NARUTO-カルタ新伝- 卑の意志を継ぐ者   作:新名蝦夷守

2 / 6
002.千手扉間の一生

 時は遡り、群雄割拠の戦国時代。

 

 各国は世界各地に点在する忍び一族を戦争の度に傭兵として雇い入れ勢力拡大に躍起になっていた。

 

 その中でも特に非常に高い戦闘能力を誇り最強との呼び声高い有名な忍び一族が「森の千手一族」と「うちは一族」。

 

 戦争をしている国がどちらかを雇えば、その敵国はもう片方を雇わざるを得ないとまで言われていた。

 

 そんな血を血で洗う悲惨な時代に生まれた千手扉間の少年時代は戦場に駆り出される毎日。

 

 そして彼にはそんな時代を生き残るための術を生み続ける才能があった。

 

 例えば、安全地帯からの情報収集を可能にする影分身。

 例えば、怪我や病気から自身と味方を癒やす医療水遁。

 例えば、その場をギャグ時空へと変えてしまい死亡率重傷化率を著しく低下させる物凄いカンチョーである千年殺し。

 

 ……まぁ、最後のは置いておくとしても、少年時代から兄である千手柱間と共に一族の戦力として数えられていたのであった。

 

 そんな彼であっても戦場では愛する弟を見殺しにせざるを得ないこともあった。

 その直後停戦となり、何処にもぶつけることの出来ない感情を兄にぶつけた喧嘩の最中、偶然柱間の二の腕の肉を噛み千切り、誤飲してしまったことによりその後、兄と同じ木遁を使えるようになったこともあった(ちなみにその時も柱間の二の腕はすぐに再生された。流石の一言である)。

 

 その経験があったことで兄を(物理的に)喰えば木遁を扱えるようになると考えた扉間が修行中に間違って(わざと)兄の肉を削ぎ落とし、まだ初陣前の弟板間に豚肉と偽って食べさせたこともあった。

 ちなみに板間が木遁を扱えるようになることは無かったため見当違いだったかと落胆し、以後扉間が兄の肉を削ぎ落とすことは無くなった。

 もし、この仮説が上手くいっていたとしたら何度でも兄の肉を削ぎ落として近親者に食べさせていたかと思うと何とも猟奇的で非人道的な弟である。

 

 ただこのエピソードがあったからこそ板間の生命力と絶対的なチャクラ量の底上げがされ、正史とは違い大往生が出来たことは扉間は知らない。

 

 

 時は進んで青年時代。

 兄柱間から子どもが戦争で亡くなることのない平和な世界を作りたい。様々な一族が手を取り合うそんな隠れ里を作りたいという相談を受ける。

 扉間はそんな理想家の兄の妄想を少しでも現実味を帯びさせるべく、遠縁にあたる忍びの一族や今までの戦争で共闘したことのある一族などとコンタクトを取り始める。

 

 他の一族と会合を重ねる内に扉間たち兄弟の縁談などが持ち上がるものの纏まらないまま暫くしてうちは一族との間に最後の戦争が勃発。互いに最大戦力を出し切って疲弊。両一族は大きく勢力の低下を招いた。

 千手一族は男手が半数近く戦死。

 うちは一族は戦死者の数こそ千手一族ほどでは無いものの再起不能者が多数に加え、現当主うちはマダラの実弟にして右腕だったうちはイズナが扉間との一騎討ちの際に《飛雷神猛毒斬り》を受けその場で戦死した。

 

 戦後、千手三兄弟は以前から他の一族に提唱していた複数の忍び一族による相互扶助組織の設立に向けて邁進する。

 扉間の策で政略的な婚姻も含め、他の一族との融和政策を始めた。

 

 

 こうして歴史上初の一族の垣根を越えた忍びの忍びによる忍びのための組織「木ノ葉隠れの里」が火の国国内に設立された。

 

 その木ノ葉隠れの里には多くの忍び一族が参画した。

 千手一族の遠縁にあたる「羽衣一族」「はたけ一族」「うずまき一族」。

 以前から協力関係があった「猿飛一族」「山中一族」「奈良一族」「秋道一族」。

 独立独歩の意識が強いものの柱間や扉間の思想に共感し参画することになった「日向一族」「雪一族」。

 そして戦国時代最大の敵として立ちはだかっていたあの「うちは一族」。

 

 他にも声を掛けた忍び一族の大多数は賛同し、参加しなかった忍びの一族は木ノ葉隠れの里を真似て別の国にて隠れ里を設立するようになった。

 

 そんな中、千手三兄弟が相次いで結婚を発表する。

 長男柱間はうずまき一族のミト。

 次男扉間は日向一族宗家の長女ヒナコと雪一族のましろ。

 四男板間は山中一族のいのこと奈良一族のナウシカ。

 

 3人中2人が重婚になってはいるが、この時代の里の掟に重婚の禁止はなく、婚姻を結ぶ総両家の間で特段問題が無ければ結婚が可能であったのだ。

 

