンボールに一瞬閃光が走り、スパッと斜めにダンボールが切り分けられる
「うひぃ⁉︎」と声を裏返らせながら驚くクロエの側に現れた翠色の和装を纏う少女ーholoXの「用心棒」である風真 いろはが腰に差した刀に手をかけながらふふん、と得意げに笑う
「またつまらぬものを切ってしまったでござる…」
決まった…と余韻に浸っているいろはをラプラスが指差す
「オイマテ侍⁉︎ まだこのダンボール要検証中なんだぞ‼︎」
「うぇっ⁉︎そうだったのでござるか⁉︎」
ラプラスの指摘に驚くかざまを他所に切り開かれたダンボールからバラバラと拳大のものが数個転げ落ちた
それらを見下ろした5人が一様に首を傾げた
「…なんだこれ?宝石か…?」
床に転がっていたのはラプラスが言うように宝石のようなものだった
赤、緑、白、紫、黄、青と色とりどりなものが転がっていた
各々がそれを持ち上げたりつついたりする中、ラプラスの目の前に新たなメモがひらりと舞い落ち、それを掴んだラプラスが読み上げ始めた
「…『世界征服を望むものたち。因果に導かれた相棒を選び取れ』?どういうことだ…?」
「世界征服を望むものと言っても、こよたちの場合は面白おかしく配信したりしてるだけだけどねぇ」
「それも立派な征服活動だから間違いはないだろ?」
「世間一般ではそれって征服活動じゃないんじゃない…?」
あははーと笑うクロエをラプラスが睨む
「因果…とかはよく分からないけど、私はこれが綺麗な気がする」
鷹嶺 ルイは赤い宝石を手に取る
「んー…こよはこれかなぁ?綺麗な黄色してるし〜♪」
博衣 こよりは丸い黄色の宝石を手に取り、撫でる
「さかまたはこれ!キレーな青色〜♪」
六角形の青い宝石を手にした沙花叉 クロエが元気に手を上げる
「風真は…これに決めたでござる‼︎」
風真 いろはは緑色の長方形の結晶を手に取る
それを見ていたラプラスがハッハッハ‼︎と大袈裟に笑う
「甘いな貴様ら。そんな宝石なんかに吾輩は動かされない‼︎」
「ラプラス、気にいるのがなかったの?」
「そういうことじゃなーい‼︎」
図星を突かれたのか大きく反論するラプラスは足元の光るものに気づき、それを手に取る
それは金色に輝く星のような形の宝石だった
ニヤリ、とラプラスが笑う
「ーやはり吾輩のような総帥なら、これくらい派手なヤツでないと似合わないだろうなぁ‼︎」
ラプラスが掲げた金色のクリスタルを見てこよりやクロエが騒ぎ出す
「そんなのがあるならこよも選びたかった〜」
「ズリぃぞ、ラプラス‼︎ヤマダ‼︎」
「ヤマダは関係ないだろうが⁉︎」
やれやれとかぶりを振りながらラプラスはメモの続きを口にする
「ん…?『イセカイ界への道標の呪文は』ー」
「ー『ゲート・オープン、界放』……?」
瞬間、メンバーたちが持っていた宝石たちが輝きだし、弾け飛ぶ
「うわっ⁉︎」
「な、なんでござるか⁉︎」
弾け飛んだ宝石たちの中から現れたのは一枚の黒いカード
そのカードたちが光り輝き、それぞれの姿を変えていく
特徴的な双剣を持つ小さい鷲のような姿
大きな帽子を被った猫のような姿
王冠とトライデントを抱くサメのような姿
くりくりと大きな目を持つ小さな狼のような姿
そしてラプラスの前には2本の捻れた角を持つ悪魔のような姿を露わにする
「なー」
驚く間もなく、ラプラスは謎の浮遊感に体が包まれ、自分が落下していることに遅れて気づいた
「の、のわぁぁあぁあぁあぁあ!?!?!?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……思い出した…あの宝石の、というかカードのせいか⁉︎」
