鏡の中の愛   作:鏡の国のアリス

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こんばんは。
見切り発車で書いているので今後の展開が何も思いついていません。どうすればいいんだ〜


16話

 ︎︎ 

 東条プロダクション。

 石動親子や不知火フリルなど、芸能界の最前線を歩く人間を多く抱える業界最大手の芸能事務所である。そんな事務所の社長室に、1人の少女が赴いていた。

 腰まで伸ばした美しい黒髪、色気を感じさせる目元と口元の黒子に、宝石のような瞳を持つ美少女。

 東条プロダクション所属の女性タレントである不知火フリルだ。

 彼女は社長室にて、自らが所属する事務所のトップである女性と顔を合わせる。

 静寂が室内を包み込む中、先にそれを破ったのはフリルだった。

 

 「社長、リオンが恋愛リアリティショーに出るって本当ですか?」

 

 「……ええ」

 

 フリルの単刀直入な質問に、社長である女は偽りなく答えた。その返事を聞いたフリルの目付きが若干鋭くなる。

 

 「なんで許可したんですか?」

 

 「…色々あったのよ」

 

 遠い目で答える社長を見て、フリルは何となくの事情を察した。

 リオンが役作りに関して妥協しないことはフリルも身に染みている。今回もリオンが相当な無茶を言ったのだろう。

 

 「……それで、話はそれだけ?」

 

 社長が言外に「それだけじゃないんでしょ」と告げてきたので、フリルは口を開く。

 ここからが本題だ。

 

 「社長、私も恋愛リアリティショーに出してください」

 

 フリルの言葉に社長はほとんど反応を見せない。恐らく、この展開を予想していたのだろう。

 極めて冷静な口調で、フリルに質問を投げかける。

 

 「なぜ?」

 

 「リオンは役作りのために出る、恋愛はしないって言ってましたけど100%じゃない。もしかしたら恋に落ちる可能性はあります」

 

 「そうね。それで?」

 

 社長は試すような視線をフリルへ向ける。しかしフリルは一切怯まず、澱みなく言葉を紡いでいく。

 

 「もしそうなったら世間は大騒ぎですよね。あの石動リオンが知名度の低い芸能人と恋愛だなんて、下手したら炎上します」

 

 「……その通りね」

 

 フリルの言うことは最もだ。リオンは超がつくほどの人気俳優。そんな彼が知名度の薄い人間と恋愛となると熱烈なファンは黙っていないだろう。

 リオンに対して…ではなく、相手に対しての誹謗中傷が飛び交うことは容易に想像できる。

 当然、リオンもそれは理解している。軽率な行動に出ることは無いだろうが、この世に絶対はない。

 

 「だから私が出て、リオンの恋愛を牽制します。そうすればリオンが恋に落ちることは無いし、私がいればもっと上手く立ち回れます」

 

 ︎︎フリルの提案に、社長は口を閉じて考えを巡らせる。数秒後、再びフリルに質問を投げかけた。

 

 ︎︎「で、本音は?」

 

 ︎︎「リオンが他の誰かに取られる可能性があるなんて許せない。リオンは必ず私が手に入れたい」

 

 ︎︎フリルは即答で、しかも恥ずかしがることなく答える。真剣な瞳に射抜かれた社長は大きな溜息をついた。

 

 ︎︎「だから、私も番組に出してください、お願いします」

 

 ︎︎フリルは追い打ちとばかりに美しい所作で頭を下げる。社長は右手で額を押えながら、静かに言葉を放った。

 

 ︎︎「ああ、もう、分かったわ。出ていいわよ…」

 

 ︎︎「本当ですか?」

 

 ︎︎「ええ。…はあ、全く…リオンといい、貴女といい、ウチの事務所はワガママが多くて困るわ…」

 

 ︎︎フリルの熱意に負けたようで、渋々といった様子で許可を出した。

 ︎︎社長がフリルに目をやると、普段は表情の起伏が薄い彼女が珍しく嬉しそうな笑みを浮かべていた。それを見て、再度溜息。

 ︎︎ここ最近溜息を吐きすぎて、幸せが全部逃げてしまったような気がしていた。

 

 ︎︎「出演していいけれど、自分が言ったことは守ること。リオンが他の女に惚れるなんてことがないようにしなさい。これは絶対条件よ」

 

 ︎︎「わかってます」

 

 「あと、もう1つ。貴方も、恋に落ちるなんてことがないようにね」

 

 ︎︎社長はフリルに釘を刺すが、その釘をフリルは即座に引っこ抜く。

 

 「もう落ちてます」

 

 フリルが言うと、社長は「そうだったわね」と小さく呟いた。

 後日、今ガチの第1話を視聴した社長が頭を抱えることになるのは…言うまでもないだろう。

 

ーーー

 

 ︎︎今からガチ恋始めますの第1話。

 不知火フリルの爆弾発言に石動リオンの照れ顔初公開など、初っ端から凄まじい展開になっていた。

 これにより、不知火フリルと石動リオンを中心に番組が進んでいき、ほぼ知名度のない他のメンバーは空気になる……と誰もが、出演者たちですらそう予想していたが、実際はそうはならなかった。