 そして婚姻の発表と同時に柱間は祝福されながら里の長・初代火影となった。

 

 しかし扉間は木ノ葉隠れの里が設立されてからも生き残るための術の開発を怠ることは無かった。

 例えば、既に開発済みの医療水遁に日向一族の白眼を併用することにより飛躍的に治療技術を向上させたり、山中一族の秘伝忍術を解析することにより魂の理に触れたり、うずまき一族の封印術を更に改良したり。

 

 もちろん仕事のメインは里の内政だったり、外交だったり、火の国との密な関係の構築だったりになるのでかなりのハードワークになっていた。

 

 

 しかしながら扉間が属する木ノ葉隠れや火の国の外交努力も虚しく後の世に第1次忍界大戦と呼ばれることになる大戦が勃発。

 

 この戦争は忍びの隠れ里という大きな軍事組織が出来てから初めての戦争となり、過去最大の犠牲者が出た戦争だった。それは皮肉にも軍事衝突の規模が造り上げられた組織対組織となったからであった。

 

 火の国と木ノ葉隠れの里は地理的に大陸中央に位置する関係で周囲は敵に囲まれていた。

 その為、多方面に兵力を分けなければならないという兵法上の下策をとるしか方法がなかった。

 

 そこで扉間がとった策が天災の一つと数えられている尾獣を兵力として組み込むことだった。

 

 霧隠れとの戦線付近の火の国内で六つの尾を持つ尾獣が確認されたや否や、うずまき式の封印術に改良を加えた独自の封印術で六尾を自身に封じ込むことに成功した。

 神話時代を除く有史以来、史上初の人柱力の誕生である。

 

 それから暫くは自身の中にいる六尾を抑えるために戦場からは離れ、里の守りについた。そしてその間に忍びが直接の戦闘を行わずとも戦争に勝てる戦略兵器や化学兵器、生物兵器の研究にも手を付け始めたのもこの頃のこと。

 

 その後、各戦線が膠着状態になると六尾以外の尾獣の更なる捕獲に動き出す。

 

 その結果、柱間が四尾七尾八尾、扉間が二尾五尾、板間が三尾を封じることに成功し、それを風の噂として巷に情報を流すことによって各国首脳部の耳にも届くこととなる。

 対火の国・木の葉隠れの里では協力体制を敷いていた各国の間で戦略兵器たる尾獣を多数保有するかもしれない木ノ葉に対してこのまま停戦協定に入りたい国とこの状況こそが木ノ葉が謀った離間の計と捉えて一気に攻め入りたい国とに分かれ足並みが揃わなくなった。

 そしてその状況こそが扉間が考えた離間の計であった。

 しかし、扉間にとって尾獣を敵国本土や戦場に解き放つのは最終手段でしか無い。なぜならそれをやってしまうと戦後処理が大変になってしまうことは当然のことながらそれ以上に木ノ葉に他国民からのヘイトを集めてしまうことが分かりきっていたからである。

 

 自身の計略が上手く嵌まり、砂隠れと土隠れの戦線が鈍ったことを感じ取った扉間はその二つの戦線を指揮する司令官になった。

 相手の動きが鈍ったことにより余力の出た兵力を他の戦線へと送り込んだ。

 

 それと同時に対風の国では、水攻めを敢行。地下水脈を徐々に火の国がある東側ずらし、首都や隠れ里方面にあるオアシスへの水の流入量を減らす戦略に出た。

 これにより一部オアシスでは水源が枯渇し街が機能しなくなるなど風の国の国力は徐々に低下していき、次第に継戦能力も無くなり、最終的には砂隠れの里は大戦から撤退していくことになった。

 

 土の国には経済戦争を仕掛けるためだけに開発した禁術《土遁・錬金の術》で土塊を金塊に変化させて、操った商人や騙した商人に貿易をさせたり、時には手の者に商人として土の国国内に忍び込ませて土の国経済に甚大なダメージを負わせた。

 このことが引き金となり、結果的に岩隠れの里も大戦から姿を消していくのであった。

 

 開戦当初は大国との間に四面作戦を強いられていた木ノ葉だったが、砂と岩の撤退により、対雲隠れの里と霧隠れの里へと戦力を集中させることが可能となり、そして何度かの衝突があった後、間もなく戦争は終結した。

 

 

 第1次忍界大戦後。

 

 各国の大名同士が休戦協定を締結させた後、初の五影会談が永世中立国である鉄の国にて開催された。軍事的バランスを考え、抑止力とするために尾獣を各里に配分する運びとなった。

 しかし、柱間が思い付いたかのように尾獣の無償提供を申し出たため、扉間が話を軌道修正させ、各里が直接木ノ葉に支払う賠償金の金額に応じて配分することにした。

 

 雲隠れには八尾を。

 岩隠れには四尾を。

 霧隠れには三尾を。

 砂隠れには既に一尾がいるため、尾獣の提供をしない代わりに賠償金との相殺で手を打った。

 

 そして残る二尾五尾七尾は火の国の管理下に置いたのだった。

 