ラプラスは改めて辺りを見渡す
元いた世界に似た地形はあるが、オアシスに生えた植物に見覚えはない
「これマジで異世界に来たのか…?そんなファンタジーみたいな話があるのか…?」
途方に暮れはじめたラプラスの前、砂漠の只中を砂煙が爆走していくのが見えた
金色の瞳を細めて見た先で見えたのは砂の上を浮遊しながら走っていく2隻の機械船
前方を走るほうは所々から煙を上げ、やがて砂にその船体を沈めた
その一部始終を見ていたラプラスは少し思案するとはぁ、とため息をついて頭をかく
「ほんとに異世界漂流みたいになってんなぁ」
やれやれと頭を振りながらもラプラスはオアシスから足を踏み出し、船の方へ向かっていった
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
墜落して横転した砂上船から出てきたボロ布を纏う人物の前に後続の小型砂上船から一人の人物が降り立つ
「やっと捕まえたぜぇ?さぁて、アレの居場所を教えてもらおうかガキんちょ」
降り立ったのは黒猫をそのまま人型にしたような獣人
切れ長の目を細めながら身を屈めてボロ布を纏う人を見下ろす
「いや、いやだ‼︎アレは僕らの村のために必要なんだ‼︎」
「村だってぇ?ぎゃはははははははは!!!」
猫獣人は下卑た笑い声を上げる
「コボルダム帝と女帝レイネリアが国盗りで争ってるこのガラガーラ砂漠でお前んとこみたいなちっぽけな村に力が手に入ったとこでなんだってんだよ?ムダムダ‼︎」
猫獣人はボロ布の人物の首根っこを掴み持ち上げる
「うっ…‼︎」
「てめぇの戦う力はロクにねぇならさっさとアレの場所を吐きな。アレはオレたちトワイライト団が有効に使ってやる」
「弱いものいじめとかカッコ悪いぞ、ネコ」
凛とした声が響く
猫獣人ともう一人の諍いにラプラスが割って入ったのだ
「なんだ?お前…見たことないな」
猫獣人の言葉にラプラスはフッフッフ、と肩を揺らして笑うと、いつもの首輪とコートを改めて出現させ、その裾をたなびかせながら告げる
「刮目せよ‼︎吾輩のお名前は、ラプラス・ダークネス‼︎」
「世界征服を目指す秘密結社、holoXの偉大なる総帥だ‼︎」
ビシィッとカッコいいポーズを決めながら告げたラプラスを見た猫獣人が訝しむように眉を上げる
「おいガキ。遊びのつもりならさっさと帰んな」
ガキ、という言葉にラプラスの頬がひくつく
「……はっ、どうやら吾輩の偉大なるオーラに日和ったみたいだな、ネコ科人間」
「あぁ?」
猫獣人はボロ布の人物を投げ捨て、腰に手を当てる
反撃を警戒し、一歩退いたラプラス
「調子に乗りやがって…‼︎痛い目見たいようだなぁ‼︎」
が、猫獣人の行動は予想外のものだった
彼が腰から取り出して構えたのは、カードの束だった
「…は?」
思わず呆けた声が漏れる
「さぁ、さっさとテメェのデッキを出しなクソガキ‼︎」
状況が一瞬理解できなかったラプラス
『この世界は、バトルスピリッツが全ての争いの決定事項になる』
呆けるラプラスにどこからか声が囁きかける
「な、なんだ…?誰だ?」
首を傾げていたラプラスの胸元が金色に輝き、そこから1枚のカードが飛び出してくると光と共に形を変える
現れたのは2つの捻れた角を持つ小さな悪魔だった
「お前は…‼︎」
ラプラスはその姿に見覚えがあった
この異世界(?)に来る時に現れたあの存在だったのだ
『我との契約、まずは感謝しよう。我が名はジャバド。《相棒魔卿ジャバド》である』