 番組は確かに、不知火フリルと石動リオンが番組の中心になっている。世間はフリリオやらリオフリやらの話題で持ち切り。ネットニュースにも取り上げられ、日本中の人間が今後の展望を待ち望んでいた。

 しかし、他のメンバーにも少なからずフォーカスが当てられており、完全に空気になることは無かった。世間にフリリオ旋風が巻き起こる中、極小数ではあるものの、他のメンバーに対する言及も見られたのだ。

 これは制作陣の力によるものではないし、ましてや個々のメンバーの力でもない。この状況を生み出しているのは、この番組の主演ともいえる2人、不知火フリルと石動リオンだ。

 2人は他のメンバーが空気にならないよう、各々にフォーカスが当たるように立ち回る。しかし、自分たちが番組の中心ということは譲らない。

 フリルとリオンは熟知している。カメラにどう映れば目立つのか、どう映れば自分の魅力を引き出せるのかを。長年の経験で培った"魅せる"技術が体に染みついている。

 今回は、その技術を自分の為だけではなく、周りにも使っているのだ。周囲のメンバーを魅力的に映すにはどうすれば良いかを考えて立ち回る。しかも、自分の魅力は一切殺さずに。

 10代の少年少女とは思えない卓越した技術、演出家など要らないと言わしめるほどの業。しかし、幼少の頃から芸能界に身を置き、常に最前線で戦ってきた2人にとっては造作もないことだった。

 たった1話で全員が理解した。出演者も、カメラマンも、ディレクターでさえも、理解させられた。

 この番組を支配しているのは、石動リオンと不知火フリルであると。

 

そんな第1話の撮影終了後、帰るために荷物をまとめているアクアに声をかける人間がいた。

 

「おっす、おつかれ」

 

「…やってくれたな、リオン」

 

声をかけてきた人物…石動リオンをジト目で睨みつけながら言うと、リオンは苦笑いをうかべた。

 

「いや、俺悪くないって」

 

そんなことはアクアもわかっていた。あのリオンの反応を見るに、先程の大事件は完全に不知火フリルの独断だ。何も知らなかったリオンを責めるのは筋違いだと理解しているが、文句の1つでも言わないとやってられない気分だった。

 

「まあ…リカバリーはしたから大丈夫だろ。お前らが完全に空気にはならないよ、多分」

 

「…それはどうだか」

 

リオンの言うように、あの事件の後の撮影はリオンとフリルが共に動き、他のメンバーにも少なからず出番が与えられるように立ち回っていた。とはいえ、あの大事件の後では他の6人の影が薄くなるのは間違いない。

 

「まだ始まったばっかだしな。お前なら大丈夫だろ」

 

「簡単に言ってくれるな…」

 

恋愛リアリティショーでの、若手トップ同士のカップリング。それを超えるインパクトを残すなど、あまりにも難しい。今ガチという名の水槽の水は既に、リオンとフリルの色に染まってしまった。

その中で生き残るには、水を自分の色に染め上げるか、色に順応するかの2つしかない。

前者は困難極まる道で、後者は比較的楽な道だ。故に、アクアが選ぶ道は…。

しかし、その道を選ぶことを許さない人間がいた。

 

「弱気になってんの?」

 

「…なに?」

 

挑発的な瞳を向けるリオンの言葉に、アクアが反応する。

 

「今、楽な方に行こうと思ったでしょ」

 

「…っ!」

 

図星を突かれたアクアは思わず息を飲む。

ーこいつはいつもそうだ。俺の考えをいとも簡単に言い当てる。まるで、心が見えているかのように。

 

「俺を超えるって言った人間が、こんな所で折れるなよ」

 

リオンの言葉がアクアの心を突き刺す。心の中にある熱が呼び起こされる。

 

「逃げるなよ、星野アクア」

 

リオンがアクアの肩を軽く叩き、歩き去って行く。その背中を見つめながら、アクアは小さく呟いた。

 

「くそ…ふざけんな」

 

釘を刺され逃げ道を塞がれた。あんな挑発じみたことを言われて引き下がれるほど、アクアは利口な人間ではない。口では悪態を吐きながらも気持ちは昂っている。

彼の目に映る星は輝きを失ってはいなかった。

 

ーー

 

「久しぶり、リオン」

 

「ああ。昨日ぶりだね、フリル」

 

「昨日……?あ、夢の中でってこと?」

 

「送迎の車の中だよ。忘れちゃった?」

 

「2人とも、おつかれさま!」

 

続く第2話の撮影。

第1話のような大事件が起きることなく、リオンとフリルが教室を模したスタジオで普通に会話をしていると、そこに話しかけていく女子がいた。

少しクセのある黒髪を持った美少女、ファッションモデルの鷲見ゆきだ。

 

「おつかれ、鷲見さん」

 

「今、リオンからアプローチ受けてたんだけど…」

 

「えっ!?そうなの!?……邪魔しちゃったかな?」

 

