NARUTO-カルタ新伝- 卑の意志を継ぐ者   作:新名蝦夷守

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003.卑の意志の目覚め

 木の葉舞う所に火は燃ゆる

    火の意志は里を照らし

      また木の葉は芽吹く───。

 

 

 

 千手扉間の死から数十年が経った。

 

 より正確に言うならば、千手扉間が魂のみの存在となり、数十年の月日が経過していた。

 

 しかしながら、この扉間の魂は既に扉間であって扉間にあらず。

 扉間から経験と記憶を抜いた魂のみの存在とは、そのようなものだった。

 

 そんな千手扉間だった魂は数十年の時を経てまだ母親の胎内にいた次の器へと入り込んだ。

 

 その胎児は母親の胎内ですくすくと育ち、そして魂が器に入ってからきっちり十月十日が過ぎた雲一つ無い満月の夜。

 

 元気な男の赤ん坊が誕生した。

 

 この魂の今世の名を、羽衣カルタという。

 

 

 羽衣一族という一族の起源はかなり古い。

 伝説の存在であり、忍宗の始祖である六道仙人・大筒木ハゴロモの子孫が起源とされている羽衣一族は千手一族の遠縁に当たる一族でもあり古くから両一族は交流を持っていた。

 カルタの母がそんな羽衣一族の出身であり、父の生まれはうちは一族だったが紆余曲折があり婿養子として羽衣家に入った。

 羽衣カルタはこのような血を持つ父と母の間に生まれた子どもだった。

 しかし父はカルタがまだ母の胎内にいる時に草の国での岩隠れとの小競り合いの際に戦死したため、カルタは現在、母と母方の祖父祖母と共に暮らしていた。

 

 忍びが忍術や幻術を発動する際に使うチャクラ。それを生成するには身体エネルギーと精神エネルギーを1:1の割合で練り合わせることが重要である。

 つまり保有するエネルギー総量が仮に10の者が2人いたとして、Aは身体エネルギーと精神エネルギーの割合が3:7。Bがバランス良く5:5であったとするならば、Aはチャクラの生成が3しかできず精神エネルギーを無駄に余してしまうことに対してBは5のチャクラを生成でき無駄を生じない計算となる。

 

 なぜ唐突に身体エネルギー、精神エネルギー、そしてチャクラの話をしたかというと、カルタは生まれながらにしてチャクラの元となる精神エネルギーが非常に多く、身体エネルギーとの差が異常なまでに開きがあったからだ。

 そして、そのことにカルタが生まれて間もなく気が付いた祖父母はまだ赤子だったカルタに遊びと称して修行を始めた。

 

 その結果、生後半年で物に捕まりながらも立てるようになり、その10日後には物に捕まらなくとも自力で立てるようになった。

 生後9ヶ月で歩き回り、1歳になる手前で走り回っていた。

 2歳半になる頃には身体エネルギーの総量も増え、チャクラコントロールの基礎である手を使わない木登りや水面歩行を完璧にマスターし、3歳になる頃にはアカデミーで習うチャクラを使わない忍術(縄抜けの術や隠れ蓑の術など)を使い熟し、アカデミーに入学する前には卒業試験の科目になるチャクラを使う初歩の忍術(変化の術や分身の術など)を既に習得していた。

 

 このような英才教育を祖父母がどのようにして行ったかというと、とにかく鬼ごっこや隠れんぼなどの身体を使う遊びを当時のカルタの力量に合わせて全力で楽しんだ。

 その上で敢えて忍術を見せてそれを真似させ続けたのだ。

 

 その結果、祖父母の修行が功を奏してアカデミーの入学試験で最年少であるにも関わらず実技に関しては堂々のトップ成績を記録し、多くの関係者を驚愕させた。

 

 そんなカルタのアカデミーでの様子はというと、もちろん周りから浮いた存在ではあった。

 それは年齢のこともあるし、実力のこともある。

 

 ただその中でもカルタにとって同世代であり親友とも呼べる少年がひとりいた。

 

 

 

「おはよう!」

 

 アカデミーの校門を通り抜け、校舎へと続く道の途中で自身の親友の後ろ姿を見つけたカルタが後ろから声をかける。

 

「ん? あぁ、カルタか……おはよう」

 

 耳元で甲高い声を聞かされた本人は目が半開きのまま、多少鬱陶しそうに振り返り一応の挨拶を返した。

 

「いつも通り朝からテンション低めだねー」

「いや、お前がテンション高いだけじゃない? ていうか、顔近いから離れろ」

「そうかな? そうでもないと思うけど」

 