「ジャバド…契約ぅ?」
『契約の祝詞を貴様は告げたはずだが?』
「祝詞って…あ、アレか⁉︎」
納得した様子のラプラスを見てフッと微笑んだように見えたジャバドはその姿を再びカードに変じ、そのカードを中心に何枚ものカードが現れ、デッキとなってラプラスの手に収まる
その様を見ていた猫獣人は声を震わせる
「な…今のは、契約スピリット…⁉︎ 姐さんが命懸けで手に入れたのと同じ⁉︎」
ラプラスはデッキと猫獣人をしばらく見比べていたが、うずくまるボロ布を纏う人物を見て覚悟を決めたように猫獣人を睨む
「…まぁ右も左も分からないが、ひとまずは貴様から征服してやるとしよう」
ラプラスはデッキに目を下ろしジャバドに訊ねる
「おい、この後どうするんだ?」
『《戦い》の始まりのセリフは、貴様は既に知っているはずだ』
その言葉にラプラスの脳裏には不思議とフレーズが鮮明に浮かんできた
ラプラスは猫獣人に相対してデッキを構える
そしてどちらともなく、『決闘』のゴングを告げる
『ゲート・オープン‼︎ 界放!!!』
二人の姿が眩い光に包まれる
ラプラスのコートと首輪が消失し、代わりに黒い鎧のようなプロテクターが装着。円を描くように灰色のクリスタルが4つ配置された後、プロテクター中央の星型の窪みに5つの青い石ーコアが装填されると、プロテクターの背から荘厳なマントが伸びる
それを翻しながらラプラスが降り立ったのは広い長方形の荒野のような場所の端に浮く黒く光る玉座を備えた台座。玉座の前にはテーブルのようなものがあり、そこに手にしたデッキを置く
その向かい端に紫のプロテクター、否『バトルフォーム』を纏った猫獣人がバイクのような台座に立っていた
「うお〜‼︎かっけぇ‼︎」
自身が纏うバトルフォームを眺めてラプラスが目を輝かせて感嘆の声を漏らす
「いい気になってんじゃねぇ、クソガキが‼︎」
猫獣人が苛立ちながら声を上げる
ラプラスはそれを見据えながらどこかにいるらしいジャバドに訊ねる
「なぁ、ジャバド。吾輩流石にこのバトルスピリッツ、ってカードゲームのルールは分からんのだが…教えろ」
『なるほど。承知した』
ジャバドの声と共に1枚のカードが現れ、同時にデッキから3枚のカードが飛び出して共にラプラスの手に収まる
『試合開始時の手札は4枚。今の貴様のように契約カードがある場合はうち1枚の代わりに最初の手札として加えることも可能だ。今回はわかりやすく加わってやろう』
「なるほど、正しく相棒ということだな」
『こちらの先行からだな。まずはスタートステップだ』
「わかった。スタートステップ‼︎」
ラプラスのテーブルが光を放つ
『続いてはコアステップだ。リザーブと呼ばれる場所にボイドからコアを追加するが…先行1ターン目は行えない』
「コア…?」
『カードを使用する対価となる青い石だ。最初は3つからスタートし、コアステップやカードの効果で追加される。それとは別に赤いソウルコアを一つ持ってスタートするが、特定のこと以外では使い方は変わらん』
「ふーん、なるほどな」
ラプラスが頷く
『次はドローステップだ』
「うし、ドローステップ‼︎」
ラプラスのデッキから1枚カードが手札に飛んで入る
『次のメインステップで主にカードの使用が行える。コストとして使えるコアはリザーブのコアとフィールドのコアだけ。使い終えたコアはトラッシュに置かれる』
「わかった。メインステップ‼︎」
ラプラスは手札のカードを見比べる
あることに気づき、フッと笑う
「早速お前が使えるんだな」
『そういうことだ』
ラプラスは1枚のカードを掴む
