NARUTO-カルタ新伝- 卑の意志を継ぐ者   作:新名蝦夷守

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序幕 終わりと始まり
001.伝説の最期


~雷の国・首都~

 

 

 雷の国南部に位置するこの首都で、当初の予定であれば、お互いの建国以来長年いがみ合っていた両国が初めて手を取り合うという歴史的快挙となる記念すべき日だった。

 

 それが一瞬の出来事により瓦解した。

 

 雲隠れの里が誇る生ける伝説にして最高戦力。

 忍界大戦時、雲隠れの英雄として自里からは崇められ、他里からは畏れられた1組の兄弟。

 

 両角(もろずみ)一族の金と銀。

 

 通称、金角と銀角。

 

 現在は雲隠れの里長である雷影の護衛として、火の国・木ノ葉隠れの里との二国間同盟の締結式に出席していたその二人。

 

 木ノ葉隠れの火影である千手扉間と雲隠れの雷影エーが同盟を結ぶことが記されている締結文書に署名をし、雷の国の大名をはじめとする多くの自国民が見守る中、堅い握手をするべく二人の影が近付いたその時───。

 

 ───鮮血が舞った。

 

 

 会場は呆然からの騒然。

 

 雷影の後ろに控えていた金角が突然の尾獣化と同時に木ノ葉の火影扉間と自里の長である雷影エーに襲いかかったのである。

 

 扉間は反射的にダメージを最小限に抑えるべく飛び下がるも肩から流血。

 エーは咄嗟の反応すら遅れ、片腕を一本引き千切られた。

 

 木ノ葉の護衛小隊が扉間と金角との間に割って入る。

 

「金角! 貴様ァァ!!」

「火影様! ご無事ですかっ!」

 

 今にでも敵に飛び掛かりそうな青年と一瞬たりとも敵から目を離すまいと鋭く下手人金角を睨みながらも扉間の容体を心配する青年。

 

 それとは逆に雲隠れの護衛小隊は動きが鈍かった。

 それもそのはず。

 信頼の塊であった自国の英雄が目の前で他里の長と自里の長に仇を成すという大罪を犯したのだから。

 

 その僅かな空白の時間で、次は自国の大名を護っていたはずの銀角がその大名を九尾の衣で圧し潰した。

 

 そしてそれが合図であったのか、会場の内外からは多数の爆発と共に火の手が上がり、会場内では大名家を護る雲隠れの忍びとそれを襲う雲隠れの忍びとの間で乱戦が始まった。

 

 木の葉の護衛小隊と金角との睨み合いという牽制が続いていたが、雷影のもう一人の護衛であるビーが再起動し金角に対して攻撃を仕掛けたことによって均衡は崩れた。

 しかしながら金角は瞬身の術を用いての迷いのない遁走。その追撃に移るビーにより、その場は一時、緊張の糸が緩んだ。

 

 

扉間は負傷した肩に軽く手で触れながら覇気を込めた言葉を発する。

 

「どういうことだ? 雷影殿」

 

「ほ、火影殿!! すまぬ!この事態は予期できなかった我等が雲の落ち度! 早急に木ノ葉へとお戻りくだされ! 木ノ葉の方々に万が一などあれば───」

 

 ぼたぼたと肩の先から血を落としながら語る雷影の言葉を聞きながら扉間は思考を速める。

 

 金銀兄弟のクーデターか。

 我が木ノ葉との因縁があったにせよこれほどの大罪を犯してまで未来のためのこの和睦を。忍び耐えることを拒否するのか……。

 

「このような事態となってしまったこと誠に申し訳ない! しかしながら国内がこのような状態となってしまっては同盟の維持など不可能。重ね重ね申し訳ないが今回の同盟は無かったことに「雷影殿」」

 

 まだ雷影の言葉は続いていたものの扉間は静かにその言葉を遮った。

 

「本日、我が木ノ葉と雲は同盟国と相成った。我々は互いの初代様達より受け継いだそれぞれの影の二代目。このような目出度い門出の日にこのような事態に陥ったことは誠に遺憾ではあるが、ここは初めての共闘と行こうではないか。雷影殿」

 

「……火影殿」

 

「まぁ、紆余曲折ありながら漸く漕ぎ着けたこの同盟をクーデター何ぞで倒れられてまた敵国からやり直しになるとこっちも困るんでな」

 