 テンションに関する指摘には疑問を感じつつも、とりあえず顔は近付けすぎたかと一定の距離感に戻るカルタ。

 それを見た少年はひと息「ハァ…」と、溜息を溢してから苦言を呈し始める。

 

「とりあえず急に後ろから声かけるのだけはやめてくれない? どっと疲れるから」

「んー、考えとく。………ていうか、忍者になるなら気配くらい察知出来るようにならないとダメだから逆に続けた方が良いんじゃない?」

 

 修行になりそうだし。と、いかにも親切心から言っていますという表情で言葉を続けたカルタに対し、こいつ全然俺の言いたいこと理解してないなと半開きの目が更に細まり俗に言うジト目になる少年。

 

「やっぱ、お前嫌いだわ」

 

 そして、容赦なくそう言い切った。

 

「またまた~。そんな思ってもないこと言っちゃってさ~」

 

 まったくもー素直じゃないんだからー。と、笑顔で聞き流しながら自分の肩をバシバシと叩いてくるカルタにジト目の少年は再度溜息を漏らした。

 

「あのさぁカルタ、お前もうちょっと俺の話聞いてくれない? そんなんだからお前友達いないんだよ」

「えっ」

 

 少年の言葉にいままで何を言われようとも笑顔を崩さなかったカルタの表情が固まった。

 その反応を見た少年は、やっと効果有りかと更に言葉を続けようと口を開いたそのとき。

 

「僕以外に友達のいないカカシには言われなくないわぁ」

 

 と、まさかの口擊が返ってきた。

 それもしみじみと言った口調で、自分より1つ年下に言い返された少年。

 少年は確かに指摘されて特大なブーメランだったことに気が付いたが、ムカついたのでゴチンとカルタの頭に拳骨を1発入れといた。

 殴られたところを抑えて多少涙目になりながら抗議してくるカルタの様子に少しだけ溜飲を下げた少年はそそくさと校舎の中へと入っていった。

 もちろんカルタもプンスカ怒りながらも少年の後を追って校舎内へと向かっていく。

 

「今日の組み手の時間は手加減しないからねカカシ! やられたらやり返す!それが僕の忍道だ!」

 

 倍返しだ!うぉぉぉ!と、どこかで聞いたようなことを叫びながら入っていくのであった……。

 

 

 さて。

 カルタが自称親友をしている銀髪黒眼の少年。常に見方よっては眠そうな、覇気の無さそうな目をしており、顔の下半分は黒いマスクで隠されているそんな個性の塊的な少年。

 彼の名は、はたけカカシ。

 母は彼がまだ赤子の頃に他界しているが、父は第2次忍界大戦時に『木ノ葉の白い牙』と他国から畏れられたはたけサクモである。

 カルタとは入学前の試験からの付き合いで、年齢がひとつしか変わらないこともあり、入学当初から行動を共にしていることが非常に多かった。

 そしてカカシもカルタと同じく他のアカデミー生とは年齢が離れているため、カルタ以外に友達と呼べる存在はいなかった。

 ちなみにカルタとカカシの実力は伯仲しており、入学試験の際、首席入学がカルタに対して次席がカカシ。実技ではカルタ、筆記ではカカシ。総合でカルタというような結果である。

 そんな2人の実力は他の同期入学の生徒達は当然ながら、今年度卒業予定の上級生達の追従をも許さないほどであり、その為、2人とも入学後すぐに飛び級扱いをされることとなった。一応、自分たちの籍は下級生である新入生クラスにあるものの、一般教養など所謂机に向かって受ける授業は中堅クラスで学び、体術や忍術などの実技は上級生のクラスに混じって参加していた。

 それはなかなか他の友達を作る機会が無いわけである。

 

 

 

 カルタが校舎前で拳骨を喰らいカカシへの復讐を誓ってから数時間後の組み手の授業でのこと。

 

「まずはある程度距離をとってから対立の印を組んで! 各々のタイミングで組み手開始!」

 

 先生の合図により、二人一組の組み手が始まる。

 カルタの相手はもちろんカカシ。

 

「ここで会ったが百年目! カカシ覚悟っ」

「いや、ずっと顔合わせてたよね。ていうかトイレまで一緒に行かなくて良いんじゃない?」

「問答無用っ!」

「ッ! あぶなっ」

 