「出番だ、吾輩の相棒とやら‼︎《相棒魔卿ジャバド》‼︎」
ラプラスの口上と共にフィールドにカードが置かれ、コアが乗る
ラプラスたちが見下ろす荒野の決闘場にも大きなカードが現れ、命たるコアが乗ると共にカードからその姿が解放される
バトルフィールドに実体化した《相棒魔卿ジャバド》がマント代わりの翼をたなびかせながら降り立った
「なるほどな。こんな形で現れるのか」
バトルフィールドに現れたジャバドがラプラスの言葉に頷く
『リザーブのコアは使いきった。先行1ターン目にアタックステップはできない故、ここでターンエンドだ』
「わかった。ターンエンド」
ラプラスの宣言でターンが終了し、猫獣人の方にターンが移る
「な…バカな…⁉︎」
猫獣人ーギースはラプラスが呼び出したジャバドを見て戦慄していた
(契約スピリット…じゃない、契約アルティメットだと…⁉︎そんなカードどこに存在してやがった…⁉︎)
ギースはかぶりを振り、ラプラスを睨みつける
「ビビってんじゃねぇ、まだルールもわからんようなガキだぞ?いくらアルティメット使いでも、勝ち目の無いバトルじゃねぇ‼︎」
ギースはニヤリ、と口角を上げる
「スタートステップ‼︎」
宣言と共にギースのテーブルが輝く
「コアステップ、ドローステップ‼︎」
「メインステップ‼︎」
ギースのフィールドに2枚のカードが飛び出し、バトルフィールドに新たな存在が実体化する
「《ダーク・デモボーン》を2体召喚‼︎」
現れた2体の小さな黒い骨の剣士がカタカタと骨を鳴らす
「ん?ちょっと待て‼︎なんで2体も召喚できるんだ⁉︎コストが足りないんじゃないのか⁉︎」
ラプラスの指摘通り、ダーク・デモボーンはコスト2のスピリットカードである
ギースはコアステップで1コア増加させ、手持ちのコアは5個
コスト2を2体分支払い、残るコアは1個
スピリットやアルティメットの維持にはそのカードにLv1維持に必要なだけコアを乗せる必要がある。Lv1維持にコア1つを要求するダーク・デモボーンを2体並べるにはコアが足りないのは道理だ
『カードには《軽減シンボル》というのが存在する。コストの横にある色付きのアイコンがそれだ』
『フィールドにあるシンボルの数と色に応じて、そのコストが軽減されてより低いコストで呼び出せる』
「なるほどな…あの骨モンスターのコストは2だけど、軽減は2個だから先に呼び出したヤツのシンボルで1減って2体目は1コストで呼び出せたってことか」
『聡明だな。そうでなくては困る』
ジャバドの言葉にラプラスは得意げに鼻を鳴らす
「これでも吾輩、カードゲームは慣れているからな」
「何をごちゃごちゃ言ってやがる‼︎アタックステップ‼︎」
ギースがイラつきながらアタックステップに突入する
「ダーク・デモボーン‼︎行け‼︎」
ギースの命令に従い、黒い骨剣士がバトルフィールドを駆ける
『敵のスピリットなどのアタックへの選択肢は3つ。自分のスピリットやアルティメットたちでブロックして防ぐか、ライフで受けるか、フラッシュタイミングのカードで妨害するか、だ』
「まずは…そうだな…」
ラプラスは無い胸を張り、宣言する
「ライフで受ける‼︎」
ラプラスの宣言と共に彼女の周囲に紫のバリアが展開され、そこにダーク・デモボーンが刃を突き立てる
大きな衝撃と共にラプラスのバトルフォーム中央の青いコアの1つが吹き飛ぶ
「ーッつぅ…‼︎痛いな…一応まだ夢かもとか思ってたが、これだけ痛いと夢じゃなさそうだな…‼︎」
一筋汗を頬に垂らしながらもラプラスはニッと笑う