 幼少の頃から数えても滅多に見せることのなかった悪戯っ子のような笑顔を見せながら扉間は雷影へと歩み寄る。そして、腕が無くなり血が止めどなく流れている肩の治療を始める。

 

 初めて見る火影扉間の表情が、その口から発せられた言葉が、本心から出ているものということは雷影にも分かっていた。

 しかしながら、数ある本心の中のひとつでしかないということも分かっていた。

 

「血を流し過ぎだ雷影殿。少々乱暴なやり方だが火遁で止血する。そのあと医療水遁で火遁による火傷は治そう。尾獣のチャクラによる傷はしばらく病むと思うがそれは諦めてくれ」

 

「すまない火影殿。恩にきる」

 

 雷影エーはこの時、本心から思った。

 自分の代で木ノ葉と。二代目火影・千手扉間と手を結ぶことが出来て本当に良かったと。

 過去のことを綺麗さっぱり水に流せるわけではない。火影扉間も綺麗なだけの施政者ではない。寧ろ清濁併せ呑むどころか自分から濁すことも厭わない人物であることは確かだ。それでも、一個人として信用はできる傑物だと。

 

 そんなことを思われているとは露知らず扉間は雷影への荒療治を続けながら、自身の部下へと指示を出す。

 

「カガミ。お前は至急雷の国との国境警備隊に赴け。国境の守りは最小限に回せる戦力は全てこちらにつれてこい。但し、到着したとしても乱戦には加わるな。敵も味方も同じ雲隠れの忍び。そこに木ノ葉が割り込んでも余計に混乱が生じる。負傷者を運び入れる簡易的な野戦病院の建設に当たらせ、その警備と防衛に従事させろ。

 カガミ以外の全員は雷影殿の簡易治療が終わり次第、逆飛雷神の術で里に送る。

 サルはこの反乱に呼応した第三国からの侵攻や里内でのテロといった最悪の事態に備えて里の守りを固めろ。他の国境警備隊には警戒レベルを1段階上げる指示。それから医療中隊に召集をかけろ。里の指揮権はお前に任せる。

 その他人員は召集した医療中隊の護衛小隊を組織しろ。そして速やかに医療中隊を引き連れて戻ってこい」

 

 クーデターを起こした金角銀角派の忍びと現政権派の忍びの戦闘は既に乱戦と化している。

 そしてそのどちらの派閥の忍びたちも雲隠れの額宛を付けている。

 このような敵も味方もわからない状況下で物理的戦力としての援軍を出してしまうとより戦場が混沌とし、収拾が付かなくなる可能性もある。それであれば後方支援に徹するべきだと判断した扉間。

 

「雷影殿もそれでよいな」

「あぁ、頼む」

 

 もちろん先程の指示の理由としてはそれ以外にもある。

 直接戦闘に加わることによって木ノ葉の忍びが殺し殺されが多かれ少なかれ出てくる。

 忍者に死はつきものだとは言え、仲間や家族の死を完全に割り切れるものなど中々いない。そして同盟国間での新たな憎しみは無駄以外の何物でもない。

 

 逆に今回の事件で負傷者の治療という後方支援に徹してさえいれば、好意を向けられることはあれどマイナスの評価をされることは無くなる。

 つまり今後、雲隠れとの友好的関係を続けやすくなる。

 

 扉間の指示は現状の打開策のみならずその先をも見据えたものであった。

 

 

 雷影の応急処置も終わり、部下達に「指示通り頼んだぞ」と声をかけてから《逆飛雷神の術》を発動させて木ノ葉隠れの里へと送った扉間。

 

 この場には扉間の他に雷影と雷影の残っている護衛2人のみとなった。

 

「さて、雷影殿」

「なんだ火影殿」

「この度の謀叛を起こした金角と銀角の討伐にはこの二代目火影・千手扉間も助太刀するぞ」

 

 このような事態は早期に収束を図るのが鉄則。儂と雷影殿が力を合わせれば英雄金角銀角と言えどもすぐに鎮圧できるだろう?と、扉間は言葉を続けた。

 

「むむむ……火影殿。その提案は有り難い限りだが、火影殿自らの援軍とはいえ……いや無いとは思うがもし万が一などあれば───」

 