 地面を強く蹴り、一瞬で間合いを詰めてチャクラを込めたであろう右ストレートを放ってくるカルタを間一髪のところで避けたカカシ。

 ピキッと、カカシのこめかみに筋が入り、瞳に怒りの色合いが混ざる。

 

「本気で来てよねカカシ」

「言われなくてもッ!」

 

 挑発を正面から受け取る。

 そこから殴る守る蹴る躱すの応酬が始まった。

 

 教師陣からは普段から仲は良いけど、噛み合わない2人と陰で言われているカルタとカカシだが、組み手は体術の型をしているかのように噛み合っていた。

 それに普段は基本的に能天気で天然にボケが混じるカルタとあまり感情を表に出さずにゆるっとツッコミを入れるカカシという役割分担は自然と出来ていたのである意味、相性は良いのかもしれない。

 

 その体術の応酬はしばらく続いた。

 他の生徒達がバテて休憩に入っていても尚、続いていたがお互いのストレートが顔に入ったことにより同時に後方へと飛び下がり間を取った。

 

「ハァハァ……今回は俺の勝ちで良いか? カルタ」

 

 互いの拳が顔面に届いたとしても、腕のリーチの差でダメージが大きいのはカルタの方だった。

 現にカカシは息が上がってはいるもののまだ立っているのに対して、カルタは片膝を地面に付け、顔を上げられずに肩で息をしていた。

 

 それを見た先生が「組み手が終わったら和解の印を」と、カカシに対してカルタに歩み寄るように促す。

 

 カカシも今回は勝ったかと、警戒を解いてカルタの方へと歩き出す。

 

 そしてカルタまであと3、4歩となったとき、カルタが顔を上げた。

 

 ニヤァァと、右の口角が上がり白い歯が少し見えている。

 絵に描いたような悪い笑みだった。

 

「おまッ!」

 

 警戒心を完全に解いていたカカシが反応する前にボフンと煙を上げて2人のカルタが現れカカシを両サイドから拘束した。

 

 まだ地面に膝を付いたまま悪い笑みを浮かべているカルタの手元を見ると十字の印が結ばれている。

 

「か、影分身……」

「うん! 僕はまだ参ったって言ってないもんね」

 

 言外に組み手は続行中と言っているカルタに対して、カルタの影分身によって身動きの取れないカカシは恐怖した。

 

 こいつ何しでかすか分からない、と。

 

 そして、その恐怖は更に高まる。

 

 じわりじわりと本体のカルタがカカシの背中に向かって歩き始めたのだ。

 

「体術の授業中に忍術使うのは狡いぞ!」

 

 そんなカカシの抗議の声はカルタにとってはどこ吹く風。

 それどころか「忍術の使用は禁止って言われてないしー」と開き直る始末。

 

 カルタの動きを目で追っていたカカシが視界から途切れる最後に目にしたのは、カルタが寅の印を結んでいるところだった。

 

 もしかして、背中から火遁をぶっ放すわけでは無いだろうな。

 流石のカルタも火遁の術までは使えないだろう。

 いや、だがしかし、現に影分身をいつの間にかマスターしているカルタのことだから火遁の術も初歩的なものであれば使えるのかもしれない。

 

 ……つまり。

 

 俺の命が危ないッ!

 

「ま、参っ」

 

 早く降参しないと本気で何をしでかすか分からない恐怖に陥ったカカシが降参の言葉を発しようとしたとき、肛門に違和感を感じた。

 

 そしてその違和感はすぐに痛みに変わり、それがいままでに経験のしたことの無い激痛だということに気付いた時にはカカシの意識はもう残っていなかった。

 

 カカシは意識を失ったままロケット花火のように空高くキレイな放物線を描いて飛んでいく。その様子を先生も他の生徒も唖然とした表情で見ていることしか出来なかった。

 

「木ノ葉隠れ秘伝体術奥義・千年殺しィィィ!!」

 

 そう勝ち鬨を上げるその少年。

 

 羽衣カルタ。

 現在、4歳。

 

 この年で既に卑怯であり、卑劣であった。

 

 

 







こんにちはあるいはこんばんは
エージェント《読者》
新名蝦夷守です。

3話にしてようやく主人公出てきました。
羽衣カルタ(純粋卑劣)ですが、どうぞよろしくお願いいたしやす。
事前の予約投稿はここまでになります。やっと次回から反響見た上で後書き書けるね。
プロットはかなり先まで出来てるけど、どこまでスマホで続けられるかな。もうストック無いみたいなもんなんよね。
感想、高評価あったらよろしくです。
では。
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