「全然してないから気にしないで」

 

いつも通り、フリルのボケをリオンが受け流す。そのまま3人で会話を繰り広げていると、そこにMEMちょとノブユキが合流してきた。

 

「おっす、仲良さそうじゃん。俺らも入れてよ」

 

「何の話してたのぉ?」

 

合流してきた2人を加え、会話の輪が広がっていく。十分に場が暖まってきたタイミングで、MEMちょが小さめの爆弾を投下した。

 

「不知火さんってぇ……本気でリオンくんのこと好きなの?」

 

「うん、本気」

 

突然の質問に対し、フリルは即答で返した。女子2人からの黄色い悲鳴が上がる中、リオンはむず痒そうな表情を見せる。

 

「いつからっ!?いつから好きなの!?」

 

やはり女子高生というものは恋バナが大好物なようで、ゆきが話題に思いきり食いついた。フリルは恥ずかしそうにしながらも、淡々と話し始める。

 

「えと、5歳くらいの時から」

 

「え!?すげえ!めっちゃ昔からじゃん!一途すぎるでしょ!」

 

ノブユキが驚きの声を上げる。5歳の頃からとなると、11年程の片想いということになる。ゆきとMEMも興奮を隠せておらず、前のめりになって質問を続ける。

 

「なんで好きになったの!?」

 

「リオンの演技に憧れて今の事務所に入ったんだけど…初めて会った時にリオンが、その、私のこと綺麗って言ってくれて…そこから…」

 

「きゃーーー!」

 

「盛り上がってきたねぇ!」

 

顔を赤く染めたフリルの赤裸々な暴露に、会場のボルテージはMAXだ。ゆきとMEMのテンションは爆上げである。

 

「おいおいー!愛されてるじゃん!リオンくん…って、あれ?」

 

ノブユキがリオンの方へ向き、揶揄うように声を上げると、そこには耳まで真っ赤に染めて俯くリオンの姿があった。

 

「リオンくん……もしかしてぇ……ガチ照れ?」

 

顔を真っ赤にしたリオンを見てMEMが呟く。MEMに図星を刺されたリオンは、ぷいっとそっぽを向いた。

 

「やば、めっちゃ初心だ…!」

 

「かわいすぎ、押し倒したい」

 

「それは問題発言だよぉ!?」

 

ギャーギャーワイワイと盛り上がる教室。その様子を廊下から眺めながら、アクアはリオンに以前言われた言葉を思い出していた。

 

『俺を超えるって言った人間が、こんな所で折れるなよ』

 

あの言葉の意味。こんな所で逃げるような人間がリオンを越えられるわけがないということ、それは分かる。だが、どうすればいいかが分からない。

この番組は既にリオンとフリルの物だ。それを引っくり返す方法など現状では全く思いつかない。

 

「…はぁ…」

 

「あ、あの…」

 

アクアが溜息を1つ吐いたところで、背後から声をかけられた。振り向くと、青がかった黒髪をセミロングに切り揃えた少女がいた。

 

「えっと…黒川さん?」

 

アクアは頭の中から少女の名前を引っ張り出して口に出すと、少女は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「あ、はい。黒川あかねです。アクアさん…でいいですか?」

 

「それでいいよ。で、どうしたの?」

 

「私こういうの初めてで、どうすればいいか分からなくて…」

 

モジモジと話すあかねは、さながら小動物のようだった。収録中に相談を持ちかけるのはどうかと思うが、あかねのこんな様子を見てしまえばアドバイスをしてあげたくなる。

しかし、アクアもこういったリアリティショーは初めての経験だ。アドバイスできる程の知識など持ち合わせていない。

 

「ごめん。俺も初めてだから」

 

「あ、そうですよね。ごめんなさい」

 

「アドバイスって程じゃないけど…まだ序盤だし焦らなくてもいい。とりあえずリオンと不知火フリルがお膳立てしてくれるから、最初はそれに乗っかれば大丈夫」

 

「なるほど…!」

 

あかねはアクアの言葉を飲み込むと、懐からメモ帳とペンを取り出す。そのままアクアの言葉をメモ帳に熱心に書き込み始めた。

そんなメモを取るほどのことは言ってないんだが…と思うアクアだったが、流石に口に出しはしない。

 

「とりあえず会話に混ざりに行くか。ケンゴも来てるし」

 

「は、はい!」

 

いつの間にか教室に入ってきていたケンゴに目をやり、アクアとあかねは2人で輪へと入っていく。メンバーたちはリオンとフリルの馴れ初めの話で引くほど盛り上がっていた。

わいわいと騒がしい輪に入ったアクアは適当に相槌を打ちながら、先程まで考えていた『リオンに一矢報いる方法』について逡巡する。

しかし、考えても何も思いつかない。アクアが吐いた吐息は喧騒の中へと消えていった。

 




作者でさえ、アクアが大番狂わせを起こすビジョンが見えません。その場のノリで書いてるからこうなるんやぞ。
とりあえず、明日の自分に期待して今日は寝ます。
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