「ダーク・デモボーン‼︎追撃だ‼︎」
残るもう一体もアタックを開始する
『ライフで受けた場合、減ったライフ1につき一つリザーブにコアが増える。コアが増えた今、我が効果に必要なコアは揃っているぞ』
「なんとなくそんな気はしていた。フラッシュタイミング‼︎」
ラプラスが右手を突き出し告げる
「相棒魔卿ジャバドLv3・4の効果‼︎ターンに一度、自分のフィールド/リザーブのコア一つをトラッシュに置くことで、相手のスピリット/アルティメット1体のコア2個をリザーブに送る‼︎アタックしているダーク・デモボーンを狙う‼︎」
リザーブのコア1つが移動すると共にジャバドの目が輝き、アタックしていたダーク・デモボーンのコアが全てギースのリザーブに置かれる
Lv1の維持コアすら失ったダーク・デモボーンは消滅し、アタックは中断される
「ぐっ⁉︎」
唇を噛み締めるギース
効果が終わったはずのジャバドの体が更に輝く
「それに合わせてジャバドもう一つの効果。系統:《邪神》を持つ自分の効果で相手のフィールドのコアがリザーブに移動したことにより、吾輩のカウント+2‼︎更に「魔卿」の効果だったことで1枚ドローだ‼︎」
宣言と共にラプラスの座る玉座の横にモニターのようなものが現れ、数字が0から2に変化。そしてデッキから1枚がラプラスの手札に加わる
「カウント…こいつはなんなんだ?」
『後々我が力のために必要なものだ。効果の行使や、転醒により増加するが…今は我や他のカードの効果で増えると思っておけばよい』
「わかった」
素直に頷くラプラスを睨みながらギースが吐き捨てる
「ターンエンドだ…‼︎」
続く第3ターン。ラプラスのターン
「メインステップ‼︎軽減があるなら、こいつが行けるな」
ラプラスが手札からカードを1枚取り、放つ
「召喚条件ライフ2以上を満たし、《バーゴイル》を1体召喚‼︎」
バトルフィールドに現れたカードから赤と緑の渦が生まれ、その中から黄金に輝く悪魔像のようなものが出現し、バトルフィールドに降り立つと共に黒いその姿を現す
「召喚条件…こいつ、あの骨みたいなのとは違うんだな」
バーゴイルの隣で目配せしながらラプラスが告げ、バーゴイルが頷くような仕草を見せる
『我々アルティメットはスピリットよりも強力な力を持つものが多いからな。その制限というわけだ』
バーゴイルの体が赤と緑に輝く
「バーゴイル召喚時効果‼︎ ボイドからコア1つをバーゴイルに乗せる‼︎」
テーブル上のバーゴイルのカード上にコアが1つ現れる
「この増えたコアを使って、もう1体バーゴイルを召喚して更にコアを追加だ‼︎」
ラプラスの宣言と共にもう1体バーゴイルが召喚され、ボイドからコア1つがバーゴイル上に追加される
2体目のバーゴイル上にはソウルコアが置かれた
「よーし‼︎遂に吾輩のアタックステップだ‼︎」
ラプラスが手を広げながら宣言する
「ジャバド、バーゴイルたち、総攻撃だ‼︎」
ジャバドが頷き、バーゴイルが吠え、3体がギースに突撃する
疲労状態ー行動済みのダーク・デモボーンしかフィールドにいないギースには選択肢は一つしかなかった
「まとめてライフで受けてやる‼︎」
バーゴイルたちの爪撃が2度、更にジャバドの一撃がバリアに命中し、ギースのライフが3つ吹き飛ばされる
「ハッ、ありがとよ。オレにコアをくれて…‼︎」
「む、なるほどな…あまり一気にライフを減らすと塩を送ることになるのか…ターンエンドだ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「オレのターン‼︎ スタートステップ‼︎」