 雷影が扉間の参戦を遠慮する言葉を並べていたその時。

 雷の国の首都中央にそびえ立つ国の象徴ともいえる大名家の城が禍々しいチャクラの塊によって爆砕した。

 

 それを行った犯人は六本の尾を逆立てながら天に向かって大気が割れるような大きな咆哮をしている。

 

「雷影殿。もう悠長なことは言っていられないようだぞ」

 

 城を崩壊させたものによる咆哮に呼応するかのように禍々しい巨大な影がもうひとつ。

 首都郊外から出現した。

 

 その巨大な影は既に八つの尾を持ち、自身から溢れ出る憎しみを天に大地に際限なく、見境もなくぶつけ始めていた。

 

「まさか! 金銀が九尾の力を八本目まで引き出すことが出来たとは……」

「こうなってしまえば儂も周囲に気を遣いながら戦うことは最早出来んぞ。雷影殿」

「あぁ、分かっている。火影殿、申し訳ないが共闘を頼む! 火影殿は城にいる方を! お前達は戦場内外の忍びをまとめて避難を開始しろッ!!」

 

 

 

 

 

 その後、戦闘は三日三晩続いた。

 

 暴走する九尾の出来損ないが2匹。

 それに対峙するのは隻腕の雷影となったエーと雲隠れの人柱力ビー。そして火影の千手扉間。

 尾獣よりも大きな体躯をもつ扉間が口寄せした大蛞蝓のカツユ。

 

 その戦闘は化け物たちの饗宴であった。

 

 化け物たちによる戦端が開かれてから僅か半日での訃報。二代目雷影エーの戦死。

 このハイレベルな殺し合いに雷影と言えども片腕を失ったばかりという大きなハンデを抱えながらであると容赦のない死が待っていた。

 それが例え、たった一度のほんの僅かな刹那ばかりの隙をみせてしまっただけだったとしても。

 

 そして雷影の死を切欠に始まった人柱力ビーの暴走。

 それにより、扉間は不完全な九尾2匹と理性を失った完全体の八尾の計3体の尾獣を相手取り敵味方もない乱戦の中、大立ち回りをすることとなる。

 

 そのような危機的状況に陥ってから仙人と化した扉間と、木遁影分身を依り代として出現させた六尾犀犬。

 そこからが本当の地獄絵図であった。

 

 

 後の世に【金銀の変】と呼ばれることになるこの出来事により、雷の国の国力は大きく減退した。

 大名家の本家筋は文字通り消滅し、分家から新たな大名を選出。首都は崩壊し、荒野と化したため遷都を余儀なくされた。

 

 雲隠れの里の戦力も大きく低下。

 謀叛人である金角、銀角の戦死と謀叛に参加した忍びの処刑。

 また関わった忍びの一族郎党も処刑又は幽閉。

 二代目雷影エーの戦死に、その相棒で今代の人柱力ビーの戦死。

 戦略兵器たる尾獣八尾こそまだ幼い新たな人柱力に封じられたため流失を免れたものの、他にも多くの人材を失った。

 

 そして同盟国の木ノ葉隠れの里からも戦死者がひとり。

 

 その者の名は、

 

 二代目火影・千手扉間。

 

 かの者は開戦から半日と経たず戦死した雷影に代わり尾獣と化した金角と銀角との死闘を繰り広げ、更には暴走した八尾をも三日三晩相手取り、遂には金銀兄弟の持つ九尾のチャクラの全てと八尾のチャクラの一部を自身に封じ、八尾本体は最後の力を振り絞り新たな人柱力に封じたことにより一連の事件に終止符を打った。

 

 

 千手扉間の生涯は異国の地で終えることとなった。

 

 しかし、同盟国の窮地を自身の命を投げ打ってまで救った救国の英雄として雷の国では永遠と語り継がれることとなる。

 

 そして扉間の思惑通り火の国・木ノ葉隠れの里と雷の国・雲隠れの里、両国の友好も次代へと引き継がれることとなったのである。

 

 

 







こんにちはあるいはこんばんは
エージェント《読者》

おひさしぶりあるいははじめまして
新名蝦夷守です。

前作書いてる途中から別プロットで書いていたものを少し肉付けしてみました。試しに投稿してみました。
2,3話はストック作ってみたけど続けられるかな。どうじゃろ。スマホだし難しいかもね
感想、高評価あったら嬉しいですー
では。
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