NARUTO-カルタ新伝- 卑の意志を継ぐ者 作:新名蝦夷守
三代目火影補佐役・千手板間との初顔合わせを終えた後のこと。
「もう下忍になるってことか……これで1歩近付けるな」
「大好きな父さんに?」
「あぁ……って、オイ!」
「サクモさんカッコいいもんねー」
心の声が漏れていたカカシを見逃すことなくカカシにとっては余計な合いの手を入れるカルタ。
里の大物との邂逅後ということもあり気が緩んでいたのか思わずその合いの手にさえも返事をしてしまったが、慌てて気付き恥ずかしさから顔を赤らめながらペチンといつもより強めなツッコミを入れるカカシ。
それをケラケラと笑いながら甘んじて受けるカルタとその年下2人様子を微笑ましく見ているまふゆ。
なんたかんだバランスの良い3人の空間が出来上がっているようだった。
それからしばらくの間、カルタは里の人間なら誰しも知っているサクモの武勇伝を羅列して、すごいよねー。強くてカッコいいよねー。ぼくも尊敬しちゃうなー。などエピソードごとに感想を挟める。
途中までは仕方ないという諦めと自分の自慢の父が褒められているという少しの優越感で聞き流していたカカシも時間が経つにつれて流石に「お前はいい加減しつこい! さっきのはもう忘れろ。蒸し返すな」と怒り気味で言われたことにはごめんごめんと素直に受け入れるカルタ。
しかし、あと1個だけと最後まで自分が話したいだけ話すその図太いメンタリティーにはカカシのみならずまふゆでさえも少々呆れさせていた。
「はてさてパパ大好きっ子のカカシは横に置いといて」
そんな前置きでマイペースに話を方向転換する旨を告げるカルタをジト目で見ているカカシ。そんなことは気にもせずこれまたマイペースに話を進めるカルタ。
「さっきの人なんか凄かったよねー。なんて名前だっけ……イタマ? あ、千手板間だ」
ポンと手を叩き名前を思い出せて満足げなカルタに「様は付けろ。様は」とカカシはボソッとツッコミを入れ、まふゆもそれに同意したように小さく2度頷く。
しかしそんな2人の様子に気付いていないカルタは「話してる声を聴いているだけで頭がふわふわしてくるっていうか。声の音程を使った幻術かと思って幻術返し試してみちゃったもん」と更に続けていた。
「それになんかさ。すごく期待されてるみたいだったよね、ぼくたち」
「それはまぁ、たしかに」
今まで飛び級の卒業はあっても年度末待たずしての飛び級卒業は前代未聞。それも俺とカルタは入学してまだ1年も経っていない。やはり里の上層部は今の他国との小競り合いが先の大戦のようになっていくと考えているのか……。
そう考えているカカシを取り残して実に楽しげなカルタは「もしかして新世代の三忍になって欲しい的な?」とニヤニヤしながら宣っていた。
「そんなこと一言も言われてないだろ」
「でもさ、言外に言ってたようなもんじゃん? ねえ、まふゆちゃん」
急に話を振られたまふゆが『ま、まふゆちゃん!?』とカルタの急な呼び方の変化に内心ドキリとはしたものの。
「そ、そうかなぁ? 私にはわからなかったけど……」
と、まふゆ本人的には動揺を上手く隠して返事ができたことにホッとしていたのだが、カルタはともかく目敏いカカシにはバレており小声で「これから長い付き合いになりそうだから先に言っとくけど、こいつの戯れ言にひとつひとつ反応してたらキリがないぞ」と言われ、また前回のようにアタフタしていたことを気付かれて赤面するという悪循環に陥っていた。
「もう日も傾いてきたし帰ろうよ。カカシ、まふまふ」
「まっ、まふまふっ!?」
その同じようなことを性懲りもなく繰り返す2人のやりとりに大層呆れたジト目を向けながら先に帰り支度を始めるカカシであった。
**********
時は数週間流れて卒業試験当日の月末。
その日、朝一から普段使われていない通常教室よりは少し広めの部屋に呼び出しを受けたカルタ、カカシ、まふゆの3人。
そんな彼らを試験教室で待ち受けていたのは、土井先生、山本先生と言ったクラス担任の先生たちと数名の教科専門担当の先生方。その他に全校集会や全校競技大会などのイベント事ぐらいでしか見たことのないがアカデミーの校長や教頭先生が見知った顔のアカデミー側からの出席者。
学校関係者以外の出席者には先日の千手板間に加えて里の偉そうな人数人とそして20代にも見ようによっては40代にも見える年齢不詳な青年がひとり。
その人物は、人当たりの良い笑顔を3人に向けながら近付いてきた。
「はっはー! 君たちが今回の受験者ということだね? なるほどなるほど。俺は今回の試験官兼君たちの担当上忍予定の
そう言って快活な様子が好印象で裏表の無さそうな雰囲気を纏った千手日間と名乗ったその青年は木ノ葉隠れの里の象徴の1つである火影岩の左端に掘られた顔立ち良く似ていた。
「「「よろしくお願いします!」」」
「うむ! 元気があって良し!」
日間は今後教え子になる予定の3人の挨拶にうむうむと目を瞑りながら2度大きく頷いて「合格っ!!」と、サムズアップをしながら合格を言い渡した。
これにはカルタたち3人もポカンとし、アカデミーの先生方も目が点になっていた。ただ日間と同じく学校外から来ていた人達は頭を抱えながらため息をついていたため日間が普段から同じような言動をしていることが垣間見えた。
「これ日間。試験はちゃんとしなさい」
「はっはっはー! すまんすまん。じっちゃん」
笑いながら本当に反省しているのか怪しい謝罪をする日間に対して公の場では祖父上か役職で呼べと何度言えば良いんだと更に日間を窘めるのは千手板間。
『『『この人、板間様のお孫さんだったのか(んだ)』』』