「コアステップ、ドローステップ‼︎」
デッキから引いたカードを見たギースがニヤリと笑う
「…そうだ。例えアルティメットだろうが、召喚されなきゃ怖くねぇ。なら、オレにピッタリだ‼︎」
ギースがカードを放つ
「メインステップ‼︎ 《ソードール》を2体召喚‼︎」
バトルフィールドに剣のように鋭い腕を持つ骸骨が2体現れる
「そして‼︎ 《骸蛇スカルピオーネ》をLv2で召喚する‼︎」
放たれたカードから紫の旋風が吹き荒れ、カタカタと笑うように鳴る骸骨の頭が現れ裏返る
現れたのは双頭をハサミに、逆頭を尻尾に抱く骨のサソリ
「召喚時効果で1枚ドローする」
手札を増やすギースの隣で切り札たる骸蛇スカルピオーネが不気味に咆哮した
「アタックステップ‼︎行け、スカルピオーネ‼︎」
指令を受けたスカルピオーネが咆哮し、6脚を蠢かせ進撃
アルティメットたちが皆疲労し、行動できなくなっているラプラスに今選択肢はない
「ライフで受ける‼︎」
出現したバリアをスカルピオーネの尾が強かに打ち据える
ラプラスのライフが砕け散り、残るライフは3
思わずよろめくラプラスの眼前で骨のサソリはカタカタと不気味に笑う
「スカルピオーネのLv2・3の効果‼︎こいつのアタックがライフを削った時、お前の手札1枚を見ずに選び破棄する‼︎」
「はぁっ⁉︎手札破壊かよ…‼︎」
「その手札をもらうぞ!」
ギースの指名に従い、スカルピオーネがラプラスの手札を1枚舐め取り、トラッシュに落とす
落とされたのは白晶防壁。先程効果でドローしたカードだった
「はっ、いいカードを落としたぜ…‼︎ダーク・デモボーン、続け‼︎」
ダーク・デモボーンの突撃を見てラプラスは手札を見る
残る手札はイビルドロー、甲殻伯メタリフェル、四魔卿を統べる者の玉座の3枚。反撃に使えそうなカードは無い
「その契約アルティメットの効果を使って防ぐか?それでも構わないぜ…‼︎」
「……」
ラプラスは得意げなギースの様子を金色の目を細めて睨む
(もし、ダーク・デモボーンを消滅させれば向こうのアタック可能なスピリットはソードール2体。吾輩のライフは3。それでは削りきれやしないはず…)
目に入ったのはギースが2枚握る手札のカード
(恐らく吾輩にトドメを刺すための秘策があの中にある。でなければそこまで余裕にはなれないはず…)
無限に思える一瞬の中、思案を巡らせるラプラスだったが、意を決して宣言する
「いいだろう。貴様の挑発乗ってやる‼︎ジャバドの効果‼︎バーゴイルのコアを1つトラッシュに送り、ダーク・デモボーン上のコア2個までをトラッシュに送る‼︎」
ジャバドが手をかざすと共にダーク・デモボーンからコアが移動。維持コアを失ったダーク・デモボーンが消滅する
「この時を待っていたぜ‼︎マジック、《リゲイン》を使用‼︎」
手札からマジックをギースが発動させる
「オレのスカルピオーネを回復させる‼︎」
待機状態になっていたスカルピオーネが白い光に包まれて起き上がる
横に倒され疲労状態になっていたスカルピオーネのカードも縦向きに戻り回復状態を示す
「やはり、秘策を仕込んでいたか…‼︎」
これでアタックできるギースのスピリットは3体
ラプラスの3つのライフを削りきれる数だ
「手間取らせてくれたな、クソガキが‼︎」
ニヤリとギースが唇の端を持ち上げる
ラプラスはそれでもなお怯む様子を見せなかった
「ジャバドのもう一つの効果‼︎吾輩のカウントを+2し、1枚ドローする‼︎」
ラプラスの側のモニターの数字が4に変わる