 大名同士の会談と五影会談によって正式に国境が決められたため、予てより準備を整えていた国境整備の一環として《土遁・万里之長城》を発動。火の国と他国との国境沿いに巨大な壁を一晩で作り上げた。

 

 

 戦後の平和な一時を享受していた際にうちはマダラの独断専行や裏切りが判明。それに気が付いた扉間が拘束しようとするも里抜けを許してしまう。

 その一年後、九尾を使役し復讐に来たマダラが木ノ葉隠れの里を襲うも柱間に返り討ちに遭い死亡が確認される。

 扉間はうちは一族の習性や血継限界《写輪眼》を研究するべく大罪人うちはマダラの遺体を秘密裏に回収した。

 

 マダラが使役していた九尾は野放しにするわけにもいかず、柱間の妻ミトに封印し、人柱力になってもらった。

 

 それから程なくして、マダラとの戦いで受けた傷が原因で、初代火影・千手柱間が逝去した。

 

 弟の扉間が兄の跡を継ぎ二代目火影となった。

 ひと月の喪に服するときが終えたと同時に二代目体制を盤石なものとするため行動に移す。

 

 まずは尾獣と人柱力の整理。

 大罪人マダラを輩出したうちは一族ではあるものの信頼できる部下としてうちはカガミに二尾を封印。

 それから弟である千手板間に五尾を封印。

 七尾を滝隠れの里に売り渡すことにより、火の国へと併合。一国二里制度をとることなる。

 

 内政では、忍者養成学校(通称アカデミー)の設立や中忍選抜試験の制定、火影の護衛や国内外の情報収集を担当する暗部組織の組閣、うちは一族を中心とする木ノ葉警務部隊の創設などが代表として挙げられる。

 

 そして外交では二国間での協定締結。

 その国、その里に応じて協定内容に差はあれど大国との間には協定を締結させた。

 

 その中でも一番内容の濃かった協定が雲隠れとの間にできた軍事同盟の締結だった。

 その後の出来事は知っての通り。

 金角と銀角の起こしたクーデターに巻き込まれ扉間はそれを阻止した英雄として亡くなった。

 

 しかし実はここにも扉間の策略があった。

 クーデターに巻き込まれたことは想定外ではあったものの、自身が雷の国と雲隠れを護り英雄として散るシナリオを作り上げた。

 それは永きに渡って雷の国と雲隠れの里が木ノ葉を裏切ることがないようにするために必要な印象操作だった。

 そしてもう一つ操作したことがある。戦死者数だ。

 扉間は開戦直後からは敢えて後方支援をしなかったし、戦闘でも最初からは全力を出さなかった。

 やろうと思えば早々にカツユを口寄せし分裂させて負傷者に取り付かせて治療に入ることもできたし、うちはカガミを残らせて尾獣大戦争に参加させることもできた。

 そうすれば戦場の死傷者の数は相当数減っていたであろうし、雷影エーや人柱力ビーが戦死する可能性はかなり少なかっただろう。

 それを分かっていて見殺しにした理由はただひとつ。

 ここで雲隠れに恩を売り、そして戦力差も大きく開くことにより、心情的にも物理的にも木ノ葉に刃向かうという選択肢を与えないためだ。

 木ノ葉と雲の同盟が木ノ葉にとって有利な形で未来永劫続くのであれば自分の死ですら利用する。

 

 それが千手扉間という漢であった。

 

 

 金角と銀角が保有していた九尾のチャクラは全て回収し、遺体は六尾犀犬の超強酸により文字通り消滅させた。

 暴走した人柱力と八尾にかけられていた封印を解除したことにより、人柱力は死亡し、八尾は一時的に解放されるも再度新たな人柱力に封印した。

 

 木ノ葉の忍びが簡易的に造りあげた野戦病院にて最期の勅命を発令する。

 

 三代目火影に今、この場にはおらず里の守りに徹している猿飛ヒルゼンを指名。そして、その補佐に自身の弟千手板間と愛弟子の1人である志村ダンゾウを指名し、補佐の2人には三代目火影を表と裏から上手く支えるように厳命した。

 

 

 それから口寄せのカツユを湿骨林に戻し、六尾犀犬の封印を自ら解いた。

 今生の別れとなる犀犬が悲しむのを見つめながら、また迎えに行くと約束を交わし、スッと目を瞑った。

 両手を合わせ、息を整える。

 

 そして扉間は人知れず、己が記憶と経験、残りの人生と引き換えに魂を適合する器に転生させることが出来る《臥薪転生の術》を行使した。

 

 

 

 こうして、千手扉間は多くの人々に惜しまれながら、人生の幕を自ら下ろし、魂となり忍世界を彷徨うこととなったのであった───。

 

 

 







こんにちはあるいはこんばんは
エージェント《読者》
新名蝦夷守です。

今回は前書きではなく、こっちに色々書こうかなと思うております。
予約投稿なので1話の反響はまだわからないんだけどどうじゃろ。
感想、高評価あったらよろしくです。
では。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。