そんなコントのようなやりとりを見せられてカルタたち3人の心はシンクロしていた。
それからほどなくして学校長の発言から試験の場は整えられ、シャキッと試験官の表情になった日間から改めて試験の内容が言い渡される。
今回の試験内容は分身の術で分身体を3体以上作ること。
卒業することが里上層部の意向であったにしろ、アカデミー卒業試験の合格は最早確定事項だったようで、成績優秀者の彼らにはそれはそれは充分な余裕を持って合格できる試験であった。
「雪まふゆです! い、行きますっ!」
まふゆは得意な水分身で3体。これは同じ体積の水が必要とは言え実体のある分身にして立派な水遁忍術の1種。
術の成功に、おぉーという大人たちの称賛の声が教室に響く。
それにはまふゆの安堵の表情を浮かべ、彼女の担任の山本先生の顔にも安堵と自慢げな表情を浮かべていた。
「はたけカカシ……行きます」
カカシはまふゆの用意した余った水で水分身1体。実体の無い基礎的な分身の術で1体。最後の1体は実体を持つ高等忍術である影分身を作り出した。
分身の術の基本、応用、完成形を見事に発現させたカカシに大人たちも満足そうに頷き合い「流石は"白い牙"はたけサクモの息子だ」と称賛の声を上げていた。
そんな2人は当然ながら卒業後試験合格の判を貰っていた。
そして順番的に最後になったカルタはというと。
「カルタ、行っきまーす!」
影分身の術!変化!という掛け声とともに術を発動させたカルタだったが煙が晴れたその場所に立っていた3体の影分身体は小さなカルタの姿からは大きく変わっており、変化の術も組み合わされて歴代の火影達の姿をしていた。
その造形の完成度の高さにはカカシとまふゆのみならず他の大人たちでさえも息を飲んだ。
しかし、イタズラ好きのカルタが皆の反応を見て気分を良くし更に手を加えるのは想像の範疇でもあった。
「がっはっはー!賭け事するぞォー!」
「……木ノ葉か、木ノ葉以外か」
「儂も覗きをするときの逃遁術ならプロフェッサーじゃ」
カルタが勝手にイメージする3人の言葉も添えたのだった。しかもその声色まで完璧に模倣していた。
ちなみに上から順に初代様、二代目様、三代目様である。これに関しては驚愕から一気に現実に引き戻された土井先生からTPOを弁えろ。ふざけすぎだと直ぐに厳しい説教が入ったことは言うまでもない。
それはともかく3人とも難なく試験をパスしたのであった。
「3人とも無事合格! 班の結成にあたって手続き等があるから明日の朝9時には1度校舎前に集合するように! 本日は以上! 解散!」
**********
カルタたちの試験が終わった後のこと。
「あの様子であればこの施策も何とか軌道に乗せることができそうだな。ダンゾウ」
「あぁ。是非3人ともワシの『根』に勧誘したいところだ」
「今回の卒業前倒しの意味覚えているよな? あとお前の『根』では無いからな」
「フンッ……そんなに釘を刺さんでも分かっとるわ。ホムラ」
お互いに1人ずつ部下を連れて今回の試験を見学していた男たち。
名を志村ダンゾウと水戸門ホムラという。
どちらとも里の重鎮のひとりであり、志村ダンゾウは国内外の諜報活動をメインとする組織で火影直属部隊である暗殺戦術特殊部隊(通称、暗部)を養成する機関『根』の創設者の1人であり創立時からのリーダーでもある。
補足の情報としては、暗部養成機関の構想は二代目火影の扉間が打ち出しており、彼の死後その構想を元に主導して『根』を作り上げたのがダンゾウだった。
水戸門ホムラは三代目火影の左腕とも言うべき補佐役であり、主に里の内政面で火影のサポートをしていた。
ちなみにもうひとりの火影補佐役である板間は自他共に認める右腕として主に火の国との連絡調整や外政面のサポートを行っている。
「だが今後もあれほどの才能がポンポン出てくるとは考えにくい」
「あぁ、年齢はともかく心技体全てにおいて明確な卒業基準。最低限のラインが必要だな」
今回そんな里の上層部の人間たちが試験のカルタたちの卒業試験の立ち会いをしていた理由としては、不安定な世界情勢を鑑みてアカデミーの成績優秀者を繰り上げ卒業させ下忍の頭数を揃える施策が試験段階として成り立つかどうかを実地確認することにあった。
それはアカデミー生徒の現状の質を書類などの報告ではなく実際に目で見て確認する必要があると里の上層部会議でなったからだった。
その結果は十二分に満足できるものだったのだが、板間の中には強烈に引っ掛かりを覚える出来事があった。
あの影分身の変化。三代目は現役であるからまだしも。カルタが生まれる数十年前に故人になっている初代様、二代目様。2人の兄上様たちをあれほどまでに完璧に模していた。
外見上の特徴はもちろん。声色の模倣にも驚かされた。そして何より柱間兄上の賭け事好きなセリフと笑い方。扉間兄上の言いそうで聞いたことのないセリフ。でも心の芯の部分を、兄上の行動原理の根底をたったの一言で言い表した『木ノ葉か、木ノ葉以外か』。
羽衣カルタ……お主は一体。
「何者なんだ」
板間の思わず口に出たその疑問がダンゾウやホムラに聞こえることは無かったが、仮に聞かれていたとしてもその問いに答えられるものは誰もいなかった。
こんにちはあるいはこんばんは
どーも。ちょいちょいネタを挟みたがる病の蝦夷守です。
気付かなかったら気付かなかったで、気付いたクスッとなってくれたら嬉しいです。
まぁ、ひとつは露骨だったけど。笑
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ではでは。