デッキに手をかけ、ひといき吐き出したラプラスはカードを1枚ドローする
引いたカードを見たラプラスは一瞬驚きを見せるが、すぐにニヤリと微笑む
「なぁ、ギースとやら」
「あぁん?」
ギースはラプラスの問いかけに応ずる
「貴様は、あのちっこいのを捕まえてどうする気だ?」
「ちっこいの…?あぁ、あのガキか。そりゃオレらが探してる『大いなる力』の場所を問いただすのさ」
「『大いなる力』…?なんだそれは?」
「なんでもとんでもないカードらしいなぁ。そいつが手に入れば、オレたちはこの国を征服することもできるかもなぁ」
「征服…なぁ」
クックック、とラプラスが歯を見せて獰猛に笑う
「ーお前らの征服、小さいなぁ」
「んだと…⁉︎」
ハッハッハ‼︎と高らかに笑い、決めポーズを決めながら告げる
「改めて名乗ろう‼︎吾輩のお名前はラプラス・ダークネス‼︎」
「この世界も征服する、秘密結社holoXの偉大なる総帥だ‼︎」
ラプラスの宣言に応えるかのようにバーゴイルに乗っているソウルコアが光り輝く
『ー時は満ちた』
「みたいだな」
ジャバドとラプラスが視線を合わせ頷き、ドローした逆転の1枚を手にする
「吾輩のカウントは4、フィールドには系統《獄契約》を持つジャバド、そして今はお互いのアタックステップ」
「召喚条件も、煌臨条件もクリアだ‼︎」
ラプラスの手にしたカードが紫の炎を纏ったように煌めく
「魔卿を統べる魔卿‼︎ 今、世界を統べる威を見せよ‼︎」
「《四魔卿を統べる者ロード・ジャバド》、契約煌臨‼︎」
バーゴイルのソウルコアがトラッシュに移動し、バーゴイルが消滅すると共にジャバドの立つフィールドから紫の炎が湧き上がり、ジャバドの体を包み込む
炎の奥から妖しく眼光が輝くと、その炎を引き裂き、黄金に煌めく魔人のような姿になったジャバドが姿を現し、黄金の煌めきを振り払って煌臨する
「煌臨、だと…⁉︎」
ギースがたじろぐ中、ラプラスは続けて宣言する
「ロード・ジャバドの効果‼︎吾輩の手札を1枚捨て、2枚ドロー‼︎」
ラプラスは手札のメタリフェルをトラッシュに送り、デッキから飛び出した2枚を手にする
「更に‼︎系統《邪神》を持つカードを捨てたことにより、相手のフィールドのコア2個をリザーブに送る‼︎」
「な、んだとぉ!?」
ロード・ジャバドの眼光が輝き、その腕が振るわれ紫の衝撃波がソードール2体に飛来。そのコア1つずつをリザーブに送ったことにより、2体のソードールが消滅する
「た、ターンエンド…」
手札に反撃のマジックはなく、回復状態のスカルピオーネしか残っていないギースは力無くターンエンドを宣言するしかなかった
「吾輩のターンだな」
ラプラスがニヤリと笑う
「スタートステップ‼︎コアステップ、ドローステップ、更にリフレッシュステップ‼︎」
コアが追加、デッキからカード1枚がドローされ、疲労状態のアルティメット3体が回復すると共にトラッシュのコアが全てリザーブに戻る
「メインステップは何も行わず、このままアタックステップ‼︎バーゴイル、行けッ‼︎」
バーゴイルが飛来する
「バカが、返り討ちだ‼︎防げ、スカルピオーネ‼︎」
バーゴイルに立ちはだかるスカルピオーネ
バーゴイルのBPは5000、スカルピオーネはLv2でBP7000
骨のサソリの尾がバーゴイルを絡め取り、押さえ込む
「甘いのは貴様だ‼︎ジャバドの契約煌臨元効果‼︎吾輩のリザーブのコアをトラッシュに置き、スカルピオーネのコアを2個リザーブへ‼︎」
ロード・ジャバドが手をかざし、スカルピオーネのコアがリザーブへ移動する
それによりLv1にダウンしたスカルピオーネのBPは4000
バーゴイルはその尾を掴み、引き倒してトドメの一撃を叩き込む
ひしゃげたスカルピオーネは爆散、バーゴイルは勝利の雄叫びと共にラプラスの下へ戻る
「更にフラッシュタイミング‼︎リザーブからコア2個をトラッシュに送り、手札から《獄風伯ヌーヴェル・バーグ》を召喚‼︎」
ロード・ジャバドたちの隣に新たなカードと共に黒い風を纏うハチのような姿のアルティメットが現れる
「召喚時効果でボイドからコア1つをヌーヴェル・バーグの上に追加。そのままヌーヴェル・バーグで追撃‼︎」
邪悪な羽音と共に飛来したヌーヴェル・バーグが両腕の針を振りかぶる
「ら、ライフだ‼︎」
一撃がギースのバリアを震わせ砕く
ライフが1つ吹き飛び、残るギースのライフは1つ
ギースはフィールドの砂煙を掻き分け現れる巨影に気づき、その威容をただ見上げる
「これで終わりだ。ロード・ジャバドでアタック‼︎」
「ッ!?!?ライフで、受ける…ッ‼︎」
ロード・ジャバドのかざす腕から放たれた紫の炎がギースの最後のライフを砕く
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
その衝撃に吹き飛ばされ、ギースはバトルフィールドから姿を消した
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バトルフィールドから戻ってきたラプラスを見たギースは舌打ちを漏らすと乗っていた小型砂上船に戻る
「お、覚えていやがれ‼︎」
「またコッテコテの捨て台詞だな…」
呆れるラプラスの前からギースを乗せた砂上船はUターンして去っていく
残されたラプラスはフンと息を吐きながら側の砂上船の残骸からこちらを見ていたボロ布を着た人物を見る
「もう出てきて大丈夫だぞ」
ラプラスの言葉に恐る恐る前に出てフードを取る
中から現れたのは褐色の肌を持つ猫耳の生えた少女だった
「さっきの猫男といい、なんか猫っぽいのが多い異世界だな」
「こ、この辺りの…種族だから…私たち…」
たどたどしく答えた少女を見てラプラスはやってきたオアシスの方を指差し告げる
「立ち話もアレだし、向こうのオアシスに行くぞ。ここだとただ暑いし、話は色々聞きたいからな」
少女にラプラスが小さな手を伸ばす
「吾輩はラプラス・ダークネス…となんか名乗ってばっかだな…貴様の名前はなんだ?」
少女はラプラスの手を取り立ち上がる
「私、は……ルニ。この砂漠の…エジッタイト砂漠の秘宝…大地のアルティメットを探してるの…」
「大地のアルティメット…?なんだそれ」
少女ールニの言葉にラプラスが首を傾げる
『その話、詳しく教えてもらおう』
ラプラスの懐が金色に輝き、中から飛び出したカードが小さな悪魔のような姿をとる
先程バトルフィールドに現れていたジャバドが姿を現したのだ
「あ、お前…」
『我が盟友。どうやら、いきなり当たりを引いたらしい』
「当たりって…なんのことだ?」
ジャバドが頷きラプラスに視線を向ける
『我が統べるはずの四魔卿アルティメット、その1枚がこの砂漠に眠っているらしい』
ルニとジャバドに導かれるラプラス
そこにギースをはじめとした盗賊団を束ねる女頭領が現れる
その顔はある人物にそっくりで…⁉︎
ギースの御礼参りに勝負を仕掛けてくるヤミナ
共に現れる新たな契約スピリット
大地のアルティメットへの道を掴むのはどちらだ⁉︎
次回
「女頭領の挑戦‼︎ 相棒魔卿vs黒蟲魔王‼︎」